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追い詰められた第一村人 大家による推理ショー開幕
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九時。
外はもう真っ暗。おそらくこの時間になれば誰も出歩く者はいないだろう。
サライちゃんに怯える村。
ウゴゴウゴオオルル
ルルガガガ
さっきからうるさい。助手のバラエティー豊かなイビキ。
何だウゴウゴルーガってのは? 呪文か何かか?
これではせっかくのイケメンが台無しだ。
それにしてもずいぶん余裕じゃないか。
助手の分際で私よりも先に寝てしまうなど。
普通逆だぞ。まあ騒がれるよりはいいか。
しかしこれが疑われている者の態度か?
こっちがどれだけ心配していると思っているんだ。
助手相手に本気で怒るのも少々大人げないが……
いつの間にかルーシーとコウが姿を消した。
予定通り。
服を着替えて準備完了。
後は助手を叩き起こすだけ。
うーん。気が引ける……
「先生。先生」
私を呼ぶ声。
「何だ大家さんか」
「あらこの子ったら眠ってるじゃない。緊張感のない。先生が甘やかすから…… 」
「まあまあ。いいじゃないか。まだまだ子供みたいなものなんだから」
「それはまあそうですけど…… 準備は整いましたか? 」
「ああ行こうか」
「ちょっと先生。まさかこの子を置いて行こうなんて考えていませんよね? 」
私はどうしたらいい?
助手は本来探偵のそばにいるもの。犯人を追い詰めるとなったらいなければ困る。
だが今回は事情が違う。彼も私でさえも容疑者の一人であり関係者でもある。
だから無関係な大家さんの協力さえあればいいと思っていた。
しかし当然ながら大家さんは否定的だ。甘えは許さないそうだ。
大丈夫かな……
助手の心を心配している。
だが大家さんはもっと厳しく接しろと言う。
確かに言いたいことは分かる。だが今はもうそんな時ではない。
「まさか…… 今起こそうと…… 彼だって今回の一連の事件の容疑者の一人。
さすがに放っておくわけにはいかないさ」
本当ですかと疑いの目を向ける。
まったくちっとも信用してないな。
大家さんは普段は温厚だが探偵に関することとなると熱く仕事への姿勢にも厳しい。
まさか連れてくるように念を押しに来たとか。
「そうですか。各々に見張りをつけますのでお安心ください」
「それで何か分かった? 」
「第三の消失についてですが私からお話しておくことが」
警察と大家さんによる協議の結果を報せに来た。
あのゴリラのような刑事は私ではなく大家さんにご執心。
それはそれで構わない。
私の推理や意見などもはや聞いておらず大家に心酔している。
別にそれもそれで構わない。
「消失は起きていない? 一体どういうこと? 」
「そのままの意味です。詳しくは推理ショーが始まってから。
もしもの時に備え警察も周りに待機させています。
心配せずに先生も大船に乗ったつもりでどっしり構えていてください」
警察との連携は取れているようだ。さすがは大家さん。抜かりはない。
ただこれだと自分の不甲斐なさが浮き彫りになるので困る。
探偵失格の烙印を押された気分。
あーあ。やってられない。逃げ出したいよ。
でも実際に逃げでもしたら大変なことになる。
警察に疑われ地の果てまで追いかかられる羽目に。無実の罪で収監されるだろう。
再び暗い地下牢で一人リッチに別荘生活を送るか。
想像しただけで寒気がする。
何にしても大家さんに美味しいところを持って行かれたそんな気がする。
私だってもう少し時間があり村の協力と警察の助けがあれば真実に辿り着けたはず。
私の手で第一村人に印籠を渡すつもりがそれも不可能になってしまったか。
まあ今のところ大家さんが一歩も二歩もリードではこれも仕方ないこと。
ただ何度も言うようにこれは対決でもショーでもない。
いち早く証拠をつかみ犯人に罪を認めさせる。
ここは大家さんに任せるのがベスト。
「具体的にはどうすれば? 」
「それは始まれば分かります」
口でそう言うばかりで決して段取りや詳細を明かさない。
探偵の自覚があると言えば聞こえはいいが結局のところ私を信用してないのだ。
これが大家さんのやり方なのだろうが不安になる。そして不満にもなる。
時期尚早ではないか。
大家さんから焦りが見て取れる。
もう少し慎重でもいいと思うが。どうやら急いでるようだ。
まあとにかくお膳立ては済んだ。
不本意ではあるが大家さんによる推理ショーの始まりだ。
大人しく様子を見守るとしよう。
推理ショーの主役ではなくあくまで観客として。
いや違った。容疑者の一人として関係者席へ招待されていたのだ。
続く
ショーのゲスト一覧。 せっかくなので一言(夜なので皆キレ気味)
アイ探偵事務所長アイこと私 なんで私が犯人なんだ。一応主人公なんですけど。
助手君 俺? 俺は眠いんだ。寝かしてくれ。
ルーシー オー・イッツ・クレージー
コウ 自分には何のことだか。何かの間違いでしょう。
門番 俺の存在を忘れるんじゃない。
山湖村元村長とその孫二人組 儂らはアリバイがある。それに犯人はあいつじゃ。
太郎と次郎 弟に聞いてくれ。 兄に聞いてくれ。
村長 どれだけ儀式を冒涜すれば気が済む。よそ者が。
外はもう真っ暗。おそらくこの時間になれば誰も出歩く者はいないだろう。
サライちゃんに怯える村。
ウゴゴウゴオオルル
ルルガガガ
さっきからうるさい。助手のバラエティー豊かなイビキ。
何だウゴウゴルーガってのは? 呪文か何かか?
