11 / 125
思い出
しおりを挟む
夕方。
屋敷に戻る。
「どう変わったことは? 」
「いえ特には。ああそうだセピユロス様がお戻りになってますが」
「そう」
もう遅いか。夕食後に来るように伝える。
さあ今日もいつものように練習。
気は乗らないが仕方ない。習慣だと思って割り切るしかない。
それにしても当日までにこの恥ずかしさを克服できるかしら。
「先生! 」
「ディーテ君。昨日の続きだ。基礎からだよ」
小さい頃お母様とお父様が嗜んでいた大人の遊び。
幼い私が目の前で見ていると危険だから近づくなと止められた。
上品なお母様といつも優しいお父様が真剣な表情で鞭の振り合いっこしていた。
お庭でやればいいのに恥ずかしいのか決して人を近づかせなかった。
もちろん先生の指導のもとどんどん上達する姿は誇らしい。
私が真似ようとするとお父様が教えてくれた。
しかしお母様がダメですと言って取り上げてしまう。
そうかまだ早いかなどと笑っているとお母様がお怒りなってついには喧嘩に発展。
私はそのたびに大声を上げて泣くものだからメイドたちが駆けつけてくれた。
二人とも恥ずかしさのあまりその場に立ち尽くすものだから笑ってしまう。
ふふふ……
「こらディーテ」
お母様は誰彼構わず怒鳴り散らす。
そうすると私もメイドたちも泣き出す。
お父様が宥めるが誰もお母様に逆らえない。
そんなことが何度も続くとさすがに追い出されてしまう。
あんな格好で子供の教育にはよろしくありませんと出入り禁止に。
その後も外から様子を窺おうとするもメイドたちに捕まってしまう。
そのうち興味を失い近づかなくなった。
今思えば良い思い出。
親子三人だけの特別な時間。
でもこれをヴィーナに見せるかと言ったらとんでもない。
全力で阻止する。
近づいてきても怒鳴り散らしてお終い。これではお母様と変わらないか。
せめてこの派手な衣装と鞭さえなければどうにか取り繕えるけど。
秘密にするしかない。
ヴィーナだってもう大人だしこれくらい理解してくれるだろうが威厳と尊敬を失ってはいけない。
こんな情けない格好を見せようものなら笑い飛ばすでしょう。
それならまだいい方。失望させてしまうかもしれない。
でもねヴィーナ。あなたもいつかこれを受け継ぐ時が来る。
私だってこれが嫌でお母様の跡を継ぐの渋っていた記憶があるぐらい。
ヴィーナだってあと十年もすれば引く継ぐことになる。
拒否はできない。
古くからの伝統で国王様にお見せする儀。
その一つに組み込まれた。
国王様がお喜びになれば我が一族も安泰。
生誕祭が間もなく盛大に行われる。
その前に何としても形にしなくてはいけない。
二人一組だからボノの協力も不可欠。
昨年まではお母様とお父様が。
今年から私とボノが後を継ぐことになった。
ボノは意外にも何度か経験があるようで練習に参加することは無い。
こちらとしてもまだ恥ずかしいので助かっている。
ボノはボノで生誕祭には間に合わせてくるでしょう。
噂では実践だとかでメイドの協力を得て夜な夜なプレーしてるとか。
私も早くボノに追いつき二人でやれるよう精進しなくてはいけません。
「ほら角度が甘い。もう少し顎を引いて」
「はいこうですか? 」
「違うって言ってるじゃない」
激高するとおかしな口調になる。怖くはないですけど…… いえ怖いです。
「次は鞭の使い方。ほら私をパートナーと見立ててやって見なさい」
ビシビシ
ビシビシ
「どうしてゆっくりなの? それでは効果がありません」
もっと早くもっと強くと迫るが私はどうしていいか分からずに泣きだしそうになる。
でも私はこの屋敷の主人だ。しっかりしなくてはだめ。
ああボノとこんなことまでするの。
いくら国王様の機嫌の為、我が一族の安泰の為とは言え本当に嫌になってしまう。
「はい今日はこれくらいにしましょうね」
専属の先生。祖母の代からの付き合いでよく遊んでもらったっけ。
でも今はただの怖い先生。
続く
屋敷に戻る。
「どう変わったことは? 」
「いえ特には。ああそうだセピユロス様がお戻りになってますが」
「そう」
もう遅いか。夕食後に来るように伝える。
さあ今日もいつものように練習。
気は乗らないが仕方ない。習慣だと思って割り切るしかない。
それにしても当日までにこの恥ずかしさを克服できるかしら。
「先生! 」
「ディーテ君。昨日の続きだ。基礎からだよ」
小さい頃お母様とお父様が嗜んでいた大人の遊び。
幼い私が目の前で見ていると危険だから近づくなと止められた。
上品なお母様といつも優しいお父様が真剣な表情で鞭の振り合いっこしていた。
お庭でやればいいのに恥ずかしいのか決して人を近づかせなかった。
もちろん先生の指導のもとどんどん上達する姿は誇らしい。
私が真似ようとするとお父様が教えてくれた。
しかしお母様がダメですと言って取り上げてしまう。
