7 / 125
悪ふざけ
しおりを挟む
食事を終え一息ついたところで本題に入る。
「では改めて私から。ヴィーナさんとは親しくさせてもらっています」
緊張してるのか咳ばらいを何度も繰り返す。
ふふふ…… かわいいお方。
「ボノ。ディーテ。私とヴィーナは将来を誓い合いました。
どうか二人をお許しください」
ついに挨拶が始まる。
今回の突然の訪問の主目的がこれだ。
当然他にもあるだろうがそれは私たちにはどうでもいいこと。
「ああもちろん祝福したい。しかし些か早すぎる。早急ではないかと感じるんだがどう思うかね」
ボノは父親らしく振る舞うがそれは形だけ。一度たりともヴィーナについて考えたことがない。
すべて私に任せっきり。いくら注意しても今まで直ることはなかった。
大切なヴィーナだと言うのに信じられない。
そうして私ばかり口出しをするものだから反発するように。
その影響が今も残っている。
私とヴィーナの関係がよろしくないのはボノに責任の一端がある。
ただ割り切ることも出来た。
ここには私の相談役も執事も最近はめっきり顔を見せなくなったお母様もいる。今は事情があって姿をみせないが。とにかく育てることに彼の力は必要なかった。
それなのに今更父親の真似事。こちらが恥ずかしくなる。
「その…… あの…… 」
セピユロスさんは恐縮しきって何も言えずに固まってしまう。
「ボノ。かわいそうですよ。セピユロスさんを困らせてまあ」
何とか笑って窘める。本当だったらヒステリーに怒鳴り散らすでしょうね。
二人の前ですし今はめでたい場。
雰囲気を壊してはいけない。ここはぐっと堪える。
「ヴィーナはどうしたいの? 」
二人の気持ちは一緒だと思いたいがこう喧嘩が耐えないと醒めてもおかしくない。
「ここに来たんだから私も同じ。いちいち確認しないでよね」
屋敷では吸うなと言うのにタバコを咥えている。
下品で健康にも良くない。
「ゴッホゴッホ…… ヴィーナ」
「まったく嫌がらせしないでよね」
常に反抗的なヴィーナ。
「ほらヴィーナ。今は控えよう」
セピユロスが優しく諭す。
まったく甘いんだから。
厳しくしないとつけあがる。後で困るのはあなたなのよ。
「ちょっとトイレ」
「ヴィーナ! 」
ついに叱り飛ばしてしまう。
「もううるさいな。響くでしょう」
一切反省もせず動じないヴィーナ。
立ち上がり姿を消す。
「ははは…… 」
ボノが雰囲気を変えようと無理に笑うものだから居た堪れない。
あーボノ。お願いだから大人しくしていて。
「そうだセピユロス君はさっき私たちのことを名前で呼んでたが…… 」
疑問と言うよりも確認でしょう。困惑してるようだし。
「はいボノ」
まだ続けるつもりらしい。一体ここに何しに来たのやら。
「私の家では名前を特に大事にしています。その為幼き頃から名前で呼び合ってます。
マーム、ダディーと呼ばずヨセフとヴィンヴィです。
ですからここでもできれば名前で。ボノとディーテと呼ぶご無礼をお許しください」
ふざけてるようには見えない。まさか本気なの?
