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発射
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執事が駆けつける。
「どうなさいましたかご主人様? 」
「早く二人を呼び寄せなさい! 」
「それは不可能でございます。どちらに行かれたかまでは把握しておりません」
緊急事態だと言うのに執事はまだ事の重大さに気付いていない。
「早く! 」
「何をそんなにお焦りなっているのですかご主人様?
心配なさらずともお付の者が一人おります」
ダメだこれでは話にならない。
執事を下げ影のメイドを呼ぶ。
「お呼びでしょうか? 」
「セピユロスは? ボノは? 」
「はい確かに二人はお出かけになりました」
きっちり把握している。それでこそ我が情報部隊。
極秘任務に当たるだけのことはある。
「それでどこに行ったか分かる? 」
「山でハンティングするとおっしゃっていました。確か絶好の狩場があるとか」
嬉しそうにメイドに話してるところを盗み聞いたと。
さすが。だが果たして間に合うだろうか?
急いで馬車を用意し後を追いかける。
随行メイドに射撃の腕のある使用人を一人。
これでもしもの事態に備えられる。
馬車は山を登る。
落ち着いて大丈夫。セピユロスはそこまで馬鹿じゃない。
ただ楽しんでるだけ。
ああセピユロス。お願い自重して。私の意見に傾けてはダメ。
あなたを持つのです。あなたが決めるのです。
私が唆したのではありません。
ただ事実を言ったまで。どうにもならない現実があるのです。
あなたは分からないでしょうね。でもこれは耐えるべきもの。
決して力でどうにかしようとするのは間違っています。
正しくありません。お願いですから留まっていてください。
ああ叫びたい。心ではもうずっと叫び続けている。
セピユロス。セピユロスと。
ボノも多少は心配してるんです。
ただ彼のことだから何かの拍子に気づいてしまうのではないかと。
それこそ気づいたら終わってしまう。
セピユロスにはボノのように余裕を。
ボノにはセピユロスのように鈍感に。
馬車は全速力で掛ける。
無理を言って飛ばしてもらっている。
ハアハア
ハアハア
何一つ疲れていないのに焦りからか息が苦しい。
どうしたと言うのでしょう?
これは何かの前触れ? 嫌な予感しかしない。
「ご主人様? 」
「平気です。もっと飛ばすように言いなさい」
もう全速力だと文句を言う男。でもこのスピードではいつ着くか不安。
絶好のポイントへ。
「旦那様! ボノ様! 」
「セピユロス! セピユロス! 」
今回のことはまだヴィーナには知らせてない。
詳細が分かるまで伏せておく。
それは最悪何かがあった時にヴィーナを守る為。
同時に私に疑いの目が行かないようにでもある。
叫び続けること十分。
「おーい! おーい! 」
猟銃を持った男が二人姿を見せる。
二人は肩を組んで笑っている。
これはどう言うことでしょう?
こちらに気付いたようで猟銃を近くのお付の者に預け大きく手を振る二人。
「何をやってるんだいディーテ? 派手なお迎えで」
ボノが笑顔でふざける。
今のところ問題なさそう。
「ああちょうどいい。ボノが苦しんでるんだよ」
セピユロスも大笑い。
二人は狩猟を楽しんでるだけだった。
昨日のことは何一つ覚えてないのか一緒になって笑っている。
期待はしてないが仕方ないと覚悟していたのに。
どうすればいいのでしょう? いっそのこと二人まとめてとこのまま始末する?
いや自棄を起こすものではないですね。
「どうだいたまには? 」
「そうだよディーテ」
「ハイハイ」
久しぶりに狩猟を楽しむとしますか。
「ほらディーテ。今草叢に隠れたのが一匹いる。狙いをつけてごらん」
妙に優しいボノ。いつもこれくらいだといいのですけどね。
発射。
だが弾が込められていないので当たることはない。
弾切れらしい。
「せっかくのチャンスをセピユロス君が外したせいで弾が切れた。
連続で五発放ったが一つも獲物に当たらない」
これはある意味高等技術だと。
ボノが皮肉を言うがあながち間違いではなさそうだ。
狩猟はやはり野蛮な遊び。
出来ればボノにもセピユロスにももちろん屋敷の者にも禁止したいところ。
ですがそれはさすがに横暴と言うもの。充分に心得ている。
ただ出来るだけ止めて頂けたらと思う。
「もう弾がなくなったから帰る支度をしていたんだ」
呑気なボノ。危うく殺されかけていたのに気付かないの?
まあそれで助かったんでしょうけどね。
「お二人ともお帰り下さい。エイドリアス村の方が間もなく来られます。
ボノはどうでもいいですがセピユロスさんはそうもいきませんよね」
セピユロスの提案でたっての願い。
猟銃を預けると馬車へ。
二人とも狩猟を楽しんでいた。
狩猟は確かに野蛮ですが人を撃つことに比べればかわいらしいもの。
ああ取り越し苦労だったみたい。今回はね……
良かった良かった。セピユロスにそんな度胸はなかった。
これで一安心。
馬車を走らせ屋敷へ。
続く
「どうなさいましたかご主人様? 」
「早く二人を呼び寄せなさい! 」
「それは不可能でございます。どちらに行かれたかまでは把握しておりません」
緊急事態だと言うのに執事はまだ事の重大さに気付いていない。
「早く! 」
「何をそんなにお焦りなっているのですかご主人様?
