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覚悟を決めろ ②
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「最初に考え付いたときは、机上の空論だった、出来るわけがないって、でも、可能性を捨てることはしなくなかった諦めない為にも心を静かに燃やしていた。諦めないで研究は続けていたら、一つの選択肢を叶えることが出来る目的の品が手中に納まったときに、小さな野心が湧いた、一瞬だけ、騎士様が私の傍から離れても良いなんて考えてしまった、保険がある、という安堵感に罪悪感それと…騎士様の傍で歩む人生を一瞬でも諦めようとした情けない自分に嫌悪した。全てを失って、それでも、生きてしまった私は、真っ白な世界なのに、真っ黒な世界で騎士様に託された人類の未来の為に歩こうと決心はした…そして、私は自らの意志で禁忌を犯した…今は私も、もう一人の私も後悔なんてしていない、寧ろ…」
ぽろぽろと大粒の涙を流しながらも、彼女の口からは言葉が止まることは無かった
「永遠に叶わないと諦めていた願いを叶えてしまったことに人生で…あの時、思いが通じ合った、あの時と同じくらいに、幸せを感じていたの…貴女達が苦しんでいるのを知っていながら、私は、教会でシスターの恰好をして、色んな人に祝福の声を掛けてもらいながら、一時の…夢の中に居たのよ…ある日、夢から覚めないといけないと、幸せな夢の中で微睡んでいるんじゃないって、教えられた気がしたのよ、ドラゴンが王都の上空を駆け抜けていった時にね…ドラゴンがそう言っているような気がしたのよ、私の機転となるきっかけをくれた姿を見て、目が覚めたのよ、私も、もう一人の私も…幸せな夢の中からね…」
No2は、ドラゴンの事を神聖視しているように感じ取れるので、ある言葉が言えない…私は、姫様が孤独な…死の旅を、旅路を知っているからこそ…知っている。
姫様を殺し続けているのはドラゴンだ…恨むべき敵、憎むべき敵だ、そんな存在が…No2を助けたのは本当にドラゴンなのだろうか?
確かに、私もドラゴンを見た、見たような気がする、あれは、見間違いだと姫様の記憶を…体験したからこそ言える、ドラゴンが…獣共が私達を助けるなんてあり得ない。
きっと、何かしらの意図があって、それがたまたま、此方の都合が良い結果に繋がっただけじゃないのかと疑ってしまう。
「この街に帰ってきてから…姫ちゃんのデスクにあるレポートを読んだのよ、見つけれる範囲だけれど、全て…読んだわ。おかげで、姫ちゃんが何を考えていたのか、何を求めていたのか、何を望んでいたのか、全ての意図を、意味を理解したわ…彼女が目指している、本当の目標…夢を」
…うん、私も姫様の意識と繋がったからこそ、ある程度、知ったよ。夢物語だって自分でも笑ってたけれど、諦めきれない願い
「だから私は、その遺志を継ぐ…叶えてあげたい、愛しい娘の願いを…その為なら、私は、厳しくあろうと己を律する覚悟よ、愛おしく感じる幸せの象徴である、愛する子供を立派な救世主として甘やかすことなく厳しく接し、正しき人間に導くのと、同時に、全ての戦いに勝利してみせるって、決意を深く深く魂に刻み込んだわ…」
涙を流しながらも、目の奥には力強い光が見える気がする。No2からここ迄、これ程までに強い意志を感じたことは一度も無い。
「それだけじゃない!私ってね、色んな事に対して、そう、色んな事に対して…我を通すことはしてこなかったのよ。こう見えてもね。退くべきところはひいてきたのよ、でもね、今回ばかりはひく気はないわよ、絶対に…絶対に今度こそ、大切な人を愛する人を失うわけにはいかないのよ、医療人として母として、何があろうと…死んでも構わないって言いたいほどに全てをかけてでも姫ちゃんを、愛する娘の命を救う」
その強い感情に、私の心も強く同調している…この感情は、私だって気が付くよ、同じ思いだもの…おなじ、なんだけど、どうしてだろうか?
私とNo2以外にも、想いが重なっているような気がするのは?勘違いだろうか?
