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アトリ計画の詳細
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落とし主が現れた。何と例の男だった。
男は素直に要請に応じる。
「あんたのところの会社は危険な団体なのかい? 」
同僚は疑惑の目を向ける。
「まさか中身を見たんですか? ただのよくある会社かと。ははは…… 」
笑ってごまかすが同僚の追及は続く。
「では一度確認の意味でも会社に連絡を取りますがよろしいですね? 」
「はあどうして? 」
納得行ってない様子。あからさまに嫌な顔をする。
「あなたが失くしたと主張するにはこの資料が貴社のものだと。
そして自身が社員であることを証明する必要があります。
ライバル会社やスパイの恐れもありますから」
会社の極秘資料であるなら会社の所有物。
男と会社の関係が証明されないまま渡しては大問題になる恐れも。
一警官の失態として騒がれるだけでなく警察全体の信用失墜行為。
だからこそ慎重にならざるを得ない。
「申し遅れました。私こう言う者です」
そうやって名刺を渡す。
「だからその名刺が本当か確かめる必要があるんだって。
それで疑いが晴れれば返すと言ってるんです」
「待ってください! 失態がばれたらクビになる。それだけは何としても避けたい」
「そう言われましても…… こちらとしてはどうすることも出来ません」
非情な同僚。ここまで追い詰める必要はない。
「お願いだ! 助けてくれよ! 」
泣きつかれてしまった。
「分かりました。では別件でお呼びしてはいかがですか? 」
さすがにかわいそうになったので割り込み提案する。
「別件? 」
「失踪事件で協力をと言う形でお呼びいただければよろしいかと」
「はあ…… 何とかしてみます」
納得してくれたようだ。
「アトリ計画だけでも教えてくれませんかね? 興味があるんですよ」
同僚の追及はまだ終わらない。
資料によく出てくる単語。どうしても我々は知っておく必要がある。
「ああそれでしたら新商品のことで今年中には発表できるはず。
画期的な商品らしくて実は俺も社内モニターに選ばれたんです。
だからこれだけの極秘資料を手元に…… 」
隠す素振りも見せずに受け答えしている。これはやはりただの内部資料。
同僚が危惧していた怪しい団体による終末作戦ではなさそうだ。
「分かりました。今日のところはお引き取り下さい。
明日にでも会社の方と証言の裏が取れ次第お返ししますので」
「ありがとうございます! 」
男は感謝の言葉を述べ行ってしまった。
職務上知り得たことをベラベラ話すことはない。
それは警察官として当然のことだがついうっかり漏れることだってある。
今回のように一見危なそうな落としものは酒のつまみになりやすい。
もちろん私は酔うこともないし誰にも話す気はない。
同僚はどうかと言うと面白がって飲み屋で言い触らしそう。
それが回り回って男の知ることになれば言い訳も出来ない。
だから同僚にはきつく言い触らさないように念を押すがこればっかりはどうにも。
「ははは…… そんなことするものか」
「でも前科があるでしょう? 」
「旦那が浮気した件だろ? あれは俺が言い触らさなくても皆知ってたよ。
だから少し場を盛り上げるために分からないように脚色してだな…… 」
そう彼も理性がある。だから知り得たことをそのまま言い触らすことはない。
今回だって怪しげな会社の間抜けな社員の落としものとでも言うのだろう。
そうやって関心を得ようとするに違いない。まったく困った人だ。
「それでどうします? 」
「個人的には興味はある。協力してやれよ」
「いい加減ですね。ただの失踪事件ですよ」
まだ今のところ見つかってない。
彼が言うように隣人が監禁してるとしたら一刻も早く助け出さなければならない。
「どうかな? 大事件に発展するかもよ」
笑ってからかってる同僚。
確かにここは都会ではないから大きな事件はない。
今日だって落としものや道案内ぐらいで平和だもんな。
たまには刺激が欲しくなることもある。
どこかで大事件でも発生してくれないかなと思ったこともある。
でもやはり平和が一番。
警察官たる者いたずらに刺激を求めてはいけない。
