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とある人物達が歩んできた道 ~ 地球 ~
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姫ちゃんの言葉ってもしかしなくても、意味がある?何かしら背景があるの?今まで知らない単語とかは、純粋に子供特有の造語か何かかと思っていたけれど…違う?
姫ちゃんを手招きして来客用のソファーに座らせて先ほどの地球って、どんなの?どういう意味?なのか確認するために質問をしてみると
「えっとね、私も地球の全てを知ってるわけじゃないけど、確かなのが」
いま、始祖様がいる星の名前
とんでもない、予想外の内容が飛んできた、衝撃な情報に眩暈を覚えながら、冷静になる為にも少し時間が欲しいので、時間を稼ぐついでに心を落ち着ける為に、ちょっとまっててね、話が長くなりそうだから紅茶淹れてくるわねっと、声を掛けた後、部屋の片隅に置いてある、紅茶などを楽しむために用意してあるコーナーに向かい、お湯を沸かす魔道具を起動して、お湯を沸かしながら言葉の意味が、意図が、真意が…いったい何か、どういう意味なのか、考える。
第一に気になるのが
始祖様って、生きてるの?あの人。
あれ?400年とかそれくらい前の時代の人よね?そんなあり得るの?400年なんて、人が生きている筈のない途方もない時間よね?私達の平均寿命なんて、貴族を除けばだいたい、28歳くらいよ?何倍も長生きしてることになるわよね?過去に生きた、時の人じゃないの?始祖様って…
不穏な考えがよぎる、根本的に私は勘違いをしていた?
始祖様はそもそも、人じゃない?異形の生き物?私達の常識外の生物、本当に神様が人類救済の為に遣わしてくれて超常なる生物ってこと?ぁ~~駄目だ、情報が少なすぎていくら考えても確証を得るような答えが出てこない…
次に疑問に思ったのが、星の名前って何?土地の名前、って感じ?
ちきゅうって土地に、始祖様がいるの?この大陸以外のどこかにいるの?でも、ニュアンス的に、どうなの?って感じだよね?ほかの大陸にいるとしても400年もの間、何してるんだって感じだよね?
思考がぐるぐると同じところを迷う様に、だけど、駆け足の様に駆け巡る…
答えの出ない思考の渦から、迷路から抜け出れないでいると…目の前にある水が沸騰する音が聞こえてくる、どうやら、お湯が沸いたみたいなので、思考が停止することなく、考えながらも、紅茶を淹れていく。
ティーポットとカップをもって姫ちゃんがいるソファーに戻り、テーブルの上に紅茶を置いてから、どんな質問をすればいいのか悩んでいると
姫ちゃんからさらっと話を進めてくる
「始祖様は生きてるよ。あの人、何年生きてるのか、わからないくらい途方もない年月を生きてる人だよ」
理解の範疇を超える一言に、私はただただ、思考を止めてありのままを受け止めようと思考を真っ白にしながら、何気なくっというか、何かしないといけないようなそんな気分で勝手に体が動いて、思考とは無縁の動きで単純な動作をする為に、紅茶を口につけて、嗚呼、熱いわねぇっという受け止めがたい内容に頭がパニックを起こしつつあるのだと、紅茶の熱を唇に感じながら困惑していた。
姫ちゃんも紅茶に一口、口をつけると、あちちっと何度も何度もふーふーっと冷まそうとしている、その動作を見て少し冷静になる。
嗚呼、そうか封印術式で魔力を封じているから、普段なら熱い紅茶とかって、術式を使って軽く冷やしてから飲んでいるのよね、この子…じゅつしき、もしかして、術式を使って始祖様を観測することができる、とか?
熱そうに紅茶をゆっくりと飲んでいる姫ちゃんにそれとなく、聞いてみると
「ん~っとね、これ、何だろう?術式に該当するのかな?どうなんだろう?わかんない、かな?この、その、授けられた加護を解明解析しようなんて考えたことも無かった」
質問に対して姫ちゃんも理解の範疇を超える何かだというのだけがわかる、わかったことは【加護】つまりは寵愛の巫女が始祖様から授かりし、特別な加護、それが何かしら作用していると見て、いいのかな?術式大好きな姫ちゃんが知りえない技術なのに、調べようとしなかったのはどうしてだろうか?…単純に触れるだけでも恐れ多いという不敬に当たる行為だから…見たいなこと、かしら、ね?
姫様が続けて説明してくれる内容の殆どが理解できないが、そういうものなのだろうと納得することしかできなかった…
「まずね、寵愛の巫女、その歴代の全員が使えた加護の一つ、始祖様の視界を共有するっという方法があるの…これもね始祖様がね、私達、寵愛の巫女という生命体、悲しい定めを、悲しい運命を背負い続けて人類の礎となり陰ながら支えてきた…短命が故に、多くを語ることが無く、多くから支持されることが無かった、それゆえに、外を知る機会が無さ過ぎるのは辛かろうと、授けれくれたみたいなの…」
そりゃ、そうだよね、姫ちゃんは知っているよね、自分たちのご先祖様達が全員短命であるっという事実を、彼女だってあの日記を熟読しているはずだもの。
彼女は自分の命が短いのだろうと関係なく、自分が思ったように感じたように、自由に生きようとしていたのね。
「私もね、巫女たちの日記を見て知ったの、ある時期になると、巫女たちが人生で一度だけ、体内の魔力が高まる日があるんだって、その時だけ、寵愛の加護を通して、始祖様の視界を見ることが出来る、優しい始祖様は私達が見ているのを感じ取って、何が見たいのか、何が知りたいのか、私達の我儘に応じてくれる時があるの」
体内の魔力が高まる日…もしかして、未来姫ちゃんと出会ったあの時も、もしかして、体内の魔力が高まったからとか、そういう要因も絡んでいそうね…
封印術式の施術が終わったら、魔力を練り込んで溜め込んで、姫ちゃんに全力で魔力を注いで満タンになるまで私の限界まで注いでみようかしら?