ううん、勘違いじゃない、この街全員が姫様を救いたいと願っているし、姫様と共に歩んできた多くの人達、私の知らない何処かで命を落とした人たちが姫様の事を願い、想っている…それが重なったのだろう。
この決意を、私が…他の人の心がわからないなんて、言われるこの私でも、この決意はわかる!!
熱い、胸の奥が熱い、今までも感じたことがある…恋をしたときのような熱い熱い感情が全身を駆け巡る!
その感情のままに、椅子から立ち上がり
「いこう!次こそは、絶対に!助ける!姫様を!私達の愛する人を助けよう!!」
大きな声を出すとNo2も立ち上がり
「ええ!次こそは!」
自然とお互いに向かって手を前に出すと、大きな大きな音が鳴るくらいに前に出したお互いの手を叩き力強く握る
熱い握手を交わした後は、前回の反省点と、次を確実とするために一か八かの作戦を提案する。
前回の反省点として、脳へアクセスするために選んだ経路が視神経を選んだのが失敗だった可能性がある。
視神経を選んでしまったのが、そもそもの敗因だと私は感じている。
脳にアクセスするのに最短ルートじゃないかと思っていたけれど、人は目から得られる情報を数多く脳へ送っているから、当然、脳へのアクセスも容易だと思っていたんだけれど…
同調現象が発生しやすいのかもしれない、特に姫様は目の性能が高いから、普通の人よりも重要な器官なのかもしれないっという推測を伝えると
「同調現象は何故発生するのか、原因が完全に究明出来ていないから何とも言えないけれど、貴女がそう感じるのであれば、正しいのでしょう、自信をもっていきましょう」
No2からは特に否定的な内容は出てこないのであれば、次は鼻腔を通っていけないか提案すると
「呼吸するための装具を付けているから、鼻腔は難しいわよ?…そうか、全身を液体に漬けないっという選択肢をとるのね?いや、でも、それだと…」
鼻から上だけを液体に漬けれないか提案するが
「ダメね、鼻から液体が体内に流れていくから呼吸が出来なくなるわね、鼻腔だけを液体に浸す方法はあるけれども、その場合は特殊な装具もあるけれど、患者の意識がある状態っという条件が必須よ、体内に浸透水式の液体を流すのであれば、濃度は今よりも薄めないといけなくなるわね、でも、肺を停止させて血液に直接酸素を送り続ける魔道具もあるけれど、循環させるだけの血液と魔道具を用意する時間は無いわね」
やっぱり、そうだよ、ね…そうなると…こっちしか選択肢は残されていないよね。
「濃度をあげる?限界まで?…皮膚や組織にかなり負担が出てしまうし、濃度が高いと…」
次の提案をするが、この提案が良くないのは私もわかっている。
過去に発生した同調現象、その原因の一旦は浸透水式の濃度が関係しているのではないかっという推測が生まれてから、一定の濃度にならない様に注意し、最低限問題のない濃度に下げることになった…
勿論、濃度を下げてしまった弊害はある、濃度を下げてしまった結果、浸透水式の難易度が大幅に上がってしまったんだよね。
私はそんなに違いを感じなかったけれど、No3とか、他にも出来る人からすると自由がきかないし、視界が揺らいで見えるし、長く潜っていると気持ち悪くなるって言っていた。
でも、濃度が高いという事は…魔力を濃く流せれる、意識を色濃く水の中にダイブさせることができる、深度が深い場所でも自我を保ちやすくなる、つまりは、どんなに深く潜っても私という存在を強く保てる…
「恐らく、後2回…2回しか出来ない…けれど、濃度を上げると、あと一回しか出来なくなるわよ?それに…そうね、わかってるわよね」
うん、わかってる、それもちゃんと考慮してるよ…
濃度が高いということは、姫様の意識も此方に流れ込んでくる可能性が高い…
同調現象が抑えきれなくなる可能性が高いってこと
正直に言うと、たぶん、だけど、同調現象が起きても大丈夫な気がする。
No2から教えてもらった過去によってその、何となく大丈夫って言う部分に確信を持てたよ
だって、私の体に魂が二つあるのなら…一つが姫様とくっ付いても大丈夫ってことだよね?