そうかまだ早いかなどと笑っているとお母様がお怒りなってついには喧嘩に発展。
私はそのたびに大声を上げて泣くものだからメイドたちが駆けつけてくれた。
二人とも恥ずかしさのあまりその場に立ち尽くすものだから笑ってしまう。
ふふふ……
「こらディーテ」
お母様は誰彼構わず怒鳴り散らす。
そうすると私もメイドたちも泣き出す。
お父様が宥めるが誰もお母様に逆らえない。
そんなことが何度も続くとさすがに追い出されてしまう。
あんな格好で子供の教育にはよろしくありませんと出入り禁止に。
その後も外から様子を窺おうとするもメイドたちに捕まってしまう。
そのうち興味を失い近づかなくなった。
今思えば良い思い出。
親子三人だけの特別な時間。
でもこれをヴィーナに見せるかと言ったらとんでもない。
全力で阻止する。
近づいてきても怒鳴り散らしてお終い。これではお母様と変わらないか。
せめてこの派手な衣装と鞭さえなければどうにか取り繕えるけど。
秘密にするしかない。
ヴィーナだってもう大人だしこれくらい理解してくれるだろうが威厳と尊敬を失ってはいけない。
こんな情けない格好を見せようものなら笑い飛ばすでしょう。
それならまだいい方。失望させてしまうかもしれない。
でもねヴィーナ。あなたもいつかこれを受け継ぐ時が来る。
私だってこれが嫌でお母様の跡を継ぐの渋っていた記憶があるぐらい。
ヴィーナだってあと十年もすれば引く継ぐことになる。
拒否はできない。
古くからの伝統で国王様にお見せする儀。
その一つに組み込まれた。
国王様がお喜びになれば我が一族も安泰。
生誕祭が間もなく盛大に行われる。
その前に何としても形にしなくてはいけない。
二人一組だからボノの協力も不可欠。
昨年まではお母様とお父様が。
今年から私とボノが後を継ぐことになった。
ボノは意外にも何度か経験があるようで練習に参加することは無い。
こちらとしてもまだ恥ずかしいので助かっている。
ボノはボノで生誕祭には間に合わせてくるでしょう。
噂では実践だとかでメイドの協力を得て夜な夜なプレーしてるとか。
私も早くボノに追いつき二人でやれるよう精進しなくてはいけません。
「ほら角度が甘い。もう少し顎を引いて」
「はいこうですか? 」
「違うって言ってるじゃない」
激高するとおかしな口調になる。怖くはないですけど…… いえ怖いです。
「次は鞭の使い方。ほら私をパートナーと見立ててやって見なさい」
ビシビシ
ビシビシ
「どうしてゆっくりなの? それでは効果がありません」
もっと早くもっと強くと迫るが私はどうしていいか分からずに泣きだしそうになる。
でも私はこの屋敷の主人だ。しっかりしなくてはだめ。
ああボノとこんなことまでするの。
いくら国王様の機嫌の為、我が一族の安泰の為とは言え本当に嫌になってしまう。
「はい今日はこれくらいにしましょうね」
専属の先生。祖母の代からの付き合いでよく遊んでもらったっけ。
でも今はただの怖い先生。
続く
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
【完結】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか?
曽根原ツタ
恋愛
「クラウス様、あなたのことがお嫌いなんですって」
エルヴィアナと婚約者クラウスの仲はうまくいっていない。
最近、王女が一緒にいるのをよく見かけるようになったと思えば、とあるパーティーで王女から婚約者の本音を告げ口され、別れを決意する。更に、彼女とクラウスは想い合っているとか。
(王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは身を引くとしましょう。クラウス様)
しかし。破局寸前で想定外の事件が起き、エルヴィアナのことが嫌いなはずの彼の態度が豹変して……?
小説家になろう様でも更新中
奪い取るより奪った後のほうが大変だけど、大丈夫なのかしら
キョウキョウ
恋愛
公爵子息のアルフレッドは、侯爵令嬢である私(エヴリーヌ)を呼び出して婚約破棄を言い渡した。
しかも、すぐに私の妹であるドゥニーズを新たな婚約者として迎え入れる。
妹は、私から婚約相手を奪い取った。
いつものように、妹のドゥニーズは姉である私の持っているものを欲しがってのことだろう。
流石に、婚約者まで奪い取ってくるとは予想外たったけれど。
そういう事情があることを、アルフレッドにちゃんと説明したい。
それなのに私の忠告を疑って、聞き流した。
彼は、後悔することになるだろう。
そして妹も、私から婚約者を奪い取った後始末に追われることになる。
2人は、大丈夫なのかしら。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる