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「それでお母様。どのようなご用件ですか? 」
ボーっとしてるものだからヴィーナに心配されてしまった。
「実はお姉様から手紙が届きました。明後日来るとのことです」
姉から手紙が届いた。
ヴィーナたちが来ることは知らせていたのでいつかはと思っていましたが。
まさか明後日とは些か急すぎる。
「久しぶりでしょう」
「うん。お世話してもらってから会いに行けてなかった」
言い訳はいくらでも立つが忘れていたのだろう。
姉はそんなヴィーナを可愛がってくれる。
ヴィーナのサポート役。
「これはヴィーナ宛だから。後で知らせて頂戴」
「へえ。おばさん来るんだ」
不機嫌だったヴィーナはチャウチャウと姉のおかげで笑顔を取り戻す。
明後日か。また騒がしくなりそうね。

コンコン
コンコン
楽しい宴も終えお待ちかねの説教タイム。
ここのところボノと行動するセピユロスの態度が軽いと言うか大柄になりつつある。
まるで私をからかって楽しんでいるような気がしてならない。
私がここの主人。ご主人様だと言うことを忘れてないか。
これではボノの二の舞。
セピユロスの暴走をどうにか止めなければなりません。
仮にボノに唆されただけだとしても放っては置けない。
後々のトラブルになりかねない。
ここで止めなければヴィーナが苦労することになる。
あの素敵なセピユロスさんがボノのように女遊びで堕落していく姿は見たくない。
私の手で何としても立ち直らせてあげなくては。

「どうぞ」
取り敢えず冷静に冷静に。
「おお愛しのディーテ。今日も一段と美しい」
またも歯の浮くようなキザったらしいセリフで登場。
私が喜ぶとでも思ってるのですか?
もちろん本気ならそれは大歓迎ですけど。
彼に限ってそんなこと有り得ない。
「おお愛しのディーテ」
どれだけ情熱的に来られようと受け入れられるはずがない。
一体何人の女に囁いてるのか。
私をその辺の初心な女と一緒にしないでほしい。

「セピユロスさんいらっしゃい。今日もおふざけが過ぎますね」
大人の対応で余裕を見せる。
いちいちイライラしていては先に話が進んでいかない。
今夜は彼の為に直々にお説教。
「ふざけているでしょうか? 」
心外だとばかりに手を広げるセピユロス。
「セピユロスさん! 」
「ディーテ。さん付けなど僕とあなたの前では無意味です」
調子に乗って軽口を叩く。
悪ふざけもここまでくると我慢の限界。

私が甘やかすからつけあがる。
ヴィーナが悲しむから強くは言えなかったけど今日こそはガツンと言う。
「あなたはいつもふざけてます。そして私の話を一切聞こうとしない。
そう言う子供っぽいところはボノにそっくりね」
「ディーテ…… 」
そう言うと下を向く。
堪えたのでしょう。まったくふざけるからこうなるのです。いい加減反省しなさい。
ふざけたっていいんですよ別に。でも限度があるでしょう。
そこを理解してもらいたい。

「ディーテなぜ我が愛を受け入れてくれないのですか」
大げさに体を動かす。いかに残念か傷ついてるかを訴えかける。
「愛ですか? それなら受け入れる覚悟。ただし男女ではなく親子愛ですが。
ヴィーナを悲しませないでくださいね」
こう言えばセピユロスだって何も言えない。

「どうしてあなたはそのように頑ななのですか?
私が愛してるのはヴィーナではない。ディーテあなたなのです」
この男どこまでも私をコケにするつもりらしい。可愛い顔をしていい度胸ね。
「ディーテ! おおディーテ! 愛しのディーテ! 」
ボノと行動を共にするようになってますます似てくる。
私の苦しみも知らないで。
何て男なの。もうヴィーナを任せられない。
婚約を解消させてもらいます。
この男ではヴィーナを幸せにはできない。
いえ誰であれこの男は幸せにできない。
ボノに毒されただけかもしれない。
でもこれが彼の本質。
決して見てはいけないセピユロスの素顔。
まったく本当に何を考えてるのかしら。

さあではここからは説教と調教と参りましょうか。
覚悟しなさいセピユロスさん。逃げられませんよ。
                 
                 続く
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