…男の私に託されたような、気がしたのは、きっと…うん、私の魂を捧げても大丈夫ってことだよね?
目を閉じる…スイッチが見える…番人はもういない…いつでも、スイッチは押せる…肉体を溶かして魔力に換えるんじゃない…
二つあるうちの一つ…私の魂を溶かせばいい。
覚悟は決まった、うん、私が生きるよりも姫様が生きる方がいいよね…
ありがとう、No2、もう一人のお母さん…陰ながらずっと見守ってくれてありがとう、弟の事は貴女なら任せれると信じれる。
教えてくれてありがとう、真実を知ったからこそ、私の中にある直感が正しいのだと判断できたよ。
でも、これを言うとNo2は絶対にダメだって反対すると思う、だから言わない…
目を開いてNo2に視線を向けると
「そう、決心は決まっているのね、貴女以外に姫ちゃんを助けれる人はいない、なら、貴女が判断したのであれば、反対なんてしないわよ。行きましょう」
最後の…人類の未来を賭けた、私達だけの戦いにいきましょう
医療班のメンバーに次の術式を開始するために準備をしてもらうのだが、前回と違う点を細かく伝えていく。
浸透水式に使われる特殊な液体、その濃度をNo2が長年、研究してきた中で、人体に悪影響、後遺症が残らない限界レベルの濃度にしてもらった。
現状で街を維持するために使っている魔力を減らして、此方に回してもらう様に指示を出す。
濃度が高くなっているので術式に回す魔力も当然多く用意しておかないと突然、魔力切れで失敗に終わる可能性もある。
それと、今回失敗したら二度と姫様の意識は戻ることが無い事も伝えておく…濃度を限界まで上げる手前、意識のない姫様の体にも相当な負荷がかかる。
二度目はないし、もう一度、術式を実施しようにも…必要な材料がそろう頃には姫様の体は…
なので、非戦闘員の方達は祈りを捧げてもらう…
人の心は力となる…祈りを通して魔力となるのであれば、この周囲に祈りという願いという魔力が充満することによって奇跡が起きることもあると私は信じたい。
そんな事を考えると、ふと、頭の中に見たことのない世界が見えた…四角い箱の中から聞こえてくる毎週楽しみにしていた大好きな音楽…ううん、違う、あれは、番組…それを動かない体で受け止め、薄れゆく意識の中で…
「団長、準備が出来たみたいよ…」
声を掛けられ、意識が何時もの世界に戻ってくる。
うん、そう、私の世界はここだよ、夢も希望もある…魔法がある世界だよ
ぱんっと両頬を叩き、両手の拳を握りこみ
「しゃぁ!気合入れろ!!夢も、希望も!魔法もあるんだ!!絶望することなんて無い!!」
人生で一度もここ迄、力強く叫んだことは無かった、今まで使ったことのない言葉を叫ぶと
「しゃぁ!いくわよ!娘を助けるわよ!長女を助けるわよ!!」
No2も一緒に叫んでくれた…ちょっと嬉しかったし、より一層、気合が入った。
多くの人が見守る中、気合…ううん、希望に満ち溢れた二人が専用の部屋の中に入っていく
部屋の中には液体の中に浸され、呼吸器を付けられている姫様がいる…
術式が刻まれている陣は光り輝いている、何時もよりもより濃く輝いている…魔力がいつも以上に満たされているのが肌で感じる。
意識を繋げる陣の上に立つと世界から隔絶されたような感覚にとらわれる…音も光も何も感じ取れない真っ白な世界…
その真っ白な世界の奥に、小さく、消えてしまいそうな…ちいさなちいさな何かがある…うん、今行くね。
意識を深く深く、研ぎ澄ましていく・・・全ての五感を閉ざし、全ての魔力をこの場に捧げるつもりでいく…
さぁ、はじめよう。
浸透水式を開始する…
今までとは比にならないくらい、物凄いスピードで潜れているのが分かるのと同時に、自分の意識の境界線を保つのも必死にならないといけない。
油断すると、全てがこの真っ白な世界に溶け込んで消えてしまいそうな気がする。
