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やる気
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夜の航海を終えたスターフィッシュ号は新たな島を発見。
希望を胸に島の捜索へ。
一人でいい。一匹だっていいんだ。
言葉の通じる親切な人かモンスターに会って近くの村を紹介してもらいたい。
しかし残念ながら人の気配は感じられない。痕跡もなし。これはまた振り出しか?
それから手掛かりもなく一週間が過ぎようとしていた。
「そっちはどうだった? 」
リーダの役割を果たすべく情熱を傾ける。
「まあまあご主人様。そう焦らずに」
アトリからしてのんびり屋さんでせっかくのやる気が削がれてしまう。
仕方ないのでアトリのやる気スイッチを探る。
「ここかな? やっぱりここかな? 」
「もう…… くすぐったい! お止めくださいご主人様! 」
「ははは…… ごめんごめん。あまりにやる気がないので故障かなと」
「だからアトリはロボットではありません! 」
怒って巻き付いた腕を振り解こうとする。これは本気だな。
ここはクールダウンするまで待つか。
「もう焦り過ぎです! 」
「そうだぞゲン。落ち着けって。ちなみにこっちは収穫なし」
「リーダと呼べ! まったくお前たちときたらリーダーを敬う気がないのか? 」
「もうゲンったら。冗談ばっかり言って。ある訳ないだろ? 」
はっきり言うノコタン。やっぱり俺リーダーに向いてないのかな?
「もういい! それより爺さんはどうした? 」
勝手に歩き回って目下行方不明中。
一時間は姿を見てない。その辺で行き倒れてないか本気で心配になる。
まあそうなったらうめき声の一つでも上げるだろう。
聞こえないのは生きてる証拠。
「おい儂の悪口を言うでない! 」
被害妄想の酷い爺さんが駆けつける。ただ心配しただけなのにそれはないよ。
しかしいくら吠えようが武器の猟銃が没収されては怖くない。
「どうでしたバク爺さん? 」
「それがちっともじゃゲン坊。どうやらここも無人島らしいな」
誰がゲン坊だよ? リーダーだろうがまったく……
ここ一週間ほど我々以外の人間を見かけない。
おそらくこの辺り一帯には人は住んでないのだろう。
恐れていた事態。もうどうにもならないのか? 心が折れそう。
こんな状況でリーダーは損だな。適切な指示送らないと不満が出かねない。
指示をしても守ってくれる奴らでもないがな。
リーダーを返還するか? 爺さんにでもくれてやるか?
「人はおろかモンスター一匹おらんわ! 」
爺報告で心が砕かれる。
「冗談だろ? これって冒険ファンタジーじゃないの?
これでは無人島脱出大作戦になってるよ? 」
「お気を確かに。第三世界は今までの世界よりも変わっているのでしょう。
問題ありません。ご主人様の目的はただ一つ」
アトリに励まされる。
「それは分かってる。俺の目的はあくまでアンを見つけること。
だがしかしこうも人に出会わないと嫌になって来る。取り残されてるみたいだ」
「そうですか。私は逆に清々しますがね」
人それぞれ捉え方が違うものだな。そう言えばアトリはロボットだったけ。
こうしてどことも知らない無人島を歩き続ける。
その間出会えるのは小動物ばかり。
夜になれば大型哺乳類も姿を見せるだろうが遭遇したくない。道具もないしな。
あるのは言葉の暴力の詰まったカードフォルダー。
これはモンスターにのみ有効。人間には効かない。
動物ももちろんダメで貴重な固有種であれば警告が一気に二枚加算される。
人間などと贅沢は言わないからモンスターの一匹や二匹遭遇出来ればなと思う。
それこそ夢物語なんだろうな。
それからさらに一ヶ月が経ったある日ついに変化があった。
「そろそろ食糧も尽きたの。どうじゃ崖からダイビングすると言うのは?
あの高さから飛び降りればもしかしたら新しい世界に行けるかもしれん」
もう完全に狂ってしまった爺さん。
俺にはその一歩を踏み出す勇気はないよ。
年の功とアドバイスを送る役割のはずの爺さん。
一人あっちの世界に旅立ったか?
もはや正気を保てずに完全に狂っている。
「フォフォフォ…… 海が呼んでおる。海が…… 」
そう言うとビーチの方に走って行ってしまった。
「ノコタン頼む! 」
「無駄だ。爺さんはおかしくなっちまってる。
好きなようにさせておけ。危険はないだろう」
楽観的なノコタン。だが溺れでもしたら大変。
「アトリ頼んだ」
「またですかご主人様。もう放っておかれては? 」
ノコタンどころかアトリにまで見放される哀れな爺さん。
俺も爺になったらこうなるのかな?