「でね、寵愛の巫女たちが見てきた映像とか、始祖様が視界を共有しているときに説明とか、話とかしてくれたのが寵愛の加護の中に保存されているの、私達、寵愛の巫女は一定の年齢に到達すると、加護への干渉が出来るようになるの、たぶんだけど、知識とか技能とか、術式への理解度が向上すると自然と加護へと到達するのだと思う、だからね、私達、寵愛の巫女は始祖様から膨大な量の知識を得ているの」
時折、よくわからない単語や、どこで知ったのか不明の知識って、そういうことだったのね。
でも、それらを閲覧するときとかって絶対に代償無しでは機能しないわよね?嫌な予感がするのだけれど
「曇った表情をしているから気が付いてしまったと、思うけど、そうだね、その考えに至るのが普通だと思うよ、始祖様が授けてくれた寵愛の加護、それが何百年も魔力の供給も無くどうやって稼働しているのか、不思議に思うよね?私達もね、不思議に思っていたんだよ?だからね、こんな推測が生まれたりしたんだよ?寵愛の巫女が死んだときに魂を供物として捧げているっていう推測、でもね、私達はそんな非道なことを私達を愛してくれた、運命を憂いてくれた、そんな優しい始祖様が非道なことをするなんて信じてないからね?」
この一族だからこそ、始祖様の人柄を知っているからこそ信頼できるのね、人って表現していい存在なのか知らないけど…
「この間ね、教えてくれたじゃない?私の体から魔力が抜け出てしまっているって、きっと、私達一族の体から抜け出た魔力を吸収して維持しているんじゃないかなって最近はね思うようになったの、でもね、始祖様の魔力量を持ってしたら、そんなのが無くても維持しているんじゃないかなって思っているから、私達の魂を供物にしているなんて思えれないんだよね」
そうね、現に今も何処かで生きているような超常なる存在だものね、私達の尺度では計り切れないよね…
「それでね、星っていうのがね、この大地、海、空、全てをまとめて星っていう単位として数をカウントされているの、だから、表現として単位でいいのかな?あってるのかな?だからね、私達が住む大地とかそういうの全てをまとめたのを星って、そういわれているの、わかりやすく言うとね、夜空にさ、月以外にも小さな光が点々としているでしょ?あれが、星、あれが一つ一つ、ここと同じように大地があって、海があって、空があるんだと思う」
…言葉の意味が壮大過ぎて、理解が出来ないけれど、そういうものだと納得するしかないわね、夜空に浮かぶ点が、あんな小さい点が、ここと同じように途方もなく大きなものだったなんてね…もしかして、月も相当、大きいってこと?
「そもそも、月って名前を授けたのも星って名前を授けたのも、始祖様だからね?過去の私達、始祖様に出会う前のご先祖様は、アレがなんて呼称しているのか、もう、資料すら残されていないからね、それでね、始祖様はある星、そこではその星の事を地球って呼んでいたかな?今もね、その地球って星で生きているの、何か理由があって長く留まっているみたい、私達では始祖様がどうして、そこの星に留まっているのか知らないけれど、きっと何か理由があるのだと思う」
始祖様が授けたのって力だけだと、思っていたけれど、意外にも野蛮な人ってわけでもなく、賢く思慮深い人なのかもしれない…
私の中のイメージだと、闘いこそ全て、野性味が溢れていて、ありとあらゆる女性は俺の物っていう蛮勇なイメージだったけれど、実際は違うのかもしれないわね。
英雄、色を好むっていう、始祖様の英雄譚からそういうイメージが強くて、その英雄譚に憧れて一夫多妻制にもなって、強い男になって女性を娶るっていうのが若い子が抱く夢の一つだったのにね、真実は違うのかもしれないわね。
「月の裏側へ行く」
その言葉を聞いて胸が張り裂けそうになる
「このね、表現もね、あながち間違っていないんだよ、その表現を最初に使い始めたのが教会…なのかな?私達、寵愛の巫女が、教会の偉い人かな?始祖様がどうして、この大地を旅立ったのか説明したんだよね。始祖様が遠い遠い月のもっともっと向こう側、私達が見えない月の裏側の更に向こうへと旅立ったと…それを、教会に伝えたのが始まりだったかな?その表現を教会が拡大解釈?政治利用的解釈したのかな?そこから産まれた新しい教えとして、死んだ人は私達では見ることが出来ない世界、つまりは何時いかなる時も見ることが出来ない月の裏側へと至る存在へと昇華された。そう、死んだ後は、月の裏側へと向かい、愚かで脆弱な私達に大いなる力を授けてくださった始祖様が今もなお、命がけで闘い続けている聖戦…そこへ、死んだ者は始祖様から授けられた大いなる力の一部を…力を返す為に!聖戦で戦い続ける!我らが偉大なる始祖様の戦いを補佐するために!力添えをするために!月の裏側で戦い続けている聖戦の場へと向かうのです!!って、宗教的考えに結びつけたのかな?」
この説明を聞くと同時に、堪えていた涙が溢れ出てくる…
愛する騎士様の魂はどこへいったの?始祖様を助けるために月の裏側へ旅立ったのではないの?愛する人は今どこに居るの?