後ろを振り返る余裕も無いから、何とも言えないけれど、確実に奥へと進めているのがわかる。
開始した直後に感じたちいさな存在が確実に近づいているのが分かる。
きっと、アレに触れた時に、私と姫様は繋がる…そんな直感めいた部分に誘われる様にちいさな存在に手を伸ばし
触れた瞬間…わたしは しってしまった わたしが なんども 死んだ 物語を…
ぜんかい は きっと ひめさまが 私に、見せたくなかった死の物語が…わたしのいしきをとりこんでいく…
ぽろぽろと大粒の涙を流しながらも、彼女の口からは言葉が止まることは無かった
「永遠に叶わないと諦めていた願いを叶えてしまったことに人生で…あの時、思いが通じ合った、あの時と同じくらいに、幸せを感じていたの…貴女達が苦しんでいるのを知っていながら、私は、教会でシスターの恰好をして、色んな人に祝福の声を掛けてもらいながら、一時の…夢の中に居たのよ…ある日、夢から覚めないといけないと、幸せな夢の中で微睡んでいるんじゃないって、教えられた気がしたのよ、ドラゴンが王都の上空を駆け抜けていった時にね…ドラゴンがそう言っているような気がしたのよ、私の機転となるきっかけをくれた姿を見て、目が覚めたのよ、私も、もう一人の私も…幸せな夢の中からね…」
No2は、ドラゴンの事を神聖視しているように感じ取れるので、ある言葉が言えない…私は、姫様が孤独な…死の旅を、旅路を知っているからこそ…知っている。
姫様を殺し続けているのはドラゴンだ…恨むべき敵、憎むべき敵だ、そんな存在が…No2を助けたのは本当にドラゴンなのだろうか?
確かに、私もドラゴンを見た、見たような気がする、あれは、見間違いだと姫様の記憶を…体験したからこそ言える、ドラゴンが…獣共が私達を助けるなんてあり得ない。
きっと、何かしらの意図があって、それがたまたま、此方の都合が良い結果に繋がっただけじゃないのかと疑ってしまう。
「この街に帰ってきてから…姫ちゃんのデスクにあるレポートを読んだのよ、見つけれる範囲だけれど、全て…読んだわ。おかげで、姫ちゃんが何を考えていたのか、何を求めていたのか、何を望んでいたのか、全ての意図を、意味を理解したわ…彼女が目指している、本当の目標…夢を」
…うん、私も姫様の意識と繋がったからこそ、ある程度、知ったよ。夢物語だって自分でも笑ってたけれど、諦めきれない願い
「だから私は、その遺志を継ぐ…叶えてあげたい、愛しい娘の願いを…その為なら、私は、厳しくあろうと己を律する覚悟よ、愛おしく感じる幸せの象徴である、愛する子供を立派な救世主として甘やかすことなく厳しく接し、正しき人間に導くのと、同時に、全ての戦いに勝利してみせるって、決意を深く深く魂に刻み込んだわ…」
涙を流しながらも、目の奥には力強い光が見える気がする。No2からここ迄、これ程までに強い意志を感じたことは一度も無い。
「それだけじゃない!私ってね、色んな事に対して、そう、色んな事に対して…我を通すことはしてこなかったのよ。こう見えてもね。退くべきところはひいてきたのよ、でもね、今回ばかりはひく気はないわよ、絶対に…絶対に今度こそ、大切な人を愛する人を失うわけにはいかないのよ、医療人として母として、何があろうと…死んでも構わないって言いたいほどに全てをかけてでも姫ちゃんを、愛する娘の命を救う」
その強い感情に、私の心も強く同調している…この感情は、私だって気が付くよ、同じ思いだもの…おなじ、なんだけど、どうしてだろうか?
私とNo2以外にも、想いが重なっているような気がするのは?勘違いだろうか?
ううん、勘違いじゃない、この街全員が姫様を救いたいと願っているし、姫様と共に歩んできた多くの人達、私の知らない何処かで命を落とした人たちが姫様の事を願い、想っている…それが重なったのだろう。
この決意を、私が…他の人の心がわからないなんて、言われるこの私でも、この決意はわかる!!
