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未練

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一騒動終えて屋敷に戻る。
本当に何もなくて良かった。
もしセピユロスがボノを…… 考えられないことではない。

まずは村長に挨拶。
その後皆でエイドリアス村の面々を迎える。
不安そうな目をした人々。もちろんここをずっと安住の地にする訳にはいきません。
ですが村を立て直すまでの間は責任を持って面倒見ようと思います。
「エイドリアスの皆さん…… 」
この屋敷の主人として一言述べる。続けてボノも一言。
発案者のセピユロスも続く。
「おおセピユロス。君だけが頼りなんだ。よろしく頼む」
「なあ飯はうまいか? 」
慣れないところにセピユロスの姿を見つけ皆安堵している。
「ご心配なく皆さん。慣れるまでこのセピユロスにお任せください」
「あれお前臭うぞ。まさか…… 」
「ははは…… さっきまでハンティングしてましたもので…… 」
「おおそれはすげえな」
落ち着きを見せるエイドリアスの方々。

夜遅くにはもう一団。
即ちセピユロスの両親がお越しになられた。
村ではゆっくり話もできなかった。
一度じっくり話したいもの。
来た者から順に歓迎のパーティーに招く。
「ようこそお出で下さいました。歓迎いたします」
両親と村長たち意外はメイド館かまたはその隣に住まわせるつもり。
「勝手な行動はお控えください」
全員が抜け出さないように注意するのが主人としての務め。
また忙しくなってしまった。
メイド頭に後を任せ自分の部屋に戻る。

コンコン
コンコン
さっそく入って来た。
漏れ聞こえる音からパーティーの熱気が伝わってくる。
さあ決着をつけるとしましょうか。
新たな展開が始まる。

「どうしましたセピユロスさん? 」
「ディーテ」
セピユロスは悟ったのでしょう。関係が終わろうとしてるのを。
「もうお越しにならないで下さい。迷惑です」
強く否定する。これも彼の為。心を鬼にする。
「そんなディーテ…… 」
未練があるのか引き下がろうとしない。
「部屋にお戻りください。私はここの主人。
この屋敷から、領地から出ていってもらうこともできますよ」
もうセピユロスを愛せない。愛してはいけない。
代わりにヴィーナをボノを愛したい。
愛したい。愛したい。愛したい。
愛したい? 愛したい? 本当?

「お願いだディーテ。私の話も聞いてくれ! 」
真剣な表情のセピユロス。
一方的に別れを告げたのは今じゃない。
昨夜には気持ちを伝えたはず。だからこれ以上しつこくされては困る。
いい加減ご理解ください。私も辛いのです。あなたを忘れる…… 
もうあなたをただのヴィーナの婚約者と思うことにしました。
私はもうあなたを求めません。
ボノがどうするか分かりませんが出来るだけ元の関係に戻れるよう努力するつもり。
「ディーテ」
セピユロスはそれ以外何も言ってくれない。お帰りにもならずただ粘る。
そんなに聞き分けの悪いセピユロスだったでしょうか?
セピユロスも私を忘れて欲しい。無理な願いだとは重々承知の上。

「もう終わったのです。無理に元の関係に戻るのはよろしくない。
ですがあなたも昨夜認めたではありませんか」
彼が傷つかないように優しく叱り飛ばす。
「お願いだディーテ」
まだ求め続ける情けないセピユロス。
しっかりしなさいと叱り飛ばす。
「ディーテもう一度私と! 考え直してくれないか」
縋るような眼のセピユロス。
「いいですかセピユロスさん? あなたとはもう終わったのです。
これ以上付きまとうのはお止めください。
せっかくやって来たご両親にも申し訳ないと思わないんですか?
あなたはもう私を忘れるのがいい」
説得を続けるが聞く耳を持たない。こうなるとただ恐怖する。

「帰って! 」
二度三度と繰り返す。
さすがにいくらセピユロスでも従うしかない。
これはご主人様の命令。
たとえ誰であれこの屋敷にいる間は従ってもらうことになっている。
強権を発動せざるを得ない。
「分かりましたディーテ。今日のところは引き下がります。
でもあなたを決して忘れません」
セピユロスは部屋に戻る。
ごめんなさいセピユロス。これでいい。
もう二人は終わったのです。

                  続く
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