表情は真剣そのもの。でもいいのかしら。ボノだって納得してないでしょう。
「どうするディーテ? 」
「よろしいのではなくて。慣れれば愉快なものでしょう」
あまり深く考えずに許してしまう。
「おいおいディーテ。そんな簡単に」
ボノは私が反対するものと思ったでしょうね。だからこそ私に任せた。
でも私だって日頃子爵夫人だの奥様だのと言われて辟易してたし。
ここの女主人なものだからメイドもご主人様だものね。
幼い頃はお嬢様や大げさに姫だった。そう呼ばれて嬉しかったのは最初だけ。
仲のいいメイドだって弁えてるから決して名前では呼ばない。
ボノったらまったく。良いでしょ別に。ここの主人は私なんですから。
ついセピユロスを甘やかしてしまう。最初が肝心だと言うのに。
後から考えればこれが悲劇の始まりであった。
続く
「では改めて私から。ヴィーナさんとは親しくさせてもらっています」
緊張してるのか咳ばらいを何度も繰り返す。
ふふふ…… かわいいお方。
「ボノ。ディーテ。私とヴィーナは将来を誓い合いました。
どうか二人をお許しください」
ついに挨拶が始まる。
今回の突然の訪問の主目的がこれだ。
当然他にもあるだろうがそれは私たちにはどうでもいいこと。
「ああもちろん祝福したい。しかし些か早すぎる。早急ではないかと感じるんだがどう思うかね」
ボノは父親らしく振る舞うがそれは形だけ。一度たりともヴィーナについて考えたことがない。
すべて私に任せっきり。いくら注意しても今まで直ることはなかった。
大切なヴィーナだと言うのに信じられない。
そうして私ばかり口出しをするものだから反発するように。
その影響が今も残っている。
私とヴィーナの関係がよろしくないのはボノに責任の一端がある。
ただ割り切ることも出来た。
ここには私の相談役も執事も最近はめっきり顔を見せなくなったお母様もいる。今は事情があって姿をみせないが。とにかく育てることに彼の力は必要なかった。
それなのに今更父親の真似事。こちらが恥ずかしくなる。
「その…… あの…… 」
セピユロスさんは恐縮しきって何も言えずに固まってしまう。
「ボノ。かわいそうですよ。セピユロスさんを困らせてまあ」
何とか笑って窘める。本当だったらヒステリーに怒鳴り散らすでしょうね。
二人の前ですし今はめでたい場。
雰囲気を壊してはいけない。ここはぐっと堪える。
「ヴィーナはどうしたいの? 」
二人の気持ちは一緒だと思いたいがこう喧嘩が耐えないと醒めてもおかしくない。
「ここに来たんだから私も同じ。いちいち確認しないでよね」
屋敷では吸うなと言うのにタバコを咥えている。
下品で健康にも良くない。
「ゴッホゴッホ…… ヴィーナ」
「まったく嫌がらせしないでよね」
常に反抗的なヴィーナ。
「ほらヴィーナ。今は控えよう」
セピユロスが優しく諭す。
まったく甘いんだから。
厳しくしないとつけあがる。後で困るのはあなたなのよ。
「ちょっとトイレ」
「ヴィーナ! 」
ついに叱り飛ばしてしまう。
「もううるさいな。響くでしょう」
一切反省もせず動じないヴィーナ。
立ち上がり姿を消す。
「ははは…… 」
ボノが雰囲気を変えようと無理に笑うものだから居た堪れない。
あーボノ。お願いだから大人しくしていて。
「そうだセピユロス君はさっき私たちのことを名前で呼んでたが…… 」
疑問と言うよりも確認でしょう。困惑してるようだし。
「はいボノ」
まだ続けるつもりらしい。一体ここに何しに来たのやら。
「私の家では名前を特に大事にしています。その為幼き頃から名前で呼び合ってます。
マーム、ダディーと呼ばずヨセフとヴィンヴィです。
ですからここでもできれば名前で。ボノとディーテと呼ぶご無礼をお許しください」
ふざけてるようには見えない。まさか本気なの?
表情は真剣そのもの。でもいいのかしら。ボノだって納得してないでしょう。
「どうするディーテ? 」
「よろしいのではなくて。慣れれば愉快なものでしょう」
あまり深く考えずに許してしまう。
「おいおいディーテ。そんな簡単に」
ボノは私が反対するものと思ったでしょうね。だからこそ私に任せた。
でも私だって日頃子爵夫人だの奥様だのと言われて辟易してたし。
ここの女主人なものだからメイドもご主人様だものね。
幼い頃はお嬢様や大げさに姫だった。そう呼ばれて嬉しかったのは最初だけ。
仲のいいメイドだって弁えてるから決して名前では呼ばない。
ボノったらまったく。良いでしょ別に。ここの主人は私なんですから。
ついセピユロスを甘やかしてしまう。最初が肝心だと言うのに。
後から考えればこれが悲劇の始まりであった。
続く
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
【完結】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか?
曽根原ツタ
恋愛
「クラウス様、あなたのことがお嫌いなんですって」
エルヴィアナと婚約者クラウスの仲はうまくいっていない。
最近、王女が一緒にいるのをよく見かけるようになったと思えば、とあるパーティーで王女から婚約者の本音を告げ口され、別れを決意する。更に、彼女とクラウスは想い合っているとか。
(王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは身を引くとしましょう。クラウス様)
しかし。破局寸前で想定外の事件が起き、エルヴィアナのことが嫌いなはずの彼の態度が豹変して……?
小説家になろう様でも更新中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる