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完璧な計画?

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最後は山田さん。
二号室に移る。山田さんの部屋でじっくり話を聞くことに。

「山田さん。あなたは犯人ですか? 」
最初にずばり問う。おかしな反応があればそれで彼を追い詰めることが出来る。
「はい? もう一度お願いします」
やけに冷静な山田さん。聞き返すなんて反則では?
「山田さん! あなたが今回の連続殺人事件の犯人ではないのですか? 」
「どうでしょう。私には分かりません」
あれ…… 変な答え方したな。

「待ってください。なぜ自分のことが分からないのでしょう?
犯人なら犯人と。違うなら違うと言えるはずです」
まさか図星? 山田さんが真犯人なのか?
「もちろん自信はあります。ただ夜寝てる間の記憶がありません」
「はあ確かに。それは私もそうですが…… 」
「ですから百パーセントそうだと断定できない」
すべての事件は夜から朝にかけて発生している。
それこそジキルとハイドみたいなことが起きても不思議ではない。
誰も真犯人でないなら無意識のうちに起こしてるとも考えられる。
彼の主張なら私だって犯人になり得る。
要するに決定的証拠がなければ逃げ切られてしまうのだ。

「ねえ山田さん。真犯人はどうしてこんな完璧な計画を立てたのでしょう? 」
「さあそれを私に聞かれましても…… 」
山田さんは動揺を見せない。ただ困った顔をするのみ。
「ああ…… でもこれって本当に完璧でしょうか? 」
山田さんは私とは真逆な考え方のようだ。
詳しく話を聞く。
「もし警察が現場を調べればすぐに真犯人は捕まる気がします。
指紋もそうですし持ち物を調べればすぐにでも」
「完璧ではないと? 」
「はい少なくても未解決事件になるようなことはないかと。
現場の様子も荒いですからね」
果たして彼に現場の様子が分かるのか些か疑問だがそこは流すとしよう。

「それではあなたはどうお考えで? 」
山田さんの見解を聞く。かなりユニークな発想をお持ちのようだ。
「まだ事件は終わってないのでは? 意外な人が真犯人かもしれません。
例えばあなたの相棒。またはバスの運転手だってあり得る。いやガイドさんかな。
もしかしたら死体が生き返って…… 実際はドスグロ山の雷人が一番怪しいですが」
山田さんは無理矢理真犯人像を作り上げ混乱させているかのよう。
これはかなり怪しいぞ。

「それでは手を見せてください」
確認をする。
「これはまさか…… 」
「ああ、これですか? 素振りして手の皮が剥けてしまいまして。まだ痛むんです」
「素振りとはゴルフ? 」
「いやいやまさか。野球ですよ。来月大会があるんです。
つい調子に乗ってしまいこの通り。お恥ずかしい。
そうだ探偵さん。私たちはいつ帰れるんですかね? 練習の時間取れないよ」
呑気な山田さん。そんなこと探偵が知る訳ない。警察にでも聞いてくれ。
「その願いはあなたが真犯人なら一生無理かと」
「ははは! 面白いこと言いますね」

二号室は一度封印された。
確か第二の事件の後。あの時彼は閉じ込められて身動きが取れなかった。
だからアリバイがあるように見える。
ただそれも何らかのトリックを使えば抜け出すのも不可能ではない。

「余裕ですね。ちなみにどこのファンですか? 」
「ああどこだったかなあ…… 」
「出がらしオーンズ? 」
「はい。テレビでよく見てます」
「ちなみにお住まいは? 」
「はああ…… ここから二時間のところに」
「ありがとうございます。ちなみに私もオーンズの大ファンでよく相棒と球場に」
「ああ探偵さんも。どちらに? 」
「それはお答えできませんが首都圏とだけ」
「そうですか。ではそろそろ…… 」
山田さんは話を打ち切ろうとするのでしつこく続ける。

「怪我されたのはいつ頃ですか? 」
「そうですね。先週だったかと」
山田さんも手を痛めていた。
いつの間に?
基本的には手を見る習慣がない。
気が付かないと言うことは元々なかったとも言える。
それは彼だけでなく他の者にも言えること。
これでは決め手に欠ける。

「ちなみに真犯人は誰だと思いますか? 」
「たぶんドスグロ山の雷人だと」
「山田さん! 」
つい声を荒げてしまう。
まったく何を考えてるんだろうこの人。
「何か気になったことはありますか? 」
「いつになったら帰れるのでしょう? 」
それが分かれば苦労しない。
これ以上は無駄。尋問を終える。


                続く
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