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二日目 三貴
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北の館。三女の三貴が昨夜から儀式の為滞在。
「お前ら何をやっている? 直ちに立ち去れ。ここはよそ者の来るところじゃない」
ここでも門番が立ち塞がる。
彼も最初の男同様いかつい体をした人相の悪い輩。近づきたくもない。
この村の若い男は弱々しいイケメンかこのいかつい輩しかいないのかとさえ思える
ぐらいでその中間を見かけることは今のところない。
助手は弱々しいイケメンの方になるだろう。
コウ君も筋肉はあるがやはりこちらに分類されるだろう。
私はと言うと…… 力も強くなく筋肉質でもない。もちろん人相だって悪くない。
やはりこちらに入れてもらおうかな……
「おい。お前ら近づくんじゃない。今は神聖な儀式の真っ最中だ」
当然と言えば当然だが中に入れてくれる気配はない。シッシと追い払われてしまう。
私は子犬ではないのだが。
門番の威嚇に怖気づく子犬のような助手に代わりに立ち向かう。
「我々は観光で参りました。ぜひぜひ中の儀式の様子を見せて頂けませんか」
丁寧にお願いする。彼も人間。下手に出れば心を開くはず。
「ダメだ。ダメだ。今は儀式の最中。誰一人入れてはならぬときつく言われている。
良いから立ち去れ。この村から出て行くんだ。
まったく村の者でもないのに見学など何と図々しい。とっとと出て行け」
そう言うと棒を振り上げ突進してくる。ここは無理をせず一度退散。
作戦を立て直す。
「早く行っちまえ」
男はなかなか警戒を解かない。しつこくて困ってしまう。
こっちだって好きでやっている訳ではない。
第一村人の犯行予告が無ければあえてこんな辺鄙な村に行きはしなかった。
奴が何かしでかす前に我々で食い止めるしかない。
「申し訳ない。ここは三女の三貴さんが籠られていると聞きました」
男との距離を充分とって話しかける。
「知るか。お前たちに教えることなど一つもない。これ以上邪魔をすると痛い目に遭うぞ。とっとと失せろ」
「それでいつから? 情報では昨日から籠られると聞きました。
そうすると出て来られるのは明後日となりますが間違えありませんか。
三貴さんに変わった様子など見られませんか」
いくら邪険に扱われようと決して諦めない。
男もそのしつこさと熱意に負け態度を軟化させる。
「良く知ってるなお前ら。誰に聞いた? まあいい。これまでのことは水に流そう。
どうせ俺も暇だから話してやるがその前にお前らは一体何者だ?
ただの観光客ではないだろう」
粘り強く交渉した甲斐があった。後はこの男を説得できればいいのだが。
「これはこれは失礼しました。私は東の方で探偵をやっております。本日は招待を受け参った訳ですが中はどうでしょう。変わった様子はありませんか? 」
迷った挙句正体を明かす。
「もう、先生ったら…… 誰彼構わずに告白するんだから」
助手は不満を爆発させる。
「探偵か。何かヤバそうだな。まあいい約束だ。中は特に変わった様子はないよ。
今のところ問題なしだ。だから暇とも言えるがな。
何かあったって言えば本部の方で動きがあったらしい。今本部は慌ただしい。
まあこれも仲間のホラかもしれないがね。何なら本部に行ってみるか?
