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疑いの目
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ボノが行方不明。疑いの目がセピユロス向けられるのは明白。
だが本人にはその自覚なし。
「落ち着いてください。私がボノをどうにかする訳ないでしょう? 」
セピユロスが見つめる。
その目は真実を語る目。信用していい。
「本当ですね。信じますよ? 」
念を押す。信じたいがどうしても疑いが晴れない。
このまま受け入れていいものか?
「もちろん嘘など…… それにボノにはお付の者が一名。
きっと二人は行動を共にしてます。心配無用ですディーテ。
何らかのアクシデントがあったにせよ問題ありません」
セピユロスは随分と楽観的。まるでふざけてるように見えるから判断がつかない。
「分かりました。今はそう言うことにしましょう」
無駄に騒ぎ立てても意味がない。ここは大人の対応が求められる。
「大丈夫ですかディーテ? 」
優しく抱きしめてくれる。でも耐えられない。
「止めて! 今はそんな気分じゃない! 」
腕を振りほどき睨みつける。
ああつい感情的になってしまった。ここまでするつもりはなかったのに。
「怒ってるんですねディーテ? 」
「違うの。そうじゃない。ただ気分が優れないだけ」
言い訳にもならない言い訳を並べ立て彼を困らせる。
ああ失望してしまったかしら。それはそれで仕方ないこと。
今回のセピユロスには大胆さがある。ただもう少し慎重であって欲しい。
状況判断できるお方だと思ったが違ったらしい。
「心配性ですねディーテも。大丈夫。朝早くから捜索を手伝いますから。
任せてください。きっとこの手でボノを連れ戻して見せます」
胸を張るがどうも当てにならない。
彼は何をそんなに楽観視しているのだろう?
足を怪我し動けないとしてもお付の者が報せに来るはず。
それさえないのだからこれは一大事に違いない。
ただ怒りに任せセピユロスを叱り飛ばすのも違う。
「私には分からない…… 」
「何が分からないと言うのです? 」
「本当にボノが戻って来て欲しいと思うの?
あなたとの関係を続けるにはボノは邪魔な存在。それでもいいと? 」
身勝手極まりないただの願望でしかなかったものが現実となり始める。
でもそれが私の考えるものよりも大きくなってしまった。
膨張した現実が予想をはるかに超えたものにならないか恐れている。
「構いません。ボノとは決闘を申し込めばいい。そう思っています」
若いセピユロス。若すぎる。彼のそう言う真っ直ぐなところが魅力的。
でもそこが弱点にもなり得る。決闘などしてくれるものですか。
ボノはどんな手を使ってもセピユロスを追い出すことでしょう。
これもすべてボノが無事に戻って来た仮定の話。虚しい限り。
詳細を知るであろうセピユロスはこれから降りかかる災難をどう振り払うつもり?
私はこの屋敷の主人として振舞う。セピユロスに肩入れは出来ない。
はっきり言ってセピユロスを切ることになるかもしれない。
私が望もうとそうでなかろうと関係ない。もうすぐにまで近づいている破滅。
ひしひしと感じ取れる破滅の足音。
「どうしましたディーテ。難しい顔して。心配してくれるのですか?
きっと明日にはすべて解決するでしょう」
「もういい。考え過ぎだと思う…… 」
ではそろそろ本題に入るとしましょうか。
「それからセピユロス。残念ですがあなた監視されてるわよ」
「ははは…… 冗談でしょう? 誰がそのようなことを言ったのです? 」
笑っているがその表情には余裕がない。内心かなり焦ってるのが感じ取れる。
「知りたいですか? 後悔することになりますよ」
脅しを掛ける。彼の興味が薄れるのを願って。
「ディーテ。我々の密会がばれたと? 」
激しく動揺する。顔がみるみる青くなっていく。
二人の秘密。二人だけの秘密。逢瀬。
「ええヴィーナが教えてくれました」
「ヴィーナが? だとすれば我々はもう? 」
「それは問題ありません。まだ噂レベルですしヴィーナも確証がないはず」
「ならば今夜も危険では? 」
「大丈夫。今夜は本当にボノの件を問い質しただけですから」
「では今夜はこれくらいで」
セピユロスはそう言うとお別れのキスをして出て行った。
さすがに密会の噂が立つことは無いだろう。
単純に話を聞きたかっただけなのにセピユロスが勘違いしてしまった。
これは大いに反省すべき点。
夜な夜な通うところを見られるのも失態。
やはりセピユロスには任せておけない。
続く
だが本人にはその自覚なし。
「落ち着いてください。私がボノをどうにかする訳ないでしょう? 」
セピユロスが見つめる。
その目は真実を語る目。信用していい。
「本当ですね。信じますよ? 」
念を押す。信じたいがどうしても疑いが晴れない。
このまま受け入れていいものか?
