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ダンジョンの地図(有料)

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翌朝七時。
エクセルに調教されたハックに叩き起こされる。
「飯だとよ」
「うげ…… もう朝? 眠いよ」
歩きながら寝てるそんな状況。
昨夜は結局四時過ぎに寝たからな。当然三時間では寝たりない。
「ははは…… 」
笑いが溢れる。
どうして皆こんなに元気なんだ?

お待ちかねの旅館特製の暗闇尽くし。
ごく普通のパンを真っ黒焦げにした一品。
ノリは世界有数の養殖地からお取り寄せした最高級ノリ。
パンよりもご飯のお供だがパンの乗せれば不思議と食欲が湧く。
デザートのチョコレートはポルフェノール豊富。
そのままかじるのもいいし。一個ずつ砕いてミルクに浸すのもいい。
その場で食べずに持って帰る者もいると聞く。
旅には栄養価の高い必需品とも言える存在。
ただ熱に弱いので保存が難しいのが欠点かな。

暗闇尽くしを堪能する。
出来ればもう少し体にいいものが良いかな。
野菜も僅かで肉も魚もないのでは味気ない。
それと最大の欠点は朝だから当然明るい。これでは暗闇尽くの魅力が半減する。
ここが改善ポイント。

「ありがとうございました美味しかったです」
「本当にもう一泊しなくていい? 」
女将さんが残念そうにため息を吐く。
いやさすがに危険過ぎる闇鍋。
誰が楽しみにしてると? ふざけ過ぎだ。
「それでは行ってきます」
別れを惜しむ。
「異常に暗かったでしょう? これは冒険者がダンジョンで平静を保てるように。
成功を祈ってます。どうか気をつけて」
女将に見送られ旅立つ。

暗闇の光もそれなりの意味があったらしい。
俺たちは知らず知らずのうちにレベルアップしたことになる。
これでダンジョンの暗闇を恐れる必要もない。
迷った時にパニックになることもないだろう。
昨夜の体験は予行練習みたいなものだったのかな。
もし女将を信じるなら旅行者にとってどれほど有意義だったか。

お土産にとダンジョンの地図まで買わされた。
支払いはもちろんエンゼルカードだから俺の懐は痛まないが上手い商売だ。
ぼろ儲けって奴だな。大体いくら人里離れたところだとしてもインフレし過ぎだし。
さあ気を引き締めてダンジョン攻略だ。

それにしても眠いな。欠伸が止まらない。寝不足が響いてる。
ハックの後を着いて行く。服を掴んで置いて行かれないように。
「ゲン止めろよ! 伸びるだろうが! 」
「ごめんごめん。リーダー代わっていいからさ」
張り切ってるだけあってここはハックに代理させるのもいい。
ハックなら任せられる。寝不足の俺ではもう役に立たない。
「ほら冗談は良いから進むの! 」
エクセルに促される。
「あれダンジョンの入り口に大勢集まってるぜ。お祭りでもあるのか? 」
ハックの何気ない一言。
敵か味方か分からない一般の冒険者にも見えるが実際のところどうか分からない。
もしかしたらモンスターの可能性も。安易に近づき過ぎない方がいい。

ダンジョン攻略の前にトラブル発生。
入口に大勢の姿が。しかもどこかで見た気がする。
うーんどこでだ?
入口にいる奴らに気付かれないように距離を取る。
確認は目の良いハックに。
彼は仕事柄目が良くなくてはならない。
ただの間抜けな盗賊ではない。
ついにハックの能力が発揮される時が来た。

アプリンと目が合った。
仕方なく危なくないように手をつなぐ。
下手すればはぐれその結果悲惨な展開を迎えてもおかしくない。
「へへへ…… 」
「ありがとうゲンちゃん」
アプリンは素直でいい子だ。
俺にもハックにだって優しい。
「ほらボケっとしない! 地図を見るの手伝って」
エクセルは非情モード。さばさばした妖精さん。
「いや俺はちょっと…… 」
「ほら一緒に見よう」
優しいアプリン。本当に癒される。

「あった! 入口以外にももう一か所」
ダンジョンの裏に気付かれないように回り込む。
積み上げられたレンガにカモフラージュされたもう一つの入り口を探し当てる。
さっそく購入したダンジョンの地図が役に立った。
これは旅行者が迷わないようにと詳しい順路まで載っている。
この通りに行けばダンジョンを抜けるのは楽勝。
さあ奴らに気付かれないようにレッツゴー!

チーム・パイソンズはついにダンジョンへと足を踏み入れた。

                 続く
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