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ショー
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「ご主人様お久しぶりです」
伯爵と違い夫人は私を認めて下さる。
伯爵夫人か……
宝石も申し訳程度にしかつけておらず衣装も地味。
表情も乏しく伏し目がちで暗い。
一体何が楽しくて生きてるのか分からない。
ちょっと聞いてみよう。
「あなたは何が楽しくて生きてるのです? 」
少し聞き方が非常識で下品だったかしら。
でもきっと許して下さる。
「もうディーテったら。私の無表情を馬鹿にして。主人に告げ口しますわよ。
あんな人でも伯爵ですからね。力あるんですよ」
「あら確かに。伯爵様ですものね」
地味で無口でいて私には気を許してくれる。
笑いはしないがふざけてこちらを笑わせようとする。
一番の理解者。あの伯爵にはもったいないお方。
私にとっては親戚のお姉さんのようで良くしてくれる。
今回参加してくれたのも夫人あって。
このように良くして下さるのでぜひあちらにも伺いたいが……
あの伯爵の嫌味に耐えなくてはならず現状お断りしている。
どうしてこのような素敵な方があの伯爵と一緒になられたのかまったくの謎。
「さあ伯爵夫人。皆様もお寛ぎください」
今回の晩餐会は趣向を凝らしてメイドと使用人によるショーを披露。
演劇であったりマジックであったり踊りだったりアクロバットだったりと。
普段お目にかかれないものをご用意。
「おおお…… これはすごい」
まだ帰っておられなかった卿が興奮して手を叩く。
「どうです国王様もお喜びになるでしょうか? 」
「どうかの。国王様はどちらかと言えばもっと激しいものを所望するであろう。
これではいささか物足りない。だがまあこれはこれで良い」
厳しい意見を頂戴する。
「ほほほ…… そうですわね。でしたら一つ卿もご参加ください。
飛び入り参加を歓迎しております。ほらどうぞ。ご遠慮なさらずに」
強く勧めるが腰を痛めたと動こうとしない。
「そうですか。残念ですね」
「うん。見てみたいか? 」
「それはぜひ」
さあ早く壇上に上がりなさい。
いつものことでしょう。まったく世話が焼けるんですから。
ショーは中盤。
「続きましてセピユロス氏による歌唱です」
あらセピユロスったらもう目立ちたがり屋なんだから。
奇声を上げ舞台の近くに移動し始めた近所のおばさま方。
目的はもちろんセピユロス。
「愛を捧げる…… ららら…… 」
聞いたこともない歌。これが都会では流行っているみたい。
または故郷の歌かしら。
何であれ愛を歌うセピユロスには大きな声援が。
「どうかどうか。気づいて! 傷つかないで! 」
皆はヴィーナへの愛を歌っていると思うでしょうね。
でもたぶんこれは私への秘めた想いを歌い上げてるに違いない。
自信はない。でもセピユロスがここまでするのはヴィーナへではない。
ヴィーナではないなら私しかいないでしょう?