これではせっかくのイケメンが台無しだ。
それにしてもずいぶん余裕じゃないか。
助手の分際で私よりも先に寝てしまうなど。
普通逆だぞ。まあ騒がれるよりはいいか。
しかしこれが疑われている者の態度か?
こっちがどれだけ心配していると思っているんだ。
助手相手に本気で怒るのも少々大人げないが……
いつの間にかルーシーとコウが姿を消した。
予定通り。
服を着替えて準備完了。
後は助手を叩き起こすだけ。
うーん。気が引ける……
「先生。先生」
私を呼ぶ声。
「何だ大家さんか」
「あらこの子ったら眠ってるじゃない。緊張感のない。先生が甘やかすから…… 」
「まあまあ。いいじゃないか。まだまだ子供みたいなものなんだから」
「それはまあそうですけど…… 準備は整いましたか? 」
「ああ行こうか」
「ちょっと先生。まさかこの子を置いて行こうなんて考えていませんよね? 」
私はどうしたらいい?
助手は本来探偵のそばにいるもの。犯人を追い詰めるとなったらいなければ困る。
だが今回は事情が違う。彼も私でさえも容疑者の一人であり関係者でもある。
だから無関係な大家さんの協力さえあればいいと思っていた。
しかし当然ながら大家さんは否定的だ。甘えは許さないそうだ。
大丈夫かな……
助手の心を心配している。
だが大家さんはもっと厳しく接しろと言う。
確かに言いたいことは分かる。だが今はもうそんな時ではない。
「まさか…… 今起こそうと…… 彼だって今回の一連の事件の容疑者の一人。
さすがに放っておくわけにはいかないさ」
本当ですかと疑いの目を向ける。
まったくちっとも信用してないな。
大家さんは普段は温厚だが探偵に関することとなると熱く仕事への姿勢にも厳しい。
まさか連れてくるように念を押しに来たとか。
「そうですか。各々に見張りをつけますのでお安心ください」
「それで何か分かった? 」
「第三の消失についてですが私からお話しておくことが」
警察と大家さんによる協議の結果を報せに来た。
あのゴリラのような刑事は私ではなく大家さんにご執心。
それはそれで構わない。
私の推理や意見などもはや聞いておらず大家に心酔している。
別にそれもそれで構わない。
「消失は起きていない? 一体どういうこと? 」
「そのままの意味です。詳しくは推理ショーが始まってから。
もしもの時に備え警察も周りに待機させています。
心配せずに先生も大船に乗ったつもりでどっしり構えていてください」
警察との連携は取れているようだ。さすがは大家さん。抜かりはない。
ただこれだと自分の不甲斐なさが浮き彫りになるので困る。
探偵失格の烙印を押された気分。
あーあ。やってられない。逃げ出したいよ。
でも実際に逃げでもしたら大変なことになる。
警察に疑われ地の果てまで追いかかられる羽目に。無実の罪で収監されるだろう。
再び暗い地下牢で一人リッチに別荘生活を送るか。
想像しただけで寒気がする。
何にしても大家さんに美味しいところを持って行かれたそんな気がする。
私だってもう少し時間があり村の協力と警察の助けがあれば真実に辿り着けたはず。
私の手で第一村人に印籠を渡すつもりがそれも不可能になってしまったか。
まあ今のところ大家さんが一歩も二歩もリードではこれも仕方ないこと。
ただ何度も言うようにこれは対決でもショーでもない。
いち早く証拠をつかみ犯人に罪を認めさせる。
ここは大家さんに任せるのがベスト。
「具体的にはどうすれば? 」
「それは始まれば分かります」
口でそう言うばかりで決して段取りや詳細を明かさない。
探偵の自覚があると言えば聞こえはいいが結局のところ私を信用してないのだ。
これが大家さんのやり方なのだろうが不安になる。そして不満にもなる。
時期尚早ではないか。
大家さんから焦りが見て取れる。
もう少し慎重でもいいと思うが。どうやら急いでるようだ。
まあとにかくお膳立ては済んだ。
不本意ではあるが大家さんによる推理ショーの始まりだ。
大人しく様子を見守るとしよう。
推理ショーの主役ではなくあくまで観客として。
いや違った。容疑者の一人として関係者席へ招待されていたのだ。
続く
ショーのゲスト一覧。 せっかくなので一言(夜なので皆キレ気味)
アイ探偵事務所長アイこと私 なんで私が犯人なんだ。一応主人公なんですけど。
助手君 俺? 俺は眠いんだ。寝かしてくれ。
ルーシー オー・イッツ・クレージー
コウ 自分には何のことだか。何かの間違いでしょう。
門番 俺の存在を忘れるんじゃない。
山湖村元村長とその孫二人組 儂らはアリバイがある。それに犯人はあいつじゃ。
太郎と次郎 弟に聞いてくれ。 兄に聞いてくれ。
村長 どれだけ儀式を冒涜すれば気が済む。よそ者が。
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