涙が幸せの泉にかわるまで

寿佳穏 kotobuki kanon

文字の大きさ
上 下
272 / 316
人生の機微

我が子と歩む未来は4

しおりを挟む
「さち・・」

佐知の頬を流れ落ちた涙を見た雅和は側にあったティッシュをそっと渡した


「佐知さんも秀行さんを思い出されたのでございますね」


「昔話はもうやめよう 佐知の気持ちも考えず悪かったごめん」


「事の発端はわたくしでございます 佐知さん許して下さいませ」


「泉さん私は平気よ 秀行さんは逝ってしまったけれどその悲しみの何倍も何十倍も幸せだった記憶を残していってくれたから 毎日少しずつだけど前に向かってちゃんと未来へ進めているから私は大丈夫」


「俺とは大違い、佐知は強いんだな ひとまわりいやふた回りも手ごわく成長して帰ってきたようだ」


「私は強くなんかない 雅和を筆頭に沢山の人に恵まれ手を差し伸べてもらったおかげで私と秀和は秀行さんと楽しい日々を過ごせたの あの喜びの日々は多くの人に支えられて得られたものだから感謝して決して忘れないわ 雅和わたしね、美香さんが私に言った言葉が忘れられないの

佐知さんにとって雅和は必要な人、別れた後もこうしてまた巡り会えたのだからその縁を大切にして欲しいって何度も繰り返し言ってた

美香さんを介して再会した私たちは今日まで新たな絆を築いてきた いま私は雅和がいてくれなかったらそう思うだけで身体中が震えてくる 美香さんが言ってたように雅和は私の人生に欠かせない大切な人になっていた」


「佐知の助けになれてそれを喜んでもらえたなら俺は嬉しいよ 思えば佐知が笑って幸せでいてくれる事が俺の幸せであるかのように思えたから」


「人の幸せを素直に喜べる方にはご加護があるものでございます 佐知さんの幸せをご自分のことのように感じられた雅和さんにもいつか必ずご加護が降ってまいります せちがない世の中ではございますがご自身の心持ちひとつで物事をどうにでも変化させることは可能でごさいます わたくしはそう信じております



「確かに一理有るかも、人生も同じで誰かに与えてもらうものじゃない自分で掴むものだからね 泉さんが言うように自分のポジティブな心、願い、信じる思いが人生すべての結果に繋がっていれのかもしれないな」


佐知は柳木沢と会話した時の人生は心が決めるという言葉を思い出していた。


「佐知さん、秀和ぼっちゃんのミルクはまだよろしいのですか」


「あ~私ったら話に夢中になってしまって、そろそろミルクをあげる時間だわ」


「秀和はまだ一人では何も出来ないんだからママの佐知にしっかりしてもらわないと秀和が可哀想だよ」


「そう言う誰かさんも一緒に話してましたよね~」


「うんたしかに、ごめん」


「遅ればせながらお茶をお持ち致しましたので一息つかれてはいがですか 秀和ぼっちゃんのお世話はわたくしがいたしましょう 佐知さんは少しお休みになってくださいませ」


「とんでもない、泉さんこそ体を休めてください」


「佐知、秀和の世話をしたくてウズウズしている泉さんの気持ちを少しは察してやれよ」


「あっ・・それじゃ甘えちゃおうかな 泉さんお願いしてもいいですか」


「ハイ、わたくしにお任せ下さいませ」


佐知は実家にいるような気持ちになっていた。傷心の佐知を温かく迎え入れてくれるこの家は我が家と同じだった 此処での生活を望んだ佐知の選択が決して正しいものでないことは十分に熟知していた。わかっていながらそれを変えられない自分の弱さに佐知は目を背け続けていた。佐知は自分がなぜ此処に執着するのかを考え始めていた。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立

水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~ 第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。 ◇◇◇◇ 飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。 仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。 退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。 他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。 おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。 

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。 だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。 車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。 あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...