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ロマンチックな夜に
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セピユロス奪還。
囚われのセピユロスを警戒しメイド館には見張りが。目を光らせている。
てっきり国王様の警備にかかりきりで手薄だと踏んだのに逆に厳戒体制とは想定外。
その見張りもチャウチャウの陽動作戦で追い払えたかと思ったがすぐに戻ってくる。
セピユロスの説得に時間を要しなければ脱出できたかもしれない。
後悔しても遅い。ここは見張りの者を黙らせるしかない。
ただ少々不安な部分もあります。
ご主人様の威厳がどこまで通用するでしょうか?
「お願い! 」
「分かりました。お通り下さい」
以外にもあっさり。やはりご主人様には逆らえない?
上手く行ったことでつい気が緩んでしまった。
「ありがとう。あなたの仕事ぶりには大変感謝しています」
「ご主人様。もったいないお言葉で」
通り抜けようとしたその時セピユロスが叫ぶ。
「何をする。無礼者! 」
「うるさい大人しくしろ! 」
抵抗虚しく腕を取られるセピユロス。
「ちょっと何をするんです…… 」
「ふふふ…… 顔を見せやがれこの大悪党め! 」
ライトに照らされた姿は可愛らしいエイドリアスの青年。
「やはりお前はセピユロスだな。ご主人様は我々を裏切ったんですね」
「違うの。それは何かの勘違い。ボノだってきっとどこかで元気に…… 」
最悪の展開。なぜこうなってしまった?
これなら大人しく行方を見守っていればよかった。
「見苦しいですよ! 」
見張りが私を睨む。
もうご主人様と認めてはくれないようだ。
「セピユロス逃亡! 応援! 応援! 」
大声で仲間を呼ぶ。
さすがに私について明言を避けた。
まだ騙されてるとも脅かされてるとも取れる状態。
慎重にならざるを得ないよう。だったらまだ言い逃れようがある。
ここは判断が迫られる展開。
「もう離しなさい! 離しなさいって! 」
セピユロスの腕に絡めた手を無理やり剥がそうとするがちっとも手応えがない。
手応えどころか逆に手に痛みが。
「ご主人様。これ以上はお止めください。皆が悲しみます」
説得される。まさか私に意見を言うつもり? 冗談でしょう?
このままでは駆けつけた者たちに捕えられてしまう。
「止めて! 助けてあげて! 」
懇願するが聞く耳を持たない。
「いやあああ! 」
絶望する。
その時だった。影が近づき見張りに襲い掛かる。
「何をしやがる! 」
見張りは防戦一方。
「いい加減にしろこの野郎! 」
執拗な攻撃に怯んだ見張りはセピユロスを離してしまう。
どうやら凶器は杖のよう。
杖を使って執拗に攻撃を与える。
容赦のない攻撃。これでは屈強な男も耐えるしかない。
「ほら二人とも行け! ご主人様どうか早く! 」
「あなたは…… 」
「早く行くんだ! 」
「ありがとう。心配性のおじさん」
「それはないですよ。せっかく助けてあげたのに。もう早く! 」
男は新人メイドを心配してやって来た不審者。
娘を心配するあまり家を失った哀れな男。特徴的な帽子が目印。
「ありがとう。この御恩は一生忘れません」
感謝の言葉を述べセピユロスを引き取る。
セピユロスの手を掴み夜の闇と喧騒に乗じて脱出。
こうして夜のうちにどうにか領地を抜け出した。
セピユロスとの夢の逃避行。
ロマンチックなんて言ってられない。
やれることはやって。早くしなければ捕まってしまう。
追手の態勢が整う前に安全なところへ。
馬車の手配。
もちろん誰かに頼んでは跡が残る。
出来るだけ自分たちの力で見つける必要がある。
領内を抜け朝方には隣の村のベイジーへ。
歩き続けた結果どうにかベイジーまで。問題はここから。
もうここからは逃げ隠れせずともいい。
ベイジーの南端には港がありそこから一気に逃げ出すことも可能。
ただ私はご主人様。そんなつまらない考えに染まらない。
もっと私に相応しいことをするつもり。
セピユロスを陥れた者を捕まえ潔白を訴える。
そうすればお屋敷に戻り元の生活を取り戻せるはず。
計画が失敗したら港でどこか遠いところへ。
「ディーテどうするの? 」
すっかり自信をなくし震えているセピユロス。
このままでは彼はダメになってしまう。
さあ急ぎましょうか。
まずはボノ探しから。
続く
囚われのセピユロスを警戒しメイド館には見張りが。目を光らせている。
てっきり国王様の警備にかかりきりで手薄だと踏んだのに逆に厳戒体制とは想定外。
その見張りもチャウチャウの陽動作戦で追い払えたかと思ったがすぐに戻ってくる。
セピユロスの説得に時間を要しなければ脱出できたかもしれない。
後悔しても遅い。ここは見張りの者を黙らせるしかない。
ただ少々不安な部分もあります。
ご主人様の威厳がどこまで通用するでしょうか?
