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想い

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ディナーは主役不在で盛り上がりに欠けた。
「ボノも元気がなくヴィーナも何かしきりに気にしてるようで上の空。
せっかくのディナーも静か過ぎて何だか。
場違いに騒いだのは自分だけで。
ディーテが体調を崩したとは信じられず……
それで何かあったんだろうとボノに確認してみるも首を振るのみ。
その様子だとやはり何かあったかなって…… 」
「よしましょうこんな話。ありがとうセピユロスさん。
どうであれ心配して見舞ってくれたことに感謝します」
「では私の愛に応えてくれますね」
話をすり替える軽いノリのセピユロス。
本当に困ったお方。

「感謝はします。ですがそれとこれとでは話が別です。
いい加減おふざけはお止めなさい」
強く言う。強く言わなければ彼には決して伝わらない。
「ディーテ」
いつの間にか見つめ合う形に。
ああその瞳は魔物。抗うこともできずに吸い込まれてしまう。
「忘れないでディーテ。どれだけあなたを愛しているか」
「私を愛するとは義母として愛すると言う意味よね。
でしたら私もあなたを全力で愛したい。それが当然のことだと思うのですけど」
ここがギリギリのライン。これ以上踏み込めばとんでもないことになる。
自重しなくては。大人の私が自重して彼を諭す。
彼はなぜか知らないがただ舞い上がっているだけ。
ボノへの対抗心からくるものなのかはっきりしませんが。
セピユロスに名前呼びを許したのが元凶。
つい甘やかしてしまった。
彼の家ではそうしてると言うからつい…… 
このことさえなければただ挨拶に来ただけの男。

「僕の愛は変わらないよディーテ。おやすみなさい」
そう言うと出て行った。
彼は私を元気づけに来ただけだった。

セピユロス…… 彼のまなざしが怖い。どうにかなってしまいそう。
こんなこといつ以来かしら? もう覚えてもいない。
当たり前に娘時代はいくらでもあった。
でもボノに出会ってからはちょっかいを出す男は減った。
それはボノが勇敢だったからではなく我が一族の監視があったからに過ぎない。
今はその監視も緩んでいる。
もしヴィーナが他の男に夢中になっても止めはしない。
婚約者としてセピユロスが居ようが自由にさせている。
時代でしょうね。力が弱まったとも言える。
ただし契りを結んでからはやはり監視の目がある。
セピユロスも監視の対象になった。
でも彼は皆の前では立派な紳士を演じている。
演じてるなんて失礼かしら。
でも少なくても私の前ではその紳士の仮面を破り捨て積極的に。
冗談でないなら愛の告白さえしている。
とんでもないお方。
セピユロス様だわ。
さあ一人寂しく寝ることにしましょう。

ふとボノのことを考える。
ボノの温もりを感じたのはいつかしら?
ああもう私たちは終わってしまったの?
お食事やお出かけに買い物。
全部メイドが代行してくれるものだからつい頼ってしまう。
たまに二人っきりにしてくれることもあるけど一体何を話せばいいやら。
無難にヴィーナや姉の話題になる。
それ以外は随行メイドが張り付いてる。
やっぱり二人はすれ違っていくばかり。
求める時には居ない。
そうメイドとよろしくやっている。
あちらが求めることはもうないでしょう。
寂しい夜があるのもご理解ください。
寂しいって分かります?
もしかしてボノも求める時があるのかしら?

お食事の時は笑い合うことが出来る。
もう大人の関係ですからいつまでも一緒にとはおかしい。
お食事の時ぐらいと割り切っていたけど。
そのうちボノの心が離れて行った。
離れないと思っていたその心が離れていく。
どんなに努力しようとも離れていく。
離れたくないと思えば思うほど離れていく。
そう一人の男に執着するのはやはり危険。間違ってるとまでは言いません。
ただ気持ちが離れた時に引き止められるだけの魅力が私にはなかった。
ヴィーナではだめらしい。
いえヴィーナを生贄にするのはやはり違う。
ふふふ…… 何を悲観的に見てるのかしら。
私にはここの主人としての役割がある。
ボノが居なくなろうがどうにでもなる。
あとはボノが本気かどうか。
すぐに気が変わるのがボノ。
さあ今日のことは忘れてもう寝てしまうのが一番。
でもさっき寝たばかり。これ以上は寝れない。
夜の散歩にでも出かけるとしよう。

              続く
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