自信過剰と罵らないでほしい。
毎日のように情熱的に気持ちを伝えるセピユロスを私は見てきているんですもの。
これは間違いない。本人に直接問いただしたっていい。
晩餐会の余興はまだまだ続く。
時に笑い時に感動し時に驚嘆する。でもほとんどが欠伸で失笑物。
私はここの主人ですからできれば恥ずかしいのは避けてもらいたい。
でも皆さんの頑張りに拍手を贈りたいと思います。
さあショーも終盤、残り三組に。
卿はかじりついて見ている。
そんなに興奮しなくてもよろしくてよ。
「卿。ご満足いただけましたか? 」
「ああもう十分に楽しませてくれた。褒美を与えたい」
そう言うが一度もやった試しがない。
「ではそろそろお部屋にご案内いたしましょう」
夜遅くまで行われるので遠方の客にはお泊り頂いている。
「いやもう少し。最後まで見せてくれ」
ダメだこれは。虜になってしまったよう。
「卿おやすみなさいませ」
お姉様が挨拶をする。
もう十分だとお部屋へ。
お姉様が退場するとすぐにボノが後を追う。
続く
伯爵と違い夫人は私を認めて下さる。
伯爵夫人か……
宝石も申し訳程度にしかつけておらず衣装も地味。
表情も乏しく伏し目がちで暗い。
一体何が楽しくて生きてるのか分からない。
ちょっと聞いてみよう。
「あなたは何が楽しくて生きてるのです? 」
少し聞き方が非常識で下品だったかしら。
でもきっと許して下さる。
「もうディーテったら。私の無表情を馬鹿にして。主人に告げ口しますわよ。
あんな人でも伯爵ですからね。力あるんですよ」
「あら確かに。伯爵様ですものね」
地味で無口でいて私には気を許してくれる。
笑いはしないがふざけてこちらを笑わせようとする。
一番の理解者。あの伯爵にはもったいないお方。
私にとっては親戚のお姉さんのようで良くしてくれる。
今回参加してくれたのも夫人あって。
このように良くして下さるのでぜひあちらにも伺いたいが……
あの伯爵の嫌味に耐えなくてはならず現状お断りしている。
どうしてこのような素敵な方があの伯爵と一緒になられたのかまったくの謎。
「さあ伯爵夫人。皆様もお寛ぎください」
今回の晩餐会は趣向を凝らしてメイドと使用人によるショーを披露。
演劇であったりマジックであったり踊りだったりアクロバットだったりと。
普段お目にかかれないものをご用意。
「おおお…… これはすごい」
まだ帰っておられなかった卿が興奮して手を叩く。
「どうです国王様もお喜びになるでしょうか? 」
「どうかの。国王様はどちらかと言えばもっと激しいものを所望するであろう。
これではいささか物足りない。だがまあこれはこれで良い」
厳しい意見を頂戴する。
「ほほほ…… そうですわね。でしたら一つ卿もご参加ください。
飛び入り参加を歓迎しております。ほらどうぞ。ご遠慮なさらずに」
強く勧めるが腰を痛めたと動こうとしない。
「そうですか。残念ですね」
「うん。見てみたいか? 」
「それはぜひ」
さあ早く壇上に上がりなさい。
いつものことでしょう。まったく世話が焼けるんですから。
ショーは中盤。
「続きましてセピユロス氏による歌唱です」
あらセピユロスったらもう目立ちたがり屋なんだから。
奇声を上げ舞台の近くに移動し始めた近所のおばさま方。
目的はもちろんセピユロス。
「愛を捧げる…… ららら…… 」
聞いたこともない歌。これが都会では流行っているみたい。
または故郷の歌かしら。
何であれ愛を歌うセピユロスには大きな声援が。
「どうかどうか。気づいて! 傷つかないで! 」
皆はヴィーナへの愛を歌っていると思うでしょうね。
でもたぶんこれは私への秘めた想いを歌い上げてるに違いない。
自信はない。でもセピユロスがここまでするのはヴィーナへではない。
ヴィーナではないなら私しかいないでしょう?
自信過剰と罵らないでほしい。
毎日のように情熱的に気持ちを伝えるセピユロスを私は見てきているんですもの。
これは間違いない。本人に直接問いただしたっていい。
晩餐会の余興はまだまだ続く。
時に笑い時に感動し時に驚嘆する。でもほとんどが欠伸で失笑物。
私はここの主人ですからできれば恥ずかしいのは避けてもらいたい。
でも皆さんの頑張りに拍手を贈りたいと思います。
さあショーも終盤、残り三組に。
卿はかじりついて見ている。
そんなに興奮しなくてもよろしくてよ。
「卿。ご満足いただけましたか? 」
「ああもう十分に楽しませてくれた。褒美を与えたい」
そう言うが一度もやった試しがない。
「ではそろそろお部屋にご案内いたしましょう」
夜遅くまで行われるので遠方の客にはお泊り頂いている。
「いやもう少し。最後まで見せてくれ」
ダメだこれは。虜になってしまったよう。
「卿おやすみなさいませ」
お姉様が挨拶をする。
もう十分だとお部屋へ。
お姉様が退場するとすぐにボノが後を追う。
続く
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