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Dead End ■■■■■儀式 Day 1 (Ⅰ)

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あの大きな事件が色褪せ様としている、一部の人達はあの悲しみを思い返さないようにしながらも、徐々に様々な方法で、各方面、色々と落ち着きを取り戻しつつある。
大きな事件も無く、日々の営みを思い出してきた、そんな日常に、私にとっては珍しい出来事。

外から戻ってくると、私宛に手紙が届いたと、先輩から手紙を受け取る。
外交をされている姫様ならわかるけれど、私宛に手紙って時点で珍しいのですけどね、申し訳ないけれど両親とはこの街に行くことを告げた時点で疎遠な関係になりましたし、いえ、お父様だけね、疎遠になったのは、お母様は手紙を書けば返事くらいは返してくれるもの…最近、手紙を送った記憶はないわね。
だとすると、誰かしら?

差出人の名前を見た瞬間に喉から恨みつらみが零れそうになる、腹の底から湧き上がる嫌悪感と絶望感が混ざり合ったような嫌な予感しか、しないわね…何用よ?私と貴方って、手紙のやり取りをするくらい気さくな間柄だったかしら?どの面下げて、手紙なんて送ってきたわけ?

差出人の名前ル・ピーカ…王族としての名が記載されていなくても、これが誰なのかわかるわよ。珍しい名前だものね。

末席の王子 ル・ピーカ・サーティン
13番目の王子、現王であるライフ・モネとは遠い血縁となり直接的な親子ではない、王族の血筋であることは間違いないのだが、直接的な親子ではないという部分は公にしてはいけない情報っと、建前ではなっている。そこそこ権力のある貴族や伝手のある人物であれば素性や経歴、産まれも把握されている、その程度でしか情報を伏せていない。
このことは、王族やそれに連なる人しか知ってはいけない情報で、私も愛する騎士様から教えてもらわなかったら知らなかったこと。
一応ね、調べようと思えば調べれる程度の隠し事だけど、公にその事を口にしてはいけないってくらいかしら?
王族の血筋であることは間違いないから、末席の王子として王族に与している、だけど血が薄いって言う部分で、全ての王族から忌み嫌われていて、後継にするにしても幼過ぎるし、知恵も勇気も武力も無い…武勇伝も無いってことで、嵌められてデッドラインまで遠征に行かされたのよね。まだまだ、成長過程の若いタイミングでね、それに巻き込まれたことは一生恨ませてもらいますけどね。


一生恨んでも差しさわりのない事件、その事件の最中で知りえた情報、余りにも疎まれ、嫌われ、謀略の果てに私達を道ずれにして殺されそうになった王子…


だけど、彼は生き残った、私の愛する人の命と引き換えに…
この言い方はズルいわね、あの人は私を守るために命を賭してまで勝負に出たのよ、末席が悪いわけじゃないわ。
…私に力が無かっただけよ、愚者である私のせいよ、私が姫様のように才能あふれていれば、騎士様を守れたはず、どんな状況でも覆せたはず。
愛する人を守れない才能が無い私が悪いのよ、人のせいにしてはいけない…


そう思わないと憎悪によって、王族全てを軽蔑し、呪い殺しそうになるくらい、怒りによって私の人生、全てが復讐という名の終わりなき旅に束縛されそうになるから…


きっと、そんなことを彼は望んでいないでしょう、あの人は清廉潔白を体現したような素晴らしき精神をお持ちの方だったから。
私の愛する騎士様 シヨウ様 幼きときは ヤシオ っと名付けられていた愛しい人…

この街で、共に過ごした日々は今でも幻だったんじゃないかと感じてしまう、今とは違って、世界中が輝いて、毎日が彩溢れる色のある世界だった。
彼との日々をもう一度、取り戻せるのであれば、私は何を犠牲にしても…そんなことを考えない日はない、可能性があるのだとすればどんな悪行にも身を染める。
何時だって、彼との思い出が私の心を彩らせ、あの輝かしい日々を胸にし、過去を忘れることも無く恋い焦がれながら、今を生きている…
いいえ、今を生きてはいないわね、私の心はずっと、あの時から止まったまま、過去を生きている…

今は、ただ、心臓が動いているだけ、生きてはいない…

彼の子を授かり、共にこの街で子を育て人並の幸せ…それを求め続けているのが今も私の心臓が動いている理由、彼を助けることが出来なかった愚かな生き物は心臓を止めたいけれど止める術がなく、目的を見失い、ただただ、行き恥を晒し続けているだけ、屍よ、私なんて、ね。…まるで、リビングデッドね。