近くはないけれどまあここから歩いて大体二キロだったかな。
この村はそんなに複雑じゃねえし本部があるところは村の中心。
だからその辺に人はいるはずだから聞けばわかるだろう。俺はお役に戻る」
それだけ言って黙ってしまった。これ以上は話しかけても無駄のようだ。
どうする…… せっかくの好意だし本部に行ってみるか……
「あのいかつい大男は意外にも良い人そうでしたね先生」
大人しくしていた助手が軽口をたたく。また聞こえたら厄介なことになりかねない。
「ああ。でも人を見た目で判断してはダメだ。それに失礼な発言は控えるように言ったはずだが。まったく君と言う奴は。いいかい。彼は人のいい悪人顔さ」
「先生だって充分失礼ですよ」
呆れて物が言えないとこちらを見る。
山湖村を東から北へ中央へ。あっと言う間に陽は傾く。
続く
「お前ら何をやっている? 直ちに立ち去れ。ここはよそ者の来るところじゃない」
ここでも門番が立ち塞がる。
彼も最初の男同様いかつい体をした人相の悪い輩。近づきたくもない。
この村の若い男は弱々しいイケメンかこのいかつい輩しかいないのかとさえ思える
ぐらいでその中間を見かけることは今のところない。
助手は弱々しいイケメンの方になるだろう。
コウ君も筋肉はあるがやはりこちらに分類されるだろう。
私はと言うと…… 力も強くなく筋肉質でもない。もちろん人相だって悪くない。
やはりこちらに入れてもらおうかな……
「おい。お前ら近づくんじゃない。今は神聖な儀式の真っ最中だ」
当然と言えば当然だが中に入れてくれる気配はない。シッシと追い払われてしまう。
私は子犬ではないのだが。
門番の威嚇に怖気づく子犬のような助手に代わりに立ち向かう。
「我々は観光で参りました。ぜひぜひ中の儀式の様子を見せて頂けませんか」
丁寧にお願いする。彼も人間。下手に出れば心を開くはず。
「ダメだ。ダメだ。今は儀式の最中。誰一人入れてはならぬときつく言われている。
良いから立ち去れ。この村から出て行くんだ。
まったく村の者でもないのに見学など何と図々しい。とっとと出て行け」
そう言うと棒を振り上げ突進してくる。ここは無理をせず一度退散。
作戦を立て直す。
「早く行っちまえ」
男はなかなか警戒を解かない。しつこくて困ってしまう。
こっちだって好きでやっている訳ではない。
第一村人の犯行予告が無ければあえてこんな辺鄙な村に行きはしなかった。
奴が何かしでかす前に我々で食い止めるしかない。
「申し訳ない。ここは三女の三貴さんが籠られていると聞きました」
男との距離を充分とって話しかける。
「知るか。お前たちに教えることなど一つもない。これ以上邪魔をすると痛い目に遭うぞ。とっとと失せろ」
「それでいつから? 情報では昨日から籠られると聞きました。
そうすると出て来られるのは明後日となりますが間違えありませんか。
三貴さんに変わった様子など見られませんか」
いくら邪険に扱われようと決して諦めない。
男もそのしつこさと熱意に負け態度を軟化させる。
「良く知ってるなお前ら。誰に聞いた? まあいい。これまでのことは水に流そう。
どうせ俺も暇だから話してやるがその前にお前らは一体何者だ?
ただの観光客ではないだろう」
粘り強く交渉した甲斐があった。後はこの男を説得できればいいのだが。
「これはこれは失礼しました。私は東の方で探偵をやっております。本日は招待を受け参った訳ですが中はどうでしょう。変わった様子はありませんか? 」
迷った挙句正体を明かす。
「もう、先生ったら…… 誰彼構わずに告白するんだから」
助手は不満を爆発させる。
「探偵か。何かヤバそうだな。まあいい約束だ。中は特に変わった様子はないよ。
今のところ問題なしだ。だから暇とも言えるがな。
何かあったって言えば本部の方で動きがあったらしい。今本部は慌ただしい。
まあこれも仲間のホラかもしれないがね。何なら本部に行ってみるか?
近くはないけれどまあここから歩いて大体二キロだったかな。
この村はそんなに複雑じゃねえし本部があるところは村の中心。
だからその辺に人はいるはずだから聞けばわかるだろう。俺はお役に戻る」
それだけ言って黙ってしまった。これ以上は話しかけても無駄のようだ。
どうする…… せっかくの好意だし本部に行ってみるか……
「あのいかつい大男は意外にも良い人そうでしたね先生」
大人しくしていた助手が軽口をたたく。また聞こえたら厄介なことになりかねない。
「ああ。でも人を見た目で判断してはダメだ。それに失礼な発言は控えるように言ったはずだが。まったく君と言う奴は。いいかい。彼は人のいい悪人顔さ」
「先生だって充分失礼ですよ」
呆れて物が言えないとこちらを見る。
山湖村を東から北へ中央へ。あっと言う間に陽は傾く。
続く
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