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絶望の中にも希望はある 5

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会議も終わったので、各々に本日の予定を伝えていく、まずは、何事もお腹が空いていたら仕事どころじゃないってことで、朝食を終えてから各々にしてもらいたい仕事があるということで仕事内容を伝えてくれる、伝えてくれるのだけれど、一人、仕事内容に納得が出来ない人がいる…

女将が、納得できないみたいで、文句を言い始めた、女将に言い渡された内容が納得できないのは私もわかるよ?

だってねぇ?この砦に居る兵士達と一緒に、村人たちの護衛についてもらいたいって。内容なんだけどさ、わかりやすく言うとね、女将も皆と一緒に歩いて私達の街まで帰れっていう命令だもんなぁ…そりゃぁねぇ?納得できるわけないよね?

女将が納得できない部分は二つありそうなんだよね。
ひとつが、一緒に戦いたいって根っからの戦士としての部分
ふたつめが、車で一日以上かかる距離、徒歩で、護衛だと…三日は最低でも必要じゃない?野営を含めるともっといるかも…
そんな長距離を歩いて帰るのが嫌なのだと思うけれど、どっちが納得できないのだろうね?…考えるまでもないね、きっと両方だろうなぁ

女将が一切、隙間すらなく話を聞き入れてくれないので、私と戦乙女ちゃん達はお互いに視線を移し、何も言わずに頷き行動を起こす。
女将への説得は姫様に任せて、私達は仕事に取り掛かる、あの状態の女将を説得できる人物なんてこの世界に一人だけだよ、旦那しかいないから、無駄無駄

戦乙女ちゃん達は魔石のチャージの状況の確認、魔道具の状況確認
私は、村人たちに移動するための準備が出来ているのか確認、怪我の状況などをしっかりと診断してから問題が無いかの判断をしていく。
なので、昨日と変わらず砦の中にいる怪我人達を手当てしていく予定なのだが、予想外の出来事がある。
簡易で作った回復の陣を村人たちが結構、多用してくれていたみたいで怪我人の殆どが完治しており、長距離移動を歩いていくことに関しては医者として特に問題なく許可が出せる状況だったので全員の助け合いたいという善性の部分に触れることが出来たので、人は捨てたものじゃない貴族みたいにどうしようもないのもいれば、しっかりと助け合って支えあって生きていく人たちがいることに嬉しいと思う部分と、胸の奥がチクリと痛みを感じる。

甘ちゃんだなぁ、女の部分ってのは、仕方がないだろう?獣共が悪い、アイツらがいなければ、この人達の子孫が住む可能性があった大地を穢さなくてもよかったからな。

…犠牲っか、今その時は良くても、未来を考えれば本当に軽率な行動は控えるべきなのだろうけれど…私達は今を生きている、起こした業は背負うよ。この痛みは明日への痛みだから、いいの。偽善だろうが何だろうが、痛みを伴うものなの、黙っててよまったく。

胸の中に秘める痛みと感動を表に出さずに仕事を進めていく、私が出来るのは明日へと繋ぐバトン、人類の未来を繋ぐことだけ
お昼を過ぎたあたりで、完全に診察を終えてしまったのでやることがない、医療班としての仕事が無ければ、仕事がある場所を探すだけ。
戦乙女ちゃん達の仕事を手伝いに行くのが良いよね。
医療班の臨時診察室から出て、停車している場所に向かうと姫様も同じように魔道具の手入れをしている
姫様がいるのに、女将の姿が傍にいない?辺りを見渡すと、女将の姿が見当たらない、考えらえることは一つ確認しておこう、私の予想だと説得は出来なかったっかな
姫様に説得は出来たのか確認すると首を横に振られる…
どうやら、説得はできなかったみたいで姫様が折れる形で決着した様子、そりゃそうだ、あの状態になった女将を説得出来たら私達は何も苦労してないもん
「私だってね、ただで折れたわけじゃないよ?ちゃんとこの後に控えてる、ある人物に出会っても失礼が無いようにって念を押してあるからね」
困った人だよねーっと言いながら筒状の魔道具を分解してメンテナンスしているけれど、ぱっと見、何処も摩耗していない気がするけれど、私では、気が付かない箇所で限界が近いパーツがあるのだろう。

