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真っ暗お風呂体験

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「ハック! おーいハック! 」
いくら呼びかけてもハックの声は聞こえない。
まさか知らないうちに闇の世界に紛れ込んでしまったのか?
何も見えず何も聞こえない。
そんな絶望的な世界でハックを呼び続ける。

よく考えれば俺は一人だ。
常に孤独だ。誰一人村の者はいない。
いるのは美魔女の千年妖精エクセルと盗みのプロで手癖と女癖の悪いハック。
そして美しくも可愛らしいアプリン。
四人で調子に乗ってパイソンズ何てチームを作ったけ。
結局俺は夢の中に閉じ込められていたに過ぎない。
ほら夢が覚めればいつもの言の葉の村の仲間たちが笑っているはず。
あははは……

ブツブツ
ブツブツ
まずいまずい。つい寂しさから現実逃避をしてしまう。
だがここは言の葉村ではない。
ただの第二世界でただ風呂に入ろうとしてるだけ。
仕方なく耳を凝らす。

ピチャピチャ
ピチャピチャ
音のする方へ。
「もう遅いんだからゲン! 」
トゲのある妖精さんの声がする。
もちろん混浴だから不思議じゃないんだけどさ。いざ入るとなると緊張するな。
「いや慣れなくて…… 怖いんですけど」
今夜俺たちは一体どうなってしまうのだろう?
「もう! 田舎者だからこんな暗闇どってことないでしょう? 」

エクセルは酷い思い違いをしている。
故郷言の葉村は確かに田舎で不便だけれど決して明かりが無い訳ではない。
夏には蛍が照らしてくれる。
満月には月の光が照らし満天の星が寂しい気持ちを癒してくれる。
そもそも村では風呂は日が暮れる前か朝に入るのが基本。
大体毎日風呂に入るのは贅沢と言うものだ。
毎日夜遅くに入るのは村では美人三姉妹ぐらいなもの。
そいつらと来たら朝にまで入るから贅沢者だと陰で言われている。
ちなみに言ってたのは俺たち当時の近所の悪ガキ連中だ。
弟は仲間外れにされ文句言っていたがまだいくら何でも早すぎる。
もう少し成長するかレベルアップするかしないとな。
あれおかしいな? 俺は何を告白してるんだろう?

「ゲンはしょうがねえな! 」
俺を置いて先に行った薄情者のハック。
興奮してんじゃねえ!
おっといけない。つい怒りから感情がコントロールできなくなってしまう。
真っ暗闇に一人きりではこうなっても仕方がないか。
自分を正当化する言い訳ばかりで情けない限り。
こんな姿を仲間に、特にアプリンには見せられない。
昨夜はかなりいい感じだった。

「アプリンもいるの? 」
大人しく風呂に浸かってる絶世の美少女。
さぞかし素晴らしいスタイルをしてるのだろうが真っ暗では想像するしかない。

暗闇の中で露天風呂に浸かる。
暗くて熱くて興奮する。それでなくても緊張すると言うのに。
もう感情がついて行かない。
「ほら押さないの! 」
ハックが暴れるものだから湯があふれる。
「細かいことは良いじゃねえか。ははは…… 」
まったく反省の色が見られない様子のハック。
「ふふふ…… 」
恥ずかしいのか一言も発っさないアプリン。

「さあそろそろ上がりましょうか」
「まだいいんじゃないかエクセル。のんびりしようよ」
「ほら馬鹿言ってないで出るわよ! 」
ほとんど入れなかった上に体も洗ってない。
先に出るように言いたいが一人になるのも怖い。
仕方なく上がることに。

生まれたままの格好を支えてもらう情けない主人公。
恐らくエクセルではない。優しくしてくれるのはアプリン。身長的にも頷ける。
貴重なお風呂体験もこれにて終了。
後は眠るだけ。

四人一組狭い部屋で横になる。
布団を敷くともう動きが取れないぐらい狭い。こんなものか。
エクセルがケチだからこう言う目に遭うと文句を垂れる。
昨日は贅沢するなと言ったと正論で返すエクセル。
それはそうなんだけどさ…… 広い部屋で良くない?
まあ俺としてはラッキーなのかな?

「ちょっと変なことしないでよね! 」
エクセルが釘を刺すがまさか手を出すはずがない。
いくら可愛くても妖精。人間ではない。それに俺はそんなケダモノでもない。
性格もあまりよくなくそれに大先輩。異種でもあるモンスターの一種。
興味はあっても体が拒絶する。
残念だけど決して結ばれない二人って訳だ。
それに引き換えアプリンはと言うと…… 
俺が動かなくても積極的なアプリンなら向こうから迫って来るに違いない。
へへへ…… ダメだよアプリン。
妄想が止まらない。

四人は北枕にならないように川の字に眠る。一人多いけどね。
トイレが近いハックの隣が俺でその隣がエクセル。一番奥にアプリンが。
エクセルが俺たちの関係に嫉妬し隣を阻んだとも言える。
考え過ぎかな?

                  続く
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