上 下
101 / 125

ロマンチックな夜に

しおりを挟む
セピユロス奪還。
囚われのセピユロスを警戒しメイド館には見張りが。目を光らせている。
てっきり国王様の警備にかかりきりで手薄だと踏んだのに逆に厳戒体制とは想定外。
その見張りもチャウチャウの陽動作戦で追い払えたかと思ったがすぐに戻ってくる。
セピユロスの説得に時間を要しなければ脱出できたかもしれない。
後悔しても遅い。ここは見張りの者を黙らせるしかない。
ただ少々不安な部分もあります。
ご主人様の威厳がどこまで通用するでしょうか?

「お願い! 」
「分かりました。お通り下さい」
以外にもあっさり。やはりご主人様には逆らえない?
上手く行ったことでつい気が緩んでしまった。
「ありがとう。あなたの仕事ぶりには大変感謝しています」
「ご主人様。もったいないお言葉で」

通り抜けようとしたその時セピユロスが叫ぶ。
「何をする。無礼者! 」
「うるさい大人しくしろ! 」
抵抗虚しく腕を取られるセピユロス。
「ちょっと何をするんです…… 」
「ふふふ…… 顔を見せやがれこの大悪党め! 」
ライトに照らされた姿は可愛らしいエイドリアスの青年。
「やはりお前はセピユロスだな。ご主人様は我々を裏切ったんですね」
「違うの。それは何かの勘違い。ボノだってきっとどこかで元気に…… 」
最悪の展開。なぜこうなってしまった? 
これなら大人しく行方を見守っていればよかった。
「見苦しいですよ! 」
見張りが私を睨む。
もうご主人様と認めてはくれないようだ。

「セピユロス逃亡! 応援! 応援! 」
大声で仲間を呼ぶ。
さすがに私について明言を避けた。
まだ騙されてるとも脅かされてるとも取れる状態。
慎重にならざるを得ないよう。だったらまだ言い逃れようがある。
ここは判断が迫られる展開。

「もう離しなさい! 離しなさいって! 」
セピユロスの腕に絡めた手を無理やり剥がそうとするがちっとも手応えがない。
手応えどころか逆に手に痛みが。
「ご主人様。これ以上はお止めください。皆が悲しみます」
説得される。まさか私に意見を言うつもり? 冗談でしょう?
このままでは駆けつけた者たちに捕えられてしまう。
「止めて! 助けてあげて! 」
懇願するが聞く耳を持たない。
「いやあああ! 」
絶望する。

その時だった。影が近づき見張りに襲い掛かる。
「何をしやがる! 」
見張りは防戦一方。
「いい加減にしろこの野郎! 」
執拗な攻撃に怯んだ見張りはセピユロスを離してしまう。
どうやら凶器は杖のよう。
杖を使って執拗に攻撃を与える。
容赦のない攻撃。これでは屈強な男も耐えるしかない。

「ほら二人とも行け! ご主人様どうか早く! 」
「あなたは…… 」
「早く行くんだ! 」
「ありがとう。心配性のおじさん」
「それはないですよ。せっかく助けてあげたのに。もう早く! 」
男は新人メイドを心配してやって来た不審者。
娘を心配するあまり家を失った哀れな男。特徴的な帽子が目印。
「ありがとう。この御恩は一生忘れません」
感謝の言葉を述べセピユロスを引き取る。
セピユロスの手を掴み夜の闇と喧騒に乗じて脱出。

こうして夜のうちにどうにか領地を抜け出した。
セピユロスとの夢の逃避行。
ロマンチックなんて言ってられない。
やれることはやって。早くしなければ捕まってしまう。
追手の態勢が整う前に安全なところへ。
馬車の手配。
もちろん誰かに頼んでは跡が残る。
出来るだけ自分たちの力で見つける必要がある。

領内を抜け朝方には隣の村のベイジーへ。
歩き続けた結果どうにかベイジーまで。問題はここから。
もうここからは逃げ隠れせずともいい。
ベイジーの南端には港がありそこから一気に逃げ出すことも可能。
ただ私はご主人様。そんなつまらない考えに染まらない。
もっと私に相応しいことをするつもり。
セピユロスを陥れた者を捕まえ潔白を訴える。
そうすればお屋敷に戻り元の生活を取り戻せるはず。
計画が失敗したら港でどこか遠いところへ。