心配なさらずともお付の者が一人おります」
ダメだこれでは話にならない。
執事を下げ影のメイドを呼ぶ。
「お呼びでしょうか? 」
「セピユロスは? ボノは? 」
「はい確かに二人はお出かけになりました」
きっちり把握している。それでこそ我が情報部隊。
極秘任務に当たるだけのことはある。
「それでどこに行ったか分かる? 」
「山でハンティングするとおっしゃっていました。確か絶好の狩場があるとか」
嬉しそうにメイドに話してるところを盗み聞いたと。
さすが。だが果たして間に合うだろうか?
急いで馬車を用意し後を追いかける。
随行メイドに射撃の腕のある使用人を一人。
これでもしもの事態に備えられる。
馬車は山を登る。
落ち着いて大丈夫。セピユロスはそこまで馬鹿じゃない。
ただ楽しんでるだけ。
ああセピユロス。お願い自重して。私の意見に傾けてはダメ。
あなたを持つのです。あなたが決めるのです。
私が唆したのではありません。
ただ事実を言ったまで。どうにもならない現実があるのです。
あなたは分からないでしょうね。でもこれは耐えるべきもの。
決して力でどうにかしようとするのは間違っています。
正しくありません。お願いですから留まっていてください。
ああ叫びたい。心ではもうずっと叫び続けている。
セピユロス。セピユロスと。
ボノも多少は心配してるんです。
ただ彼のことだから何かの拍子に気づいてしまうのではないかと。
それこそ気づいたら終わってしまう。
セピユロスにはボノのように余裕を。
ボノにはセピユロスのように鈍感に。
馬車は全速力で掛ける。
無理を言って飛ばしてもらっている。
ハアハア
ハアハア
何一つ疲れていないのに焦りからか息が苦しい。
どうしたと言うのでしょう?
これは何かの前触れ? 嫌な予感しかしない。
「ご主人様? 」
「平気です。もっと飛ばすように言いなさい」
もう全速力だと文句を言う男。でもこのスピードではいつ着くか不安。
絶好のポイントへ。
「旦那様! ボノ様! 」
「セピユロス! セピユロス! 」
今回のことはまだヴィーナには知らせてない。
詳細が分かるまで伏せておく。
それは最悪何かがあった時にヴィーナを守る為。
同時に私に疑いの目が行かないようにでもある。
叫び続けること十分。
「おーい! おーい! 」
猟銃を持った男が二人姿を見せる。
二人は肩を組んで笑っている。
これはどう言うことでしょう?
こちらに気付いたようで猟銃を近くのお付の者に預け大きく手を振る二人。
「何をやってるんだいディーテ? 派手なお迎えで」
ボノが笑顔でふざける。
今のところ問題なさそう。
「ああちょうどいい。ボノが苦しんでるんだよ」
セピユロスも大笑い。
二人は狩猟を楽しんでるだけだった。
昨日のことは何一つ覚えてないのか一緒になって笑っている。
期待はしてないが仕方ないと覚悟していたのに。
どうすればいいのでしょう? いっそのこと二人まとめてとこのまま始末する?
いや自棄を起こすものではないですね。
「どうだいたまには? 」
「そうだよディーテ」
「ハイハイ」
久しぶりに狩猟を楽しむとしますか。
「ほらディーテ。今草叢に隠れたのが一匹いる。狙いをつけてごらん」
妙に優しいボノ。いつもこれくらいだといいのですけどね。
発射。
だが弾が込められていないので当たることはない。
弾切れらしい。
「せっかくのチャンスをセピユロス君が外したせいで弾が切れた。
連続で五発放ったが一つも獲物に当たらない」
これはある意味高等技術だと。
ボノが皮肉を言うがあながち間違いではなさそうだ。
狩猟はやはり野蛮な遊び。
出来ればボノにもセピユロスにももちろん屋敷の者にも禁止したいところ。
ですがそれはさすがに横暴と言うもの。充分に心得ている。
ただ出来るだけ止めて頂けたらと思う。
「もう弾がなくなったから帰る支度をしていたんだ」
呑気なボノ。危うく殺されかけていたのに気付かないの?
まあそれで助かったんでしょうけどね。
「お二人ともお帰り下さい。エイドリアス村の方が間もなく来られます。
ボノはどうでもいいですがセピユロスさんはそうもいきませんよね」
セピユロスの提案でたっての願い。
猟銃を預けると馬車へ。
二人とも狩猟を楽しんでいた。
狩猟は確かに野蛮ですが人を撃つことに比べればかわいらしいもの。
ああ取り越し苦労だったみたい。今回はね……
良かった良かった。セピユロスにそんな度胸はなかった。
これで一安心。
馬車を走らせ屋敷へ。
続く
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