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嘘だ! 動くサライちゃん
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「消失のトリックはこうです。アリサの時同様サライちゃんをずらします。
ほらこんな風に…… あれおかしいな…… 」
当然動くはずがない。
「先生。もうその辺で…… 」
せっかく花を持たせようと振るのだがその都度ボケをかます探偵。
これでは探偵失格。
「おい探偵さん。焦り過ぎだって」
「深呼吸。深呼吸。先生落ち着いてください」
助手の言に従い呼吸を整える探偵。
あーあ。ダメだよ探偵さん。さっき動かそうとした自分なら分かる。絶体に無理。
サライちゃんを破壊でもしない限り隣の世界に繋がる穴は出現しやしない。
事件当時とは状況が変化している。
容疑者たちからも疑問の声が。
「サライちゃんをどう動かすんだ。都会の人はそんな根本的なことも忘れたってか」
「オウ・イッツ・クレイジー」
ここぞとばかりにそれまで大人しくしていた次郎が口を開く。
そこにルーシーのとどめの一撃。
探偵撃沈。
ざわざわ
ざわざわ
慌ただしくなってきた。
婆さんは何やら刑事と目配らせ。
すぐに親指を立てる刑事。
自信喪失の探偵さんは俯いたまま一言も発さない。
探偵さん。元気出して。
「探偵さんは間違っていません。自分を信じて」
「ありがとう」
つい敵に塩を送る。
追い詰められているのは自分なのになぜか探偵さんが放っておけない。
「先生もう一度お願いします」
婆さんが再度呼びかける。
自信喪失したまま復活させない方がこちらには好都合。
だが良くしてくれた探偵さんや助手がどうしても気になる。
しかしもう一度やれなど何を考えているのか。
何度やろうと無理な物は無理。
探偵さんを潰す気か?
追い詰めてどうする?
鬼? 鬼なのか?
ここで引き下がれない。もう一度。
「いや済まない皆。もう一度やってみるよ」
サライちゃんの前に立ち力一杯押し込む。
前にやった通りに動かす。
力を徐々に強めていく。
ギギギ
ガン
サライちゃんが動いた。
てこの原理?
宇宙の力?
自然現象?
オカルト?
真犯人以外が驚愕の声を上げる。
あの不動のサライちゃんが動いたのだ。
目の前で起きた現象が信じられないと言った様子。
真犯人の俺も違う意味で驚きを隠せない。
これは一体どういうことだ?
俺は確かトリックがばれないように閉じたはず。
記憶にはないが動かせなかったのが何よりの証拠。
ついさっきの出来事だ。間違えるはずがない。
いや間違っていたとしたら脱出してることになる。
こんな婆さんの茶番に付き合わされることもなかっただろう。
これはどう言うことだ?
「どういうこと? 」
「固定してあるんじゃないのか? 」
「あんなデカいのを誰がどうやって? 」
好き勝手に感想を言い出す観衆と化した容疑者たち。
「イッツ・クレイジー、ベリーベリーエキサイティング
オーワンダフル、オーマイゴッド」
大騒ぎしたと思ったら涙を流しその場に崩れ落ちるルーシー。
情緒不安定な女。
昔幼かった彼女はアリサと共にこの東の館から逃れた。
その日の記憶が火と共に蘇ったのだろう。
穴。サライちゃんで隠れていた穴が突如出現した。
東の館守護神サライちゃんが最後の砦として君臨。今、目に見えない役目を終える。
外へと通じる穴が開いていた。
穴はさほど大きなものではないが大人一人が何とか入れる作り。
もし閉所恐怖症等でなければ十分に出入り可能。
ただ体格のいい者は注意が必要で途中で引っかかったら誰も助けてくれない。
アリサの頃は少女たちだったからまったく問題なかっただろう。
うわわ……
穴から人の顔が見える。
「こちら…… 上手く行きましたか? 」
新米警官のようで無線に何か話しかけている。
「おい、無線はもういい。そのまま話してくれ」
刑事が命令する。
タイミングを見計らって再び婆さんが語る。
「これが秘密の穴さ。この事件の肝だね。この事実を知っているのは今では元村長さんだけになっちまったよ。それから真犯人もだったね」
監視は緩まない。
まったくもう分かってるくせに。しらじらしい。
なぜ早く指摘しない。
犯人は俺だと。第一村人はこの俺だと。
なぜ捕まえない。もうとっくに覚悟は出来てる。
じわじわと追い詰めて俺が弱っていく様を楽しむつもりか。
