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幕間 私達の歩んできた道 2

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そういえば、あまり、大先生の時代の話って聞いたことが無かったなぁ、聞いてもいいのかな?今の流れなら、語ってくれるかな?前々から気には、なっていたけれど多くは語ってくれなかった。

話を振ってみるとやっぱり、嫌そうな顔をする、語りたくない理由は、想像がつく。
単純に、あの頃の状況が絶望的過ぎて、今が充実しているからこそ比較してしまい、思い出したくもないくらい辛い時代を、今とは考えたくもない程のどうしようもない時代だった地獄の世代を思い返したくないのだろう。
「かいつまんで、それでいいのならよ、お前さんが眠くなるまでの間くらい語ってやるよ」
こくりと頷くと嫌そうに眉間に皺を寄せて、より一層、顔全体がしわしわになるくらい渋い顔をしながら両腕を組んで背もたれにもたれかかって、大きくため息をつき、何回か深呼吸をした後、零れ出るように地獄の世代について語ってくれた

まずはよ、俺の簡単な生い立ちから説明していかねぇとな、俺がそもそも、この街に来た理由ってのも生命として至極当然で当たり前で単純な理由だよ、食い扶持が欲しかったからだ。
王都じゃあよ、この街に向かって定期的に送り出される、街にいる大人たちが言うには【死の大地に捧げる生贄】っていう枠ってのがよ、存在してたんだよ。
だからな、当時の俺は食い扶持欲しさに、生きる為に未来を求めて、志願したんだよ。

死の大地に行かなくても働き口、くらいあるだろ?誰だって死にに行くような愚かな選択肢なんて選びたくねぇんだよ。そんな愚かな選択肢を取らないといけないような状況の人物、ああ、そうさ、俺は孤児でな、王都じゃ働く方法が一つもねぇ。

当然、学が無い、それだけじゃねぇ、戦うセンスもねぇ、だから、何処に行っても俺みてぇなのはよ、あちこちに溢れているからよ、王都の中では不必要なんだよ、その辺で飢えて野垂れ死ぬだけのどうしもようねぇイキモノだったんだよ。
いや、王都にいる時の俺は生きてねぇな、なら、生き物じゃねぇな、死に物だな。

こんな場所でもな、俺でも生きる為の何かしらの仕事があるのだと思っていた、食い物にありつけると思っていたんだがな~現実ってのは無情だったってわけだ。

ここもな、王都とは違う意味で地獄だったってわけだ、周りにいる同僚もガリガリに痩せててな、碌なもの食べれてねぇ、そもそも食堂って概念がねぇ、なら、何を食べているのか?自分たちで開墾して栽培しているとはとてもじゃねぇがみえねぇ。
だが、何処かに絶対に食べる為の方法が何かあるはずだと、探すとな、定期的に王都から支給品を運んでくれる馬車がくる、その時に食材が入った木箱を何個かその場に置いて行っておしまいだ。

置いていかれた木箱から足の速いものから生で齧って生きながらえる、それがこの街での織女を栄養を摂取する光景だってわけで、俺も周りに倣って齧っているとだな、見張り台から鉄を叩く様な音が聞こえてきたなと、あれは何の知らせだ?って考えているとだな、齧っていたやつらが、もそもそと、支度をしてな、一言も言わずに突撃するんだよ、死の大地に向かってな。
持たされた装備なんて、鎖帷子すらねぇ、鉄なのかこれ?鍋の方が分厚くねぇか?ってくらい、薄い鎧をまとってな、木の棒の先にナイフよりも小さい矢じりみてぇな物が付いた貧相な槍を持って、突撃するんだよ。

俺はまだ若いから動けているけどよ、同僚たちは何歳かもわからねぇほど、老けちまってるんだよな。
だからよ、槍を持つ手もさ、力なんて何一つはいってねぇんだよ、槍をもって突撃して倒れ込むように槍と一緒に獣の上に乗る様に突き刺すんだよ。
上手いこと刺されば御の字、刺さらなかったら殺される。

この街じゃ人の命なんて無くても何も変わらない、居ても居なくてもいいやつだけが、この街にいて、敵が来たら撃退しなくてもいい、命を差し出して向こう側が満足して帰ってくれるのを待てばいいっていう、どうしようもない状況だった。

一通り、獣達が死に物を蹂躙した後はな、何処かに去っていくんだよ、去って行ったら俺たちがすることがある、若くて動けるやつらは貴重な戦力だと思うだろ?
ちげぇんだよ、死体さらいっつってな、死体から使える道具を剥ぎ取る仕事が与えられんだよ。
まだ息があるやつがいるだろ?どうすると思う?その場で殺すんだよ、こいつらに使う薬も包帯も何もかもが無駄でもったいないからって理由でな
生きていると獣を呼び戻しかねないからその場で殺すんだよ…

俺はな、医者になる前に咎人になっちまってたんだよ、救うべき命を殺してきた、幾度となく殺してきた、命を奪う咎人さ。

そんなどうしようもない現実の中で動き続けているとな悟っちまうわな、生きていく意味なんざ無いってな、いつか、俺もこいつらと同じように殺される側になるんだ、なら、足掻く必要ってのはないんじゃねぇかってな。

最初のころは幾度なく夢に出てきたよ、命を奪う瞬間が何度もな…
さっきまで会話こそしていないが、隣にいたやつがよ、命乞いしてるのに手を差し伸べるどころかよ、とどめを刺しちまってんだからな、心も擦り切れて病んじまうわな…

俺もいつか、ああなるのだろうなぁって、諦めながらも、死にたくねぇからよ、生きる意味も目的も無い死に物の癖によ、必死に逃げ回ったよ、俺は敵と闘って生きていけるほど闘うためのセンスがあるわけでもねぇからな。
そんな時だよ、王都からよ、医者もどきが配属されたんだよ、薬の知識と応急手当ぐらいは出来るから、みんなから崇められていたな。

経緯はしらねぇがよ、大人になってこの街に送り込まれるやつなんて、みんな、王都で何かしらの罪を背負ってきた傷物。まぁ罪人だわな。

当然、そいつは人の命を救わねぇ、多少の怪我は診てやるが基本的に救わねぇ、でもな、他のやつよりかは知識があった、だから俺はよ、こいつから学べるものは学ぶべきだと教えを乞うたんだよ、そいつはよ、面倒を見てやるから俺の言うことを聞けって、ある条件を添えられてな、俺はそれをのんで、この街で生きながらえる術を見出そうとしたんだがなぁ…

今でも悩んじまう時があるんだよ、そいつが出した条件ってのが、

【死にかけているやつが居れば、連れてこい実験がしたい】

そいつの実験で数多くの命が消えたが、記録上は獣に殺されたことになってる、俺が声を掛けるやつはみんな死ぬ、だから、俺についた仇名が死の運び屋だ
実験で死んだやつの体をそいつが解剖しながら色々と教えてくれてな、どの臓器がどの様に作用するのか、神経がどう繋がっているのか、血管はどこにあるのか、細かく細かく教えてくれた。

ああ、そうだよ、アイツは医者じゃなかった、探求者であり研究者であり、快楽殺人者だ。

この土台があるからこそ、俺は医者としての知識や技能を得たのだがな、俺は何人の犠牲者を生み出したのだろうかってな、あれで本当によかったのだろうかってな、悩んじまうんだよ、あの時は、あれしか俺が生き残る術なんてねぇのにな。

そんなある日にな、壁を超えてまで侵入してきた二足歩行がいてな、全員が死を悟った
アイツに見るも無残に殺されるのだと、諦めてたんだがな、みんながよ、死んだような目をしてたみんながよ、最後くらいあいつに痛い目を見せてやるかって輝くような目をしてな、今でこそ使われていないがある場所にな、置いてあるんだよ、爆薬を作る場所が…

そう、こいつが来たから、その爆薬を作る場所が再始動していてな、あるんだよ、しけてない爆薬がよ

そうして発令させたんだよファイナルプランEがな、Eの意味か?ENDだよ、この街を突破されてしまったら終わる、人類最後って意味だ

全員がよ、爆薬をもって突撃するんだよ、二足歩行の糞獣にな。それがファイナルプランEだ。命を持って敵を殺せだ。
あの糞な快楽殺人者がよ、今まで絶対に前に出ねぇのにここぞとばかりに、爆薬の使い方を説明するんだよ、楽しそうにな、今でも使い方を覚えているぜ?まず、筒状の爆薬をもつ、先端についている紐を引けば筒の中で大爆発が起こる、その勢いで

自分の肉体にある硬い部分、骨だな、それを敵に当てて攻撃するんだよ

だからよ、筒の先端はな穴が開いてんだよ、爆発した力が逃げる方向に自分の体を密着させて紐を引くんだよ、そうするとな、筒の中が爆発して、その衝撃で俺らの一部分を吹き飛ばして、それを敵に当てんだよ。

当然、肉体が吹き飛んだところで相手に大したダメージなんてねぇよ、吹き飛んだ仲間の肉片が出来たらそれを掴んで筒の中に入れて、敵の至近距離まで走って筒を爆発させて近距離でぶち当てんだよ。
技術力も何もねぇ、体力もねぇ、力もねぇ、武器や防具もねぇ、俺たちが使えるなんて、自分の命鹿ねぇからな、爆薬を敵に向かって至近距離で使えばよ、そりゃ、多少はダメージを与えれることは出来るだろうがよ、技量も何もねぇ俺たちが五体満足で近づけるわけがねぇんだよ、波状攻撃で目の前のやつが自分が手に持っている爆発筒で爆ぜてる間に、近づいては爆発筒を使って自分の肉体事攻撃する、吹き飛んできた肉片を筒に入れて突撃する近くに辿り着けたやつは爆発筒で攻撃して殺される。

