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Dead End ユ キ・サクラ (79)

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まず、初動が最悪だった、予想外にも、敵に先手を取られたのが痛かった。
此方の作戦としては、敵に見つかる前に、此方が先に発見して、魔道具持ちの人型がどの様なタイプなのかある程度観察するっていう必勝パターンをベースにして、ある程度情報を集めてから、策を講じようと思っていた。だが、まさか、敵が先手を打ってくるとは思ってもいなかった…私達よりも嗅覚も視覚も聴覚も優れている獣だというのを失念していた。

何処から気が付いていたのか知るすべはない。
それに、いつでも私達を襲えるように、魔道具に魔力を込めているとは想定していなかった。

何故なら、敵が、此方の虚を突く様に待ち伏せをするという知恵を働かせた奴が今まで居なかったからだ。

そもそも、あれ程の魔道具を何時でも撃てるように起動したまま、魔力を込め続けるのは相当な集中力も、魔力を消費する。
基本的に、魔道具持ちの人型は私達を殺すことだけを考えているからか、無駄に魔力を消費するという選択肢をとらない。
私達が長年戦ってきたノウハウとして、魔道具持ちは絶対に!魔力を温存するために、敵を見つけるまでは絶対に!魔力を消費するという行動を取らないからだ。

固定概念に囚われ過ぎてしまったのが良くなかった、人は必勝方法を知ってしまったら安易にそれを選んでしまうという心理が働いたのが良くなかった。
数多くの魔道具を持ちの人型を観察し戦ってきたノウハウがここにきて裏目に出てしまった。

(本音を言うと、これすらも、敵の作戦じゃないかって、思ってしまう。長年かけて固定概念を私達に植え付け、ここぞという時にその前提を駆使して策に嵌める!思考の裏を突き深手を負わせる為に…深慮遠謀、何年間も、何体もの人型にその様に動く様に指示を出していたんじゃないかって今になって思ってしまう…こういう搦め手や、思考の裏、固定概念を植え付け利用し、策を講じてきているっとなると…相当な切れ者が向こうにいるのだろう、考えたくないけれど、この嫌な感覚に苦汁をなめさせれたことが幼い頃に何度も味わっている、先生?いるの?囚われているの?魂を…)

先手を取られてしまった我々は、敵が持つ魔道具が広範囲で尚且つ非常に殺傷能力が高い魔道具であるという事前情報を、尊い犠牲の下、得ていたので、光を目視すると同時に直撃を避ける為に散開する。

光の弾が着弾したのが、幸いにも私達から離れた場所の木々だったため、この時点では被害はない。

(敵が物音に反応したのか、匂いが敵に届いてしまったのか、それとも、既に此方を補足していたのか…真意は、わからないけれど、確実に行動原理がある。意味を持ち意図がある行動をしていた、もしくは、そうするように指示を出している、裏で操っている奴がいるという可能性もある)

爆発した衝撃によって木々の破片や土片、石片が飛んでくるが、距離があったため、私達を負傷させることは無かった。
今にして思えば、この時に盾を構えた戦士達に注意喚起をすればよかったのだが、散開してしまったため、注意喚起を呼び掛ける事が出来なかった。
私を守ってくれている戦士に伝えればよかったのだが、敵は此方を見つけていると考えると、音を出すという英断が下せなかった。

我々が、敵を討伐して来たノウハウとして、敵の魔道具・敵の形状などの、必要な情報を得るために、散開したメンバー全員が、敵を討伐するために息を潜め観察を開始する。

夜間という状況の為、敵を目視するには少々距離が離れているが、逆に夜だからこそ、敵の魔道具がどの様に作用するのか観察はしやすかった。
敵の魔道具は杖の形をしており、先端に光を集めていく。光となった何かが狙った箇所に着弾すると、爆発する魔道具だろうと、事前情報から凡その推察はできていた。

だが、強大な魔道具に対抗するためには情報が不足している。
更なる情報を求め、敵の魔道具を観察する。

敵が持つ魔道具が今まで見たこともない程に驚異的なため、迂闊な行動を取れば即座に全滅する恐れがある為、思い切った行動が出来なかった。
今思い返したとしても、仮に、何も考えずに正面から挑めば、我々の部隊は全滅していたと、闘った戦士達全員が頷くほどの魔道具だった。

敵を観察していると、敵は周囲を見渡すことなく、魔道具に光を集め始めた。
もしかしたら、敵は周囲を野原にし、近づく敵を見つけやすくしようと動いていたのかもしれない。
人が居ようが居まいがお構いなしに攻撃を繰り出していたのはそういう意味があるのかもしれないと推察する。

(なら、私達が向かうまでに光や轟音がしていてもおかしくないのに、無かった、だから、これは後付け…これを読んだ人物が納得しやすくするためのね。言い訳ってやつ)

定石に倣い、私達は敵が動き出すのを息を潜めて注視する。敵の魔道具から放たれる一撃が直撃したら誰であろうと命はない。
魔道具は、どの程度で再度攻撃が出来るのか、魔力を込める時間を把握することで、次への対処がしやすくなると判断し、息を潜め敵が魔力を貯めていく時間を計測する。

この時、司令官である魔道具のスペシャリストの判断としては、あれ程の威力、連発できるとは考えれなかった。
そもそも、連発が可能であれば、先に敵と遭遇した者は連続した攻撃に耐え切れず跡形もなく蒸発している。
そういった、前情報からも、敵の魔道具は連発できない構造ではないかと、推測していた。

先の爆発を見て、ある程度、凡そではあるが威力は把握できている。
実際に目撃したからこそ、確信へと変わっていく、あの魔道具は連発できないと!