涙を流す私を見て
「そうだよね、そう、辛いよね、悲しいよね、愛する人が誉れある闘いで死んだ、その穢れなき誇りある高き魂がただただ、虚空に消えたなんて受け止めづらいよね。だからね、死の50年の間、多くの人が悲しみに包まれているのを救う為に教会が広めた教えなんだよ、死を悼むために、慈しむために、死が無駄ではなく、その先があるのだと、悲しみで心が折れないように明日を…見失わないために、絶望で死を望まないために…そんな風に書いていたかな…」
そう、そうよね、私もその教えに少なからず助けられていたわ…
「それにね、私は、私個人はね、その教えが間違っているとは思えないの、死んだ魂が何処に行くのか、それは私達では知らないけれど、始祖様なら知っているかもしれないし、もしかしたら、みんな始祖様の元へ向かって行って、始祖様が追いかけている全ての元凶を倒す為に力添えするために旅立ったって、思えるもの、私達を苦しめている怨敵を撃ち滅ぼす為に、私達の魂は常に始祖様と共に在る…」
…そうよね、そうだよね、うん、私もその考えを信じる、信じたいわ。
見えないからこそ、見える方法がないからこそ、信じたい。貴方の運命、その先にある世界が始祖様へと繋がっているのだと信じたい、騎士様の様な人として素晴らしい心を魂を持った人が、死んだだけで消えたなんて考えたくないの…
「だから、私達は月へと祈りを捧げるし、その祈りを捧げるって言う考えもね、寵愛の巫女が教会の人に伝えた言葉から産まれたんだよ?だって、地球にも月があるから、そして地球には始祖様がいるから、月を通して私達は始祖様に祈りを捧げているの。それにね、ある一説ではね?月って言う存在があるからこそ、生命が産まれるのだという一説がね、あるんだって、ぁ、ここじゃなくて地球で唱えられた一説だよ?だからね、生命がこの大地に産まれる為には、母なる天空にいる大いなる月が大地が見守るように見つめ、大いなる父である太陽が全てを照らし包み込むように守ってくれていることで、二人の愛によってこの大地に子が、生命が芽吹くんだよ、ステキな考えだよね」
姫ちゃんが何処か、世間とずれているというか考え方が違うのはきっと、地球の知識や考え、倫理が教えとして根付いているのだろうな、どこか合理的で効率的な部分もあれば、人の感情や心に寄り添える、素晴らしい考えを持っているのね…母親として何を教えてあげられるのか、わからなくなりそう、自信を無くしちゃいそうね…
「寵愛の加護を通して、私は多くを学んだし、多くの知識を得ることが出来たの、だって地球には魔力という物が無いの」
…ぇ?魔力が無いの?
「驚くことじゃないよ?私達だって始祖様から力を授かる前までは魔力なんて殆ど持っていなかったもの…寵愛の巫女以外はね、殆ど魔力なんて感じたこともないんだよ?…寵愛の巫女っという名前が授けられる前は、私達のことを聖女…未来を告げるもの…超常なる力を持つ一族、そんな風に表現されていたかな…国を支える根幹に根付いて、短い命をこの大地に住まう人々に捧げ続けてきたんだよ…」
聖女伝説、そう、そうなのね、寵愛の巫女が関与してるのだと言われてしまったら納得するしかない、きっと、あの膨大に溢れる魔力を生命力とか、そういうのに、変換すれば、人の命は救えるだろう、だけど、自分の命は救えない、自分の命を削って助け続けた、そんな人が一族の中に居たのだろう…
「だからかな、寵愛の巫女の一族は短命だけど、数は多くいたんだよ?色んな貴族や、領主に王族から求愛されていたからね、その人たちの間で、超常なる力を発現したものは寵愛の巫女の一族になるって感じかな?初代様の日記だったかな?そんなことが書かれていた気がする。でもね、皆が始祖様から魔力を授かった影響もあって、多くの人達が超常なる力の片鱗を手にいれちゃったから、私達、寵愛の巫女の力を求める人が減ったんだ、だから、少しずつ少しずつ数が減って、今では私が最後の一人になっちゃったんだ…」
利用されるだけ利用されて、自分達も力を得たから魅力を感じることが無くなった、子を生したとしても短命であれば…愛が無ければその人と子を生そうとは思えないよね…一族繁栄を考えるのであれば、魔力という超常なる奇跡を手に入れてしまったのであれば…超常なる魔力を宿した、その代償として短命という呪いを背負わされてしまった一族なんて、用済みってことなのね…なんて、なんて悲しい一族、人の為に数多くの一族の命を代償にして、未来を支え続けてのに…己の人生を犠牲にしてまで、人類を愛した一族。
そう考えると、姫ちゃんのお母様はお父様に愛されていたのだと推察できるわね…
そんな大事な人との間に産まれた子供を愛していないわけじゃない、お父様はきっと、何かしらの思惑があって、この街に連れてきたのだと思う…
命短し乙女が恋をする為?愛を知る為?確かにここでなら、彼女の素性を知ることもなく、恋が生まれる可能性もあるし、愛されることもあるのだと思うわ。
ただ、同年代が居ないっというのは考慮していたのかしら?流石に、12歳に手を出すような…だすような…いるわね、全然、居るわね、貴族たちからすれば、12なんて余裕で手を出せる人が大勢いるわね…
この街には、たまに監視する為か、何で来たりするのか知らないが、どこの貴族か知らないが顔を出すことがあるのよね、それに見初めてもらう為とか?
それとも、純粋に姫ちゃんが術式の中で生きたいという願いを叶える為に連れてきたとか?
自分の周りの環境では彼女の願いを満たすことが出来ないから?命が短いからこそ、余生を好きに過ごしてもらう為、っとか?
