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気分

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セピユロスの頑なまでの態度。
「どうしたのですセピユロスさん? 」
「村が焼かれ今はそのような気分になれないのです。どうかご勘弁ください」
村を思うあまりお酒を呑む気にならないそうだ。
なんて情けない…… いえ立派な方なんでしょう。それでこそセピユロス。
「お疲れになっているセピユロスさんをこれ以上引き止めるのは悪いわ」
「うん。確かにディーテの言う通りだ」
いつになく物分かりの良い。ボノも実は彼のことを気に掛けている? 
私のセピユロスの為にありがとうと言いたい。
ふふふ…… これではまるでセピユロスの保護者。
ただ放っておくと夜遅くまで付き合わせるでしょうから。
この後は年代物のワインを空けお宝自慢を始める。
満足いくまで決して放さない。それがボノ。
彼が断わりずらいのを良いことに迫る。そして半ば強制的に付き合わせるのだ。
今日はそんな呑気なことをしてられない。

「では僕はこれで。部屋に戻らせていただきます」
結局ボノは一人きりで酒をちびちびやる。
これも最近のボノの飲み方。
私やメイドたちの気を引いて相手してもらう作戦。
面と向かって付き合ってくれとは言いずらいのか苦笑いを浮かべる。
哀愁漂うところがまた渋い。これで私も何度か付き合う羽目になった。
「ああゆっくり休んで疲れを取るといいよ」
もうあきらめ気味のボノ。
残念がるボノに悪いと思ったのか明日釣りに誘う。
「ああセピユロス君の好きなように」
セピユロスの機転で亀裂が生じることなくどうにか収めた。

夕食を終え読書の続きを始める。
一時間ほど我慢して読み進めるが急に眠気に襲われる。
これは最近顕著で特に今日のような硬い本ではその傾向にある。
私は読み進めたいのに何度も同じ場面を読む羽目に。

コンコン
コンコン
ノックでどうにか目が覚める。
あーどうやら私、本当は読書が苦手なのかもしれない。
眠くて何度本を落としたことか。
主人公の男が巨大な魚に悪戦苦闘してる。
お爺さんだと言うのに何てタフなんでしょう。
あと少しで読み終わるところを邪魔されるのは嫌。
でもウトウトして全然進んでない事実もありとりあえず対応。

「おおディーテ。薄目を開けてどうしたのですか? 」
セピユロスは笑顔を見せる。
まったく呑気な方。こちらはあなたの為に本を切り上げたのにその言い草は何?
「もう失礼ですよ。こんな夜中に女性の部屋を訪れるなんて」
誰かに見られても良いように念のため注意をする。
「申し訳ない。どうしてもディーテの顔が見たくなってしまって」
紳士な振る舞いのセピユロス。
「あらお疲れになっておやすみになっていたのでは? 」
ボノの誘いを断った彼が私の部屋を訪れる理由。
それは一つしかない。

「ディーテ。私の気持ちを理解してるはず」
確かに告白された。
セピユロスが旅立つ前のあれはてっきり冗談だと思っていたが違った。
彼は私を愛してくれていた。
ヴィーナではなく私を選んでくれたのが嬉しい。でも複雑だ。
決して現実を見ようとしてない。
二人の恋は果たして実るのでしょうか?
ただ求めるでは子供のようで情けない。
私がセピユロスを認め彼が信頼してくれることが大切。
でも彼を見ているとそんなことはどうでも良くなってしまう。
そのまま抱きしめられたらどれだけいいでしょう。

「ありがとうセピユロス」
まずは礼を述べる。
「当たり前じゃないか」
強く肯定してくれるのが彼の良いところ。
私はそれでも自信がなくて彼を疑ってしまう。
どうしてこうなのでしょう?
疑い深いのは慎重だから。
ううん本当は違う。恐れているから。
セピユロスの優しさが怖い。

私を女として見てくれるのが嬉しい。
ボノは形だけ。
私を求めてるのではなくただ話相手を欲している。
メイドや使用人では相手してやれない。
教養のある彼に合わせられる者は限られる。
その一人が私と言うだけ。

                続く
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