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囚われのコウ 無実の罪?
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警察は事件性が無い限り動くことはない。
事件が起きてようやく重い腰を上げる。
遺体さえ見つかれば捜査できるのだとか。
一見立派だが戯言でしかない。
実際今回の一連の事件も捜査に二の足を踏んでいる。
何か変だ。
あれだけ朝から大騒ぎしたと言うのにまったく……
どうも警察が大人しい。いや大人しすぎるではないか。
これはどう見ても不自然。違和感がある。
借りてきた犬? いや…… ゴリラでいいか。
「刑事さん。あんたまさか村長から指示があったのでは? 随分大人しいしそれに物分かりもいい」
「うるさい。素人は大人しく俺たちに従っていればいいんだ」
そう言うとシッシと子犬を追い払うかのように邪険に扱う。
これは困った。駐在の爺さんに頼ろうにも意見は一致している。
いや彼の反対があったのだから味方になりようがない。
バラバラ
バラバラ
ヘリが旋回してうるさい。
これ以上は時間の無駄。
私は仕方なく説得を諦め駐在所を離れコウ君のもとへ。
中央の館ではまだ儀式の最中。和楽器の音が聞こえてくる。
落ち着いた感じの雰囲気と音が心を鎮めてくれる。
村長はどこに行ったのだろう。姿が見当たらない。
仕方なく家の者の案内を受ける。
コウ君今助けに行くよ。
かび臭い光の届きずらい地下は夏は蒸し暑く冬は体に堪える寒さ。
今は春で桜の季節。寒さも収まり蒸し暑くもないので過ごしやすい。
もちろん快適には程遠い環境。
案内の者に導かれるまま地下牢へ。
旧西湖村時代からあった代物で随分と色あせ剥げている。
使われていなかったのか錆びついて見えるが牢の機能を失っていない。
牢は合計で四つ。
今は収容者が少ないので一人ずつ使っている。
このまま事件が続き容疑者が増えれば二人で一つになることも考えられる。
「ではごゆっくり」
縁起でもないことを抜かし戻っていく。もちろん他意はないのだろうが。
このまま地下牢で過ごせとも取れるしまるで暗示しているかのよう。
まあ考え過ぎではあるのだが。
「先生。先生。早く。急いで」
先に向かった助手たちと合流。
一番手前の牢にコウがいるようで二人が通路を塞ぐ形。
「おい。先生が来た。もう安心だぞ」
「いやあ。コウ君大変だったね。まさか君が容疑者にされるなんてとんだ災難だな」
囚われているコウに労いの言葉をかける。
少しは元気づけられただろうか?
憔悴しきっているコウ君を見ているとこっちまで辛くなる。
一体なぜと疑問が生まれる。
「お二人には本当に迷惑をかけます。自分には何が何だかさっぱり。
一葉さんの件もあるのでもしやとは思っていましたがまさか自分が当事者に。
しかも容疑者となると立ち直れません」
コウ君にとってはえらい迷惑。身に覚えがないのに捕まる不条理。
こっちとしても最大限汲んで励ましたいがコウ君に届くだろうか。
「はっきり言って何が起きたのか今でも分かりません。
理解しようにも自分の範疇を越えており処理が追いつかない状態。
渡しの仕事は自分の誇り。だからこんな形で儀式をぶち壊されては納得できません」
分かった。分かったと宥める。
コウ君も誰かに今の辛い気持ちを打ち明けたかったのだろう。
助手では心もとないものな。
「君の気持ちは痛い程分かる」
本当ですかと睨みつけられる。
「先生。コウも気が立っているんです。失礼な物言いですが許してやってください。
誰も信じられなくなっている。たぶん自分自身も信じられない」
助手はさも分かっているかのような口ぶり。
「そうだ。君は何で囚われているんだい? 」
考えれば分かることだが一応念の為確認する。
「もちろん第一発見者ですから。二姫殺害及び逃亡ほう助の嫌疑です。
実は西の館に行けたのは自分ただ一人なんです。行ったのも自分以外いません。
もちろんそれは二姫さんを迎えるため。儀式の一環です。
村長は容疑が晴れるまでここで大人しくしてろと。
いつまでここに居ればいいのか。今途方に暮れています」
うーん。慰めの言葉が見つからない。
このままだと彼の言う通りずっとこの地下牢に閉じ込められたままだ。
一体コウ君が何をしたと言うんだ。