それをな幾度となく繰り返すんだよ、敵が死ぬか、俺たちの数が尽きるか、どっちかが果てるまで、命がけ、いや、ちげぇな、命を投げ捨てる攻撃は続けられたんだよ。

最終的には、敵を倒すことが出来たんだがな、困ったことに生き残ったのは俺とアレ、あと数名ってまでに人が減ってしまったんだよ。
見かねた王都がよ、派遣してくれたんだよ、医者とか兵士とかちゃんと学があって、経験があって、脛に傷があるような傷物じゃなくてよ、ちゃんとした人を送ってくれたんだよ。
そこから、街は少しだけ良くなった、兵士の人がよ、訓練してくれんだよ、俺たちの様な技術も何もないやつらを指導してくれんだよ嬉しかったね、死ぬ確率が減るからな
人が補充されたときによ、俺の様な孤児も数多く連れてこられてな、兵士の人が鍛えてくれるからよ、生存率は多少はましになったって程度だな。

今でもその兵士さんはよ、街で孤児院を経営していてな、時折、俺の稼ぎで余裕がある時によ、寄付してんだわ。

まさかよ、ベテランのやつがよ、そこの出身者だとは思っても無かったなぁ、その話を聞いたときは何処でどう繋がるのか、想像もしてなかったな。

んで、俺は医療の知識があるってことでよ、医者見習いに昇格したんだよ、薬の知識なんてな全部、実験で手に入れた知識しかねぇんだよ、だからよ、人を殺す知識ばっかり増えていくから、死の運び屋って仇名は消えることは無かったな。
現に俺の白衣は常に血と泥にまみれていたからな。

大先生の壮絶な話を聞いていると、涙が自然と溢れ出てくる、死が近い街、死の街、本当に言葉の通りだった。
私が泣くたびに、頭を撫でて抱きしめてくれる、そういうところが優しい人だって証明しちゃってるのにね、でも、してきたことを考えると自分が優しいのだと認めれないよね。

私が落ち着いてくると話の続きをゆっくりと語る様に続けてくれる

王都から、薬や包帯なんて支給されたことはねぇ、包帯なんて死んだやつの服を綺麗に洗って、切って繋いで作ってたからな、薬だって、薬の元となる植物を見つけてきては栽培して増やして、自分たちで作っていたものばっかりだからよ、成分が安定しねぇんだわ。

毒だけは安定して作れたがな…麻酔なんて効きすぎて投与されたやつが死んじまったなんてこともざらだったよ。
そんな時だったかな、王都から派遣された学者先生さんがよ、薬を作るのを手伝ってくれるようになってな、二人で人を救う為に切磋琢磨したんだよ。

あ、因みに、快楽殺人者は先の二足歩行事件の後、何を想ってか、ふと、居なくなってな、後日に獣が住まう死の大地で遺体が発見されたんだよ。
きっと満足したんだろ、自分の人生に、生き様に、もしくは魅せられちまったんだろうな人が花のように輝き消し飛ぶ光景に。

ちょっとずつだけどな、王都から派遣されてくる兵士の数が増えてきてな、何でも、罪人じゃなく、孤児でもねぇやつは、ある一定の任期を終えたら多額の褒美が貰えるってことになってるみてぇでな、一攫千金狙うやつもいるし、貴族で鳴り物入りで貴族会に鮮烈なデビューがしたくてくるやつもいたもんさ。

現に、ここで結果を残して王都で成功したやつも数多くいるからな、それもあってな、ここでは成りあがりたいやつ、戦果を挙げたいやつが集まるようになってきてな、常に最低限、使える人材が常駐するようになるとな、自然と色々と改善されていくんだよ、少し南の場所で畑を作るために開墾されたり、食が人を支えるんだっつってな、食堂が生まれたり、学者先生が方々を駆けまわってくれて、薬を作ったりするための錬金施設をこさえてくれたりな。

ファイナルプランEの後は目まぐるしい変化があったよ、俺たちが腐りながらも生きてきた、あの時とは違って街として機能しはじめたのが、この時からかもな。

薬が残っているのか疲れが残っているのか、うつらうつらとしてきてしまった

「これから、色々とお互いの報告会がまってるからな、今は寝てな」
医療の父に寝かせられるように起こしていた上半身をベッドの上に寝かしつけられるとすぐに眠りについてしまう。



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