うーん、話を聞かない限り意図が読めきれないわね。
「それでね、地球って星はね、魔力がない代わりに科学っていう私達では考えられないような技術が凄くあるの!私もね、始祖様から色んな情報を教えてもらえるんだけど、全然、理解できないの!!棒みたいなのをこすると火が付くし、勢いよくジャっと回すと火花が散って火がつくんだよ!?凄くない!?それにね、私達が知らない電気っていう概念が凄いの!何でもありなんだよ!あれこそ、私達が使う魔力と同じように万能なんだよ!何でも電気さえあればどうにかなっちゃんだよ!?明かりも蠟燭とか要らないし!魔力で光を生み出す必要もないし!車って言うのが凄いの!速いの!力強いの!パーツを変えたら地面を掘ったり、色んな作業をすることが出来るんだよ!それをこの間、頑張って作ったんだよ!!他にもね、注射器とか!聴診器とか!作れそうなものは私達が提案して作って広めてもらったんだよ!食べ物だって、そうなんだよ!こういう食べ方があるとか、調味料とか!そういうのも私達が伝えていったものが数多くあるんだよ!!その殆どが地球って星から得た知識なの!凄いよね!?凄すぎるんだよ!!」
おおう、地球の技術の話になったとたんに凄く早口で前のめりで説明してくるじゃないの…
あまり聞き取れない言葉ばっかりで、よく理解できないけれど、私達が使っている道具も大元を辿ると、地球の技術が使われていたってことなのね。
そうか、姫ちゃんは車っていうのが作りたくて道を舗装したのかな?速くて力強いのなら運搬とかに向いているってことになるわね、そうか、馬車が不必要になる、馬車が運べない程の量を運べるとしたら、畜産の旦那さんも喜ぶじゃないの、多くの品物を新鮮なうちに王都に運べるからより多くの資金を得ることが出来るってことよね?
なるほど、畜産の旦那さんが感謝しているのはそういう部分ってことなのね。
その後も目を輝かして、楽しそうに話し続ける姫ちゃんの話を聞きながら紅茶を飲みながら相槌をうち、姫ちゃんの興奮が落ち着くまで私は頷くだけの魔道具へと変貌する…
ちゃんと話は聞いているわよ?理解できないだけよ…私の知る限りの常識から逸脱し過ぎているのよ。こんな会話を私以外の人にしてもきっと、狂人変人扱いされるだけね…
いっぱい、いっぱい、口速に話し続けた姫ちゃんは頬を真っ赤に染めて息も荒げていた、正面に座っていた姫ちゃんはいきなり立ち上がり、私の近くまで歩いてくると胸に向かってダイブしてくるので優しく受け止めると
「疲れた!色々あって疲れた!甘えさせて!!」
それも、そうよね、私もまさか、あんな風になるなんて想像もしていなかったもの、そりゃ、疲れるわよね、むしろ、よく持ったわね?
抱きしめて優しく頭を撫でたり背中をぽんぽんっと優しく叩いてあやしてあげていると胸の中から「お母さんすき~」っと甘えてくる声が聞こえてくるので胸が切なくなってしまう。
この子に呼び止めてもらえなかったら、この感情を得ることが出来ないのだと温もりを感じながら、この瞬間を一生物の宝物にするために一瞬一瞬を記憶に、脳に焼き付けていく、この切なくても嬉しくもあり、感動という感情が湧き上がり、涙として溢れ出そうなこの瞬間を、私は忘れない、忘れないわ、何があろうと、どんな状況になろうと、絶対にこの温もりを忘れない、忘れないからね。
はぁ、当初の予定とは本当に、大きく変わってしまったわね、まさか、私の中にある、アレが根本的に私が思い描いていたものと違う何かってのがわかったのが僥倖と捉えるべきかしらね?それに、出てきたタイミングに姫ちゃんと居合わせたのが一番の僥倖かも?
私達の知りえない、知るすべのない超常なる知識を持ちえる姫ちゃんだったら、私に何かあれば…止めてくれるでしょう、止め方は問わないけど、きっと、私の愚かな罪深き命と共に助けてくれると信じている。
あやすように抱きしめ続けていると胸の中で寝息が聞こえてくる、この子って、気が付くとすぐ寝るのって、成長期か何かだと思っていたけれど、純粋に疲労なのかもしれないわね、常に思考を張り巡らせて、考え続けて…気苦労ばっかりしてない?大きくなって大人になったときにハゲそうな気がするわね、家系に髪の毛が薄い人がいないことを祈るばかりね…女の子でハゲるのは、流石にもう辛過ぎるわよね…
そう考えると疲労に良い物を食べさせた方がいいわね…その瞬間に脳裏に浮かんだ、えげつない味がする液体が入っている瓶が思い浮ぶ…こんど鼻をつまんで飲ましてみましょうかしら?絶対に嫌われる気がするから説明してからの方がいいわね。
うんしょっと、声を出しながら姫ちゃんを抱っこしながら、立ち上がる、この子って小さいし体重も軽いのよね、もっと食べるように言わないといけないわね、胸が育たないわよ?お風呂で体を洗っているときに驚いたものよ?だってね、貴族の出だったら、食事はしっかりと食べれているはずじゃない?なのに、肋骨が浮き上がるくらいガリガリだもの、それでも胸が栄養が足りていなさそうな12歳とは思えない程、ある程度成長している辺り、お母様が胸がふくよかな方なのね、ゆったりとした服を着ている絵しか見たことがないから何とも言えないけど、ね。
…ぁ、お父様の家系から、かもね、残された絵にはちょっと小太りみたいな感じで描かれていたもの父方の家系がふくよかな家系かもしれないわね、ん?もしかして、姫ちゃんって
お父様と仲が悪い可能性ってない?だからこそ、太らないように食事を制限している?…その可能性が無きにしも非ずってことなのね。
朝早くから作業をしていたはずなのに、気が付けばもう、お日様が頂点から傾き始める時間になるなんてね、濃厚だけど、とても短い時間だったわ…
姫ちゃんが起きたら、封印術式の準備をしないといけないわね…そう考えながら、姫ちゃんをベッドに寝かしつけると服を掴まれたままで、話してくれそうもないので抱きしめながら彼女が気持ちよさそうに寝ている寝顔を眺めながら、姫ちゃんから教えてらもった驚愕の事実を私なりに噛み砕いていく…
電気とか、化学とか、私達が知らない、発展することが無かった技術があるなんてね、想像もしなかったわね…
錬金術とはまた違う概念みたいだけど、近しい物があるみたいだし、頑張れば私達でも再現できそうな技術よね、今後の研究に生かせるかもしれないし、学べるのなら私も学びたいわね。
姫ちゃんを手招きして来客用のソファーに座らせて先ほどの地球って、どんなの?どういう意味?なのか確認するために質問をしてみると
「えっとね、私も地球の全てを知ってるわけじゃないけど、確かなのが」
いま、始祖様がいる星の名前
とんでもない、予想外の内容が飛んできた、衝撃な情報に眩暈を覚えながら、冷静になる為にも少し時間が欲しいので、時間を稼ぐついでに心を落ち着ける為に、ちょっとまっててね、話が長くなりそうだから紅茶淹れてくるわねっと、声を掛けた後、部屋の片隅に置いてある、紅茶などを楽しむために用意してあるコーナーに向かい、お湯を沸かす魔道具を起動して、お湯を沸かしながら言葉の意味が、意図が、真意が…いったい何か、どういう意味なのか、考える。
第一に気になるのが
始祖様って、生きてるの?あの人。
あれ?400年とかそれくらい前の時代の人よね?そんなあり得るの?400年なんて、人が生きている筈のない途方もない時間よね?私達の平均寿命なんて、貴族を除けばだいたい、28歳くらいよ?何倍も長生きしてることになるわよね?過去に生きた、時の人じゃないの?始祖様って…
不穏な考えがよぎる、根本的に私は勘違いをしていた?
