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Dead End 6Ⅵ6の■■(5)

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作物を荒らすかのように我らの聖域の近くに巣を作り美味しい部分だけを労せず手に入れようとする悪鬼共の巣を非道だろうが何だろうと罵られても構わない下劣な方法を駆使して一つ一つ、巣を念入りに潰していく…便利なモノですね、魔道具というものは、こうも簡単に毒を生み出し、火を生み出し、風という力場を作ることもできる、いとも簡単に生物を死に至らしめる、少々、強力すぎるのが難点ですかね?捕縛したい相手もうっかり殺してしまいましたよ…

私以外にも同時進行で同志諸君が一糸乱れぬ連携によって数多くの組織を潰していく…潰された巣に蔓延る餌はしっかりと贄として地下に運び栄養源となってもらいましたよ。もちろん、捕縛することが出来たモノは贄となる前に、ついでに、死を願う程の拷問というプレゼントも忘れていませんよ…

それにしてもなかなか、実行犯をあぶりだそうとしているのだが、出てこないものですねぇ…庇おうなんて考えを維持できるほど生易しく手心を加えているつもりはないのですが?そもそも、我らが神へと通じる道を用意してくれた先導者の方から頂いた数々の魔道具の中には相手を狂乱に陥れ全てを自白させる魔道具もありますからね、嘘は言えないはずなのですが?

私が知りえる限り、推測の域を出ない組織も含まれていますが、アレとの繋がりがある組織も確実に徐々に潰していっているのですけれどね?
潰しているのですが、捕縛は出来ていないのですよね、うっかり殺してしまったからではありませんよ。敵も馬鹿ではないということですね、しっかりと教育されていて困ったことに捕縛したら即自決する潔い行動をする方しかいないのですよ…こればっかりは少々羨ましく感じてしまいますね。


驚いたことにですね、襲撃を重ねていて気が付いたのですが…敵の組織の中に我々と同じ神を崇める同志が誰一人としていないことに神の御心を感じましたよ…
こういった組織に一人や二人は同志が居てもおかしくないと思っていたのですが、我らの神は選民意識がお強いのでしょう。素晴らしい事ではありませんか。


此方は快進撃が続く中、誤算とは言えないが貴方はこのような事態でも愚劣を極めようというのですか?
イラツゲ様が攫われてから一日が経過したというのに、愚劣なる弟は何も成果を上げていなかった…

方々を駆け回って情報を搔き集めている様子ですが、確たる証拠は得られていないという報告、聞きたくありませんねぇ、愚を極めし虫の言葉なぞ!
…そういう風に罵ってあげたくなるのですが、それは此方も同じですからね、此方も確たる証拠が手に入っていないので、お互いさまではあります。
だが!貴方の方が此方よりも確たる証拠を得やすい立場だというのに、何をしているのかと苛立ちは感じてしまいますがね!

そう、敵が事を起こしたという確たる証拠さえ、それさえあれば!それをもって断罪しに行けるのですが…乗り込む為の言い逃れの出来ない証拠が無さ過ぎる。

想像以上に敵の動きが狡猾で、俺らの事情を全て把握し駒を動かしている様子ですね。
困ったことに、後を追うしか後手にしかまわれない俺たちの動きを嘲笑うかの如く、此方が潰している木っ端どもにもしっかりと教育が施されている…
これ程の組織、何年かけて作り上げたのか…想像を超えてきておりますね、才ある愚者というのは困ったものです。
正直に申し上げますと俺とて何も策を講じなかったわけじゃない、過去の先導者達が殺されてきたからといって震えて縮こまっていたわけじゃない、過去に幾度も暗殺という手段を同志と共に考えたのですが…俺たちが考えうる方法に対して対策は完璧にと言えるほど徹底した策を講じられていましたからね…
迂闊に手を出せば私の首なぞ軽く飛びかねない徹底した対策でしたからね。

…正攻法も邪道も下法もダメ、清濁併せ吞むとは…扱いに困りますよ。天から裁きでも落ちませんか?突如、アレの前に人外の獣でも現れませんかね?

一応ね、殺すだけでいいのでしたら手段が無いわけじゃない、天からはダメでも大地から怨讐という名の地獄の蓋は空けれそうですが、それをしたら王都どころかこの大陸全土が滅びかねない魔術なので、おいそれと使うわけにはいかないですし、発動するには条件がね…全てがどうでもよくなったら使いましょうかね。



反省を含めて一日目を振り返ってみると…本当に、心の底から感じたのは徒労に終わった、得るものは無い無駄足と感じる…
疲弊感に疲労感漂う感じではあったが敵が強固で牢固…今の状況では手の出しようが無い、全てを捨ててでも良いのであれば強引な手段というのもあるのですが…

それを使わない限りという状況が宜しくないですね、俺たちはあの人の未来を失うわけにはいかないのですよね。

そうなると相手の出方を伺うのも正解なのではと思うが…その考えは間違っているのではという、心が、勘が、予感が…騒めている。
その全てが警告を出してくる強引な手段を使えと、今すぐにでも王都を燃やせと、そうしないと失ってしまうぞと語り掛けてくる。

