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Dead End ユ キ・サクラ (31)

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そんな事を考えながら、二人は無言のまま歩き続け、気が付くと、目的のお店の前に到着する。
目的のお店の前に到着して後ろを振り返ってみると、ユキさんはここにこんなお店があることを知らなかったのか驚いた表情をしている。
まだまだ、この街に来て間もないし、遊びに近辺を探索するような余裕はなかっただろうし、先輩にこういった大人の来る食事処を聞ける様な年齢でもないから知らないのは当然だよね!
ほら、はいるよっとユキさんに声を掛けてからドアを開くと
「空いてる好きな席にすわんなー」
ドアが開く音が厨房の奥まで聞こえたみたいで、厨房の方から、このお店の店主であるマリンさんこと、女将の声が聞こえてくる。
中に入って、何時ものカウンター席に座ると、ユキさんは入り口で立ち止まっている?物珍しそうに周りをキョロキョロと見ている。
ユキさんが見ているであろう方向を確認すると、奥の席でお酒を飲みながら騒いでる人を見ている。

どうやら、ここがお酒も提供しているお店だという事に気がついたのか慌てて近くに駆け寄り
「だ、だめだよ!子供が来ていいお店じゃないよ!」
周りの人に聞こえようがお構いなしに慌てた声を出す、その慌てた声を聞いた人達が此方に一瞬だけ視線を送ったと思ったらニマニマとした表情を浮かべ始める。
このお店に来る人は古くから私達の街で活躍する人ばっかりだから、私の事を子ども扱いする人が未だに居るのが珍しい上に、その状態でこのお店に連れてきた意味を直ぐに察してくれる。
お酒の肴にはピッタリなんだろうねぇ…悪い大人だ~
「ね、ねぇ?聞こえてるでしょ?ダメだって」
周りの視線が突き刺さるのか凄く慌てふためいている、その姿を見て笑ってしまいそうになるのを堪えながら今することは一つ!
ツーンっと貴女の忠告なんてききませーんっと我儘お姫様を演じ続ける
お店で飲んでいる人達がこの状況に全員が気が付いたみたいで、視線を完全に独り占めにしている。
「ほら、周りの人も見てるから、かえろうよ…ねぇ!場違いだって言ってるよ?かえろ?ねぇ?ねぇ!」
肩をトントンっと叩き語尾も強くなってきちゃったので、そろそろ種明かしでもしてあげようかな?
でも、今の状況で私年上だけど?って言っても、信じてくれない気がするなぁ…

どうしよっかな?収拾つかない事態になりそうな予感もしない事も無い。

「はいよー、焼き上がったよー!悪いけど取りにきなー!」
厨房から慌ただしい声と共に大きな体が現れるとユキさんはその姿に驚いて口をパクパクとさせながら驚いている
そして、その表情や仕草を見て店の奥で飲んでいる常連たちからは小さな笑い声が聞こえてくる。

そっか、女将とも初めて会うのかな?…あれ?初めてじゃないよね?女将ってさ、確か、戦士長の鎧や装備一式を受け取る時に奥様に挨拶に行ったって聞いていたけれど
っていうか、ユキさんってお母さんから私の事、聞いてないのかな?お母さんには、此方が洋服を仕立てる時に幾度かお願いしたこともあるし、私が展開している洋服のお店で色々と取引もしているから~…てっきり、私の事、知っていると思っていたんだけどなぁ~。まぁ、どんな会話をしているのか知らないから何とも言えないけどね~。
「おや!姫さんじゃないか!きてたのかい!もう少ししたら落ち着くから待ってておくれよ?」
女将が可愛くウィンクした後、厨房の奥に引っ込んでいく、そんな女将に手を振って頑張ってっていう気持ちを込めてエールを送る
「わ…ぇ、ぇ?」
状況が飲み込めきれていないのかユキさんは、何度も私と女将が入っていった厨房へと視線を右往左往させている。
混乱に乗じて主導権を奪わせてもらおうかなっと
「ほら、ユキさんも立ってないで座りなって、他のお客さんに迷惑だよ?」
カウンター席の隣に座りなさいっと椅子をポンポンっと叩くと、迷惑っと言う言葉に反応し一瞬慌てたようなそぶりを見せ、言われたままに素直に座る。
こういう素直さってのは、混乱していても命令には素直に行動するっという行動原理が焼き付いている証拠だよね。
っていうことはさ、目上の人、親とか、大人の言葉にはしっかりと従うっていう性質を持ってるってことだよね?

やっぱり、礼儀作法とかって騎士の世界では重要だったりするから、お爺様にそうなるように鍛え上げてもらったのかな?

