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死者からの電話
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「ニ時間もあれば殺害してバラバラにするのも不可能じゃない」
刑事の主張に堪えきれずにコウが笑い出した。
「ははは…… 愉快な刑事さんだ。
そこのお婆さんに代わって最も詳しい自分から説明しますね。
二時間と言っても往復の時間も入ってますし儀式の準備等かなり忙しいんです。
約二時間であれば通常よりもゆっくりと言ったところ。
バラバラにするのは不可能。殺人だって難しい」
大家さんの代わりにコウ君が答える。
「ありがとうコウ君。ではまとめようかね。
まずは二女を儀式の間へ導き儀式を始めたところで殺害。
送りではそこまででしょう。
続いて遺体となった二姫さんからの要望で再び湖の館へ。
そこで死体をバラバラにして半分持ち帰る。
迎えの儀で残り半分と証拠品すべてを回収。
テキパキやればそれこそ三十分で出来なくもない。後は証拠品を処分すればいい。
二女が居なくなったと騒げば役目を終える。これで完全犯罪の出来上がり」
コウは下を向く。どうやら答えたくないらしい。
「ううん? 何かおかしくねいか? 」
刑事が再び吠える。今度ばかりは的を得ている。
「あらあらあんたでもこの矛盾に気付いたかい。うん立派。立派だよ」
「こら。警察をおちょくるんじゃなえよ婆さん」
まさか刑事さんの口から指摘されるなんて夢にも思わなかった。
「おかしいですかね? 」
コウ君が矛盾に気付いてるにもかかわらずとぼける。
そんな白々しい嘘がまさか通用するとでも? 無理だ。無理があるよコウ君。
「送りの時点で死亡した奴がどうして催促や注文の電話をかけられるってんだ? 」
「オーインポッシブル」
この消失事件の肝。死体は口を利かない。
「その辺りのことは先生にお任せします。もう分かりましたよね」
大家のプレッシャー。私を立ててくれるのは有難いが何一つ思いつかない。
探偵の勘が錆びついたか? 沈黙するしかない。
二分が経過した時だった。突然閃く。
「そうか。私はとんでもないミスをしてしまったのかもしれない」
なるべく抑えたつもりだったが驚いてる様子を見ると叫んだらしい。
「催促の電話…… 」
助手が息を吹き返した。
「電話がかかってきた時、確か最初に応対したのがコウで相手は確か三貴さん。
その後二姫から電話を受けた先生はコウの説明で二姫を知る。
しかしコウを指名した彼女は実際には…… あれ…… 」
「そうだ。助手の言う通り私はコウ君の思うままに行動、いや認識してしまった。
あの電話で二姫があたかも生きてるように錯覚させられた。実に巧妙だ。
姉妹の声を初めて聴いた私たちにとって頼るべきはコウ君。
隣村の儀式の手伝いをしているだけに過ぎないコウ君を疑うことはない。
二姫がその時まで生きていて注文の電話をかけてきたと思わせた。
私は何も知らずに指名した者の元へ行くようにコウ君にお願いした。
コウ君が指摘したように高圧的で人を見下したような口調。
あれは二姫だと錯覚させるためだった。違うかいコウ君? 」
ついに第一村人と迷探偵相交える。
互いに尊敬し信頼しかばい合った二人がついに全面対決。
悲劇の幕開け。
「探偵さんすいません…… 自分…… 確かに当初の目的、計画では二姫を生きているように見せる必要があった。しかし…… 」
言いにくそうに継ぐコウ君。
まさか自分たちをアリバイに利用してるとは夢にも思わなかった。
助手の負った傷は浅くない。
「それだけでなく一葉からの定時連絡が無いことも含ませ何か異変が起きていると警告する狙いも」
「ええ。当初は本当にそうでした。自分の立てた計画にも自信を持っていました。
それがいつの間に狂っちまったのか自分でも分かりません」
もはや絞り出してる状態。これ以上はかわいそうな気もするが仕方ない。
「これが私たちをこの村におびき寄せた本当の狙いだった」
「ええ。それとアリバイ作りに利用させてもらいました。申し訳ない……
第一の消失の時に離れで一葉お嬢様の世話をしておりました。
ほらあの鶏肉は美味しかったでしょう? 」
想像しただけで吐き気がする。
「鶏肉は良いとして離れでは一葉を解体していた。そうだね? 」
「それは否定しません」
「コウ君。君には失望したよ。助手だってもう立ち直れないかもしれない」
「すみません。でも仕方なかったんです。
それとあの鶏肉は本当に近所からのもらい物でただの偶然。
良くある事です。驚きましたけどね」
「そうするとあの血はまさか…… 」
「服やタオルの血はもちろん一葉の。探偵さんたちが正しかったんです」