もういいだろ? これ以上は時間の無駄。疲れたよ。
頼むよ探偵さん。頼む。
続く
ほらこんな風に…… あれおかしいな…… 」
当然動くはずがない。
「先生。もうその辺で…… 」
せっかく花を持たせようと振るのだがその都度ボケをかます探偵。
これでは探偵失格。
「おい探偵さん。焦り過ぎだって」
「深呼吸。深呼吸。先生落ち着いてください」
助手の言に従い呼吸を整える探偵。
あーあ。ダメだよ探偵さん。さっき動かそうとした自分なら分かる。絶体に無理。
サライちゃんを破壊でもしない限り隣の世界に繋がる穴は出現しやしない。
事件当時とは状況が変化している。
容疑者たちからも疑問の声が。
「サライちゃんをどう動かすんだ。都会の人はそんな根本的なことも忘れたってか」
「オウ・イッツ・クレイジー」
ここぞとばかりにそれまで大人しくしていた次郎が口を開く。
そこにルーシーのとどめの一撃。
探偵撃沈。
ざわざわ
ざわざわ
慌ただしくなってきた。
婆さんは何やら刑事と目配らせ。
すぐに親指を立てる刑事。
自信喪失の探偵さんは俯いたまま一言も発さない。
探偵さん。元気出して。
「探偵さんは間違っていません。自分を信じて」
「ありがとう」
つい敵に塩を送る。
追い詰められているのは自分なのになぜか探偵さんが放っておけない。
「先生もう一度お願いします」
婆さんが再度呼びかける。
自信喪失したまま復活させない方がこちらには好都合。
だが良くしてくれた探偵さんや助手がどうしても気になる。
しかしもう一度やれなど何を考えているのか。
何度やろうと無理な物は無理。
探偵さんを潰す気か?
追い詰めてどうする?
鬼? 鬼なのか?
ここで引き下がれない。もう一度。
「いや済まない皆。もう一度やってみるよ」
サライちゃんの前に立ち力一杯押し込む。
前にやった通りに動かす。
力を徐々に強めていく。
ギギギ
ガン
サライちゃんが動いた。
てこの原理?
宇宙の力?
自然現象?
オカルト?
真犯人以外が驚愕の声を上げる。
あの不動のサライちゃんが動いたのだ。
目の前で起きた現象が信じられないと言った様子。
真犯人の俺も違う意味で驚きを隠せない。
これは一体どういうことだ?
俺は確かトリックがばれないように閉じたはず。
記憶にはないが動かせなかったのが何よりの証拠。
ついさっきの出来事だ。間違えるはずがない。
いや間違っていたとしたら脱出してることになる。
こんな婆さんの茶番に付き合わされることもなかっただろう。
これはどう言うことだ?
「どういうこと? 」
「固定してあるんじゃないのか? 」
「あんなデカいのを誰がどうやって? 」
好き勝手に感想を言い出す観衆と化した容疑者たち。
「イッツ・クレイジー、ベリーベリーエキサイティング
オーワンダフル、オーマイゴッド」
大騒ぎしたと思ったら涙を流しその場に崩れ落ちるルーシー。
情緒不安定な女。
昔幼かった彼女はアリサと共にこの東の館から逃れた。
その日の記憶が火と共に蘇ったのだろう。
穴。サライちゃんで隠れていた穴が突如出現した。
東の館守護神サライちゃんが最後の砦として君臨。今、目に見えない役目を終える。
外へと通じる穴が開いていた。
穴はさほど大きなものではないが大人一人が何とか入れる作り。
もし閉所恐怖症等でなければ十分に出入り可能。
ただ体格のいい者は注意が必要で途中で引っかかったら誰も助けてくれない。
アリサの頃は少女たちだったからまったく問題なかっただろう。
うわわ……
穴から人の顔が見える。
「こちら…… 上手く行きましたか? 」
新米警官のようで無線に何か話しかけている。
「おい、無線はもういい。そのまま話してくれ」
刑事が命令する。
タイミングを見計らって再び婆さんが語る。
「これが秘密の穴さ。この事件の肝だね。この事実を知っているのは今では元村長さんだけになっちまったよ。それから真犯人もだったね」
監視は緩まない。
まったくもう分かってるくせに。しらじらしい。
なぜ早く指摘しない。
犯人は俺だと。第一村人はこの俺だと。
なぜ捕まえない。もうとっくに覚悟は出来てる。
じわじわと追い詰めて俺が弱っていく様を楽しむつもりか。
もういいだろ? これ以上は時間の無駄。疲れたよ。
頼むよ探偵さん。頼む。
続く
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