「お願い! 」
「分かりました。お通り下さい」
以外にもあっさり。やはりご主人様には逆らえない?
上手く行ったことでつい気が緩んでしまった。
「ありがとう。あなたの仕事ぶりには大変感謝しています」
「ご主人様。もったいないお言葉で」
通り抜けようとしたその時セピユロスが叫ぶ。
「何をする。無礼者! 」
「うるさい大人しくしろ! 」
抵抗虚しく腕を取られるセピユロス。
「ちょっと何をするんです…… 」
「ふふふ…… 顔を見せやがれこの大悪党め! 」
ライトに照らされた姿は可愛らしいエイドリアスの青年。
「やはりお前はセピユロスだな。ご主人様は我々を裏切ったんですね」
「違うの。それは何かの勘違い。ボノだってきっとどこかで元気に…… 」
最悪の展開。なぜこうなってしまった?
これなら大人しく行方を見守っていればよかった。
「見苦しいですよ! 」
見張りが私を睨む。
もうご主人様と認めてはくれないようだ。
「セピユロス逃亡! 応援! 応援! 」
大声で仲間を呼ぶ。
さすがに私について明言を避けた。
まだ騙されてるとも脅かされてるとも取れる状態。
慎重にならざるを得ないよう。だったらまだ言い逃れようがある。
ここは判断が迫られる展開。
「もう離しなさい! 離しなさいって! 」
セピユロスの腕に絡めた手を無理やり剥がそうとするがちっとも手応えがない。
手応えどころか逆に手に痛みが。
「ご主人様。これ以上はお止めください。皆が悲しみます」
説得される。まさか私に意見を言うつもり? 冗談でしょう?
このままでは駆けつけた者たちに捕えられてしまう。
「止めて! 助けてあげて! 」
懇願するが聞く耳を持たない。
「いやあああ! 」
絶望する。
その時だった。影が近づき見張りに襲い掛かる。
「何をしやがる! 」
見張りは防戦一方。
「いい加減にしろこの野郎! 」
執拗な攻撃に怯んだ見張りはセピユロスを離してしまう。
どうやら凶器は杖のよう。
杖を使って執拗に攻撃を与える。
容赦のない攻撃。これでは屈強な男も耐えるしかない。
「ほら二人とも行け! ご主人様どうか早く! 」
「あなたは…… 」
「早く行くんだ! 」
「ありがとう。心配性のおじさん」
「それはないですよ。せっかく助けてあげたのに。もう早く! 」
男は新人メイドを心配してやって来た不審者。
娘を心配するあまり家を失った哀れな男。特徴的な帽子が目印。
「ありがとう。この御恩は一生忘れません」
感謝の言葉を述べセピユロスを引き取る。
セピユロスの手を掴み夜の闇と喧騒に乗じて脱出。
こうして夜のうちにどうにか領地を抜け出した。
セピユロスとの夢の逃避行。
ロマンチックなんて言ってられない。
やれることはやって。早くしなければ捕まってしまう。
追手の態勢が整う前に安全なところへ。
馬車の手配。
もちろん誰かに頼んでは跡が残る。
出来るだけ自分たちの力で見つける必要がある。
領内を抜け朝方には隣の村のベイジーへ。
歩き続けた結果どうにかベイジーまで。問題はここから。
もうここからは逃げ隠れせずともいい。
ベイジーの南端には港がありそこから一気に逃げ出すことも可能。
ただ私はご主人様。そんなつまらない考えに染まらない。
もっと私に相応しいことをするつもり。
セピユロスを陥れた者を捕まえ潔白を訴える。
そうすればお屋敷に戻り元の生活を取り戻せるはず。
計画が失敗したら港でどこか遠いところへ。
「ディーテどうするの? 」
すっかり自信をなくし震えているセピユロス。
このままでは彼はダメになってしまう。
さあ急ぎましょうか。
まずはボノ探しから。
続く
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