魔道具の解体、メンテナンスはしっかりと知識がある人が行うのが正解、姫様の手伝いは出来そうもない、なので、魔石の状況を確認しにいこう。

魔石のチャージ状況を確認しにいくと、現状空っぽになってしまった魔石の1割未満しかチャージが終わっていない、手伝おうかというと断られる。
理由としては一番魔力を消耗してるであろう人に頼るわけにはいかないだって、うーん、結構回復してきてるから問題ないと思うけれどな

手持ち無沙汰になったので、女将を探すと木陰で座りながら何か集中している様子だったので声を掛けると昔にお父さんから教えてもらった魔力を練るっという訓練法方法をしているそうなので、私も久しぶりに参加することに

正直、教えてもらったときは、これをする意味を見いだせなかったけれど、長年魔力を使い込んできた経験、その経験を得たからこそ、これのありがたみが良くわかる
魔力譲渡法が簡単に習得できた、魔力を操るうえで基礎も基礎と言えるほどの訓練方法。

女将の隣に座って全身の魔力を体内で巡らせていく…

訓練を行っているときにふと、違和感が湧き上がってくる、今私がしているのと女将がしているのは違うのでは?
…だって、あれ?そうだよね?女将の言葉を思い出す、女将は練るって言っていたけれど、魔力を操って体内を循環させるやつじゃないのかな?

練る、循環ではない、一か所に集めて練る…

イメージする魔力を流して全身を駆け巡らせるのではなく、一点に集めていく
集まった魔力を、ねる、練る、魔力を折りたたむように、伸ばすように、圧縮するようなイメージで練っていく

練っていくと自然と、一点に集めた魔力が何処かに消えていくような、小さくなっていくような感覚を感じる?
あれ?集めた魔力ってどこに消えていったのだろうか?探してみる…あそこまでしっかりと集めた魔力だから濃度は高い、体内に意識を集中すれば絶対に何処かに圧縮した魔力を感じ取れるはず…

感じ取れる、うん、あるある、練っていく過程で圧縮してしまった魔力の塊を感じ取れる、試しにその魔力を引っ張ってみると絡まった糸が解ける様な感覚で魔力を取り出していける、もしかして、この状態を日常的にキープ出来れば、日々勝手に抜けていく魔力の消耗を防いで非常事態に備えて魔力を貯蔵できることにならないかな?

うん、今の私であれば、出来る…試しにもう一度全身を流れる魔力を一点に集めて先ほどと同じように練るねる、ねる…練っていくと段々と小さく小さく圧縮できる、圧縮していくとゆっくりと何処かに流れていくように消えていく…

先ほどと同じ場所に向かって神経を集中させると圧縮した魔力が二つほど感じ取れる…感じ取れる!!これを使えば魔力を非常時に備えておけ・・・ぁ、駄目だ
圧縮したやつが徐々に小さくなって消えていくのを感じる、そうか、一定の箇所に留まり続けるのは不可能だ、でも、何処かで使えると思うし今は無理でも貯蔵する方法として確立することが出来るかもしれない…

うん、練習しよう、これは絶対に無駄にならない技術だと感じる、今の局面を左右するのは魔力だと常に感じている、女将の時代は肉体や戦闘技量が全てだった、でも、今は違う、魔力と道具が戦況を左右する時代、魔力を完全にコントロールし、魔力総量を増やす事こそが大事だと痛感している。

木陰で集中し鍛錬を続けていくと砦の兵士達が一斉にどよめき声を出し始める、この状況で考えられるのは敵?
第二陣の敵が来たのかと目を開けて見張りをしている人達の中にいる旗を振る役目の人が微動だにしていない

違う

ほっと胸を撫でおろす、最悪でなければ最良の方、王都騎士団が重い腰を上げてやっと到着したのだろう
安心して、木陰で集中力を高めようかと思っていたけれど、女将が立ち上がる、ってことは、挨拶にいくのかな?
うん、皆が挨拶に行くのに私も行かないのは無作法だよね、一緒に付いて行こう

