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招かざる者
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食事を終え皆が自室に戻ろうとした時フロア中に異音が響き渡る。
その正体は?
「ガイドさんこれは? 」
こちら側の演出ではない。
どうやらこの異音の正体は誰かがベルを鳴らしたことによるもの。
招かざる客の登場。
こんな夜遅くに誰が?
時計を見る。八時を過ぎたところ。
念のため一人一人確認する。
食事の間。または前後で抜け出した者がいるかもしれない。
いたずら好きな人だっていたっておかしくない。
だがもちろん揃っている。ちゃんと十人いる。
残るは今、顔を見せてない彼女だけだがそれも探せばほらいた。
ドアを激しく叩く音がする。
「ガイドさん。誰か呼んでますよ」
そう言って損な役割を押し付ける男。
これも私の仕事なの?
いえもちろん心得ています。ですがこれはどう見ても危険。
「早く見てきてくれんか」
確か美術商の男。
自慢気に蘊蓄を語っていたのを覚えている。
「はい。皆さん少々お待ちください」
仕方なく確認に向かう。
こういう時一番あり得るのは風の音。または木か何かが倒れ、そう聞こえるだけ。
こんな夜にこんなホテルを訪れる者などいない。
ここはその辺のホテルとは違う。
山の頂上に建てたホテル。
即ち今日バスで来た者以外がやってくる可能性は極めて低い。
会社にも人数は確認してる。
後から合流するお客様は居なかった。
ドンドンと叩き続ける。
これはやはり誰かいる?
嫌だな…… なぜこんな役目を引き受けることに?
危険な仕事は無いって言ってたのに。
恐る恐るドアを開ける。
ドアは開けるを拒むように重い。
「はいどちら様でしょうか? 」
うん? 反応が無い。
「もしもし? もしもし? 」
呼びかけるも無言を貫く。
これはまずい。私が第一の犠牲者。
「ああ、済みません」
ようやく声が聞こえた。どうやら人間ではあるようだ。
鬼や悪魔等を連想したが人間であり一安心。
男二人組。招かざる者。
「ここに用事があって来たんです」
「そうですか。お食事はまだでしょう? いかがです? 」
何で私、得体の知れない者たちを招き入れただけでなくお食事にまで招待する訳?
つい勧めた手前もう断れない。どうしよう?
命が助かっただけでもラッキーだと思うしかない。
「ちょっと野暮用がありまして。他の方はもうおやすみに? 」
「はい。もう寝ておりますので出来ればお静かにお願いします」
やり取りをしてる間に皆部屋へ。
受付で名前を伺おうとしたが明日教えますの一点張り。
埒が明かないのでとりあえずお食事へ。余りものですけど。
余りと言っても先に取り分けていたもので特に問題ない。
従業員用の食事も合わせ四人で分ける。
男二人組。
お腹が空いていたのか物凄い速さで掻きこむ。
特にさっきから一言も発しない男は大飯ぐらいなのか目の前にあるものを平らげる。
私たち二人ではとても食べきれなかったのでちょうどいい。
ちょうどいいのはいいのですが……
やはり予備にと多めに作っていたのが幸いした。
食事を終えると問題の二人は遠慮がちにワインを開ける。
もう白は残ってないので冷蔵庫から赤を取り出す。
計三本ほど空けられてしまい酔いが回り眠りだしたので叩き起こす。
「もう早く寝てください! 」
迷惑な客に違いないが客は客。
皆無料で招待されている客。この二人にも文句はない。
ただ田中さんはイラついてる。
田中さんは私の二個先輩の女性で頼りになる存在。
「ねえお部屋はどうしましょう? 」
「ここでいいんじゃない。招待客でもあるまいし」
「それはまずいですよ。後で文句言われても困ります」
「言わないでしょう。この人たちただの部外者。しかも誰かさえ明かさないし」
話し合った結果、私が田中さんと。二人は私の部屋を使ってもらうことになった。
「起きてください。風邪を引きますよ。さあこれを」
「はーい」
もはや起きてるかさえあやふや。きちんと理解してるとは到底思えない。
先に失礼することに。
こうして招かざる客は招かれた。
続く
その正体は?
