22 / 22
高槻礼央は赦されたい
③
しおりを挟む「……、っあ~~~~、腰痛い……」
「イリヤ、なんかおじさんみたいなこと言ってる」
「うるさい!アンタのせいよ!!馬鹿!」
数時間後、目を覚ました彼がシャワーを浴びたいというものだから浴室へと連れていき、覚束無い足元で歩く彼を抱きかかえ、お湯を張った浴槽へと誘った。大の大人2人が足を伸ばして入れるかなり広めの浴槽に、2人で向かい合って身体を浸からせた。
激しい性行為をした自覚はなかったのだが、腰が痛いと唸って其所を擦る彼の姿を見ると、やりすぎてしまったかと少しばかり反省した。
頬を膨らませ、ふいと他所を向く彼があまりにも可愛らしいものだからつい揶揄いたくなり、彼の両頬を掴んで此方を向かせ、冗談交じりに言葉を投げかけた。
「それはイリヤが可愛いのが悪いんじゃない?」
「は?毎日悪いってこと?」
「うん、毎日悪い」
彼は此方をじっと見つめ、冗談なのか本気なのか分からない返答をする。恐らく前者だったようだが、此方の気持ちとしては後者なので、鸚鵡返しに返答すれば頬をみるみる紅潮させ、目線を逸らした。
「何それ、恥ずかしいんだけど」
「だって可愛いもん、ずっと可愛い」
「……、アンタのせいで乳首も痛いのよ……」
「変な話の逸らし方しないでよ」
「何よ、文句でもある?」
「……ないけどさ、あ!」
彼は依然、頬を紅潮させたまま胸を覆うように両手を被せ、ふいとそっぽを向いた。
そういえば、と以前から温めていたある提案をふと思い出し、彼へとそのまま投げ掛ける。
「俺……イリヤに言いたいことがあって」
「何よ」
「俺と一緒に暮らそ?」
「はぁ?」
此方の提案に対し、彼は表情を変えず頓狂な声を上げた。
確かに、今の今まで1度もこの件について話した事はなかったが、多忙のあまり彼に会えない時間が増え続けている事がどうしても耐えられず、ついこんな状況で口走ってしまう。更に、言った者勝ちと言わんばかりに、責め立てるように更に言葉を続けた。
「だってさ……俺の家に住んだらさ、いつでもえっちできるよ?俺の事考えてムラムラしなくても、俺ずっといるし……イリヤの気が済むまで毎日セックスしよ?そして……快楽漬けにして俺がいなきゃ生きていけないようにしてあげるから……」
「、れお……!?」
「……イリヤ……俺と一緒に暮らそ……てか暮らすって言うまで帰さない……」
目を丸くし、言葉を失う彼の首に腕を回し、強く抱き締める。ゆらゆら揺れる、水面に浮かぶ彼の銀糸を思わせる髪に指を搦め、更に背中を此方に寄せれば、眉根を顰めて少しばかり枯れている低い声を荒げた。
「それは暮らすっていうか監禁じゃないの!?」
「監禁でもいい……」
「は!?ふざけてんじゃないわよ!」
「本気……」
此方側を睨みつけて、腕の中から逃れようとする彼の身体をさらに強く抱き締めると、抵抗をするのを諦めたようで、彼ははあと深い溜息を吐いた。
「もう……分かったわよ」
「えっ!!」
思いもよらぬ彼の肯定の返事に、喜びと驚きで思わず彼の身体から腕を解く。しかし、彼の口から出てきた言葉は想定外のものだった。
「……、近いうち、うちに連れてくから」
「えっ……えっ?」
「それでいいでしょ?許可は自分で取るのよ」
「……うそ?」
「嘘じゃないわよ!何なのよアンタ!恋人の家族に会えないって言うの!?」
「いや、すごい真面目だな~って……結婚するみたい」
「アタシがいつ真面目じゃなかったのよ!!」
「わ、わかったから、怒らないでって」
彼の怒り混じりの返答に、思わず苦笑して更に返すと、気に触ったのか浴槽の水をあらん限りの力で掛けられる。お互いの前髪や顔がびしょびしょに濡れてしまい、思わず互いに笑いが漏れてしまう。
一頻り笑った後で、浴槽の縁に両肘を着き、此方を見つめて口角を吊り上げた彼は、更に驚くべき一言を発したのだった。
「……、アタシと結婚、しないの?」
その発言に、つい数秒間思考が止まってしまう。彼の告げた言葉を何度も反芻し、漸く理解をした所で、返事よりも先に身体が動いてしまっていた。先程と同じように彼の身体をめいっぱい力を込めて抱き締め、喜びのあまり震える声を絞り出す。
「す、する……!!俺、イリヤと結婚する!!」
「っうるさい!馬鹿!!声でかいのよ!!」
僕は最大の試練と、最高の幸福を与えられてしまったようだ。
END
0
お気に入りに追加
24
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる