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探偵のプライド 疑惑の容疑者A
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コウ君の協力を得て新たな展開へ。
助手の震えも収まりいつもの元気な助手が戻ってきた。
「それでどうしますか…… これから…… 」
コウの額から汗が滴り落ちる。緊張している?
「できれば現場を見ておきたい。館の出入りを許可してもらえないか」
助手の嫌そうな表情が目に入る。
今更何を。助手の仕事は探偵の手伝いではないか。
自分から望んだ仕事。これ以上の甘えは許さない。
「分かりました。何とか話をつけてみます。ですからいつでもどうぞ」
コウはそう言うと逃げるように去って行った。
「あれコウの奴。腹でも壊したのかな? 」
それはまずい。今日は彼の見せ場の渡しのはず。
どうであれコウ君の力で無事に儀式を完成させなくてはならない。
コウと言うパズルのワンピースが欠けても儀式は完成しないのだ。
第一の現場は湖。当主の岩男氏が水死体で見つかった。
第二の現場は東の館。長女の一葉が忽然と姿を消した。
果たして次はどこで誰が犠牲になるのやら。
助手を説得するのに随分時間を要してしまった。
準備完了。
私は嫌がる助手を連れて東の館へ向かう。
「おいそこの者。何をやっている。ここは立ち入り禁止だ。分っているのか? 」
昨日と同じ展開。まったく骨が折れる。
「話は通してると思うんですけど」
「ああ。あんた探偵だってな。まったくコソコソ嗅ぎ回られちゃ敵わない」
いかつい男の無駄に恐ろしい脅しや威嚇に比べたら嫌味ぐらいどってことない。
「お願いしますよ。ここを通してください」
「まったく分かったよ。特別に許可してやるよ」
目を大きく開いてふうとため息。脅しのつもりではなさそうだ。
棒を振り回されることもなく素直に中に通してくれた。
さすがに勝手に歩き回られては困ると案内をかって出てくれた。
一通り見て回る。
「何か分かったか? 」
男が笑いながら睨みつける。ぎこちない作り笑いを浮かべる不器用な男の催促。
「はあ…… まだ何とも…… 」
これだから素人は困る。そんなに簡単に手がかりが見つかるなら苦労はしない。
何といってもほぼ初めての現場なのだから。
探偵の経験など浮気調査でさえやっていない。
動物探しは辛うじてやったので完全な未経験ではない。
その辺の安楽椅子探偵と一緒にしてもらっては困る。
探偵は探偵でもなんちゃって探偵なのだから。
助手だってこの春からの若葉マーク。何やらサライちゃんを恐れているが。
「うーん。難しいな」
男の表情が曇った。
これは悪いことをしたかな。
「頼むよ。俺疑われてるんだ」
疑う? まあ見た目は輩その者だから当然と言えば当然だが。
まさか何か疑われるような言動でもしたのだろうか。
「なぜあなたが? 」
「なぜって俺は門番だろ? 一人でここを任されていたんだ疑われて当然だろ」
まあ確かにそうだが。そんな単純ならこちらも苦労しない。
第一村人がそこまで間抜けなら助かるのだが。
それにミステリーではこの手の奴を犯人にするのはご法度。
まあこれは現実で作りものではない。そんなお約束事通じないと言えばそれまで。
「そうですね。それであなたが犯人なんですか? 」
表情を窺う。
「そんな訳ないだろ。でも連中と来たら俺がかっさらったの。結託して連れ去ったの。殺してどこかに埋めたのと平気でそんなこと言うんだぜ。頭に来るだろ」
「連中とは? 」
「それは村長と駐在さ。もちろん村の奴も白い目で俺を見やがる。ただ見張りをしてただけだってのによ」
まだ失踪しただけなのにここまで…… いや確かに彼の助けなしでは不可能か。
「信じてくれ。俺は本当に門の前で構えてただけで何もしちゃいない。
いや俺の不注意かも知れねえがでも物音だって何も。もちろん誰も入れてないし。
ほんの少し食事やトイレで離れたが十分とかそこらだ。これは仕方ないことだ。
違うかい探偵さん? 」
一気にまくしたて不満をぶちまけ気分が良くなったのか助手に絡む。
「そうだろお前もそう思うよな」
「先生助けて」
ここは彼が求めている通りに肯定してやる。
「違いません。どれも当然のことであり仕方がないことです。ただ…… 」
気持ちよくなっている男に一言加えるのはとても酷だがこれも仕方ないこと。
「何だよ探偵さんよ。はっきり言ってみろよ」
「では遠慮なく。仕方ないことですがその時連れ去られた可能性は十分にあります。
いえ断定してもいい。一葉さんはその時連れ去られたんだ」
「そんな…… 俺のせい…… 」
男は静かになった。だがそれも少しの間だけだった。
「ちくしょう。やはり食事は握り飯でも食っていればよかったんだ。
近くの食堂でのんびりしていたのが仇になるとはやってられない」
男は反省と後悔の念を口にする。まあ口だけだろうが。
後悔したって今さらどうにもならない。
なぜ持ち場を離れたのかと頭を抱える哀れな男に待ち受ける未来は鉄格子の中。
続く
助手の震えも収まりいつもの元気な助手が戻ってきた。
「それでどうしますか…… これから…… 」
コウの額から汗が滴り落ちる。緊張している?
「できれば現場を見ておきたい。館の出入りを許可してもらえないか」
助手の嫌そうな表情が目に入る。
今更何を。助手の仕事は探偵の手伝いではないか。
自分から望んだ仕事。これ以上の甘えは許さない。
「分かりました。何とか話をつけてみます。ですからいつでもどうぞ」
コウはそう言うと逃げるように去って行った。
「あれコウの奴。腹でも壊したのかな? 」
それはまずい。今日は彼の見せ場の渡しのはず。
どうであれコウ君の力で無事に儀式を完成させなくてはならない。
コウと言うパズルのワンピースが欠けても儀式は完成しないのだ。
第一の現場は湖。当主の岩男氏が水死体で見つかった。
第二の現場は東の館。長女の一葉が忽然と姿を消した。
果たして次はどこで誰が犠牲になるのやら。
助手を説得するのに随分時間を要してしまった。
準備完了。
私は嫌がる助手を連れて東の館へ向かう。
「おいそこの者。何をやっている。ここは立ち入り禁止だ。分っているのか? 」
昨日と同じ展開。まったく骨が折れる。
「話は通してると思うんですけど」
「ああ。あんた探偵だってな。まったくコソコソ嗅ぎ回られちゃ敵わない」
いかつい男の無駄に恐ろしい脅しや威嚇に比べたら嫌味ぐらいどってことない。
「お願いしますよ。ここを通してください」
「まったく分かったよ。特別に許可してやるよ」
目を大きく開いてふうとため息。脅しのつもりではなさそうだ。
棒を振り回されることもなく素直に中に通してくれた。
さすがに勝手に歩き回られては困ると案内をかって出てくれた。
一通り見て回る。
「何か分かったか? 」
男が笑いながら睨みつける。ぎこちない作り笑いを浮かべる不器用な男の催促。
「はあ…… まだ何とも…… 」
これだから素人は困る。そんなに簡単に手がかりが見つかるなら苦労はしない。
何といってもほぼ初めての現場なのだから。
探偵の経験など浮気調査でさえやっていない。
動物探しは辛うじてやったので完全な未経験ではない。
その辺の安楽椅子探偵と一緒にしてもらっては困る。
探偵は探偵でもなんちゃって探偵なのだから。
助手だってこの春からの若葉マーク。何やらサライちゃんを恐れているが。
「うーん。難しいな」
男の表情が曇った。
これは悪いことをしたかな。
「頼むよ。俺疑われてるんだ」
疑う? まあ見た目は輩その者だから当然と言えば当然だが。
まさか何か疑われるような言動でもしたのだろうか。
「なぜあなたが? 」
「なぜって俺は門番だろ? 一人でここを任されていたんだ疑われて当然だろ」
まあ確かにそうだが。そんな単純ならこちらも苦労しない。
第一村人がそこまで間抜けなら助かるのだが。
それにミステリーではこの手の奴を犯人にするのはご法度。
まあこれは現実で作りものではない。そんなお約束事通じないと言えばそれまで。
「そうですね。それであなたが犯人なんですか? 」
表情を窺う。
「そんな訳ないだろ。でも連中と来たら俺がかっさらったの。結託して連れ去ったの。殺してどこかに埋めたのと平気でそんなこと言うんだぜ。頭に来るだろ」
「連中とは? 」
「それは村長と駐在さ。もちろん村の奴も白い目で俺を見やがる。ただ見張りをしてただけだってのによ」
まだ失踪しただけなのにここまで…… いや確かに彼の助けなしでは不可能か。
「信じてくれ。俺は本当に門の前で構えてただけで何もしちゃいない。
いや俺の不注意かも知れねえがでも物音だって何も。もちろん誰も入れてないし。
ほんの少し食事やトイレで離れたが十分とかそこらだ。これは仕方ないことだ。
違うかい探偵さん? 」
一気にまくしたて不満をぶちまけ気分が良くなったのか助手に絡む。
「そうだろお前もそう思うよな」
「先生助けて」
ここは彼が求めている通りに肯定してやる。
「違いません。どれも当然のことであり仕方がないことです。ただ…… 」
気持ちよくなっている男に一言加えるのはとても酷だがこれも仕方ないこと。
「何だよ探偵さんよ。はっきり言ってみろよ」
「では遠慮なく。仕方ないことですがその時連れ去られた可能性は十分にあります。
いえ断定してもいい。一葉さんはその時連れ去られたんだ」
「そんな…… 俺のせい…… 」
男は静かになった。だがそれも少しの間だけだった。
「ちくしょう。やはり食事は握り飯でも食っていればよかったんだ。
近くの食堂でのんびりしていたのが仇になるとはやってられない」
男は反省と後悔の念を口にする。まあ口だけだろうが。
後悔したって今さらどうにもならない。
なぜ持ち場を離れたのかと頭を抱える哀れな男に待ち受ける未来は鉄格子の中。
続く
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