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レイクフィッシング

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例のごとく朝早くからお出かけになっているセピユロスさん。
今日はボノも一緒。
昨夜話していたように湖でレイクフィッシュを楽しむのだとか。
まあ二人の仲が良くなるのは素晴らしいこと。
だけどボノの影響を受けすぎるのは考えもの。
初日はあんなに優しく紳士的だったセピユロスが昨夜は軽い遊び人のようで幻滅。
ちょっとだけは可愛らしいと思わなくもありませんが。
ただこれがヴィーナの夫となるには軽すぎます。
もう少し思慮深く家族思いでなければいけません。

ふふふ…… 私には言う権利も資格もありませんが。
夫に相手にされず娘に逃げられメイドを恐怖で縛るしかできないある意味無能な私。
ただのお嬢様。自分の力だけでは何一つ成し遂げられなかった。
ヴィーナには同じ道を辿らせたくない。
でもヴィーナが未だに私と対立するようなことがあれば見放すことも。
ヴィーナはボノの性格を受け継いでいる。
そしてボノが陰で裏切り続けているようにヴィーナが反抗的な態度を続けるようなら後継者を変えることも。

ここの主人は私だ。私の判断で後継者を決める。
後継者にふさわしくなければ残念だけど別の方に任せるしかない。
それはもちろん親類に譲るのではない。信頼の置ける者に任せる。
それも見つからない様なら国王様には申し訳ないが爵位を返納し領地をお返しする。
それだけ大事な問題。領地の他に採掘権もあるがそれだって私の代で手放す覚悟。
これは後継者問題とは別に徐々に収穫量が減り始めているからである。
今はそのせいもあり年に数回しか掘削は行われない。
管理人を常駐させ盗掘されないように注意。もちろん管理人には詳細を伏せている。
ただ単に我が領地の管理を任されていると思っている。
掘削も信頼の置ける者しか同行させていない。
徹底した管理体制が一族の繁栄を築き上げた。

これはお婆様のそのお婆様の代から受け継がれている秘密。
決して村の者にも漏らさない。
ただ女主人であるから誰も疑いを持っていませんが。
噂にさえなっていない。
発掘作業には当然重機も必要で隠すのは不可能。
村の者には温泉を掘り当てるためや土壌調査などその都度適当に答えている。
少々無理がありますが何より私はその手のことに疎いお嬢様ですから。
さあと突っぱねても誰も気にしません。

随行のメイドと鉱山へ。
目の前に広がる大海原を折れ小高い山へ。
馬車を走らすこと一時間。
湖に到着。
ノーザントイワーナレイクに到着。
ここでボノとセピユロスにお弁当を届ける。

「ああちょうどお腹が空いていたんだ。助かったよ」
ボノは呑気だ。今から鉱山の見回りに行くと言うのに気づいていない。
まさかあなたの為に弁当を届けるつまらない女に見えますか?
そうこれはついでなのです。そして言い訳にもなる。
ボノはよくここで釣りや野鳥観察、絵描きの真似事に密会と忙しい。
ぜひ見習いたいもの。
今日はセピユロスさんも一緒。

「ディーテ。良くここが分かりましたね」
「ボノは大体お昼にはここに居るんですよ。一人の時もそうでない時も」
暗に密会してることを漏らす。
「はっはは! 友人と良く行くんだよ。なあそうだよな」
私に同意を求めるボノ。
別にいつも監視していません。メイドに報告を受けてるだけです。

家で堂々とメイドとお遊びになっているのに外でも懲りずに別の女と。
その神経と行動力が私には理解できません。
一番の問題はボノを利用しようとする悪い女。ボノはすぐ騙されてしまいます。
そうなれば一族にも危険が。その前に相手の素性を調べ徹底的に排除する。
これがボノを監視する最大の理由。大体接触してくるのは女で裏に男の影が。

「ふふふ…… 友人は選びましょうね。さあセピユロスさんもお食べください」
「何か意味深だな。ねえボノ」
「ははは…… つまらない話はいい。さあ昼にしよう」
ボノは笑ってごまかすが大量の汗がすべてを物語っている。
いい気味だわ。少々懲らしめるのも悪くない。
セピユロスさんにも戒めになるでしょう。

                 続く
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