「もちろん嘘など…… それにボノにはお付の者が一名。
きっと二人は行動を共にしてます。心配無用ですディーテ。
何らかのアクシデントがあったにせよ問題ありません」
セピユロスは随分と楽観的。まるでふざけてるように見えるから判断がつかない。
「分かりました。今はそう言うことにしましょう」
無駄に騒ぎ立てても意味がない。ここは大人の対応が求められる。
「大丈夫ですかディーテ? 」
優しく抱きしめてくれる。でも耐えられない。
「止めて! 今はそんな気分じゃない! 」
腕を振りほどき睨みつける。
ああつい感情的になってしまった。ここまでするつもりはなかったのに。
「怒ってるんですねディーテ? 」
「違うの。そうじゃない。ただ気分が優れないだけ」
言い訳にもならない言い訳を並べ立て彼を困らせる。
ああ失望してしまったかしら。それはそれで仕方ないこと。
今回のセピユロスには大胆さがある。ただもう少し慎重であって欲しい。
状況判断できるお方だと思ったが違ったらしい。
「心配性ですねディーテも。大丈夫。朝早くから捜索を手伝いますから。
任せてください。きっとこの手でボノを連れ戻して見せます」
胸を張るがどうも当てにならない。
彼は何をそんなに楽観視しているのだろう?
足を怪我し動けないとしてもお付の者が報せに来るはず。
それさえないのだからこれは一大事に違いない。
ただ怒りに任せセピユロスを叱り飛ばすのも違う。
「私には分からない…… 」
「何が分からないと言うのです? 」
「本当にボノが戻って来て欲しいと思うの?
あなたとの関係を続けるにはボノは邪魔な存在。それでもいいと? 」
身勝手極まりないただの願望でしかなかったものが現実となり始める。
でもそれが私の考えるものよりも大きくなってしまった。
膨張した現実が予想をはるかに超えたものにならないか恐れている。
「構いません。ボノとは決闘を申し込めばいい。そう思っています」
若いセピユロス。若すぎる。彼のそう言う真っ直ぐなところが魅力的。
でもそこが弱点にもなり得る。決闘などしてくれるものですか。
ボノはどんな手を使ってもセピユロスを追い出すことでしょう。
これもすべてボノが無事に戻って来た仮定の話。虚しい限り。
詳細を知るであろうセピユロスはこれから降りかかる災難をどう振り払うつもり?
私はこの屋敷の主人として振舞う。セピユロスに肩入れは出来ない。
はっきり言ってセピユロスを切ることになるかもしれない。
私が望もうとそうでなかろうと関係ない。もうすぐにまで近づいている破滅。
ひしひしと感じ取れる破滅の足音。
「どうしましたディーテ。難しい顔して。心配してくれるのですか?
きっと明日にはすべて解決するでしょう」
「もういい。考え過ぎだと思う…… 」
ではそろそろ本題に入るとしましょうか。
「それからセピユロス。残念ですがあなた監視されてるわよ」
「ははは…… 冗談でしょう? 誰がそのようなことを言ったのです? 」
笑っているがその表情には余裕がない。内心かなり焦ってるのが感じ取れる。
「知りたいですか? 後悔することになりますよ」
脅しを掛ける。彼の興味が薄れるのを願って。
「ディーテ。我々の密会がばれたと? 」
激しく動揺する。顔がみるみる青くなっていく。
二人の秘密。二人だけの秘密。逢瀬。
「ええヴィーナが教えてくれました」
「ヴィーナが? だとすれば我々はもう? 」
「それは問題ありません。まだ噂レベルですしヴィーナも確証がないはず」
「ならば今夜も危険では? 」
「大丈夫。今夜は本当にボノの件を問い質しただけですから」
「では今夜はこれくらいで」
セピユロスはそう言うとお別れのキスをして出て行った。
さすがに密会の噂が立つことは無いだろう。
単純に話を聞きたかっただけなのにセピユロスが勘違いしてしまった。
これは大いに反省すべき点。
夜な夜な通うところを見られるのも失態。
やはりセピユロスには任せておけない。
続く
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