いくらなんでもやり過ぎだ。間違ってる。
今すぐ解放すべき。
これは村長に掛け合うしかない。
続く
事件が起きてようやく重い腰を上げる。
遺体さえ見つかれば捜査できるのだとか。
一見立派だが戯言でしかない。
実際今回の一連の事件も捜査に二の足を踏んでいる。
何か変だ。
あれだけ朝から大騒ぎしたと言うのにまったく……
どうも警察が大人しい。いや大人しすぎるではないか。
これはどう見ても不自然。違和感がある。
借りてきた犬? いや…… ゴリラでいいか。
「刑事さん。あんたまさか村長から指示があったのでは? 随分大人しいしそれに物分かりもいい」
「うるさい。素人は大人しく俺たちに従っていればいいんだ」
そう言うとシッシと子犬を追い払うかのように邪険に扱う。
これは困った。駐在の爺さんに頼ろうにも意見は一致している。
いや彼の反対があったのだから味方になりようがない。
バラバラ
バラバラ
ヘリが旋回してうるさい。
これ以上は時間の無駄。
私は仕方なく説得を諦め駐在所を離れコウ君のもとへ。
中央の館ではまだ儀式の最中。和楽器の音が聞こえてくる。
落ち着いた感じの雰囲気と音が心を鎮めてくれる。
村長はどこに行ったのだろう。姿が見当たらない。
仕方なく家の者の案内を受ける。
コウ君今助けに行くよ。
かび臭い光の届きずらい地下は夏は蒸し暑く冬は体に堪える寒さ。
今は春で桜の季節。寒さも収まり蒸し暑くもないので過ごしやすい。
もちろん快適には程遠い環境。
案内の者に導かれるまま地下牢へ。
旧西湖村時代からあった代物で随分と色あせ剥げている。
使われていなかったのか錆びついて見えるが牢の機能を失っていない。
牢は合計で四つ。
今は収容者が少ないので一人ずつ使っている。
このまま事件が続き容疑者が増えれば二人で一つになることも考えられる。
「ではごゆっくり」
縁起でもないことを抜かし戻っていく。もちろん他意はないのだろうが。
このまま地下牢で過ごせとも取れるしまるで暗示しているかのよう。
まあ考え過ぎではあるのだが。
「先生。先生。早く。急いで」
先に向かった助手たちと合流。
一番手前の牢にコウがいるようで二人が通路を塞ぐ形。
「おい。先生が来た。もう安心だぞ」
「いやあ。コウ君大変だったね。まさか君が容疑者にされるなんてとんだ災難だな」
囚われているコウに労いの言葉をかける。
少しは元気づけられただろうか?
憔悴しきっているコウ君を見ているとこっちまで辛くなる。
一体なぜと疑問が生まれる。
「お二人には本当に迷惑をかけます。自分には何が何だかさっぱり。
一葉さんの件もあるのでもしやとは思っていましたがまさか自分が当事者に。
しかも容疑者となると立ち直れません」
コウ君にとってはえらい迷惑。身に覚えがないのに捕まる不条理。
こっちとしても最大限汲んで励ましたいがコウ君に届くだろうか。
「はっきり言って何が起きたのか今でも分かりません。
理解しようにも自分の範疇を越えており処理が追いつかない状態。
渡しの仕事は自分の誇り。だからこんな形で儀式をぶち壊されては納得できません」
分かった。分かったと宥める。
コウ君も誰かに今の辛い気持ちを打ち明けたかったのだろう。
助手では心もとないものな。
「君の気持ちは痛い程分かる」
本当ですかと睨みつけられる。
「先生。コウも気が立っているんです。失礼な物言いですが許してやってください。
誰も信じられなくなっている。たぶん自分自身も信じられない」
助手はさも分かっているかのような口ぶり。
「そうだ。君は何で囚われているんだい? 」
考えれば分かることだが一応念の為確認する。
「もちろん第一発見者ですから。二姫殺害及び逃亡ほう助の嫌疑です。
実は西の館に行けたのは自分ただ一人なんです。行ったのも自分以外いません。
もちろんそれは二姫さんを迎えるため。儀式の一環です。
村長は容疑が晴れるまでここで大人しくしてろと。
いつまでここに居ればいいのか。今途方に暮れています」
うーん。慰めの言葉が見つからない。
このままだと彼の言う通りずっとこの地下牢に閉じ込められたままだ。
一体コウ君が何をしたと言うんだ。
いくらなんでもやり過ぎだ。間違ってる。
今すぐ解放すべき。
これは村長に掛け合うしかない。
続く
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