始祖様はそもそも、人じゃない?異形の生き物?私達の常識外の生物、本当に神様が人類救済の為に遣わしてくれて超常なる生物ってこと?ぁ~~駄目だ、情報が少なすぎていくら考えても確証を得るような答えが出てこない…
次に疑問に思ったのが、星の名前って何?土地の名前、って感じ?
ちきゅうって土地に、始祖様がいるの?この大陸以外のどこかにいるの?でも、ニュアンス的に、どうなの?って感じだよね?ほかの大陸にいるとしても400年もの間、何してるんだって感じだよね?
思考がぐるぐると同じところを迷う様に、だけど、駆け足の様に駆け巡る…
答えの出ない思考の渦から、迷路から抜け出れないでいると…目の前にある水が沸騰する音が聞こえてくる、どうやら、お湯が沸いたみたいなので、思考が停止することなく、考えながらも、紅茶を淹れていく。
ティーポットとカップをもって姫ちゃんがいるソファーに戻り、テーブルの上に紅茶を置いてから、どんな質問をすればいいのか悩んでいると
姫ちゃんからさらっと話を進めてくる
「始祖様は生きてるよ。あの人、何年生きてるのか、わからないくらい途方もない年月を生きてる人だよ」
理解の範疇を超える一言に、私はただただ、思考を止めてありのままを受け止めようと思考を真っ白にしながら、何気なくっというか、何かしないといけないようなそんな気分で勝手に体が動いて、思考とは無縁の動きで単純な動作をする為に、紅茶を口につけて、嗚呼、熱いわねぇっという受け止めがたい内容に頭がパニックを起こしつつあるのだと、紅茶の熱を唇に感じながら困惑していた。
姫ちゃんも紅茶に一口、口をつけると、あちちっと何度も何度もふーふーっと冷まそうとしている、その動作を見て少し冷静になる。
嗚呼、そうか封印術式で魔力を封じているから、普段なら熱い紅茶とかって、術式を使って軽く冷やしてから飲んでいるのよね、この子…じゅつしき、もしかして、術式を使って始祖様を観測することができる、とか?
熱そうに紅茶をゆっくりと飲んでいる姫ちゃんにそれとなく、聞いてみると
「ん~っとね、これ、何だろう?術式に該当するのかな?どうなんだろう?わかんない、かな?この、その、授けられた加護を解明解析しようなんて考えたことも無かった」
質問に対して姫ちゃんも理解の範疇を超える何かだというのだけがわかる、わかったことは【加護】つまりは寵愛の巫女が始祖様から授かりし、特別な加護、それが何かしら作用していると見て、いいのかな?術式大好きな姫ちゃんが知りえない技術なのに、調べようとしなかったのはどうしてだろうか?…単純に触れるだけでも恐れ多いという不敬に当たる行為だから…見たいなこと、かしら、ね?
姫様が続けて説明してくれる内容の殆どが理解できないが、そういうものなのだろうと納得することしかできなかった…
「まずね、寵愛の巫女、その歴代の全員が使えた加護の一つ、始祖様の視界を共有するっという方法があるの…これもね始祖様がね、私達、寵愛の巫女という生命体、悲しい定めを、悲しい運命を背負い続けて人類の礎となり陰ながら支えてきた…短命が故に、多くを語ることが無く、多くから支持されることが無かった、それゆえに、外を知る機会が無さ過ぎるのは辛かろうと、授けれくれたみたいなの…」
そりゃ、そうだよね、姫ちゃんは知っているよね、自分たちのご先祖様達が全員短命であるっという事実を、彼女だってあの日記を熟読しているはずだもの。
彼女は自分の命が短いのだろうと関係なく、自分が思ったように感じたように、自由に生きようとしていたのね。
「私もね、巫女たちの日記を見て知ったの、ある時期になると、巫女たちが人生で一度だけ、体内の魔力が高まる日があるんだって、その時だけ、寵愛の加護を通して、始祖様の視界を見ることが出来る、優しい始祖様は私達が見ているのを感じ取って、何が見たいのか、何が知りたいのか、私達の我儘に応じてくれる時があるの」
体内の魔力が高まる日…もしかして、未来姫ちゃんと出会ったあの時も、もしかして、体内の魔力が高まったからとか、そういう要因も絡んでいそうね…
封印術式の施術が終わったら、魔力を練り込んで溜め込んで、姫ちゃんに全力で魔力を注いで満タンになるまで私の限界まで注いでみようかしら?
