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再熱
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翌朝。
久しぶりの礼拝を済ませ部屋に戻る。
「ご主人様? 」
「大丈夫ですか? 」
昨日までとは違う。
私は愛の告白を受けたの。だからもう迷わない。
「ありがとう皆さん。随分心配を掛けたみたい。いつものご主人様に戻るから」
それはそれで困ると言われてしまった。
さあ気を引き締めよう。
取り敢えず今日の予定を聞く。
ヴィーナとセピユロス関係は出来れば避けたい。
「ご復帰おめでとうございますご主人様。仕事は溜まってますが問題ありません。
ちなみに本日の予定は特にございません」
本格復帰は明日からで良いそう。
延期していたセピユロスの両親への挨拶。それにエイドリアス村の人たちとの交流。
それから年に一度の国王様主催のパーティー。
そこで我が伝統の演舞を見せることになっている。
後はお茶会や領地の見回り。特に国王様からお預かりになってる鉱山。
この辺のことはさすがに代理を立てられないので私が。明日からでいいでしょう。
ならばと読書に移る。
ああこんな時はどんな本を読めばいいの?
長すぎず読みやすく激しくないのがいい。
それなら日記がいいでしょう。メイドの落とし物。
落とし主に渡そうとしたままそのまま本棚へ。
では少しだけ。
彼のことを思うばかりについ胸が張り裂けそうになる。
もう手に付かなくなっている。
うーんもう限界。
まったく内容が頭に入ってこない。上の空。セピユロスが気になって仕方ない。
セピユロス…… 私を焦らすだけ焦らしてどうしようと言うの。
許しませんよ。ふふふ……
セピユロスによって骨抜きにされてしまう。
ああ自分でも情けなく感じる。
こうして密会は復活。
読書を止めて屋敷内を歩き回る。
メイドたちの働きぶりを見るのもご主人様の仕事の一つ。
突然ヴィーナの部屋の方から言い争う声が。
すぐに二人が部屋からて来た。
「ヴィーナ! ヴィーナ! 我がままを言わないでくれ! 」
お困りの様子のセピユロス。
昨晩の情熱がどこへやら。
また喧嘩ですか?
「ヴィーナ? 」
「放っておいて! 」
冷え切っている。
二人の関係がどんどん冷え切っていくのが分かる。
それはセピユロスが私の為にわざとそう仕向けてるのではない。
彼は天性の女たらし。
困ってる女性がいたらすぐに手を差し伸べようとする。
だが今は違う。ただ文句を言ってる。
ヴィーナも黙っていない。
「一人で行ってください! 」
「ちょっと待ってくれ。それはないじゃないか! 」
常に優しいセピユロスが怒りを露わにした。
もう二人は来る所まで来てしまったようだ。
ひとえにヴィーナの嫉妬深さが原因。ただ私から受け継がれたものだから何とも。
ヴィーナは一体どうしたと言うのでしょう?
「勝手にして! 私は忙しいの」
ヴィーナが壊れかけている。
セピユロスはそれに気づけずにただ優しく接してる。このままではヴィーナが……
「ヴィーナ! 」
「もうしつこい! 」
これ以上は見ていられない。間に入ることにする。
「ほら二人とも落ち着きなさい。何を騒いでるの? 」
「ディーテ」
申し訳なそうに下を向くセピユロス。
ヴィーナは無視を決め込む。
「もう勝手にして! 」
怒って行ってしまった。
どうしたと言うのでしょう?
揉めごとは困る。なるべく穏便に済ませたい。
「ヴィーナ」
呼びかけるも届いてないのかただ無視してるのか反応がない。
一方からのみ話を聞くのもフェアではないですがとりあえず原因を探ることに。
「また喧嘩でもしたんですか? 」
会えば口喧嘩ばかり。本当に二人は愛し合っているのだろうか?
それさえ疑問に思えるほど仲が悪い。喧嘩が耐えないのだ。
許容範囲をとっくに超えている。
喧嘩するほど仲がいいなどとそんな呑気なものではない。
私との関係が元に戻った影響でヴィーナと上手く行かなくなった?
「セピユロスさん。どうしました? 」
「申し訳ありませんディーテ。どうしても彼女に来て欲しかったのです」
ヴィーナを連れどこに行こうと?
