上 下
153 / 162

二枚ゲット!

しおりを挟む
突如現れた怪鳥を追い払うことに成功。
怪鳥は意外にもあっさり空へ。奇声を上げ飛び去って行った。
これに懲りて町に出てこなければいいが。
そんな甘くはないか。奴らの狙いは恐らく人間。
もうすでに味を覚えてしまったのかもしれない。

「大丈夫ですか? 」
アトリが急いで二人の元へ駆けつける。
「お姉ちゃん! お姉ちゃん! 」
必死の呼びかけに辛うじて反応する女性。
「ううう…… 大丈夫だからね」
腕を怪我してる。これは急いで病院に運ばなければ。
今のところ意識はあるようだがぐったりしている。
意識レベルも徐々に低下してるようで危険な状態。
もう襲われる心配はないので後は運ぶだけだが……

どうやら仲の良い姉妹らしい。
なぜこうなったのか聞こうにも肝心の妹が取り乱して話にならない。
まずは落ちつかせるのが先決だろう。
後のことはアトリに任せる。

「ありがとうございました」
そう何度もお礼の言葉を繰り返す妹。ようやく落ちついたらしい。
「ふん。当然のことをしたまでじゃ。礼には及ばん! 」
「あんたは何もしてないって! 」
ノコタンがすかさず憎まれ口を叩く。
「なんじゃと? 儂が爺さんだと申すか? 」
「そうじゃなくて…… 爺さんだけどさ。話をすり替えるなっての! 」
いつの間にか言い合いになる。いつものことだけどね。
アトリが姉妹の面倒を見てる間に俺は二人の世話。
こんな時にくだらない言い争いするなよな。

「ご主人様! 怪我をされてるようですよ」
「分かってるって。ドンテで買っておいたのが確か……
あれ…… ないや。だったらお近くのドラスト・キヨシでってここにはないや。
姉が深い傷を負っている。妹を守るために己を犠牲にしたらしい。
とにかく病院に運ぶとしよう。
交代で抱えて行く。
グッドバッド博士の屋敷から一キロ弱のところに病院があると言うので向かう。

おっとここだな。
フォレストバレー病院まで運び事なきを得る。
不安から堪えきれずに涙を流す妹。
「ほれ泣くでない! 」
爺さんの励ましで勇気づけられることはない。
妹は不安の余り大泣きを始める。
まあ確かに心配だろうな。
「どうしたの? もう大丈夫だよ」
どうにか寄り添うがそれでも効果はなし。
ここはアトリに任せることにした。

一時間後。どうにか泣き止んだ妹から話を聞く。
急に襲われたそうでよく分からないと首を振る。
「ごめんなさい! 私のせいでお姉ちゃんが…… 」
怪我は思ったほどではなかったが時間が掛かるそう。
せっかくの旅行が自分のせいで行けなくなって悲しいと嘆く。
腕の怪我で一週間は入院する必要があるから明後日には絶対に間に合わない。
可哀想だがこれも運命。

「待って! 」
いらなくなったチケットを破こうとするので止める。
「ダメだって。本当にいらないのか? 」
ノコタンが交渉する。非情だな。
「もうこんなのに用ない」
そう言って手で顔を覆う。
「だったらこれを譲ってくれないか? 」
「はいどうぞ。どうせいりませんから」
こうしてチケットを譲り受ける。

姉と二人分。
これで残り二枚。

一騒動あったので疲れた。
喫茶店で一休み。
「いらっしゃいませ」
フォレストバレー名物の森の落とし物を注文。
「他には? 」
「ゴールドエクスプレスのチケットを二枚ほど」
一応あるか聞いてみる。
「申し訳ありません。当店ではそのような品は置いておりません」
そんなに真剣にならなくても…… 冗談なのに。
やはり簡単には手に入らないらしい。

「おいあんた! 化け物を退治したんだってな? 」
爺さんがトイレに立つと男が話し掛けてきた。
さすがにあれだけのことがあったから噂にもなるか。
「ええまあ…… 」
「あーあ何てことしてくれるんだよ! 」
てっきり褒めてくれると思いきや文句を垂れる。
人助けして文句を言われるなんてやってられないよ。

「ここはな保護区なんだ。フォレストバレーの野生動物は保護の対象なんだよ」
意外にもしっかりしてるんだな。でもそれがどうしたと言うんだろう?
「しかし緊急事態ですしただ一撃喰らわせただけで…… うちのお爺ちゃんが」
風向きが変わりそうなので責任を回避しようと爺さんのせいに。
「それでもダメなんだよ。野生動物を傷つけたら最悪捕まるぜ。
ほらあんた異人だろ? 警告を見てみな」
親切で迷惑な男は気にかけてくれる。

うわ…… まずいいつの間にか累積が三枚になっていた。
これは一体どう言うことだ?
「もう二度としないことだな。爺さんにも言っておけ! 」
男はそれだけ言うと行ってしまった。
せっかくチケットを譲ってもらおうと思ったのに。

                続く
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!

夕凪五月雨影法師
ファンタジー
AIイラストあり! 追放された世界最強の勇者が、ハーレムの女の子たちと自由気ままなスローライフを送る、ちょっとエッチでハートフルな異世界ラブコメディ!! 国内最強の勇者パーティを率いる勇者ユーリが、突然の引退を宣言した。 幼い頃に神託を受けて勇者に選ばれて以来、寝る間も惜しんで人々を助け続けてきたユーリ。 彼はもう限界だったのだ。 「これからは好きな時に寝て、好きな時に食べて、好きな時に好きな子とエッチしてやる!! ハーレム作ってやるーーーー!!」 そんな発言に愛想を尽かし、パーティメンバーは彼の元から去っていくが……。 その引退の裏には、世界をも巻き込む大規模な陰謀が隠されていた。 その陰謀によって、ユーリは勇者引退を余儀なくされ、全てを失った……。 かのように思われた。 「はい、じゃあ僕もう勇者じゃないから、こっからは好きにやらせて貰うね」 勇者としての条約や規約に縛られていた彼は、力をセーブしたまま活動を強いられていたのだ。 本来の力を取り戻した彼は、その強大な魔力と、金貨1,000万枚にものを言わせ、好き勝手に人々を救い、気ままに高難度ダンジョンを攻略し、そして自身をざまぁした巨大な陰謀に立ち向かっていく!! 基本的には、金持ちで最強の勇者が、ハーレムの女の子たちとまったりするだけのスローライフコメディです。 異世界版の光源氏のようなストーリーです! ……やっぱりちょっと違います笑 また、AIイラストは初心者ですので、あくまでも小説のおまけ程度に考えていただければ……(震え声)

処理中です...