「ガイドさんこれは? 」
こちら側の演出ではない。
どうやらこの異音の正体は誰かがベルを鳴らしたことによるもの。
招かざる客の登場。
こんな夜遅くに誰が?
時計を見る。八時を過ぎたところ。
念のため一人一人確認する。
食事の間。または前後で抜け出した者がいるかもしれない。
いたずら好きな人だっていたっておかしくない。
だがもちろん揃っている。ちゃんと十人いる。
残るは今、顔を見せてない彼女だけだがそれも探せばほらいた。
ドアを激しく叩く音がする。
「ガイドさん。誰か呼んでますよ」
そう言って損な役割を押し付ける男。
これも私の仕事なの?
いえもちろん心得ています。ですがこれはどう見ても危険。
「早く見てきてくれんか」
確か美術商の男。
自慢気に蘊蓄を語っていたのを覚えている。
「はい。皆さん少々お待ちください」
仕方なく確認に向かう。
こういう時一番あり得るのは風の音。または木か何かが倒れ、そう聞こえるだけ。
こんな夜にこんなホテルを訪れる者などいない。
ここはその辺のホテルとは違う。
山の頂上に建てたホテル。
即ち今日バスで来た者以外がやってくる可能性は極めて低い。
会社にも人数は確認してる。
後から合流するお客様は居なかった。
ドンドンと叩き続ける。
これはやはり誰かいる?
嫌だな…… なぜこんな役目を引き受けることに?
危険な仕事は無いって言ってたのに。
恐る恐るドアを開ける。
ドアは開けるを拒むように重い。
「はいどちら様でしょうか? 」
うん? 反応が無い。
「もしもし? もしもし? 」
呼びかけるも無言を貫く。
これはまずい。私が第一の犠牲者。
「ああ、済みません」
ようやく声が聞こえた。どうやら人間ではあるようだ。
鬼や悪魔等を連想したが人間であり一安心。
男二人組。招かざる者。
「ここに用事があって来たんです」
「そうですか。お食事はまだでしょう? いかがです? 」
何で私、得体の知れない者たちを招き入れただけでなくお食事にまで招待する訳?
つい勧めた手前もう断れない。どうしよう?
命が助かっただけでもラッキーだと思うしかない。
「ちょっと野暮用がありまして。他の方はもうおやすみに? 」
「はい。もう寝ておりますので出来ればお静かにお願いします」
やり取りをしてる間に皆部屋へ。
受付で名前を伺おうとしたが明日教えますの一点張り。
埒が明かないのでとりあえずお食事へ。余りものですけど。
余りと言っても先に取り分けていたもので特に問題ない。
従業員用の食事も合わせ四人で分ける。
男二人組。
お腹が空いていたのか物凄い速さで掻きこむ。
特にさっきから一言も発しない男は大飯ぐらいなのか目の前にあるものを平らげる。
私たち二人ではとても食べきれなかったのでちょうどいい。
ちょうどいいのはいいのですが……
やはり予備にと多めに作っていたのが幸いした。
食事を終えると問題の二人は遠慮がちにワインを開ける。
もう白は残ってないので冷蔵庫から赤を取り出す。
計三本ほど空けられてしまい酔いが回り眠りだしたので叩き起こす。
「もう早く寝てください! 」
迷惑な客に違いないが客は客。
皆無料で招待されている客。この二人にも文句はない。
ただ田中さんはイラついてる。
田中さんは私の二個先輩の女性で頼りになる存在。
「ねえお部屋はどうしましょう? 」
「ここでいいんじゃない。招待客でもあるまいし」
「それはまずいですよ。後で文句言われても困ります」
「言わないでしょう。この人たちただの部外者。しかも誰かさえ明かさないし」
話し合った結果、私が田中さんと。二人は私の部屋を使ってもらうことになった。
「起きてください。風邪を引きますよ。さあこれを」
「はーい」
もはや起きてるかさえあやふや。きちんと理解してるとは到底思えない。
先に失礼することに。
こうして招かざる客は招かれた。
続く
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