「ご主人様。見苦しいところをお見せして申し訳ございません」
彼は人の目があるところでは従順な若者を演じている。
変な噂が立ってしまってはまずいので慎重に行動している。当然と言えば当然か。
ここでは義理の息子であり母である。
ただそれに甘んじずに行動した結果、今の関係がある。
「セピユロスさんどうしました。またヴィーナの我がままでしょうか? 」
「はい…… 申し上げにくいのですがヴィーナが両親との挨拶を拒否。
もうどうしていいかまったく…… 」
先日火事から避難してきたばかりの彼の両親。
挨拶に伺うところだったらしい。それをヴィーナが断った。
一体何が不満だと言うの? 我がままが過ぎますよヴィーナ。
セピユロスは頭を抱え弱音を吐く。
「ああどうしたらいいものか…… 」
「落ち着いてセピユロス。私に任せてください」
続く
久しぶりの礼拝を済ませ部屋に戻る。
「ご主人様? 」
「大丈夫ですか? 」
昨日までとは違う。
私は愛の告白を受けたの。だからもう迷わない。
「ありがとう皆さん。随分心配を掛けたみたい。いつものご主人様に戻るから」
それはそれで困ると言われてしまった。
さあ気を引き締めよう。
取り敢えず今日の予定を聞く。
ヴィーナとセピユロス関係は出来れば避けたい。
「ご復帰おめでとうございますご主人様。仕事は溜まってますが問題ありません。
ちなみに本日の予定は特にございません」
本格復帰は明日からで良いそう。
延期していたセピユロスの両親への挨拶。それにエイドリアス村の人たちとの交流。
それから年に一度の国王様主催のパーティー。
そこで我が伝統の演舞を見せることになっている。
後はお茶会や領地の見回り。特に国王様からお預かりになってる鉱山。
この辺のことはさすがに代理を立てられないので私が。明日からでいいでしょう。
ならばと読書に移る。
ああこんな時はどんな本を読めばいいの?
長すぎず読みやすく激しくないのがいい。
それなら日記がいいでしょう。メイドの落とし物。
落とし主に渡そうとしたままそのまま本棚へ。
では少しだけ。
彼のことを思うばかりについ胸が張り裂けそうになる。
もう手に付かなくなっている。
うーんもう限界。
まったく内容が頭に入ってこない。上の空。セピユロスが気になって仕方ない。
セピユロス…… 私を焦らすだけ焦らしてどうしようと言うの。
許しませんよ。ふふふ……
セピユロスによって骨抜きにされてしまう。
ああ自分でも情けなく感じる。
こうして密会は復活。
読書を止めて屋敷内を歩き回る。
メイドたちの働きぶりを見るのもご主人様の仕事の一つ。
突然ヴィーナの部屋の方から言い争う声が。
すぐに二人が部屋からて来た。
「ヴィーナ! ヴィーナ! 我がままを言わないでくれ! 」
お困りの様子のセピユロス。
昨晩の情熱がどこへやら。
また喧嘩ですか?
「ヴィーナ? 」
「放っておいて! 」
冷え切っている。
二人の関係がどんどん冷え切っていくのが分かる。
それはセピユロスが私の為にわざとそう仕向けてるのではない。
彼は天性の女たらし。
困ってる女性がいたらすぐに手を差し伸べようとする。
だが今は違う。ただ文句を言ってる。
ヴィーナも黙っていない。
「一人で行ってください! 」
「ちょっと待ってくれ。それはないじゃないか! 」
常に優しいセピユロスが怒りを露わにした。
もう二人は来る所まで来てしまったようだ。
ひとえにヴィーナの嫉妬深さが原因。ただ私から受け継がれたものだから何とも。
ヴィーナは一体どうしたと言うのでしょう?
「勝手にして! 私は忙しいの」
ヴィーナが壊れかけている。
セピユロスはそれに気づけずにただ優しく接してる。このままではヴィーナが……
「ヴィーナ! 」
「もうしつこい! 」
これ以上は見ていられない。間に入ることにする。
「ほら二人とも落ち着きなさい。何を騒いでるの? 」
「ディーテ」
申し訳なそうに下を向くセピユロス。
ヴィーナは無視を決め込む。
「もう勝手にして! 」
怒って行ってしまった。
どうしたと言うのでしょう?
揉めごとは困る。なるべく穏便に済ませたい。
「ヴィーナ」
呼びかけるも届いてないのかただ無視してるのか反応がない。
一方からのみ話を聞くのもフェアではないですがとりあえず原因を探ることに。
「また喧嘩でもしたんですか? 」
会えば口喧嘩ばかり。本当に二人は愛し合っているのだろうか?
それさえ疑問に思えるほど仲が悪い。喧嘩が耐えないのだ。
許容範囲をとっくに超えている。
喧嘩するほど仲がいいなどとそんな呑気なものではない。
私との関係が元に戻った影響でヴィーナと上手く行かなくなった?
「セピユロスさん。どうしました? 」
「申し訳ありませんディーテ。どうしても彼女に来て欲しかったのです」
ヴィーナを連れどこに行こうと?
「ご主人様。見苦しいところをお見せして申し訳ございません」
彼は人の目があるところでは従順な若者を演じている。
変な噂が立ってしまってはまずいので慎重に行動している。当然と言えば当然か。
ここでは義理の息子であり母である。
ただそれに甘んじずに行動した結果、今の関係がある。
「セピユロスさんどうしました。またヴィーナの我がままでしょうか? 」
「はい…… 申し上げにくいのですがヴィーナが両親との挨拶を拒否。
もうどうしていいかまったく…… 」
先日火事から避難してきたばかりの彼の両親。
挨拶に伺うところだったらしい。それをヴィーナが断った。
一体何が不満だと言うの? 我がままが過ぎますよヴィーナ。
セピユロスは頭を抱え弱音を吐く。
「ああどうしたらいいものか…… 」
「落ち着いてセピユロス。私に任せてください」
続く
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