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囚われのセピユロス

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「旦那様! 」
執事はボノを慕っている。
確かに私も結婚当時は彼の優しさに救われた気がする。
今はその役割はセピユロスに移ったとは言えまだまだ健在。
夫ですから悪くは言いたくありませんがあそこまでの女好きはもはや病気。
男の方は多少そのような傾向にあると聞きます。でもそれだって隠し通すもの。
でもボノは違う。私の目がありながらメイドに。若い女に見境なく手を出す。
どれだけ止めるように言っても聞き入れてもらえない。
そんなボノに忠義を尽くそうなど滑稽なこと。
でも執事は彼について行くしかないでしょうね。
私との相性もあまりよくないし息子の件があるから大きくは出れない。
それならとボノにつくのは自然な流れ。私は別に執事のことはどうとも。
その息子と恋人にもさほど興味がない。ただよくやってると関心はしている。
叱りつけるのではなく見守ってるつもり。でも執事はそうは思わないでしょうね。
これも仕方ないこと。

「旦那様。どこにいるのですか? 」 
「おーい。おーい! 」
遺体が発見された付近を探すが手掛かり一つ見つからない。
午前は捜索だけで時間が過ぎて行った。
ただこれ以上は無理。国王様がお越しになる。
いつ到着されるか分からない。さすがに国王様を迎えるのに人が少なくては問題。
捜索を一時中断して下山することに。

「ほら早く来ぬか! 」
セピユロスは引っ立てられていく。
動きを封じられ逃げ出すことはおろか息さえままならない。苦しそうだ。
「セピユロスさん」
「ご主人様。罪人に声を掛けてはいけません」
随行メイドにまで注意を受ける。
まだ罪人と決まってもないのになぜか禁じられてしまう。
屋敷に戻るとセピユロスと無理矢理引き離され一気に不安が押し寄せる。

「お急ぎください。間もなく国王様が到着されます」
国王様の馬車が姿を見せた。
急いで服を着替え髪を整える。
「失礼します」
時間がないからと特別な化粧を施される。
「うわちょっと…… 」
咳き込んでもお構いなし。
急いで仕上げていく。
はあはあ
はあはあ
息が苦しい。まったくもう少し落ち着きなさいよもう。
化粧を済ませ匂いを纏ったら最終チェックを行う。

「よろしいかとご主人様」
ヴィントンのお墨付きを得る。
彼女はメイド歴五十年の大ベテラン。
お婆様の時から仕えてる最年長のメイド。
お母様も頭が上がらないとの噂。
私の教育係を二年務めたことがある。今ではその頃の記憶が懐かしいが嫌な思い出。
出来るなら彼女に相談したい。だが彼女ももう年で体を崩してる。
今が精一杯。無理はさせられない。

「国王様はどちらへ? 」
「それがまだ馬車から降りたところでございます」
お年でもありブクブクに太った体を動かすのは大変。
体もあまり動かしてない様子。
家来の力を借りてゆっくり降りてくる。
鈍い国王様のおかげでどうにかこうにか間に合った。
これで歓迎の形だけは整った。
後は失礼のないように出迎えるだけだ。
急ぎ足で駆けつける。

「よくぞいらっしゃいました国王様。お疲れでしょう」
「ははは…… 儂ももう年かのう。降りるのも一苦労。
このままではどうなってしまうやら。ははは…… 」
随分弱気の国王様。これは元気づけてあげなくてはいけません。
「何をおっしゃいます国王様。まだまだお若い。お年などと言わずに。
ただお太りになっているだけですよ。
運動をし食事を制限すれば元の影の薄い国王様にお戻りになられるかと思います」
励ますつもりだったがいつの間にか悪口に。止まりそうにない。
「ははは…… 正直でよい。うむ気に入ったぞ。
どいつもこいつも適当な言葉ばかり言って信用ならんがお主は違う。
儂が王とは言えしっかり意見を言う」
国王は笑っているが手下の視線が痛い。
これはまずいことをしたかしら。
つい口から余計なことばかり。

「申し訳ありませんが国王様はお疲れになっております」
ここで立ち話など失礼にもほどがる。
「これは失礼しました。どうぞこちらに」
急いで謁見の間に通す。
いつもはメイドを呼びつける場であったが今回は正真正銘の国王様。
お話を伺うことに。

                 続く
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