砦の中央にある広場に大勢の騎士たちが所狭しといるし、その行列を目で追っていくと門を通って外まで続いている、これは相当な量の規模で遠征してきたことになる
だから、到着が遅れたのだろうと納得できてしまう程の規模

女将がズンズンっと中央に向かって歩いていくと高そうな青いマントを背負った人に向かって歩いていく
確実にお偉いさんだとわかる人物に向かって真っすぐに歩いていく、女将の姿を見た騎士団が止めるそぶりを見せない…

いや、止めようよ?傍から見たら大男が真っすぐに自分とこの偉いさんに向かって歩いていくんだよ?どう見ても危険人物じゃないの?
慌てて女将をとめようとするが時すでに遅く、マントの人に後ろに行くと
「久しぶりだねぇ!!元気にしてたかい!!」背中をバンっと大きな音が辺り一面に響くほどの音を出すほどの威力で叩いてしまった

ぁーもーフォローしないと打ち首じゃないのこれー?
最悪の事態を考えながら駆け寄ると

「お久しぶりです!相変わらずの膂力ですね!」マントを羽織った人が笑顔で挨拶をしている?知り合い?
「あんたこそ、しっかりと鍛えてるみたいだね!体の芯が強くなってるじゃないのさぁ!!」「あ!わかります?鍛錬欠かさず何年も続けてきてますからね!!」
お互い笑顔でガハハと笑いあっている、その二人の周りに近くに居た格式高そうな鎧を着た騎士たちが
「自分も!鍛え続けていますよ!ぜひ、叩いてください!耐えて見せますよ!」「いいねぇえ!気合入ってんじゃないのさ!」
その後は一人一人ばんばんっと豪快な音を出しながら格式高そうな鎧を着た騎士たちの背中を叩いていく

どうやら、騎士団の皆様と良好な間柄みたいなので、紹介してもらおうかと近寄っていくと
「こらーおかみー!言ったじゃないのーちゃんと失礼が無いようにってー!相手は王族で、その王族を守る為の近衛騎士の人達だからねー!旧知の仲といえど、場所を考えてよーもー」姫様も近くにいるみたいで何処かから声が聞こえてくる、きょろきょろと見渡すと、騎士たちの隙間から見える。
背が小さいから見つけにくかっただけで、意外と近くに居たのかもしれない

「だってよー、姫ちゃ~ん、何年ぶりに会うのかって人達だからつい」
無礼な振る舞いに注意された女将は申し訳なさそうに頭をぼりぼりと書いている

そのまま、女将の横に辿り着くと
「お久しぶりですね…元気にしてる?」先ほどの姫様の会話から察するに王族の人に向かって話しかけている
「…ぇぇ、元気にしていますよ」王族の人も言葉を聞いて少し間を開けて返事をしている
「そう、ならよかった…大切にするのよ?」「はい、勿論ですよ」
なんだろう?今の会話に少し違和感を感じてしまうのは?ちょっと言い回しが変わっているだけで相手の体を心配しての言葉だと思うけれど…?何か他に意味が含まれてそうな気がする。

ぱちりと王族の人と目が合うとこちらの姿を見た瞬間に涙を浮かべている?なに?感情の起伏が読めない、情緒不安定な人なの?

此方に向かって踵をぴしっと揃え腕を胸の高さまで上げ宣言を始める
「先代の王が残した王都が秘宝、王族の末席であり、現王の右腕、宰相である」
その宣言と同時に周りの騎士たちも同時に同じ姿勢を取り
「そして我らが宰相が最強の手駒、王国の秘宝を守るために存在する近衛騎士団であります!!」

