上 下
203 / 292
悲しみの連鎖

大切なものが17

しおりを挟む
病院は朝から女性スタッフの異常な熱気で盛り上がっていた。開業前のスピーカーから院長の声が流れてきた。

「おはようございます もう皆さんご存知でしょうが今日から息子の秀行がスタッフの仲間入りをします 本人より一言あいさつがあるそうですので聞いてやってください」

「みなさんおはようございます 院長からご紹介いただきました秀行です 皆さんと一緒に患者さんを救うべく頑張りますので宜しくお願いします」


秀行の声にそこかしこから歓声があがっていた


「さっちゃんはいいなぁ~」

「そういえばさっちんの顔まだ見てないね」

「さっちゃんなら秀行先生の部屋に入っていくの見たけど」

「そっか、今日から秀行先生のお側付きか、羨ましいな」

「ねぇさっちゃんがいない受付ってなんか変じゃない」

「うん、すごくさみしい」

「さぁ皆さん仕事仕事、口じゃなく体を動かして 待合室はもう患者さんでいっぱいよ」


佐知はドクター秀行と書かれた部屋で主の秀行を待っていた。緊張と寝不足であくびが止まらなかった。大きく口を開けた瞬間ドアが開いた。


「おはよう、初日の朝から豪快なあくびで迎えてくれるなんて嬉しいな」

「お、おはようございます すみません」

「別に誤らなくていいよ 今日から宜しく皆井さん」

「こちらこそ宜しくお願いします」

「今日から佐知さんと呼ばせてもらいます まず佐知さんにやってもらう仕事は前の病院で施術した資料整理と机に置いておいた医学誌の付箋のページを全てコピーして30部綴じておいて欲しい、緊急の要件は脳神経科のほうにまわしてくれればいいよ あとの余った時間は君の自由に使っていいよ」

「自由にと言っても・・先生この仕事ぜんぶ今日中にですか 昼休み取らないで頑張っても一日では終わらないかと」

「うん確かに僕にも無理だな 明後日までなら出来るかな」

「はい、厳しいですが頑張ります」

「あ、それから僕を先生と呼ぶのはやめてほしいな 二人の時は名前で呼んでくれていいよ」

「わかりました」

「ところで昨日は徹夜でもしたの」

「あっ、あのあくび・・本当に失礼しました」

「初日からあくび顔で歓迎されて緊張していた僕にとっては実に愉快だった 大口開けた佐知さんもわるくないよ、とても可愛いかったし」

「朝から私をからかって楽しいですか先生」

「あぁ君の大きなあくび顔、大変楽しませてもらったよ」

「あぁ~もう診察が始まる時間です 先生急いでください 患者さんが待っていますから早く行ってください」

「あっ内線コールが鳴ってる」

「外来からの催促電話ですから先生は出ないで下さい 私がうまく伝えておきます この病院は時間厳守ですから先生急いで、早く走って行って下さい」

「さっきも言ったけど二人の時は先生でなく名前で、ね佐知さん」

「時間厳守出来ないなら院長婦人に電話して叱ってもらいますよ もぉ~先生お願いだからさっさと行動開始してください 何かあれば叱られるのは私なんですから・・」


穏やかな性格の秀行は佐知に被害があったらまずいとばかり襟をただした


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【新作】読切超短編集 1分で読める!!!

Grisly
現代文学
⭐︎登録お願いします。 1分で読める!読切超短編小説 新作短編小説は全てこちらに投稿。 ⭐︎登録忘れずに!コメントお待ちしております。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

季節の織り糸

春秋花壇
現代文学
季節の織り糸 季節の織り糸 さわさわ、風が草原を撫で ぽつぽつ、雨が地を染める ひらひら、木の葉が舞い落ちて ざわざわ、森が秋を囁く ぱちぱち、焚火が燃える音 とくとく、湯が温かさを誘う さらさら、川が冬の息吹を運び きらきら、星が夜空に瞬く ふわふわ、春の息吹が包み込み ぴちぴち、草の芽が顔を出す ぽかぽか、陽が心を溶かし ゆらゆら、花が夢を揺らす はらはら、夏の夜の蝉の声 ちりちり、砂浜が光を浴び さらさら、波が優しく寄せて とんとん、足音が新たな一歩を刻む 季節の織り糸は、ささやかに、 そして確かに、わたしを包み込む

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

注意欠陥多動性障害(ADHD)の日常

春秋花壇
現代文学
注意欠陥多動性障害(ADHD)の日常

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

処理中です...