「でね、寵愛の巫女たちが見てきた映像とか、始祖様が視界を共有しているときに説明とか、話とかしてくれたのが寵愛の加護の中に保存されているの、私達、寵愛の巫女は一定の年齢に到達すると、加護への干渉が出来るようになるの、たぶんだけど、知識とか技能とか、術式への理解度が向上すると自然と加護へと到達するのだと思う、だからね、私達、寵愛の巫女は始祖様から膨大な量の知識を得ているの」
時折、よくわからない単語や、どこで知ったのか不明の知識って、そういうことだったのね。
でも、それらを閲覧するときとかって絶対に代償無しでは機能しないわよね?嫌な予感がするのだけれど
「曇った表情をしているから気が付いてしまったと、思うけど、そうだね、その考えに至るのが普通だと思うよ、始祖様が授けてくれた寵愛の加護、それが何百年も魔力の供給も無くどうやって稼働しているのか、不思議に思うよね?私達もね、不思議に思っていたんだよ?だからね、こんな推測が生まれたりしたんだよ?寵愛の巫女が死んだときに魂を供物として捧げているっていう推測、でもね、私達はそんな非道なことを私達を愛してくれた、運命を憂いてくれた、そんな優しい始祖様が非道なことをするなんて信じてないからね?」
この一族だからこそ、始祖様の人柄を知っているからこそ信頼できるのね、人って表現していい存在なのか知らないけど…
「この間ね、教えてくれたじゃない?私の体から魔力が抜け出てしまっているって、きっと、私達一族の体から抜け出た魔力を吸収して維持しているんじゃないかなって最近はね思うようになったの、でもね、始祖様の魔力量を持ってしたら、そんなのが無くても維持しているんじゃないかなって思っているから、私達の魂を供物にしているなんて思えれないんだよね」
そうね、現に今も何処かで生きているような超常なる存在だものね、私達の尺度では計り切れないよね…
「それでね、星っていうのがね、この大地、海、空、全てをまとめて星っていう単位として数をカウントされているの、だから、表現として単位でいいのかな?あってるのかな?だからね、私達が住む大地とかそういうの全てをまとめたのを星って、そういわれているの、わかりやすく言うとね、夜空にさ、月以外にも小さな光が点々としているでしょ?あれが、星、あれが一つ一つ、ここと同じように大地があって、海があって、空があるんだと思う」
…言葉の意味が壮大過ぎて、理解が出来ないけれど、そういうものだと納得するしかないわね、夜空に浮かぶ点が、あんな小さい点が、ここと同じように途方もなく大きなものだったなんてね…もしかして、月も相当、大きいってこと?
「そもそも、月って名前を授けたのも星って名前を授けたのも、始祖様だからね?過去の私達、始祖様に出会う前のご先祖様は、アレがなんて呼称しているのか、もう、資料すら残されていないからね、それでね、始祖様はある星、そこではその星の事を地球って呼んでいたかな?今もね、その地球って星で生きているの、何か理由があって長く留まっているみたい、私達では始祖様がどうして、そこの星に留まっているのか知らないけれど、きっと何か理由があるのだと思う」
始祖様が授けたのって力だけだと、思っていたけれど、意外にも野蛮な人ってわけでもなく、賢く思慮深い人なのかもしれない…
私の中のイメージだと、闘いこそ全て、野性味が溢れていて、ありとあらゆる女性は俺の物っていう蛮勇なイメージだったけれど、実際は違うのかもしれないわね。
英雄、色を好むっていう、始祖様の英雄譚からそういうイメージが強くて、その英雄譚に憧れて一夫多妻制にもなって、強い男になって女性を娶るっていうのが若い子が抱く夢の一つだったのにね、真実は違うのかもしれないわね。
「月の裏側へ行く」
その言葉を聞いて胸が張り裂けそうになる
「このね、表現もね、あながち間違っていないんだよ、その表現を最初に使い始めたのが教会…なのかな?私達、寵愛の巫女が、教会の偉い人かな?始祖様がどうして、この大地を旅立ったのか説明したんだよね。始祖様が遠い遠い月のもっともっと向こう側、私達が見えない月の裏側の更に向こうへと旅立ったと…それを、教会に伝えたのが始まりだったかな?その表現を教会が拡大解釈?政治利用的解釈したのかな?そこから産まれた新しい教えとして、死んだ人は私達では見ることが出来ない世界、つまりは何時いかなる時も見ることが出来ない月の裏側へと至る存在へと昇華された。そう、死んだ後は、月の裏側へと向かい、愚かで脆弱な私達に大いなる力を授けてくださった始祖様が今もなお、命がけで闘い続けている聖戦…そこへ、死んだ者は始祖様から授けられた大いなる力の一部を…力を返す為に!聖戦で戦い続ける!我らが偉大なる始祖様の戦いを補佐するために!力添えをするために!月の裏側で戦い続けている聖戦の場へと向かうのです!!って、宗教的考えに結びつけたのかな?」
この説明を聞くと同時に、堪えていた涙が溢れ出てくる…
愛する騎士様の魂はどこへいったの?始祖様を助けるために月の裏側へ旅立ったのではないの?愛する人は今どこに居るの?