そんな派手な宣言なんて考えた事なんて無いからどうやって対応すればいいのかわからない、呆気に取られていると宰相が手の届く距離まで近づく
「そして、貴女の親戚でもあり、貴女の御父上に人生の道を示してもらい、命を助けてもらった愚鈍なる愚かな人間です。初めて見た瞬間にその聡明なお顔、直ぐにわかりましたよ、貴女が」「はい、団長が困ってるから普通に接してあげて、彼女には、高貴な血が流れていても平民として生きてきた人なのですから」
どの様に応対すればいいのかわからなくて困っている私を助ける様に会話に割って入ってくれる姫様に心から感謝していると
「ぁ、そ、そうでしたね、申し訳ありません、つい、感極まってしまいました、漸くお会いできたのだと」
目頭が熱くなってしまったのかハンカチを取り出して目元を拭いている。

「さて、積もる話もかなりありますが、姫様、私達に英知を授けていただけますか?」
宰相という立場であり、姫様よりも年上であり、王族であるにもかかわらず丁寧にお辞儀をして指示を仰ぐ、今まで見て聞いてきた王族の傲慢さを感じない。
不思議な人

「こちらこそ、栄光ある宰相が直属の近衛騎士、私のような粗末な者の言葉に耳を傾けて頂けること、至上の喜びとさせていただきます」
綺麗なお辞儀で応対している、こういうところはしっかりとしているのが尊敬できる、私も、そういうの身に着けるべきなのだろうかと思うときがあるけれど、昔から王族とかそういったものと関わらせないように周りが動いているのではという節が、あったのだと事情を知ってから理解してしまった以上、更なる苦手意識が出来てしまっている部分があるのよね…

「姫様、会話が長くなりそうなのでいつも通り、フランクに話していただいてもよろしいでしょうか?」
宰相も少々困った顔で姫様に申し出ると
「いいの?それじゃ遠慮なく、かたっくるしいの苦手なのよね~」
んん~っと両手を挙げて背筋を伸ばしている、フランクにしていいって言われてすぐにアクション出来るこの神経の太さ、羨ましい

「はい!コントはおしまい!時間も限られているので今から作戦会議と行きますか!」
手をパンっと叩いて場の空気をしめようとするのだけれど、コントって何だろう?場をコントロールするとかそういうニュアンスかな?

その後は、その場で机と椅子を準備して机の上に近隣の地形が書かれている地図を取り出して作戦会議をしている。

女将と私は作戦内容を知っているので特に参加する必要がないので少し離れた場所で待機している
なので、つい、気になったので聞いてみることに
「知り合いなの?」
隣にいる女将に声を掛けると
「ああ、そうだよ、あの人とは、本当に…本当に長い付き合いになるさぁねぇ…一時は恨んだものだよ、でもね、彼の背景を知り、本当に色んな出来事があってねぇ・・・」
コロコロと表情が変わるのを見て、本当に、本当に色んな出来事があったのだと表情が物語っている。

これで確信がいく、先の言葉に、女将の態度、この人がデッドラインに連れて行って欲しいと願った人で、私達の街を王族という立場から支え守ってくれている人だと。
そして、あの魔道具を設置するのに色々と手を貸してくれた人だと
だったら、許可なく発動したことを怒っているのかと思ったけれど、怒りを感じさせない辺り、腹に抱えているのかそれとも、姫様がすることだから無許可で緊急事態であれば、使うだろうと行動を予測して予め根回しをしてくれているので、何も問題が無かったのかもしれない

女将がぽつりぽつりと思い出話を語ってくれる
姫様暗殺事件を共に防いだりとか
No2が巻き込まれた事件を共に解決したりとか
数えきれないほどの事件を共に解決し歩んできた、最前線の街で最も身近に感じれる王族で色々と不祥事を助けてくれたり
姫様の無茶ぶりを陰ながら支えてくれる人と教えてくれた

二人で木陰の方に移り、姫様達の作戦会議が終わるのを待っている間も、先ほどの訓練を密かに行い魔力を体内で練るという作業を繰り返していく

きっと、事態は良い方向に向かって行ける、どうしてかわからないけれど、そう感じ取れた、私達が住む街に比べると少し肌寒い風を感じながら
長い長い南と北、両方での戦いの始まりが密かに始まっているのを、愚鈍な私では、気が付くことが無かった


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