あれ程の威力を真正面から受け止めたら、どの様な戦士であろうと、確実に仰け反ったり、爆風で怯んだりする。
連発が可能な魔道具であれば、先に遭遇した戦士は跡形もなく蒸発している。
あれ程の威力を、間髪入れずに連発されてしまったら、防御に徹したとしても、一撃で、力を込め衝撃に耐えるという構えを取ることが出来なくなるほどに体制を崩されてしまう。
体制が崩れてしまった状態で、爆発が直撃してしまったら、跡形もなく肉片すら残すことなく蒸発していたであろうと推察できていた。
先に起きた、少しばかりの情報から、敵が連続して光の弾を打ち出せないものとして事前に打ち合わせをしている。誰しもがあの威力を目の当たりにして、事前推察が正しいと感じただろう。

(この固定概念が大きな敗因となってしまった…私達の尺度で考えすぎていた。今となって心境を冷静に分析すると…あれ程の威力を連射できるなんて最悪の事態を考えたくなかっただけかもしれない)

敵が微動だにせずに、杖型の魔道具、その先端に光が集まり続けていく。
元来、警戒するのであれば、微動だにせずっというのがそもそも、おかしい、どの様な状況であろうと敵が近くに居るのであれば、自然と耳を動かしたり眼球を動かしたり鼻をひくつかせて無意識に気配を探ろうとするはずなのに…一切、此方を探すという行動を起こさずに、一心不乱に、魔道具に光を集め続けていく。

(獣共を研究している人達であれば、こういった行動を取る時点でこいつが異常な存在であると気が付いてしまう。絶対的な命令でもない限り、こいつらが冷静に次の一手を、更にその先の一手を考えて…前頭葉が発達していないこいつらが、そこまで考えて行動できるとは、思えれない。それをやってのけている、これを論文として提出したら、敵が何かしらの方法で通信し、司令官からの指示に従って動いている軍事行動が出来ていると、この大陸にいる全員に危険信号を植え付けることが出来るだろうか?…っは、無理だろう、な…たまたまだと一笑されて終わる、そして、その行動を敵に見つかってしまったら…考えるだけでぞっとする…知りすぎたものは消える運命だ…)

敵がどの程度、どの段階で先ほどの攻撃ができるのか…この時点での私達はその情報を持ちえていない、この状況で前に出た瞬間に攻撃される恐れがある為、動くわけにはいかない。
迂闊に一斉に動いた結果、敵の攻撃によって一網打尽っという最悪の事態を避ける為に各々、散開した戦士達は敵に位置が把握されないように息を潜め様子を伺う。
その間も、敵がどの程度で攻撃を開始するのか、カウントを開始していく。

誤算だったのが、敵が魔力を魔道具に装填していく時間が、想像を遥かに超えていたことだ。

敵が光の弾を創り出すのは、私の予測では遅くても30秒、早くて10秒だと予測していた。
30であれば、如何様にでも料理する自信があった、だが、30を超えた瞬間に不安という名の悪魔が耳元で囁き始める。

全ての前提を間違えたのではないかと…

30秒を越えた時点で、私達は後手に回ってしまっている。後の先を取ることは絶対にできない、その選択肢を選ぶという事は誰かを犠牲にしないといけない。
その選択肢だけは絶対に選べない。なぜなら、補給部隊や、隠蔽部隊も近くで待機する手筈になっている。ここで無駄に負傷してしまうと、後続にも被害が出てしまう可能性が高くなる、それだけじゃない、度重なる進撃を受けているっと言う、今の情勢を考えれば考える程、私達は…街の最高戦力と言われる私達が迂闊に命を賭けるわけにはいかなかった。

その思考がまた、選んではいけない選択肢へと、深く深く嵌っていく…絶望の入口へと誘われる様に。
私達は全てにおいて…最初っから、間違えてしまったのだろう。

100を超えた時、誰かが耐え切れず飛び出し、爆発によって命の輝きが吹き飛ぶのだと血迷った行動を起こさないか、冷や汗が止まることが無かった。
視界が悪く暗い中、遠めに見えていた、光の粒が動き出した。散開した私達がいる場所とはまったく違う場所に放たれたのを目視で確認した瞬間、過った感情が二つ。

安堵と疑問
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