上 下
104 / 125

ボノ追跡

しおりを挟む
セピユロスとの逃避行二日目。
朝早くに隠れ家を捨てペイジー駅へ。
エクスプレスでテキュサーに向かう一時間弱の旅。
そこからは馬車で目的地へ。
無事エクスプレスに。これで一安心。
これからのことを話し合う。

「ディーテ。どこへ向かうのでしょうか? 」
セピユロスは話を聞いてなかったのか覚えが悪いのか戯言を。
弱っていたとは言え私に頼り切り。逃亡者としての自覚を持ってもらわないと。

「セピユロス! 」
「ああごめん。念のための確認だよ。ははは…… 」
「もう! テキュサーでしょう。あそこにはボノのお兄様のボロが…… 」
「ええっ? 逃げるのでは? てっきり果てしない二人の逃避行の旅だとばかり」
やはりセピユロスは真面目に人の話を聞いてなかった。
私も最初はそんな風に悲観してた。
ボノ殺害疑いのセピユロスを連れ出し逃げたのですからその覚悟ぐらい。
でも逃げてばかりでは何の解決にもならない。だからボノを見つけ出す。

セピユロスはすべて私に任せっきり。これでは本当にこの先が思いやられる。
「逃避行はいつでもできます。今はボノを探す」
「ちょっと待って。ボノは確か殺されたのでは? 」
「ええあなたの手によってね。認めるのでしたらすぐにでも引き返しますが? 」
「冗談だろディーテ! そんなことするはずがない! 」
「どうかしら。つい衝動的に撃ちたくなることだってあるでしょう? 」
「いや違う…… 信じてくれディーテ! 」
ようやく真面目になった。自分のことですものねそれは真剣にもなる。
「そう違う。だからボノの手がかりを探してるんでしょう」
「まさかテキュサーにボノが? 」
「ボノが逃げてるならその辺りが一番手頃の逃走先」

ボノはセピユロスとハンティング中に失踪した。
自分の意志にせよ命令されたにせよ領内を抜け出す必要がある。
近いロックに抜ける方が簡単ですがそれでは人目につきます。
この計画を成功させるためには目撃されてはならない。
ロックでは気付かれる恐れが。
それに比べペイジーは交流も少なくお忍びには持って来い。
私たちも同様に逃れて来た訳ですから。
これはすべて推測に過ぎませんがほぼ間違いないでしょう。
だとすれば考えることはお知り合いの方に匿ってもらうこと。
できるなら手引きした者に着いて行く方が安全。
ただ関係が深ければそこから発覚する恐れも。

とにかく手引きしたにしろ一人で逃げたにしろ行くところは限られます。
ここからエクスプレスで一時間弱なら絶好の場所。
この考えに至ったのは私たちがペイジーに逃れたからであって偶然でしかない。
ボノも私たちの現状を知り得ないはず。
だからまさか追いかけてくるとは夢にも思ってないでしょう。
ボノは銃殺されたことになってるんですから。

ボノはどうしてしまったのでしょう?
いくら大金に目がくらんだとしてもこんな大それたことが出来るとは思えない。
まさか…… 私の考えが正しいならもっと恐ろしいことが起きていることになる。
どうであれボノを探し出さなくてはいけません。
ボノは敵の切り札であり私たちの切り札でもある。
すべてボノに直接聞きだせばいい。
仮に私の前にのこのこ現れたのならまだボノは人間の心を失ってないことになる。
ご主人様としてボノを探しだす。
それがお屋敷を守ることにもメイドたちが路頭に迷わないことにもなる。
近くで匿ってくれる者はボロしかいない。

「いなかったら? 」
「別のところを当たります」
「手掛かりはあるの? 」
「ボロが何か知ってるかもしれません」
「それだけ? 」
「お静かに! これ以上はここでは」
「大丈夫だって。逃走先は知られてない」
楽観視するが果たしてそんなに悠長にしてていいのでしょうか?
追手がこのエクスプレスに乗ってない保証もない。
何となく嫌な予感がする。
視線を感じる。つけられてる?
まずはテキュサーに到着してから。それからは出たとこ勝負。
これではご主人様も形無し。

ああヴィーナ。後を継いでくれるといいのですが。
一気に三人も失ってしまった。
もう隠しようがない。すべてを知ることになる。
はっきり言ってもう立ち直れないでしょうね。
ヴィーナを考えるあまり涙が溢れそうになる。
「大丈夫さ。何とかなるよ。そうだろディーテ? 」
ようやく本来のセピユロスに戻った。
「そうだ。ここは狭いから移動しようか」
セピユロスの後について行く。
うん頼りになる。

               続く
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もう彼女でいいじゃないですか

キムラましゅろう
恋愛
ある日わたしは婚約者に婚約解消を申し出た。 常にわたし以外の女を腕に絡ませている事に耐えられなくなったからだ。 幼い頃からわたしを溺愛する婚約者は婚約解消を絶対に認めないが、わたしの心は限界だった。 だからわたしは行動する。 わたしから婚約者を自由にするために。 わたしが自由を手にするために。 残酷な表現はありませんが、 性的なワードが幾つが出てきます。 苦手な方は回れ右をお願いします。 小説家になろうさんの方では ifストーリーを投稿しております。

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

帰らなければ良かった

jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。 傷付いたシシリーと傷付けたブライアン… 何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。 *性被害、レイプなどの言葉が出てきます。 気になる方はお避け下さい。 ・8/1 長編に変更しました。 ・8/16 本編完結しました。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

もう終わってますわ

こもろう
恋愛
聖女ローラとばかり親しく付き合うの婚約者メルヴィン王子。 爪弾きにされた令嬢エメラインは覚悟を決めて立ち上がる。

【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!

ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、 1年以内に妊娠そして出産。 跡継ぎを産んで女主人以上の 役割を果たしていたし、 円満だと思っていた。 夫の本音を聞くまでは。 そして息子が他人に思えた。 いてもいなくてもいい存在?萎んだ花? 分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。 * 作り話です * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~

柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。 その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!  この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!? ※シリアス展開もわりとあります。

処理中です...