「ディーテどうするの? 」
すっかり自信をなくし震えているセピユロス。
このままでは彼はダメになってしまう。
さあ急ぎましょうか。
まずはボノ探しから。

               続く
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

えっと、幼馴染が私の婚約者と朝チュンしました。ドン引きなんですけど……

百谷シカ
恋愛
カメロン侯爵家で開かれた舞踏会。 楽しい夜が明けて、うららかな朝、幼馴染モイラの部屋を訪ねたら…… 「えっ!?」 「え?」 「あ」 モイラのベッドに、私の婚約者レニー・ストックウィンが寝ていた。 ふたりとも裸で、衣服が散乱している酷い状態。 「どういう事なの!?」 楽しかった舞踏会も台無し。 しかも、モイラの部屋で泣き喚く私を、モイラとレニーが宥める始末。 「触らないで! 気持ち悪い!!」 その瞬間、私は幼馴染と婚約者を失ったのだと気づいた。 愛していたはずのふたりは、裏切り者だ。 私は部屋を飛び出した。 そして、少し頭を冷やそうと散歩に出て、美しい橋でたそがれていた時。 「待て待て待てぇッ!!」 人生を悲観し絶望のあまり人生の幕を引こうとしている……と勘違いされたらしい。 髪を振り乱し突進してくるのは、恋多き貴公子と噂の麗しいアスター伯爵だった。 「早まるな! オリヴィア・レンフィールド!!」 「!?」 私は、とりあえず猛ダッシュで逃げた。 だって、失恋したばかりの私には、刺激が強すぎる人だったから…… ♡内気な傷心令嬢とフェロモン伯爵の優しいラブストーリー♡

私の好きなお兄様

山葵
恋愛
私の好きな人は3歳上のお兄様。 兄妹なのに、この恋心は止められない。 告白する事も出来ない…。 いつか お兄様に婚約者が出来たら私は、どうなってしまうのだろう…。 *** 1話1話が短めです。

愛情のない夫婦生活でしたので離婚も仕方ない。

ララ
恋愛
愛情のない夫婦生活でした。 お互いの感情を偽り、抱き合う日々。 しかし、ある日夫は突然に消えて……

ずっと好きだった獣人のあなたに別れを告げて

木佐木りの
恋愛
女性騎士イヴリンは、騎士団団長で黒豹の獣人アーサーに密かに想いを寄せてきた。しかし獣人には番という運命の相手がいることを知る彼女は想いを伝えることなく、自身の除隊と実家から届いた縁談の話をきっかけに、アーサーとの別れを決意する。 前半は回想多めです。恋愛っぽい話が出てくるのは後半の方です。よくある話&書きたいことだけ詰まっているので設定も話もゆるゆるです(-人-)

気がついたら無理!絶対にいや!

朝山みどり
恋愛
アリスは子供の頃からしっかりしていた。そのせいか、なぜか利用され、便利に使われてしまう。 そして嵐のとき置き去りにされてしまった。助けてくれた彼に大切にされたアリスは甘えることを知った。そして甘えられることも・・・

妹が私の婚約者を奪うのはこれで九度目のことですが、父も私も特に気にしていません。なぜならば……

オコムラナオ
恋愛
「お前なんてもういらないから。別れてくれ。 代わりに俺は、レピアさんと婚約する」 妹のレピアに婚約者を奪われたレフィー侯爵令嬢は、「ああ、またか」と思った。 これまでにも、何度も妹に婚約者を奪われてきた。 しかしレフィー侯爵令嬢が、そのことを深く思い悩む様子はない。 彼女は胸のうちに、ある秘密を抱えていた。

イケメンエリート軍団の籠の中

便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC” 謎多き噂の飛び交う外資系一流企業 日本内外のイケメンエリートが 集まる男のみの会社 唯一の女子、受付兼秘書係が定年退職となり 女子社員募集要項がネットを賑わした 1名の採用に300人以上が殺到する 松村舞衣(24歳) 友達につき合って応募しただけなのに 何故かその超難関を突破する 凪さん、映司さん、謙人さん、 トオルさん、ジャスティン イケメンでエリートで華麗なる超一流の人々 でも、なんか、なんだか、息苦しい~~ イケメンエリート軍団の鳥かごの中に 私、飼われてしまったみたい… 「俺がお前に極上の恋愛を教えてやる 他の奴とか? そんなの無視すればいいんだよ」

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

処理中です...