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妖精講座

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うーん。突然のキスに動揺が収まらない。
妖精からキスされるなんてレアな体験だとは思うけれど……
嬉しいかと言えば別にそうでもない。

エクセルは大したことないと言うが俺には大問題。
だってファーストキスなんだぜ。
男からたまにされることはあっても女からされることはまずない。
あれ…… 俺おかしなこと言ってないか?
アンとだってまだだ。だから少々罪悪感がある。
妖精は人間ではないからノーカウントだとは思うけれど。
うん? ノーカウント? ノーカント?
最近つまらないことが気になって仕方がない。
ノーバウンドはノーバンドだしな……

手でゴシゴシするがまだ感触が残る。
いくら契約でもキスして良い訳がない。
俺が男だから文句は言わないけど立場が逆だったらボコボコにされるに違いない。
待てよ。実験するのも悪くない…… って冗談言ってる時じゃないか。

「ほらボケっとしない! 」
男が近づいて来た。
見た目は善良そうな村人?
豹変しかねないタイプではあるが問題ないだろう。
「なあこいつもモンスターなのか? 」
そう言ってる間に豹変モンスターに一撃を喰らう。

「痛いな…… 痛えよ! 」
我慢しきれずに叫んでしまう。
「もうバカなんだから。気をつけてって言ったでしょう! 」
まだよく仕組みも理解してない。それどころか世界観だってよく分かってない。
そんな俺に文句ばかり。不機嫌で口うるさい妖精さんだぜ。

エクセルが指示を送る。
「急いでワードフォルダーを。早く! 」
「よしこれだな」

【ぶっころすぞ! 】
暴力ワードを投げつけモンスターは消滅。

「危なかったわ。あなた今瀕死の状態よ。でも大丈夫これを飲んで。
三分待てば完全回復するから。それまでは人に出くわさないようにね」

三分後。
「ほら回復した」
エクセルの魔法にかかったかのように体が軽い。治癒したらしい。

「おかしなシステムだな。それでお前の歳は? いくつなんだよ? 」
「ほらまた人が来た」
それでも決して答えようとしない若作りの妖精さん。
今度はさすがに油断しないぜ。
杖を突いたお婆さん。本当にモンスター?
ただの散歩のお婆さんに見えるが。
 
フォルダーからワードを。これでいいか。
【舐めるな! 】

「きゃああ! 」
何とお婆さんは勢いよく逃げて行った。
警告①が加わった。

「おいこれはどう言うことだ? 」
「だから言ったでしょう? この世界には人間とモンスターが共存してるって。
それで今のお年寄りは人間。だからあなたは単純に言葉の暴力を振るっただけ。
善良なお年寄りに酷いことをしたの。きちんと反省なさい! 」

「何だそういうことか…… ってどうすればいいんだ? 警告①ってのは? 」
「もうバカなんだから! 警告が五つたまったら強制的に刑務所の中。
正式には収監猶予警告。どこからともなく警告を受けるから。
あなたもあそこがどう言うところか知ってるでしょう? それは恐ろしいところよ。
モンスターは攻撃していい。しかし人間はたとえ言葉でも暴力を振るってはダメ。
そう言う世界になってます。それから何か? 」

「年齢は…… もういいや。それよりなぜお前がこの世界のすべてを知ってる? 」
「それはね…… あんたを食おうとしてるからだよ。ヒヒヒ…… 」
おふざけ気味の妖精さん。

じっと見つめる。耐えられなくなり仕方なく続けるエクセル。
「それはね…… 私がモンスターだから。
残念だけどこの世界を支配してる側ってことになるかしら。
でも人間も大人しくしていれば危害を加えない。
ほぼ前の世界と変わらない生活を送れる。
あなたみたいに外から来た人間は例外ね。
だから身を守る為にそのワードフォルダーとカードがある訳。
ただそのフォルダーを持つ者は選ばれた戦士よ。
頑張って勇者ゲン! この世界はあなたに掛ってる」

「エクセル…… 」

「まあ冗談はこれくらいにして仲間探しでしょう?
あなたみたいな人は旅をして行くうちに出会えると思うから安心して。
私からしたら迷惑な存在だけどいないと私の仕事がなくなっちゃうから困る。
ジレンマって奴かしらね」

エクセルは長々と大体のことを話してくれた。
分からないことがあればその都度教えるとのこと。
モンスターも決して好戦的なのではなく異人を排除する役割がある為だそう。
こうすることでこの世界を陰から守っている側面もある。

難しい話はいいから早くアンの元へ。

                 続く
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