「ふざけるなこの野郎」
助手が殴りかかろうとするが警察に取り押さえられる。
続く
刑事の主張に堪えきれずにコウが笑い出した。
「ははは…… 愉快な刑事さんだ。
そこのお婆さんに代わって最も詳しい自分から説明しますね。
二時間と言っても往復の時間も入ってますし儀式の準備等かなり忙しいんです。
約二時間であれば通常よりもゆっくりと言ったところ。
バラバラにするのは不可能。殺人だって難しい」
大家さんの代わりにコウ君が答える。
「ありがとうコウ君。ではまとめようかね。
まずは二女を儀式の間へ導き儀式を始めたところで殺害。
送りではそこまででしょう。
続いて遺体となった二姫さんからの要望で再び湖の館へ。
そこで死体をバラバラにして半分持ち帰る。
迎えの儀で残り半分と証拠品すべてを回収。
テキパキやればそれこそ三十分で出来なくもない。後は証拠品を処分すればいい。
二女が居なくなったと騒げば役目を終える。これで完全犯罪の出来上がり」
コウは下を向く。どうやら答えたくないらしい。
「ううん? 何かおかしくねいか? 」
刑事が再び吠える。今度ばかりは的を得ている。
「あらあらあんたでもこの矛盾に気付いたかい。うん立派。立派だよ」
「こら。警察をおちょくるんじゃなえよ婆さん」
まさか刑事さんの口から指摘されるなんて夢にも思わなかった。
「おかしいですかね? 」
コウ君が矛盾に気付いてるにもかかわらずとぼける。
そんな白々しい嘘がまさか通用するとでも? 無理だ。無理があるよコウ君。
「送りの時点で死亡した奴がどうして催促や注文の電話をかけられるってんだ? 」
「オーインポッシブル」
この消失事件の肝。死体は口を利かない。
「その辺りのことは先生にお任せします。もう分かりましたよね」
大家のプレッシャー。私を立ててくれるのは有難いが何一つ思いつかない。
探偵の勘が錆びついたか? 沈黙するしかない。
二分が経過した時だった。突然閃く。
「そうか。私はとんでもないミスをしてしまったのかもしれない」
なるべく抑えたつもりだったが驚いてる様子を見ると叫んだらしい。
「催促の電話…… 」
助手が息を吹き返した。
「電話がかかってきた時、確か最初に応対したのがコウで相手は確か三貴さん。
その後二姫から電話を受けた先生はコウの説明で二姫を知る。
しかしコウを指名した彼女は実際には…… あれ…… 」
「そうだ。助手の言う通り私はコウ君の思うままに行動、いや認識してしまった。
あの電話で二姫があたかも生きてるように錯覚させられた。実に巧妙だ。
姉妹の声を初めて聴いた私たちにとって頼るべきはコウ君。
隣村の儀式の手伝いをしているだけに過ぎないコウ君を疑うことはない。
二姫がその時まで生きていて注文の電話をかけてきたと思わせた。
私は何も知らずに指名した者の元へ行くようにコウ君にお願いした。
コウ君が指摘したように高圧的で人を見下したような口調。
あれは二姫だと錯覚させるためだった。違うかいコウ君? 」
ついに第一村人と迷探偵相交える。
互いに尊敬し信頼しかばい合った二人がついに全面対決。
悲劇の幕開け。
「探偵さんすいません…… 自分…… 確かに当初の目的、計画では二姫を生きているように見せる必要があった。しかし…… 」
言いにくそうに継ぐコウ君。
まさか自分たちをアリバイに利用してるとは夢にも思わなかった。
助手の負った傷は浅くない。
「それだけでなく一葉からの定時連絡が無いことも含ませ何か異変が起きていると警告する狙いも」
「ええ。当初は本当にそうでした。自分の立てた計画にも自信を持っていました。
それがいつの間に狂っちまったのか自分でも分かりません」
もはや絞り出してる状態。これ以上はかわいそうな気もするが仕方ない。
「これが私たちをこの村におびき寄せた本当の狙いだった」
「ええ。それとアリバイ作りに利用させてもらいました。申し訳ない……
第一の消失の時に離れで一葉お嬢様の世話をしておりました。
ほらあの鶏肉は美味しかったでしょう? 」
想像しただけで吐き気がする。
「鶏肉は良いとして離れでは一葉を解体していた。そうだね? 」
「それは否定しません」
「コウ君。君には失望したよ。助手だってもう立ち直れないかもしれない」
「すみません。でも仕方なかったんです。
それとあの鶏肉は本当に近所からのもらい物でただの偶然。
良くある事です。驚きましたけどね」
「そうするとあの血はまさか…… 」
「服やタオルの血はもちろん一葉の。探偵さんたちが正しかったんです」
「ふざけるなこの野郎」
助手が殴りかかろうとするが警察に取り押さえられる。
続く
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