涙を流す私を見て
「そうだよね、そう、辛いよね、悲しいよね、愛する人が誉れある闘いで死んだ、その穢れなき誇りある高き魂がただただ、虚空に消えたなんて受け止めづらいよね。だからね、死の50年の間、多くの人が悲しみに包まれているのを救う為に教会が広めた教えなんだよ、死を悼むために、慈しむために、死が無駄ではなく、その先があるのだと、悲しみで心が折れないように明日を…見失わないために、絶望で死を望まないために…そんな風に書いていたかな…」
そう、そうよね、私もその教えに少なからず助けられていたわ…
「それにね、私は、私個人はね、その教えが間違っているとは思えないの、死んだ魂が何処に行くのか、それは私達では知らないけれど、始祖様なら知っているかもしれないし、もしかしたら、みんな始祖様の元へ向かって行って、始祖様が追いかけている全ての元凶を倒す為に力添えするために旅立ったって、思えるもの、私達を苦しめている怨敵を撃ち滅ぼす為に、私達の魂は常に始祖様と共に在る…」
…そうよね、そうだよね、うん、私もその考えを信じる、信じたいわ。
見えないからこそ、見える方法がないからこそ、信じたい。貴方の運命、その先にある世界が始祖様へと繋がっているのだと信じたい、騎士様の様な人として素晴らしい心を魂を持った人が、死んだだけで消えたなんて考えたくないの…
「だから、私達は月へと祈りを捧げるし、その祈りを捧げるって言う考えもね、寵愛の巫女が教会の人に伝えた言葉から産まれたんだよ?だって、地球にも月があるから、そして地球には始祖様がいるから、月を通して私達は始祖様に祈りを捧げているの。それにね、ある一説ではね?月って言う存在があるからこそ、生命が産まれるのだという一説がね、あるんだって、ぁ、ここじゃなくて地球で唱えられた一説だよ?だからね、生命がこの大地に産まれる為には、母なる天空にいる大いなる月が大地が見守るように見つめ、大いなる父である太陽が全てを照らし包み込むように守ってくれていることで、二人の愛によってこの大地に子が、生命が芽吹くんだよ、ステキな考えだよね」
姫ちゃんが何処か、世間とずれているというか考え方が違うのはきっと、地球の知識や考え、倫理が教えとして根付いているのだろうな、どこか合理的で効率的な部分もあれば、人の感情や心に寄り添える、素晴らしい考えを持っているのね…母親として何を教えてあげられるのか、わからなくなりそう、自信を無くしちゃいそうね…
「寵愛の加護を通して、私は多くを学んだし、多くの知識を得ることが出来たの、だって地球には魔力という物が無いの」
…ぇ?魔力が無いの?
「驚くことじゃないよ?私達だって始祖様から力を授かる前までは魔力なんて殆ど持っていなかったもの…寵愛の巫女以外はね、殆ど魔力なんて感じたこともないんだよ?…寵愛の巫女っという名前が授けられる前は、私達のことを聖女…未来を告げるもの…超常なる力を持つ一族、そんな風に表現されていたかな…国を支える根幹に根付いて、短い命をこの大地に住まう人々に捧げ続けてきたんだよ…」
聖女伝説、そう、そうなのね、寵愛の巫女が関与してるのだと言われてしまったら納得するしかない、きっと、あの膨大に溢れる魔力を生命力とか、そういうのに、変換すれば、人の命は救えるだろう、だけど、自分の命は救えない、自分の命を削って助け続けた、そんな人が一族の中に居たのだろう…
「だからかな、寵愛の巫女の一族は短命だけど、数は多くいたんだよ?色んな貴族や、領主に王族から求愛されていたからね、その人たちの間で、超常なる力を発現したものは寵愛の巫女の一族になるって感じかな?初代様の日記だったかな?そんなことが書かれていた気がする。でもね、皆が始祖様から魔力を授かった影響もあって、多くの人達が超常なる力の片鱗を手にいれちゃったから、私達、寵愛の巫女の力を求める人が減ったんだ、だから、少しずつ少しずつ数が減って、今では私が最後の一人になっちゃったんだ…」
利用されるだけ利用されて、自分達も力を得たから魅力を感じることが無くなった、子を生したとしても短命であれば…愛が無ければその人と子を生そうとは思えないよね…一族繁栄を考えるのであれば、魔力という超常なる奇跡を手に入れてしまったのであれば…超常なる魔力を宿した、その代償として短命という呪いを背負わされてしまった一族なんて、用済みってことなのね…なんて、なんて悲しい一族、人の為に数多くの一族の命を代償にして、未来を支え続けてのに…己の人生を犠牲にしてまで、人類を愛した一族。
そう考えると、姫ちゃんのお母様はお父様に愛されていたのだと推察できるわね…
そんな大事な人との間に産まれた子供を愛していないわけじゃない、お父様はきっと、何かしらの思惑があって、この街に連れてきたのだと思う…
命短し乙女が恋をする為?愛を知る為?確かにここでなら、彼女の素性を知ることもなく、恋が生まれる可能性もあるし、愛されることもあるのだと思うわ。
ただ、同年代が居ないっというのは考慮していたのかしら?流石に、12歳に手を出すような…だすような…いるわね、全然、居るわね、貴族たちからすれば、12なんて余裕で手を出せる人が大勢いるわね…
この街には、たまに監視する為か、何で来たりするのか知らないが、どこの貴族か知らないが顔を出すことがあるのよね、それに見初めてもらう為とか?
それとも、純粋に姫ちゃんが術式の中で生きたいという願いを叶える為に連れてきたとか?
自分の周りの環境では彼女の願いを満たすことが出来ないから?命が短いからこそ、余生を好きに過ごしてもらう為、っとか?