死んだ過去に生きる存在に、王族が何用よ?貴族としての価値なんて私にはないわよ?側室の娘だもの…
煩わしい感情しか湧いてこない手紙なんて中身を改めて直ぐにでも忘れて日常に戻りたいから、すぐにでも手紙を開けるのが心の平穏を保つ上では正しいのだろうが、病棟のここでは色んな人がいる、迂闊に開けれないわね。迂闊に開けてしまい、内容を知ってしまったら巻き込んでしまう可能性がある、王族からの手紙って時点で、他言無用の内容であり知りえたものは問答無用で関係者として共に行動しないといけなくなってしまう強制力が発生しちゃう。

仕方がない、面倒だけれど、一旦、自室に戻ろうかしら。

先輩に一足先にあがりますと声をかけると「報告は明日でいいからなー」手をヒラヒラっというか、ッシッシっと追いやるように手を振ってくれる。
先輩は何時だって変わらない、どんな時であろうとぶっきらぼうで、それでいて人の気持ちを理解してくれる。

手紙を受け取ったのが先輩でよかった、それ以外の人だったら質問攻めから逃れられないでしょうね、そして、後の祭りってね。
私と先輩が築き上げた医療班をこんな下らないことに巻き込むわけにはいかないのよ…王族と関わるなんて碌なことにならないもの。

白衣の内ポケットに手紙を入れて、病棟を何食わぬ顔でいつも通り、至極当然のように今も日常であると伝えるように挨拶をして出ていく。
普段よりも気持ち足が速くなっていることに気が付いた人はいないだろう。そこまで注意深く些細な異変を察知する人なんて、この街に…一人くらいしかいないわね。

スタスタと自室に向かって歩き、鍵を取り出して、ガチャっと解錠しドアを開ける、古いドアだから開けるとぎぎぃって言うからドアが開かれたかすぐわかるのが唯一褒めれるところね…もう少し、街に予算があればね~色々と施設をより良い物に変えれるんだけどね、そんな予算があれば戦士達の装備に回すわよ。

バダンっと大きな音を出してから、その音に対して何も感じず、古びたソファーにゆっくりと腰を掛けて白衣の内ポケットにある封筒を取り出す。
封筒につけられている、この封蝋ってめんどくさいのよね~、封を切るためにハサミで、ハサミの場所は机の上、今私が居るのはソファーの上。
…机まで取りに行くのはめんどうね、仕方がない、無作法だと笑われようが構わないわ、手でビリビリっと破くとしましょうか。
ペーパーナイフなんてこじゃれたものなんて持ってるわけ無いわよ?手紙なんてこないもの…

封筒をビリっと裂いてから、手紙を取り出し、開いて手紙の内容をさらっと流す様に読む…
当たり障りのない挨拶なんて読む必要が無いからすっとばして要件だけ…

ふぅ~ん、これは面倒な内容ね、何で私がお前の為に王都に行って一肌脱いで支えてやんなきゃなんないのよ


【次代の王を決める新しい取り組みとして、選挙が行われます、どうか世界の安寧の為に次代の王へと至るために僕に聖女様のお力を、知恵をお貸しください



何様よ?あんたが不甲斐ないから力が無いから殺されそうになるのよ、巻き添えを食らった私達の…許し難い苦難を、犠牲を!!!!
手紙を読み終える前にぐしゃぐしゃにして地面に叩きつけたくなる、だが、その感情をコントールし、短慮な行動を慎む。

全ての内容を読んでからが、怒りをぶつけるのが正解よね。

湧き上がる怒りを抑えつけ、憎悪で腸が煮えくり返りそうに成程、怒りで身を焦がしそうになる、いいえ、なっているわね、心を落ち着かせるように何度も何度も呼吸を繰り返してから続きを読み文の内容を確かめていく…


成程ね、あんたを殺そうと謀略の果てに死地へと追い詰めてきた人物がこのままだと、次の王へと至る可能性が極めて高いのね。

確かにね、その言い分はわかるわよ?あの惨劇を、裏で指先一つで人を動かし逃げられないように人を操り、安全圏で悦に入りながら楽しんでいたであろう黒幕を許すなっていうのは心の底から同意できるわよ?でもね、そのきっかけを作ったのはあんたが力が無いからじゃないの?
騎士様が…私の愛しの騎士様が、王族を守る盾となる存在である騎士様が!貴方の事を詳しく知らないくらいに弱い存在でしょ!?つまり、筆頭騎士の立場からして守るべき王族として認識されていなかった、守る必要性がない人物ってことになるのよ。