熱い、胸の奥が熱い、今までも感じたことがある…恋をしたときのような熱い熱い感情が全身を駆け巡る!
その感情のままに、椅子から立ち上がり
「いこう!次こそは、絶対に!助ける!姫様を!私達の愛する人を助けよう!!」
大きな声を出すとNo2も立ち上がり
「ええ!次こそは!」
自然とお互いに向かって手を前に出すと、大きな大きな音が鳴るくらいに前に出したお互いの手を叩き力強く握る
熱い握手を交わした後は、前回の反省点と、次を確実とするために一か八かの作戦を提案する。
前回の反省点として、脳へアクセスするために選んだ経路が視神経を選んだのが失敗だった可能性がある。
視神経を選んでしまったのが、そもそもの敗因だと私は感じている。
脳にアクセスするのに最短ルートじゃないかと思っていたけれど、人は目から得られる情報を数多く脳へ送っているから、当然、脳へのアクセスも容易だと思っていたんだけれど…
同調現象が発生しやすいのかもしれない、特に姫様は目の性能が高いから、普通の人よりも重要な器官なのかもしれないっという推測を伝えると
「同調現象は何故発生するのか、原因が完全に究明出来ていないから何とも言えないけれど、貴女がそう感じるのであれば、正しいのでしょう、自信をもっていきましょう」
No2からは特に否定的な内容は出てこないのであれば、次は鼻腔を通っていけないか提案すると
「呼吸するための装具を付けているから、鼻腔は難しいわよ?…そうか、全身を液体に漬けないっという選択肢をとるのね?いや、でも、それだと…」
鼻から上だけを液体に漬けれないか提案するが
「ダメね、鼻から液体が体内に流れていくから呼吸が出来なくなるわね、鼻腔だけを液体に浸す方法はあるけれども、その場合は特殊な装具もあるけれど、患者の意識がある状態っという条件が必須よ、体内に浸透水式の液体を流すのであれば、濃度は今よりも薄めないといけなくなるわね、でも、肺を停止させて血液に直接酸素を送り続ける魔道具もあるけれど、循環させるだけの血液と魔道具を用意する時間は無いわね」
やっぱり、そうだよ、ね…そうなると…こっちしか選択肢は残されていないよね。
「濃度をあげる?限界まで?…皮膚や組織にかなり負担が出てしまうし、濃度が高いと…」
次の提案をするが、この提案が良くないのは私もわかっている。
過去に発生した同調現象、その原因の一旦は浸透水式の濃度が関係しているのではないかっという推測が生まれてから、一定の濃度にならない様に注意し、最低限問題のない濃度に下げることになった…
勿論、濃度を下げてしまった弊害はある、濃度を下げてしまった結果、浸透水式の難易度が大幅に上がってしまったんだよね。
私はそんなに違いを感じなかったけれど、No3とか、他にも出来る人からすると自由がきかないし、視界が揺らいで見えるし、長く潜っていると気持ち悪くなるって言っていた。
でも、濃度が高いという事は…魔力を濃く流せれる、意識を色濃く水の中にダイブさせることができる、深度が深い場所でも自我を保ちやすくなる、つまりは、どんなに深く潜っても私という存在を強く保てる…
「恐らく、後2回…2回しか出来ない…けれど、濃度を上げると、あと一回しか出来なくなるわよ?それに…そうね、わかってるわよね」
うん、わかってる、それもちゃんと考慮してるよ…
濃度が高いということは、姫様の意識も此方に流れ込んでくる可能性が高い…
同調現象が抑えきれなくなる可能性が高いってこと
正直に言うと、たぶん、だけど、同調現象が起きても大丈夫な気がする。
No2から教えてもらった過去によってその、何となく大丈夫って言う部分に確信を持てたよ
だって、私の体に魂が二つあるのなら…一つが姫様とくっ付いても大丈夫ってことだよね?
…男の私に託されたような、気がしたのは、きっと…うん、私の魂を捧げても大丈夫ってことだよね?
