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とある人物が歩んできた道 ~時は来た、来てしまった~

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乙女ちゃんが診察室に入ってくる、ゆっくりと、本当に慎重にゆっくりと動いている…その動きから察してしまう、嫌な予感だけは良く当たる物よね~

相談内容を確認するまでも無いがやっぱりだった
「あの、月のあれがこないのって」
顔を真っ青にしながら確定的な報告ありがとうございます。
無言で立ち上がって隣の診療室のドアをノックし、返事が無くてもドアをがちゃっと開けて、隣にいるであろう先輩に向かって
「せんぱーい、私、ケガとか骨接ぎとか切ったり繋いだりばっかりでわからないんだけどー無知なバカ弟子におしえてくださ~い、女性の毎月のあれがこないのってどーしてですかぁ?」
軽いパニックのせいで素っ頓狂な質問をしてしまい、私が狂ったのではないかと心配になって先輩が椅子から立ち上がって一緒に乙女ちゃんがいる診察室に来てくれる。
実際問題、その手の診察はしたことが無かったので、書物の知識しか知らない、っていうか、この街でそんな診察する日がくるなんて思っても無かったの!!

先輩が聴診器でお腹の音を聞き、頷く
「ほぼ、まちがいねぇな、あそこを見るまでもねぇ、おめでた!うん、めでてぇじゃねぇか!!」
今まで見せたことがない笑顔で嬉しそうにする、この人は本当に根っからの医療人、命が生まれることの喜びを誰よりも知っていて、患者と、ともに我がことのように喜んできた人
本当にこんなすごい人がどうして、この街に来たのか不思議で仕方がない、きっと、王都でも名のある名医なのだろう。

そして、この嬉しい報道は瞬く間に広がっていき乙女ちゃんも実家に手紙を送った、めでたい知らせがあると。
その次の日には、色んな人から石を投げられてボロボロになって診療所に運ばれてくる坊や…まぁそうなるよね、ファンクラブの人達からすれば、自分たちのマドンナを、ねぇ?

その悲しみがわかっているであろうからこそ、抵抗せずに受け止めるなんて漢じゃないの。
もう、貴方を坊やなんて呼ばないわ、乙女ちゃんの、ううん、乙女ちゃん専属の騎士になったのね。これからは、貴方のことを部隊長って呼ばないとね。

部隊長の治療を終えた後は、戦士達全員から詰め寄られ、どういった経緯なのか質問攻めになっていた。
本来であれば、とても素晴らしくて、この世の全員から祝福される出来事
当然、上司として喜びを露にしないといけない立場である、騎士様の表情は…あからさまだった。
だって、笑顔が引きつっている…心中お察ししますって言いたいけれど、そんな冗談が言えるレベルの出来事じゃないのよねぇ~

貴重な戦力がぁ

乙女ちゃんクラスの戦力ってどれくらいなの?っと騎士様に確認すると
一個中隊丸々かなぁ…

ぁ、うん。これ、絶望的な状況じゃないの?俗に言う詰みって状態?手がない?
私が打てる、裁量の手を打とう、騎士様の手を握り
「一緒にすべてを捨てて逃げてくれませんか?」っと、涙目で訴えてみると
「はは、冗談でもそんなことを言うものじゃないですよ」困り顔でのってくれなかった、嘘泣きってすぐ見破られちゃった。

その後はもう、激動の日々!
乙女ちゃんのお父さんが安定期になるまで滞在することになるし!
定例会議ではどうやって戦力を確保するかで全員が死にそうな顔になるし!
乙女ちゃんのお父さんから王都ではどんな動きがあるのか探ってみると、たぶんあと半年かそこらで王族が何かをするみたいだという貴重な情報を得られたし!
情報を得たとしてもどうしようもない!!もう、ほんっと余計な事してくれたなぁ坊や!!部隊長なんて呼んでやんない!あんたはまだまだ坊やだよ!

ちくしょー、みんなに相談しなかったのが仇になった!!!
相談していれば、きっと、坊や達も関係の進展を少し待ってくれたと思うのになぁ…

たらればは良くないってわかっていても、こればっかりは、考えちゃうよね~あーもう、こんな状況で停滞するなんてどうしようもないじゃないのさぁ~…
それからはもう、新しい進展何て何もなく、無駄に時間だけが過ぎていく。

安定期に入った乙女ちゃんが実家に帰っていく、騎士様と坊やと巨躯の女性も笑顔で見送る。当然、私もよ、戦力ダウンはしょうがないけれども、おめでたいことには変わりないものね…元気な子を産んでね、あと、無事産まれたら王都に遊びにいくから、抱っこさせてね?

安定期に入るまでに起きた出来事として、以外だったのが、出来ちゃった婚になりそうなのに坊やは一切のお咎めも無く、お父さんと楽しそうに日々を過ごしていた。
殴られたりもせず、かなり友好的だった、あれ?何処かで面識あるの?…なんかそれっぽい話をきかされたよーな?刹那で忘れちゃったや。

彼女を見送った後は、それはもう駆け足だった。

鳥の眼球から何個か作成できた、魔力の流れを見ることのできる魔道具を使って敵を索敵するための望遠鏡みたいなのを作ったり。
騎士様が事前に安全地帯と、ルートを構築してくれていたので(そのために、外での活動を増やしてたのね!さすがですぅ!!)
準備を怠ることなく現在できる最善を尽くす!私もその為に戦闘訓練の量を増やしていく、どうして増やすのかって?決まってるじゃないのわかってるでしょう?
医療班から現場に出れるようになったのは、驚いたことに!!

