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逃走 狂いだした悪夢
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はあはあ
はあはあ
再び走る。
ここはどこだ?
なぜ私は走っている?
ルーシーとコウが振り返り心配そうにこちらを見つめる。
「どうした? 二人ともおかしいぞ」
フワフワした状態から一気に現実に戻される。
「いいから早く先生」
前を行く三人に追いついた。
「オーノー」
さっきから様子がおかしい。
それに私はなぜ走っている?
「村人が村人が…… 」
逃走しているのは分かる。
「村人がどうしたって言うんだ? コウ君答えるんだ」
いくら問いただしてもはぐらかすばかり。
「先生急いで」
助手とコウ君に腕を掴まれ引っ張られていく。
後を窺う。
「何かあったのか? 」
「村人が村人が」
またこれだ。肝心なことは話さない。
「オーマイゴッド」
ルーシーはもうそれしか言わなくなった。
森の奥へ進み身を隠す。
ここまで来ればもう一安心。だが一体何が起きているのやら。
助手がライトを切るとすぐに明かり一つない完全な闇に包まれた。
大丈夫。追手が迫っているとはいえ声や音を出さなければやり過ごせる。
突如光が差す。それと同時に怒鳴り声が。
「どこだ。どこに行った」
「おい見つかったか? 」
「どこにも居ない」
「そんな馬鹿な」
「どうしましょう? 」
「知るか。いいからしらみつぶしに探せ。奴らを逃すな」
男共が奇声を上げて向かってくる。
「早く探せ。殺しても構わん」
「ヘイ」
松明を片手に目の前を通り過ぎていく。
「ふう危なかった」
「ああ生きた心地がしなかったな」
「イッツ、クレイジー」
「どうしたんだ皆おかしいぞ。私たちは一体? 」
一番詳しいだろうコウ君を問いただす。
「一体何が起きたんだ? 」
「それが自分にもちょっと…… 実は…… 」
コウ君はどう説明すればいいか迷っているらしくはっきりしない。
「探偵さんが寝てる間に警察の方で動きがありまして。
長女と次女の死亡が確認されました」
「何? 遺体が発見された? では失踪事件から殺人事件に? 」
「はい。村では権力者一族は村の者から評判が悪く嫌われてました。
特に岩男氏は村の女性にすぐ手をつけ見境なく愛人に。
その後拾っては捨てるを繰り返し村の者を不幸のどん底に。
娘たちもご多忙に漏れず若い男に入れあげ我慢の限界。
ついには村の者が武装蜂起する最悪の事態に。
儀式の日に一族皆殺しを謀った訳です。
「何だって? いやいい。続けてくれ」
「三女の三貴さんがいち早くそのことに気づき村の外へ。運よく無事でした。
後は警察が実行犯を突き止めれば万事解決。しかし村人も馬鹿ではありません。
実行犯を引き渡す代わりに襲い掛かったのです。
数人体制の警察を制圧し駐在さんを含めた全員を惨殺。
残念です。駐在さんは関係ないと言うのに巻き込まれたんです」
残念な点はそこだけ? まあ駐在も捜査に協力してたからな仕方ないか。
確かに村人から見れば彼も裏切者に違いない。
「何てことを…… 私がいながら止められなかった。気が付いてさえいたら…… 」
悔しい。悔しくて仕方がない。
「先生は悪くありませんよ」
助手はまだ私を信じてくれている。だがこの村に来て私は一体何をしたのか?
ただ指を咥えて見ていただけで何の役にも立たなかった。
「その後一連の事件が公になるのを恐れた村人が密かによそ者を排除しようと。
さあ逃げましょう。この村から脱出するんです」
コウ君は冷静だ。諦めてもいない。実に頼もしい。
「でもコウ。どうするつもりだよ。隣村に繋がる門は閉まってるんだぞ」
昨日から通行止めになっている。
「分かってるって。何とか隙を突いて脱出をする方法を考えよう。
探偵さんもアドバイスお願いします」
コウ君が感情を露わにする。助手もつい早口になる。
ルーシーは相変わらず陽気で理解してるんだかしてないいんだか。
「おーい。声が聞こえたぞ。こっちに来てみろ」
くそ見つかってしまったか。こんな時にどうしろと?
「まずいまずい。気づかれた。急ぎましょう。こっちです」
コウ君が先導する。
とにかく急いで身を隠せる場所へ。
なるべくゆっくり。音を立てず明かりもつけずに移動を開始する。
追手に取り囲まれる前に脱出を図る。
森の奥のさらに奥へ。
続く
はあはあ
再び走る。
ここはどこだ?