目を閉じる…スイッチが見える…番人はもういない…いつでも、スイッチは押せる…肉体を溶かして魔力に換えるんじゃない…
二つあるうちの一つ…私の魂を溶かせばいい。
覚悟は決まった、うん、私が生きるよりも姫様が生きる方がいいよね…
ありがとう、No2、もう一人のお母さん…陰ながらずっと見守ってくれてありがとう、弟の事は貴女なら任せれると信じれる。
教えてくれてありがとう、真実を知ったからこそ、私の中にある直感が正しいのだと判断できたよ。
でも、これを言うとNo2は絶対にダメだって反対すると思う、だから言わない…
目を開いてNo2に視線を向けると
「そう、決心は決まっているのね、貴女以外に姫ちゃんを助けれる人はいない、なら、貴女が判断したのであれば、反対なんてしないわよ。行きましょう」
最後の…人類の未来を賭けた、私達だけの戦いにいきましょう
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浸透水式に使われる特殊な液体、その濃度をNo2が長年、研究してきた中で、人体に悪影響、後遺症が残らない限界レベルの濃度にしてもらった。
現状で街を維持するために使っている魔力を減らして、此方に回してもらう様に指示を出す。
濃度が高くなっているので術式に回す魔力も当然多く用意しておかないと突然、魔力切れで失敗に終わる可能性もある。
それと、今回失敗したら二度と姫様の意識は戻ることが無い事も伝えておく…濃度を限界まで上げる手前、意識のない姫様の体にも相当な負荷がかかる。
二度目はないし、もう一度、術式を実施しようにも…必要な材料がそろう頃には姫様の体は…
なので、非戦闘員の方達は祈りを捧げてもらう…
人の心は力となる…祈りを通して魔力となるのであれば、この周囲に祈りという願いという魔力が充満することによって奇跡が起きることもあると私は信じたい。
そんな事を考えると、ふと、頭の中に見たことのない世界が見えた…四角い箱の中から聞こえてくる毎週楽しみにしていた大好きな音楽…ううん、違う、あれは、番組…それを動かない体で受け止め、薄れゆく意識の中で…
「団長、準備が出来たみたいよ…」
声を掛けられ、意識が何時もの世界に戻ってくる。
うん、そう、私の世界はここだよ、夢も希望もある…魔法がある世界だよ
ぱんっと両頬を叩き、両手の拳を握りこみ
「しゃぁ!気合入れろ!!夢も、希望も!魔法もあるんだ!!絶望することなんて無い!!」
人生で一度もここ迄、力強く叫んだことは無かった、今まで使ったことのない言葉を叫ぶと
「しゃぁ!いくわよ!娘を助けるわよ!長女を助けるわよ!!」
No2も一緒に叫んでくれた…ちょっと嬉しかったし、より一層、気合が入った。
多くの人が見守る中、気合…ううん、希望に満ち溢れた二人が専用の部屋の中に入っていく
部屋の中には液体の中に浸され、呼吸器を付けられている姫様がいる…
術式が刻まれている陣は光り輝いている、何時もよりもより濃く輝いている…魔力がいつも以上に満たされているのが肌で感じる。
意識を繋げる陣の上に立つと世界から隔絶されたような感覚にとらわれる…音も光も何も感じ取れない真っ白な世界…
その真っ白な世界の奥に、小さく、消えてしまいそうな…ちいさなちいさな何かがある…うん、今行くね。
意識を深く深く、研ぎ澄ましていく・・・全ての五感を閉ざし、全ての魔力をこの場に捧げるつもりでいく…
さぁ、はじめよう。
浸透水式を開始する…
今までとは比にならないくらい、物凄いスピードで潜れているのが分かるのと同時に、自分の意識の境界線を保つのも必死にならないといけない。
油断すると、全てがこの真っ白な世界に溶け込んで消えてしまいそうな気がする。
後ろを振り返る余裕も無いから、何とも言えないけれど、確実に奥へと進めているのがわかる。
開始した直後に感じたちいさな存在が確実に近づいているのが分かる。
きっと、アレに触れた時に、私と姫様は繋がる…そんな直感めいた部分に誘われる様にちいさな存在に手を伸ばし
触れた瞬間…わたしは しってしまった わたしが なんども 死んだ 物語を…
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