…でもなー、過去に聞いた口ぶりからして相当、孫を溺愛して甘やかしてそうなイメージだったんだけどなぁ、あれかな?愛ゆえに厳しく接してたりしてたのかも?
物静かに座ってカウンターの一点を眺め続けているユキさんを観察する様に眺めていると
「取り合えず、飲み物は用意できるけれど、何かのむかい?」
厨房の奥から女将の声が聞こえてくるので、何か飲み物を頼むとなるとさ、この場に相応しいのってお酒じゃん?
お酒を飲んでもいいんだけど、勘違いスパイラルに陥って混乱気味の人物を目の前にしてお酒を頼むとなー、ユキさんに止められそうだし
今は、その時じゃないよね?もう少し、舞台が整ってから畳みかけたいよね?にしし
「だいじょーぶ!女将が落ち着いてからでいいよー!」
厨房に向かって大きめの声を出して伝えると、おや?そうかい?っと返事が返ってくる。
きっと、今頃、厨房の中で、小声で珍しいねぇっという独り言いってるんだろうなぁっと女将の行動を予測しながらホワホワと過ごしていると
「…ここにくるのって一度や二度じゃないの?」
カウンターの一か所を眺め続けていて固まっていたユキさんが状況を飲み込み始めたのか動き始める。
先ほどのように慌てふためく様子も無く、冷静になれたのか、小声で質問をしてくるので
「もちろんだよ?あったりまえじゃん、私を誰だと思ってるのかなー?」
ニマァっと笑みを浮かべながら意地悪い返しをすると
「ぅ、そう、だね…」
自分の発言が世間知らずな発言だとわかったのか、恐縮させてしまう。
いけないいけない、ちょっと反応が初々しかったから、ついつい悪ノリして、からかい過ぎない様にしないと…
お願いされたことを思い出さないと!ユキさんのメンタルケアをしてほしいって頼まれたばっかりじゃん!
心を入れ替えて、世間知らずなお嬢ちゃんにここがどういうお店なのか教えてあげようかなっと
「ここはね、この街の第一線で活躍していた粉砕姫っと呼ばれるほどに皆から尊敬され戦士として活躍していた人が経営している食事処だよ、当然、お酒も提供しているけれど、お酒だけじゃないからね?ちゃんと、女将お手製の美味しいご飯も食べれる場所なんだよ?だから、お酒が飲めない人が来てもいいんだよ?」
ふんふんっと説明を真面目に聞いている辺り、根は真面目で良い子なんだろうな…
それに随所で見られる仕草が大人って言うよりも子供より、だよね?嗚呼、そうか、勇気が言っていた女の子ってそういうことか…

精神年齢が低いってことかな?

真面目に話を聞いてくれている、ついでに、お店に飾られている武具の数々が偉大なる戦士長が愛用していた武具であることを伝えると驚いた表情をし、やっぱり!っと声を荒げていた。薄々、そうじゃないかなって気になっていたのかな?カウンターの一点じゃなくてカウンターの奥に飾られている籠手を見ていたのかな?
「知ってるの?」っと、わざとらしく質問をしてみると
「私の、ぉっと、僕のお父さんだよ!」
自分の事のように嬉しそうな表情をしている。きっと、ユキさんの中でもシヨウさんは大きな存在なのだろう。父が尊敬できるのって良い事だよね~…私のとことは大違い。
「じゃ、やっぱりあの人って」
視線を女将が居るであろう厨房の入口へと向ける…
あ、やっぱり面識あるんじゃん、ってことはあれかな?
過去に会ったときとイメージが食い違っていたとか、かな?もしかしたら女将も戦士の装備をして挨拶に行ったのかもしれないね。
「そうだよ」
恐らく、ユキさんが過去に出会った人が、このお店の女将と同一人物であると肯定してあげると
「あ!やっぱりそうなんだ!似てると思ったんだ!挨拶に来てくれた人の妹さんか、お姉さんってことだよね!?うわっすっごー!兄弟そろってあの肉体なんだ!!」
っだぁ!?
想定外の反応にカウンターに乗せた肘がずり落ちそうになる。
ぇ?この人、天然なの!?あの肉体を持つ人物がほいほいっとその辺に大勢いるわけないじゃん!!いたらスカウトしてるっての!!
「ぇ、違うよ?女将は女将だよ?」
慌てて訂正すると不思議そうな顔で首を傾げ乍ら
「え、でも、挨拶に来た人、男の人、だよ?」
…ん?もしかしてストックさん、おっと、ストックだと女将と同じか、旦那さんのララさんとしか会ってないとか?ぇ、でも、肉体美を知ってるよね?
どんな勘違いをしているのだろうか?
「挨拶に来た人って大きかった?」
「うん、先ほどの人と同じくらい大きかった」
それじゃ、女将じゃん。ってことは、性別を見誤ったか、これは早めに訂正してあげないと女将が凹むなー。
ちょいちょいっと手招きすると顔を近づけるので耳元で誰にも聞こえない様に囁くような小さな声で教えてあげる
「その時にあった人と同一人物だよ、性別を勘違いしたんだよ、女将って男性に見えることが多いから、このことって女将ってさ、けっこう気にしてたりするから勘違いしていたこと言ったらだめだよ?」
教えてあげると、はっとしたような気付きが合ったのか、口元を指先で抑えた後、自分が勘違いしていたことを理解したのか納得したのかバツが悪そうな表情をしているので、再度、手招きをして顔を近づけさせ
「もしかして、初めて会ったときに男性として接したりしちゃった?」
過去に起きたであろう過ちを確認すると、涙目で頷く…そっか、自分と似たような悩み苦しみを抱えている女将の事を瞬時に理解したって事か。

優しい子だね。

そんな風に考えていると
「うわー、僕、やっちゃったかもー。大きい!お父さんと同じくらいって言っちゃったんだよねー」
…なんか、私が想像していた内容とちょっと違うような気がする?外見を気にしていたって事?うん?んぅ?むぅ…
この子の価値観が今一つ噛み合わない気がする?平民だから?なんだろう?なんか違和感あるな?

違和感が何か考えるが、私としては出会ってきた多くの人が癖が強すぎて、これくらい普通だよ?っと納得してしまう。
まぁ、こういう人もいるか、他にもっともっと変な人いっぱい見てきたし気にすることじゃないか

過去に出会ったお父さんの知り合いだと分かった瞬間にテンションが上がったのか、饒舌に話をしてくれる。
それからは、ユキさんのお父さんが使っていた数々の武具についての説明を私に話し始めてくれるんだけどさ、当然、知ってる事ばっかりなんだよなー…
絶対に私のこと世間知らずのお飾りのお姫様かなんかだと勘違いしてるでしょ?
だってさ、説明の仕方も完全に年下の世間知らずの女の子に話すような感じだし、どの辺りで種明かしすればいいのだろうか、タイミングを見誤ったかなー?
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