私一人だけでーっす!!っはっはーーーん!!度重なる説得もむなしく全員がNOでしたー!!人望なっしーーー!!うわはぁあんん!!!

っというわけで、私も一緒に医療班として戦場にでます。

っぐぐぅ、全てが裏目に出ている気がする、かと言って今更、みんなに打ち明けたとしても手遅れな気がする。
先輩に相談しようかと思っていたけれどやめました。

だって、あんなにも新しく生まれてくる命の誕生を、奥様と一緒に喜ぶ姿を見て、この人だけは死の間、デッドラインに近づかせるわけにはいかないなって

思ってしまったもの。

貴方だけは永遠に命を救う人として生きてほしい、血生臭い王族のいざこざに巻き込んじゃいけない、もう一線を引いてもおかしくないご年齢だもの。
貴方は長生きしてください、医療の父、偉大なる先人、幾度となく地獄を見てきた世代…

これ以上の地獄を目の当たりにさせるなんて、弟子が師匠にしていいことじゃない。私はね、これでも貴方のことを師匠として敬い心の底から大事にしているのよ?これでもね。

そして、来てしまった

手紙が


王族だけが使える刻印が押された文が届く
内容を街にいる全ての人達に伝えるために広場に集まってもらい。
騎士様が大きな声で読み上げる。

その内容に多くの人達が何かを察したり、絶望したり、様々な反応を繰り広げている。
当然、内容を知っている私は落ち着いて、何処か、違う世界の出来事じゃないのかなって見るように遠巻きに見ていたら
「そういうことか、お前、なんで相談しなかったんだ?」
先輩が、ちょっと、ううん、かなりご立腹のご様子で話しかけてきた

「…これでも、悩んでいたんですよ?この絶望的な状況を相談してもいいものかって」
私の言葉を聞いて先輩は怒りをあらわにしている、普段から怒りっぽい人だけど、命の重みに対して怒ることはあっても、それ以外で怒ることはない。
だから、自分が心配されて仲間外れにされたくらいで怒るなんて思ってもいなかった。

「おれは、もう、ロートルなのか?お前に席を譲ったときから俺は、もう、お前の師匠じゃないのか?」
その葛藤は間違いですよ、貴方はいつだって、永遠に私の師匠です。胸を張ってください。

「何を言うんですか先輩、貴方がいるおかげで、全力で準備に取り掛かれたんです、感謝しても感謝しきれないですよ」
視線を先輩に向けることが出来ない、きっと怒りを通り越して悲しそうにしているだろうから、だって、先の言葉は突き放す言い方だもの、貴方は当事者ではないのよ?っていう意味だもの、先輩だったら絶対に伝わっている。

「そうか、わかった。お前の意志を受け取ろう、だから、俺の意志を受け取れ」
叩かれると思った、でも違った
「絶対に死ぬなよ、俺いや、俺らにとってお前は可愛い娘だからな死ぬなよ絶対に」
頭を撫でられたと思ったら抱きしめられていた。

気が付くと泣いてしまっていた。

この人の懐の大きさに、初めて会ったときは何て野郎だと思ったけれど、誰よりも優しくて誰よりも不器用で、誰よりも…人の命、痛みを理解する聖人だ…

おかしいな、私にとって世界の全ては騎士様で、騎士様以外はどうでもいい、誰が死のうが気にしないって思っていたのに
こんな外道の私でも守りたいって思える世界があるなんて思わなかった。
絶対に、全員の命を守り切って戻ってきます。そしたら、また叱ってください、この不出来な弟子を…

三日、私達に残された時間は残り三日

全員で作戦を練る、全員で練度を高める、全員で不備が無いか徹底的に確認する。
三日にかけて構築したルートに異常が無いか、土に潜ってでも潜伏してルート確保に協力してくれた人たち。

この三日間出来る限りの全てを尽くした、補給部隊を守る人員も補給部隊もルートを完全に覚え最低でも一週間は帰ってこれない覚悟をもって、任務にあたってもらう。
参加する人員全てに今配備できる最高の装備に、緊急時用の使ってはいけない危険な薬剤などが入った袋も中身も完璧。

参加する人達全員が、命を失う覚悟で挑むために愁いをなくしてもらった。

そのやり方は人それぞれなのでどういったものなのかは咎めない。色街に行きたくてもいけないからって色街の女性を呼びよせるのも咎めないわよ!!ほどほどにしないさいよね?当日の体力なくなっても知らないわよ?これだから男は!!

三日後、遠目でもわかる、音でもわかる、隊群が流れてくる音がする、軍隊という大勢が流れてくる人の列が粒となって重なり点が繋がり線になる。
線が戦となり、戦が始まるのだと逃げようのない現実を突き詰めてくる。

思っていたよりも軍隊の人数も多い、これなら、多少練度が低くても生きて帰ってこれるかもしれないっと騎士様は嬉しそうだった。
うん、生きて帰ろう、絶対に、生きなきゃいけないの私たちは

だって、まだ約束守ってもらってないもの…ね?

きゅっと隣で軍隊を眺めている騎士様の手を握る、ゆっくりと握り返してくれる。
今はこれで満足してあげる、全てが終わったらちゃんと約束守ってよね?

信じてますからね、私の騎士様。

奥様に側室を迎えるっていう話をつけてくるって約束、そして、側室を迎えれる許可を得た時に私を抱いてくれるっていう約束。
あの時は、抱いてくれなかったけど!この約束をしくれたのだから、後は信じるだけ。


行きましょう、私達の運命を分かつ大地へデッドラインに、絶対に生きて帰りましょう。私達の幸せの未来の為に
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