それくらい分かってるのだが悲しいかこれも人間の性。
続く
男は素直に要請に応じる。
「あんたのところの会社は危険な団体なのかい? 」
同僚は疑惑の目を向ける。
「まさか中身を見たんですか? ただのよくある会社かと。ははは…… 」
笑ってごまかすが同僚の追及は続く。
「では一度確認の意味でも会社に連絡を取りますがよろしいですね? 」
「はあどうして? 」
納得行ってない様子。あからさまに嫌な顔をする。
「あなたが失くしたと主張するにはこの資料が貴社のものだと。
そして自身が社員であることを証明する必要があります。
ライバル会社やスパイの恐れもありますから」
会社の極秘資料であるなら会社の所有物。
男と会社の関係が証明されないまま渡しては大問題になる恐れも。
一警官の失態として騒がれるだけでなく警察全体の信用失墜行為。
だからこそ慎重にならざるを得ない。
「申し遅れました。私こう言う者です」
そうやって名刺を渡す。
「だからその名刺が本当か確かめる必要があるんだって。
それで疑いが晴れれば返すと言ってるんです」
「待ってください! 失態がばれたらクビになる。それだけは何としても避けたい」
「そう言われましても…… こちらとしてはどうすることも出来ません」
非情な同僚。ここまで追い詰める必要はない。
「お願いだ! 助けてくれよ! 」
泣きつかれてしまった。
「分かりました。では別件でお呼びしてはいかがですか? 」
さすがにかわいそうになったので割り込み提案する。
「別件? 」
「失踪事件で協力をと言う形でお呼びいただければよろしいかと」
「はあ…… 何とかしてみます」
納得してくれたようだ。
「アトリ計画だけでも教えてくれませんかね? 興味があるんですよ」
同僚の追及はまだ終わらない。
資料によく出てくる単語。どうしても我々は知っておく必要がある。
「ああそれでしたら新商品のことで今年中には発表できるはず。
画期的な商品らしくて実は俺も社内モニターに選ばれたんです。
だからこれだけの極秘資料を手元に…… 」
隠す素振りも見せずに受け答えしている。これはやはりただの内部資料。
同僚が危惧していた怪しい団体による終末作戦ではなさそうだ。
「分かりました。今日のところはお引き取り下さい。
明日にでも会社の方と証言の裏が取れ次第お返ししますので」
「ありがとうございます! 」
男は感謝の言葉を述べ行ってしまった。
職務上知り得たことをベラベラ話すことはない。
それは警察官として当然のことだがついうっかり漏れることだってある。
今回のように一見危なそうな落としものは酒のつまみになりやすい。
もちろん私は酔うこともないし誰にも話す気はない。
同僚はどうかと言うと面白がって飲み屋で言い触らしそう。
それが回り回って男の知ることになれば言い訳も出来ない。
だから同僚にはきつく言い触らさないように念を押すがこればっかりはどうにも。
「ははは…… そんなことするものか」
「でも前科があるでしょう? 」
「旦那が浮気した件だろ? あれは俺が言い触らさなくても皆知ってたよ。
だから少し場を盛り上げるために分からないように脚色してだな…… 」
そう彼も理性がある。だから知り得たことをそのまま言い触らすことはない。
今回だって怪しげな会社の間抜けな社員の落としものとでも言うのだろう。
そうやって関心を得ようとするに違いない。まったく困った人だ。
「それでどうします? 」
「個人的には興味はある。協力してやれよ」
「いい加減ですね。ただの失踪事件ですよ」
まだ今のところ見つかってない。
彼が言うように隣人が監禁してるとしたら一刻も早く助け出さなければならない。
「どうかな? 大事件に発展するかもよ」
笑ってからかってる同僚。
確かにここは都会ではないから大きな事件はない。
今日だって落としものや道案内ぐらいで平和だもんな。
たまには刺激が欲しくなることもある。
どこかで大事件でも発生してくれないかなと思ったこともある。
でもやはり平和が一番。
警察官たる者いたずらに刺激を求めてはいけない。
それくらい分かってるのだが悲しいかこれも人間の性。
続く
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