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Dead End ユ キ・サクラ (95)
しおりを挟む寝起きでぼんやりとしながら、鏡の前に立つと、零れないように耐えていたつもりだったけれど…鏡に映った私の目は腫れていた。
だけど、流石にね?夜になればってやつよ!…さすがに、腫れはひくよね?
まぁ、いいや、夜までいつも通り研究に勤しむとしようかなぁ…はぁ、やる気湧かねぇ…
夜になって、鏡の前に立つ…朝に思った事なんてさ、都合のいい事なんて無かったわけ。
涙で腫れてしまった目も夜にはすっきりと、元通り!ってわけにもいかないので、薄めにメイクをする。
薄めにメイクして、夜だし、新月だし、相手も良く見えないからこれでいいだろっと、化粧台から離れようとしたら新作のルージュを塗れって五月蠅いから座りなおして塗ったけれど、本当に、ここまでしたくなるほどの男なの?そりゃ…美しさは認めるよ?
ユキさんってさ、確かに!美貌は凄いよ?誰もが認める美だよ?だからといってさー…ここまでするの?夜中だよ?
呟いたが最後、盛大なブーイングが私の中で巻き上がり、その席を明け渡せって言ってくる…
未来の私が遺した残滓共がうるっせぇ!私の人生だ好きにさせろぉぃ!!
強引に全てを進めても良かったんだけど、総意には逆らえないっていうのもまた、情けない。自分の事なのにね。
はぁ…自分自身だっていうのに口うるさく感じるなぁ。うっざぁ…
自分自身に悪態をつきながら部屋を出ていく。
つい、ドアを閉める力が強くなり、気持ち大きな音を出してしまうが、気にしない!
新月の夜、足元も暗くて見えにくい中、広場に向かって歩いていくと、干渉できない空間がぽんっと浮かび上がってくる。
ほほぅ?噂通り…なんだけど、これはもう知ってる、未来の私が教えてくれた破邪の力でしょ?既知には、興味がない。
堂々と広場に入っていくと、噂通りの美しさを供えた中性的な人が居る。その美しさに心奪われた人達が数多くって噂は真実味しかない。
「こんばんは、時間が惜しいからささっといこうか、はぁ、駒を進めないといけないっていうのにまだるっこしいね」
ほぼ初対面に近いのに、そんなの関係なしっと、言わんばかりに、なぁなぁっと馴れ馴れしく声を掛けられてしまったことに中性的な顔立ちの人物が驚いた表情をしている。
そちらの都合に付き合う気はなし、話を進めよう。
「そちらの事情は把握済み、次は此方の事情を把握してもらうターン、ほれ、魂の同調とやらをしてくれたまへ」
ちょいちょいっと手招きすると、訝しんだ表情で此方を見ている。
その表情には、同意できるし理解できるよね、それはそうだよね、いきなりそんな風にズカズカと踏み込んでくるなんてね、思わないでしょ?
「いいからほら、柳国王様!時間が惜しいの~、ほれほれ」
ちこう寄れっと、手招きを続ける、私から近付いても良いんだけど、流石にこんな状況でさ、不用心に相手のテリトリーに踏み込み過ぎるのは良くないからね。
最後の一歩を踏み込むっという、選択肢まで、潰す気はない、向こうがその一歩を踏み込んでくれると信じている。
「…この状況、計り知れない何かがあるのだろう…一つだけ質問がある、それさえ答えれたら全てを信じよう」
「白き黄金の太陽でしょ?」
向こうが出してきそうな質問にはおおよその見当は、すでに想定済み。
問う前から答えを言われたことに驚いている様子。
「なる、ほど…此方の思考を読む類の術を行使されたような形跡も無し…俺が求める答えは魂の同調でわかるっということか」
事情を呑み込む為に此方が提示してきた内容を実行するって、判断が早くていいね!人生何事も効率効率!無駄な時間ない!時間がもったいない!
未来から託された情報を思い出しながら両手を前に出すと、ギナヤ…とある未来では勇気と名付けられた人物。
雰囲気はどこか中性的に感じてしまう、昼間のちょっとした仕草は女性的、されど、今の雰囲気は男性的。
不思議な人…雌雄同体ってやつ?っま、種は明かされてるから、もう興味はない。
差し出された手を握ると、意識が流れ込んでくる?…解析を開始…魔力の中に記憶情報を込めて流し込んでいる?
そして、流し込まれた記憶情報が私の中に流れる魂…うん、魂と呼ばれる魔力帯に絡んでくる、そして、溶け込んでいく…そこから、私の記憶領域にアクセスしようと踏み込んでくる。
ふーん?なるほどね、この状況で、私が彼に伝えたい情報をイメージして魔力に溶け込ませていけば効率的じゃない?
問題があるとすれば、この莫大な情報を彼は処理しきれるのかな?ふふん?お手並み拝見ってね。
未来から託された密度の濃い一年間?を凝縮して圧縮して、魔力に溶け込ますように意識して一気に相手に流し込んでみる。
あらあら、しかめっ面しちゃって、唐突なキャパシティを越えそうな情報量に困惑しちゃってるのかな?処理しきれてないのかな?
未来の私がべた褒めするからどの程度の使い手かと思ったら、やわじゃん?ざーこざーこ!