なぜ私は走っている?
ルーシーとコウが振り返り心配そうにこちらを見つめる。
「どうした? 二人ともおかしいぞ」
フワフワした状態から一気に現実に戻される。
「いいから早く先生」
前を行く三人に追いついた。
「オーノー」
さっきから様子がおかしい。
それに私はなぜ走っている?
「村人が村人が…… 」
逃走しているのは分かる。
「村人がどうしたって言うんだ? コウ君答えるんだ」
いくら問いただしてもはぐらかすばかり。
「先生急いで」
助手とコウ君に腕を掴まれ引っ張られていく。
後を窺う。
「何かあったのか? 」
「村人が村人が」
またこれだ。肝心なことは話さない。
「オーマイゴッド」
ルーシーはもうそれしか言わなくなった。
森の奥へ進み身を隠す。
ここまで来ればもう一安心。だが一体何が起きているのやら。
助手がライトを切るとすぐに明かり一つない完全な闇に包まれた。
大丈夫。追手が迫っているとはいえ声や音を出さなければやり過ごせる。
突如光が差す。それと同時に怒鳴り声が。
「どこだ。どこに行った」
「おい見つかったか? 」
「どこにも居ない」
「そんな馬鹿な」
「どうしましょう? 」
「知るか。いいからしらみつぶしに探せ。奴らを逃すな」
男共が奇声を上げて向かってくる。
「早く探せ。殺しても構わん」
「ヘイ」
松明を片手に目の前を通り過ぎていく。
「ふう危なかった」
「ああ生きた心地がしなかったな」
「イッツ、クレイジー」
「どうしたんだ皆おかしいぞ。私たちは一体? 」
一番詳しいだろうコウ君を問いただす。
「一体何が起きたんだ? 」
「それが自分にもちょっと…… 実は…… 」
コウ君はどう説明すればいいか迷っているらしくはっきりしない。
「探偵さんが寝てる間に警察の方で動きがありまして。
長女と次女の死亡が確認されました」
「何? 遺体が発見された? では失踪事件から殺人事件に? 」
「はい。村では権力者一族は村の者から評判が悪く嫌われてました。
特に岩男氏は村の女性にすぐ手をつけ見境なく愛人に。
その後拾っては捨てるを繰り返し村の者を不幸のどん底に。
娘たちもご多忙に漏れず若い男に入れあげ我慢の限界。
ついには村の者が武装蜂起する最悪の事態に。
儀式の日に一族皆殺しを謀った訳です。
「何だって? いやいい。続けてくれ」
「三女の三貴さんがいち早くそのことに気づき村の外へ。運よく無事でした。
後は警察が実行犯を突き止めれば万事解決。しかし村人も馬鹿ではありません。
実行犯を引き渡す代わりに襲い掛かったのです。
数人体制の警察を制圧し駐在さんを含めた全員を惨殺。
残念です。駐在さんは関係ないと言うのに巻き込まれたんです」
残念な点はそこだけ? まあ駐在も捜査に協力してたからな仕方ないか。
確かに村人から見れば彼も裏切者に違いない。
「何てことを…… 私がいながら止められなかった。気が付いてさえいたら…… 」
悔しい。悔しくて仕方がない。
「先生は悪くありませんよ」
助手はまだ私を信じてくれている。だがこの村に来て私は一体何をしたのか?
ただ指を咥えて見ていただけで何の役にも立たなかった。
「その後一連の事件が公になるのを恐れた村人が密かによそ者を排除しようと。
さあ逃げましょう。この村から脱出するんです」
コウ君は冷静だ。諦めてもいない。実に頼もしい。
「でもコウ。どうするつもりだよ。隣村に繋がる門は閉まってるんだぞ」
昨日から通行止めになっている。
「分かってるって。何とか隙を突いて脱出をする方法を考えよう。
探偵さんもアドバイスお願いします」
コウ君が感情を露わにする。助手もつい早口になる。
ルーシーは相変わらず陽気で理解してるんだかしてないいんだか。
「おーい。声が聞こえたぞ。こっちに来てみろ」
くそ見つかってしまったか。こんな時にどうしろと?
「まずいまずい。気づかれた。急ぎましょう。こっちです」
コウ君が先導する。
とにかく急いで身を隠せる場所へ。
なるべくゆっくり。音を立てず明かりもつけずに移動を開始する。
追手に取り囲まれる前に脱出を図る。
森の奥のさらに奥へ。
続く
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