上 下
252 / 292
愛は陽炎(あいはかげろう)

決意

しおりを挟む
仕事が終えた佐知は雅和が待つSIGNPOSTに急いでいた。

カランカラン・・ドアを開けるとママの澄んだ声が店内に響き渡った。


「佐知さんいらっしゃい、お久しぶり」

「顔も出せずご無沙汰してすみませんでした」

「また資格を取ったと聞いて、いま井川君を誉めてあげていたのよ」

「ママは会うたびに若くなって今話題の美魔女ですね」

「まぁ~うれしい、そんなこと初めて言われたわ 今日は私のサービス御代は取らないわ」

「わたしそんなつもりで」

「いいの貴方たちは私の子供と同じ里帰りしてきた娘と息子よ ここに来たときは私を母と思って甘えて頂戴ね 井川君カウンターじゃなくいつもの奥のテーブルに移動したら?」

「井川君、奥に移りましょう」


奥のテーブル席に着いた雅和は店に入ってきたやつれた佐知が気になっていた。

「佐知痩せたんじゃないか 大丈夫なのか」

「ずっと食べられなかったから・・」

「電話の様子がいつもと違うから心配してたけどこんなになるまで・・佐知のために何が出来るかわからないけれど一人で抱えこまないで俺に話せばいいよ、今日は佐知の話をとことん聞くから全部吐き出してしまえ」

「うんありがとう、秀行さんとはあれから色んな事があったけど結婚に向けて順調にお付きあいしていたの でも前触れもなく急に秀行さんのアメリカ行きが決まって、2日後の出発に秀行さんも突然だったらしく驚いていたわ 研修を受ければむこうの医師免許も取れると聞いて秀行さんの夢が叶うならとわたし笑顔で送り出したのにその研修は嘘だった 秀行さんは病気治療のためアメリカに渡ったの」

「アメリカで治療しなければならないほど重い病気なのか」

「ずっとそばで一緒に仕事をしていたけど病気なんて素振りは全くなかったのよ 移植だとかドナーがどうこうだとか耳にも入ってきて心配で心配で」

「連絡は取れるんだろう その気持ちをそのまま西條先生に伝えれられないのか」

「それは出来ないわ 病気が本当なら秀行さんが一番つらい思いをしているはずだもの」

「追い打ちをかけるような事はしたくないか」

「メールも途絶えてしまったけど今は治療で連絡ができないんだと言い聞かせて我慢しているの」

「西條先生がアメリカに渡ってから自分の病気がわかったと仮定しても今もって佐知に何も告げないのは疑問だな
俺だったら愛する女(ひと)には何をおいても話すと思うけど」

「秀行さんは幸せになろう、一生守ってくれると約束してくれた 人一倍責任感のある秀行さんだからそれがもう出来ないとわかったら・・」

「西條先生は連絡を断って佐知との関係を自然消滅させたがっているそう思っているのか それで佐知は納得できるのか」

「納得なんて出来ないけど」

「けど?けどって何だよ 西條先生を愛してるのならそんな言い方はやめろよ 聞きたいことがあるなら連絡して聞けばいいだろう、心配でたまらないなら会いに行けばいいんだしお前らしくないぞ 自分の気持ちに逆らって揺らいだりするな 俺にぶつかってきたように西條先生にも思いの丈をぶつけるんだ そしたら西條先生もすべてをお前に吐き出せるよ 佐知の支えが一番の特効薬になると俺は信じている」

「・・ありがとう・・・雅和・・」


「まだなにか隠してることがありそうだな 隠さずちゃんと言えよ佐知」




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【新作】読切超短編集 1分で読める!!!

Grisly
現代文学
⭐︎登録お願いします。 1分で読める!読切超短編小説 新作短編小説は全てこちらに投稿。 ⭐︎登録忘れずに!コメントお待ちしております。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

季節の織り糸

春秋花壇
現代文学
季節の織り糸 季節の織り糸 さわさわ、風が草原を撫で ぽつぽつ、雨が地を染める ひらひら、木の葉が舞い落ちて ざわざわ、森が秋を囁く ぱちぱち、焚火が燃える音 とくとく、湯が温かさを誘う さらさら、川が冬の息吹を運び きらきら、星が夜空に瞬く ふわふわ、春の息吹が包み込み ぴちぴち、草の芽が顔を出す ぽかぽか、陽が心を溶かし ゆらゆら、花が夢を揺らす はらはら、夏の夜の蝉の声 ちりちり、砂浜が光を浴び さらさら、波が優しく寄せて とんとん、足音が新たな一歩を刻む 季節の織り糸は、ささやかに、 そして確かに、わたしを包み込む

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

処理中です...