絶望する未来が見える。
続く
希望を胸に島の捜索へ。
一人でいい。一匹だっていいんだ。
言葉の通じる親切な人かモンスターに会って近くの村を紹介してもらいたい。
しかし残念ながら人の気配は感じられない。痕跡もなし。これはまた振り出しか?
それから手掛かりもなく一週間が過ぎようとしていた。
「そっちはどうだった? 」
リーダの役割を果たすべく情熱を傾ける。
「まあまあご主人様。そう焦らずに」
アトリからしてのんびり屋さんでせっかくのやる気が削がれてしまう。
仕方ないのでアトリのやる気スイッチを探る。
「ここかな? やっぱりここかな? 」
「もう…… くすぐったい! お止めくださいご主人様! 」
「ははは…… ごめんごめん。あまりにやる気がないので故障かなと」
「だからアトリはロボットではありません! 」
怒って巻き付いた腕を振り解こうとする。これは本気だな。
ここはクールダウンするまで待つか。
「もう焦り過ぎです! 」
「そうだぞゲン。落ち着けって。ちなみにこっちは収穫なし」
「リーダと呼べ! まったくお前たちときたらリーダーを敬う気がないのか? 」
「もうゲンったら。冗談ばっかり言って。ある訳ないだろ? 」
はっきり言うノコタン。やっぱり俺リーダーに向いてないのかな?
「もういい! それより爺さんはどうした? 」
勝手に歩き回って目下行方不明中。
一時間は姿を見てない。その辺で行き倒れてないか本気で心配になる。
まあそうなったらうめき声の一つでも上げるだろう。
聞こえないのは生きてる証拠。
「おい儂の悪口を言うでない! 」
被害妄想の酷い爺さんが駆けつける。ただ心配しただけなのにそれはないよ。
しかしいくら吠えようが武器の猟銃が没収されては怖くない。
「どうでしたバク爺さん? 」
「それがちっともじゃゲン坊。どうやらここも無人島らしいな」
誰がゲン坊だよ? リーダーだろうがまったく……
ここ一週間ほど我々以外の人間を見かけない。
おそらくこの辺り一帯には人は住んでないのだろう。
恐れていた事態。もうどうにもならないのか? 心が折れそう。
こんな状況でリーダーは損だな。適切な指示送らないと不満が出かねない。
指示をしても守ってくれる奴らでもないがな。
リーダーを返還するか? 爺さんにでもくれてやるか?
「人はおろかモンスター一匹おらんわ! 」
爺報告で心が砕かれる。
「冗談だろ? これって冒険ファンタジーじゃないの?
これでは無人島脱出大作戦になってるよ? 」
「お気を確かに。第三世界は今までの世界よりも変わっているのでしょう。
問題ありません。ご主人様の目的はただ一つ」
アトリに励まされる。
「それは分かってる。俺の目的はあくまでアンを見つけること。
だがしかしこうも人に出会わないと嫌になって来る。取り残されてるみたいだ」
「そうですか。私は逆に清々しますがね」
人それぞれ捉え方が違うものだな。そう言えばアトリはロボットだったけ。
こうしてどことも知らない無人島を歩き続ける。
その間出会えるのは小動物ばかり。
夜になれば大型哺乳類も姿を見せるだろうが遭遇したくない。道具もないしな。
あるのは言葉の暴力の詰まったカードフォルダー。
これはモンスターにのみ有効。人間には効かない。
動物ももちろんダメで貴重な固有種であれば警告が一気に二枚加算される。
人間などと贅沢は言わないからモンスターの一匹や二匹遭遇出来ればなと思う。
それこそ夢物語なんだろうな。
それからさらに一ヶ月が経ったある日ついに変化があった。
「そろそろ食糧も尽きたの。どうじゃ崖からダイビングすると言うのは?
あの高さから飛び降りればもしかしたら新しい世界に行けるかもしれん」
もう完全に狂ってしまった爺さん。
俺にはその一歩を踏み出す勇気はないよ。
年の功とアドバイスを送る役割のはずの爺さん。
一人あっちの世界に旅立ったか?
もはや正気を保てずに完全に狂っている。
「フォフォフォ…… 海が呼んでおる。海が…… 」
そう言うとビーチの方に走って行ってしまった。
「ノコタン頼む! 」
「無駄だ。爺さんはおかしくなっちまってる。
好きなようにさせておけ。危険はないだろう」
楽観的なノコタン。だが溺れでもしたら大変。
「アトリ頼んだ」
「またですかご主人様。もう放っておかれては? 」
ノコタンどころかアトリにまで見放される哀れな爺さん。
俺も爺になったらこうなるのかな?
絶望する未来が見える。
続く
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