…って、罵ってあげたいけれど、なんでかな?苦悶する表情がちょっと刺激的じゃん?背筋がぞくっとする、、、あまり知らないこの感情にはちょっと興味がある。
永らく彼と手を繋ぎながら、美しい顔が崩れるように…コロコロと変わる表情を堪能する。
見れば見る程、綺麗な顔立ち、その顔立ちがこれでもかっていう程に色んな表情を見せてくれるので、楽しいという感情が芽生える。
この個体に興味はないって思っちゃったけど、おもちゃとして面白そうかも?
小さな笑みが溢れてしまいそうになるのを我慢しながら、表情の変化を観察していると、大粒の涙が滝のように流れ出てくる。
大の大人が涙を流すなんてっという、下らない感想を抱きそうになってしまう。相手を下に見ようとするのは良くない。素直に感情を表に出せるのは相手の魂が清らかで感受性が豊かな証拠…人として素晴らしいことだ…私みたいなさ、特定の人物以外には絶対に、心を見せないような弱者じゃない、彼の心は…大きくて繊細なのだろう。
「そう、か…俺たちは幾度となく敗北してしまったのだな…」
「そうだよ!だから、私は自分の好きな…したいことをするための時間を潰しまくって!あんまり興味のない研究を強いられてきたし!更には、人生を諦めろって言われたんだからね!!」彼の大きな心に誘われるように、つい、愚痴をこぼしてしまう、初対面の人に、こうやっていきなり愚痴を言う事なんてしないのに…
同意され、同調され、同じ世界を見たのなら彼もまた、私の家族だ、共に歩む人物だ、だから、愚痴をぶちまけてもいいよね?
こうなると、口火を切ったように愚痴が溢れ出てくる、長年積み重なった苛立ちはちょっとやそっとじゃ晴れるとは思えれない。
未来の私から押し付けられた期限付きの課題の山々にずっと苛立ちを感じていたのに、期限が迫ってきたら、更に深刻な情報を渡してきたんだもんなぁ!
期日までに成果が出せなかったら滅びるなんて聞いてない!!
私は何年も!何年も!!ずっとずっと!!あの胸糞悪い!!悪意の塊のようなどこの誰だかわからない意地の悪い魔女が遺した論文片手に研究を続けてきたことに苛立ちを積もらせているの!!!これを…わかってくれる人が目の前にいるんだもん、甘えてもいいよね?
初対面の人に、死んでしまった残滓たちの無念をぼやく様に言い続けていると
口が動くのが見えたので、ぼやきをとめる。
「そうだな、君の…」
一瞬だけ視線を彷徨わせたのはあれかな?気恥ずかしいから、かな?
「さくらっと…名前で呼んでも構わないかな?」
繋がれた手が離れ優しく頭を撫でられる…
なるほどねぇ、どの態度で接するのが適切な距離感なのか計ってる感じかな?それってさ、ガールに対しての接し方じゃない?別にいいけどさ
大人ぶりたい年頃じゃないし?自由奔放に自分のしたいことが出来るのなら、ガールになりたいくらいだもん。
「いいよ、それなら、私も遠慮なく、未来の私と同じように勇気くんって呼ぶよ?」
撫でられるっという心地よい感触に、会う前に感じていた未来に対しての苛立ちが、ちょっとずつだけれど落ち着いていくっていう状況を冷静に見つめてしまう。
単純な話、私って父性や母性が好物なのだろうっと、少し溜息を溢してしまう。
「ああ、君が歩んできた道は見てきた…そして、未来のって言ってもいいのか?滅びる世界を歩んだ俺が託した言葉も…しかと受け取った」
…っは!?いけない、一瞬だけ惚けてしまった!!最後の決意を込めた…真剣な瞳を、表情を、輝く様な煌めく様なルックスで真正面で受け止めたことが無いから、これは心臓に悪い!!
冷静に分析しても、駄目だ!彼の美貌はダメ!始祖様に似ているせいもあってか、そんな、そんな…決意を滾らせた真剣な瞳で真っすぐに此方を見つめてくるのは反則!ときめいちゃう!!
はぁ…前言って撤回する日が来るなんて思ってもなかった、この美貌はちょっと反則だ。
興味がないなんて嘘!これはダメだ!魅了の魔眼、うんぬんじゃない!ナチュラルに純粋に美しすぎる!!
かといって、易々と懐柔されるような私じゃないもん!絆されたりしないからね!
ふんっと、鼻息を荒くしてしまいそうになるのを抑え、流れを変えるためにも疑問を感じていたことがある、それについて彼に質問をする
「白き黄金の太陽に成れってやつ?って、具体的に何?」
伝えて欲しいと頼まれた言葉…白き黄金の太陽ってさ、想像上の人物じゃないの?未来の記憶をがっつりと閲覧していないから知らないけどさ
伝えられた伝承からして、英雄譚にいる、都合のいい人物像って感じが伝わってくるし、私も幼き頃に知ったときは、都合がよすぎるって思っちゃったもん。
なによりもさ…司祭とさ時折、話す機会があったからさ、知ってるんだけど、過去の教会って相当、黒いよね?生き残るために策略謀略画策なんでもござれって感じじゃん?…
王族を取り込むために取り組んでいた絵空事を描いていた連中はもうこの世にいないから、真相は月の裏側だけどさ、白き黄金の太陽なんて存在、教会が教えを広めるためにドラマ性を追加したくて生み出された架空の人物でしょ?
それに成れって、言葉の通りでいいのかな?
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