うーん、話を聞かない限り意図が読めきれないわね。
「それでね、地球って星はね、魔力がない代わりに科学っていう私達では考えられないような技術が凄くあるの!私もね、始祖様から色んな情報を教えてもらえるんだけど、全然、理解できないの!!棒みたいなのをこすると火が付くし、勢いよくジャっと回すと火花が散って火がつくんだよ!?凄くない!?それにね、私達が知らない電気っていう概念が凄いの!何でもありなんだよ!あれこそ、私達が使う魔力と同じように万能なんだよ!何でも電気さえあればどうにかなっちゃんだよ!?明かりも蠟燭とか要らないし!魔力で光を生み出す必要もないし!車って言うのが凄いの!速いの!力強いの!パーツを変えたら地面を掘ったり、色んな作業をすることが出来るんだよ!それをこの間、頑張って作ったんだよ!!他にもね、注射器とか!聴診器とか!作れそうなものは私達が提案して作って広めてもらったんだよ!食べ物だって、そうなんだよ!こういう食べ方があるとか、調味料とか!そういうのも私達が伝えていったものが数多くあるんだよ!!その殆どが地球って星から得た知識なの!凄いよね!?凄すぎるんだよ!!」
おおう、地球の技術の話になったとたんに凄く早口で前のめりで説明してくるじゃないの…
あまり聞き取れない言葉ばっかりで、よく理解できないけれど、私達が使っている道具も大元を辿ると、地球の技術が使われていたってことなのね。
そうか、姫ちゃんは車っていうのが作りたくて道を舗装したのかな?速くて力強いのなら運搬とかに向いているってことになるわね、そうか、馬車が不必要になる、馬車が運べない程の量を運べるとしたら、畜産の旦那さんも喜ぶじゃないの、多くの品物を新鮮なうちに王都に運べるからより多くの資金を得ることが出来るってことよね?
なるほど、畜産の旦那さんが感謝しているのはそういう部分ってことなのね。
その後も目を輝かして、楽しそうに話し続ける姫ちゃんの話を聞きながら紅茶を飲みながら相槌をうち、姫ちゃんの興奮が落ち着くまで私は頷くだけの魔道具へと変貌する…
ちゃんと話は聞いているわよ?理解できないだけよ…私の知る限りの常識から逸脱し過ぎているのよ。こんな会話を私以外の人にしてもきっと、狂人変人扱いされるだけね…
いっぱい、いっぱい、口速に話し続けた姫ちゃんは頬を真っ赤に染めて息も荒げていた、正面に座っていた姫ちゃんはいきなり立ち上がり、私の近くまで歩いてくると胸に向かってダイブしてくるので優しく受け止めると
「疲れた!色々あって疲れた!甘えさせて!!」
それも、そうよね、私もまさか、あんな風になるなんて想像もしていなかったもの、そりゃ、疲れるわよね、むしろ、よく持ったわね?
抱きしめて優しく頭を撫でたり背中をぽんぽんっと優しく叩いてあやしてあげていると胸の中から「お母さんすき~」っと甘えてくる声が聞こえてくるので胸が切なくなってしまう。
この子に呼び止めてもらえなかったら、この感情を得ることが出来ないのだと温もりを感じながら、この瞬間を一生物の宝物にするために一瞬一瞬を記憶に、脳に焼き付けていく、この切なくても嬉しくもあり、感動という感情が湧き上がり、涙として溢れ出そうなこの瞬間を、私は忘れない、忘れないわ、何があろうと、どんな状況になろうと、絶対にこの温もりを忘れない、忘れないからね。
はぁ、当初の予定とは本当に、大きく変わってしまったわね、まさか、私の中にある、アレが根本的に私が思い描いていたものと違う何かってのがわかったのが僥倖と捉えるべきかしらね?それに、出てきたタイミングに姫ちゃんと居合わせたのが一番の僥倖かも?
私達の知りえない、知るすべのない超常なる知識を持ちえる姫ちゃんだったら、私に何かあれば…止めてくれるでしょう、止め方は問わないけど、きっと、私の愚かな罪深き命と共に助けてくれると信じている。
あやすように抱きしめ続けていると胸の中で寝息が聞こえてくる、この子って、気が付くとすぐ寝るのって、成長期か何かだと思っていたけれど、純粋に疲労なのかもしれないわね、常に思考を張り巡らせて、考え続けて…気苦労ばっかりしてない?大きくなって大人になったときにハゲそうな気がするわね、家系に髪の毛が薄い人がいないことを祈るばかりね…女の子でハゲるのは、流石にもう辛過ぎるわよね…
そう考えると疲労に良い物を食べさせた方がいいわね…その瞬間に脳裏に浮かんだ、えげつない味がする液体が入っている瓶が思い浮ぶ…こんど鼻をつまんで飲ましてみましょうかしら?絶対に嫌われる気がするから説明してからの方がいいわね。
うんしょっと、声を出しながら姫ちゃんを抱っこしながら、立ち上がる、この子って小さいし体重も軽いのよね、もっと食べるように言わないといけないわね、胸が育たないわよ?お風呂で体を洗っているときに驚いたものよ?だってね、貴族の出だったら、食事はしっかりと食べれているはずじゃない?なのに、肋骨が浮き上がるくらいガリガリだもの、それでも胸が栄養が足りていなさそうな12歳とは思えない程、ある程度成長している辺り、お母様が胸がふくよかな方なのね、ゆったりとした服を着ている絵しか見たことがないから何とも言えないけど、ね。
…ぁ、お父様の家系から、かもね、残された絵にはちょっと小太りみたいな感じで描かれていたもの父方の家系がふくよかな家系かもしれないわね、ん?もしかして、姫ちゃんって
お父様と仲が悪い可能性ってない?だからこそ、太らないように食事を制限している?…その可能性が無きにしも非ずってことなのね。
朝早くから作業をしていたはずなのに、気が付けばもう、お日様が頂点から傾き始める時間になるなんてね、濃厚だけど、とても短い時間だったわ…
姫ちゃんが起きたら、封印術式の準備をしないといけないわね…そう考えながら、姫ちゃんをベッドに寝かしつけると服を掴まれたままで、話してくれそうもないので抱きしめながら彼女が気持ちよさそうに寝ている寝顔を眺めながら、姫ちゃんから教えてらもった驚愕の事実を私なりに噛み砕いていく…
電気とか、化学とか、私達が知らない、発展することが無かった技術があるなんてね、想像もしなかったわね…
錬金術とはまた違う概念みたいだけど、近しい物があるみたいだし、頑張れば私達でも再現できそうな技術よね、今後の研究に生かせるかもしれないし、学べるのなら私も学びたいわね。
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