王として相応しくないから、王族の恥さらしだから、箔をつけるためにあの場所まで行くように仕向けられたのは、正直、納得できる部分もあるわよ…
それくらいの実績を持ちえてから対等に話せよ?って意味合いでしょ?奇しくもその称号を得てしまったがゆえに、今も生きているのだから、命を狙われないように大人しく王族という枠組みで隅っこで生きて行こうとは思わなかったの?

…あの惨劇を招いておいてなお、野心を胸に抱けるの?何をもってあなたは無謀な野望という火の中に身を投げ出し焦がすの?

王子として何一つ勤めも果たせず、知恵もなく、武力も無く、血も薄い…
何も持っていないからこそ、周りからいびられ、価値が無いと言われ続けた、自分に価値があるのだと声を大きくすればするほど、周りからは冷たい目で見られ、その状態を脱したい、そんな気持ちがアレの策略に嵌ってしまう結果になったのでしょ?

…自業自得に巻き込まれたこちらの気持ちは理解しているの?

していないでしょうね、ガキだから…
いっそのこと、全滅して死んだことにして、連れてきた兵士ともども、私達と一緒に日陰で生きて行こうとすればよかったのよ。
王族の立場なんて忘れて、この街で共に歩むという選択肢も残されていたんじゃないかって思うけれども、それも浅はかな考えなのだろう。
それが出来ないように、何処に隠者が潜んでいるのか、退路が絶たれている様に仕向けられていたのだから、どうしようもなかったのは…理解しているわよ。
色んなボタンの掛け違いによって、悲劇が起きた、惨劇が起きた、多くが失われた、頭では理解しているわよ。頭ではね。

…未だに忘れることが出来ない、未だに心が覚えている、あの日々を。
心の中にある目を閉じて、開けた瞬間に、ふと隣を見ると紅茶でも飲みながら、直ぐにでも手が届きそうなくらい近くで優しく微笑み、全てを包み込むように守ってくれている、そんな日々が今も続いているのだと続けていてほしかったのだと心が告げている。
…だけど、頭の中にある目を閉じると、忘れる事の出来ないあの惨劇が蘇る…あの人を返して…

忘れる事の出来ない深く刻まれた傷が強引にこじ開けられ、痛みが全身を駆け巡り耐えられなくなり感情が溢れ出てくる、溢れ出た感情が大粒の涙として形に現れ、止めることが出来ず、溢れるように流しながら誰かに救いを求めるように大きな声で泣き崩れてしまう。

この傷は永遠に癒えることが無い、癒えてはいけない傷、死んだ人が本当の意味で死を迎えるのは繋がった想いも、笑いあった思い出も何もかも、忘れられてしまった時に、その人は本当の意味で死んでしまう。もう私は騎士様の声を覚えていない…優しく朗らかで包み込むようなあの、優しくも低音で心の響く様な、あの声を、もう覚えていない。

なら、私はこの傷を、痛みを、永遠に覚え続ける、彼との日々を忘れない、わたしがかれをしなせない あいする ヤシオ様は永遠にある!!

ギィィ…バダン…心が叫び続けていると、部屋のどこかで何か聞きなれた音が聞こえたような気がした。
背中に暖かい温もりが伝わってくる、呼吸を整えることが出来ないくらいに泣いている私に誰かが触れてくれる。
「ジラさん!?大丈夫!?何があったの!?」
嗚呼、そうよね、私の部屋に人が訪ねてくるなんて、今は、貴女しかいないわね…
大丈夫と答えてあげたいけれど、ごめんなさいね、今は、いまはむりよ、私の心はぐしゃぐしゃなの、貴女の相手をしてあげられないのよ

暖かい温もりに包まれながらも、傷が広がり続け今にも私の心が張り裂けそうになっていく…
このまま張り裂けて死んでしまえばいいのに、あの人のいない世界に未練なんて無いのに。

…どうして私は生きているんだろう?
…私も一緒に月の裏側へ行きたかった
…一緒に
…手を握って連れて行ってほしかった
…愛してるっていったのに
…おいていくなんてひどい…



泣き続ける感情が落ち着く気配が無い、私の日常から涙が枯れることはない、私が女である限り…




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