失いたくないとイラツゲ様の微笑みを早く摂取したい、その願いは消えることが無い、なまじここ数日は幸せを感じていた手前、目の前で幸せが消えてしまうというのは実感が湧きすぎてしまう。

はぁ…ため息と共にイラツゲ様がいつも座っていた椅子に手を置くが温もりも香りも感じ取れない…
傍にいるだけで心が高鳴り全てが満たされる薫りが教会の何処にも感じ取れない、どうにしてイラツゲ様だけが保有している俺を満たす何かしらの栄養を摂取しないと俺の心も体も限界だ…耐え切れなくなっている…

椅子の上に上半身を投げ出し、椅子にしがみつく…失ったものを求め縋るように。

人とは弱く脆いものですね、幼き頃の輝く日々が失われし幸福に包まれていた日々が…手に入ったがゆえに。
俺の心は弱くなってしまったのかもしれない、目の前に幸福が、福音が見えないだけで、もう心が崩れそうになっている。

イラツゲ様がお隠れになられてからの年月を想えば経ったの一日だというのに、私の心は騒めきどよめき、落ち着きが無くなってしまいました。
落ち着きを取り戻す為に衝動を抑えるために…今後に備えて必要な心の準備をするために立ち上がり、休憩室で紅茶を飲む際によく座られていた椅子から離れ、とある場所へと歩を進めていく…

可能なので在れば、夜にも行動をしたい、ですが、それはできない、焦るような衝動を抑える為に…この行動は私に落ち着きを取り戻す為に必要な行為なのです。

人として間違っている行為だと頭では理解していても、俺の魂が求めてやまないのです!!
彼女が身に着けていた衣服を!彼女が寝ていたベッドに詰め込んで抱きしめるように横になる!
そして!!全力で空気を吸う事で体内から彼女の僅かに残された薫りに満たされることで!!!幸福へと満たすぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!


この姿を見られでもすれば言い訳無用で変態という烙印を焼き付けられてしまうのでしょうが!!その心配はありませんからね!!


長い時間、薄れていく愛する、今すぐにでも会いたいと我が身を焦がすほどの願い(ニオイ)が詰まったベッドで横になっていると、ふと我に返る…
誰も居ない教会というのはこんなにも静かだったのですね…

自然と目から水が溢れ出てしまう、拭う事すら忘れ、愛という名の全てが詰まっている薫りに包まれながら横になる…静かな時間が静かな時間ではなくなるのを願いながら、彼女が無事であるのを祈り、時が流れ太陽が昇ってくるのを待ち続ける…

私独りであれば夜に行動を起こす事は何も問題ないのですが、私独りだと武力的に、命を落としかねないのですよね、魔道具を使っても良いのですが、魔道具なんて珍しい物を用いているのを見られでもしたら出どころは何処なのか探られてしまう、相手の弱みを知らぬのに此方の弱みを握らせるわけにはいきませんからね。
使うのであれば殲滅し目撃者を全て殺し…もとい、贄とするぐらいの状況でしか使えないのですよ。
そういうわけでね、夜に行動を起こせないのは単純に独りでしか動けないからですよ…信徒の皆様も日常がありますからね。
彼らは来る日に備えて隠れて行動しないといけない、日陰者として目立たないようにしていただいているのです。来る日にの為にも私達は迂闊な行動は起こせれないという柵がありますからね。
それにね、非日常的な異常者と知っての行動を常にしてしまうと、必然的に不審の目で周囲に見張られてしまいますからね…
全てが終わりを告げるその時まで私達は決して見つかるわけにはいかないのです、我らが神をこの大地に降臨させるまでは…


降臨させてどうなるというのか?


ふと、考えてしまう、神を降臨させた後、私達は…何をすればいいのでしょうか?王にとって代わるとか、全てを手に入れれるほどの権力などという俗物的な考えには興味はない…

聖職者という立場にいながらも、俺の本心は見知らぬ人々を導く様な事に興味はない、イラツゲ様が喜ぶからしているだけだ…
なれば、褒美として神に願うのも悪くは無いか…イラツゲ様と共に南の暖かい大地に腰を下ろして漁でもしながら二人だけの世界で生きるという願いも乙なモノですね…

それにね、神がこの大地に降臨為されたら私のような聖職者というのは不必要になるのはわかりきっていますからね、神が全てを統治してくださるのだから…
神の御力によって、この大地が信徒に溢れかえれば、醜い争いなぞ無くなりますし、愚かなことで悲しむような出来事もなくなりましょう。

全ては神の御心のままに、神が考え抜いて作りたもうた台本通りに我らは幸せを享受して生きれば良いのです。
全ては神の手の上で私達は全てを委ね安寧秩序として生きれば良いのです。
そうなれば、聖女という肩書も王という肩書も聖職者という肩書も何もかもが意味をなさない。


真に我らは自由となるのです…


薄れていく幸福に包まれ、神の意志を薄っすらと感じていると、カーテンの向こう側から光が見えてくる…音も僅かに聞こえてくる。
さぁ、夜明けと共に行動を開始するとしましょうか!
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