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父の消息

素顔を見せて2

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「今日はご馳走様でした 久しぶりのイタリアン美味しかったなぁ 美味しいもの食べた後って幸せな気分になるから不思議よね 御伽噺のお姫様になったみたいだわ」

「なら今日の君は白雪姫それともシンデレラ?夢見る夢子さんの復活だな」

「恥ずかしいな、夢見る夢子さんは井川君と初めて会ったときに私が言った言葉よ まだ覚えていたのね」

「・・・・ 」

「井川君どうかした」

「あの日もこんな夜だったなって・・俺と君が出会ったあの夜と同じ、今夜もきれいな星空だな」

「本当、キレイね」

「別れた俺たちは何の因果なのか再会した その君がいま俺と美香さんを支えてくれている。俺は佐知が好きだ 今も俺は」

「や、やめて、あっ・・あのね井川君に深い意味はないのはわかっているのよ でも軽々しく好きなんて口にしてはいけないと思うの」

「なにか気にさわった」

「電話で話したあの時も井川君わたしに言ったでしょ、好きだ会いたいって」

「・・・」

「友達同士でも好きは何気に口にする言葉だけど私は井川君の昔の彼女で、一度は愛し合った仲だったの だからわかるでしょ」

「・・・  」

「私はもう井川君の恋人じゃないわ いま井川君の恋人は美香さんで愛しているのも美香さんだわ だから簡単に好きとか会いたいなんて言ってほしくないの」

「そうか、ごめん佐知」

「私が井川君と別れてから誰ともお付き合いしていないのはまだ昔を・・・あなたを引きずっているのかな、だから好きとか会いたいなんて子供も口にする言葉に過敏に反応してしまうのね 愛した人に好きなんていわれたら昔を思い出して切なくてたまらくなるの」

「すまない 佐知の気持ちに答えられないと言いながら・・ごめん」

「恥ずかしげもなく本音をさらけ出すなんて今夜のお酒のせいね 謝って貰いたくてこんなこと話したんじゃないから井川君はごめんなんて言わなくていいの、私の方こそごめん聞かなかった事にして、そうでないと私もう井川君と顔を合わせられないから」

「こんなことで気まずくなるのは止めないか これまでのように俺と美香さんの側にいて助けてくれ お願いします」

「はい、邪魔だって言われても離れたりはしないから心配しないで」

「よかった~ だったらまた食事に誘ってもいいかな」

「なら次回は遠慮しないでご馳走になりますか」

「今日の佐知は遠慮したっていうのか結構の量飲んで食べたぞ」

「まだまだ入るわよ 締めにラーメンでもいく」

「嘘だろう 俺はパス今日は止めておくよ」

「冗談はここまでにして、もう遅いから帰りましょう 井川君のおかげで今日は楽しい時間をすごせたわ ありがとう」

「俺のほうこそいつもありがとな」


自宅に戻った佐知は鏡台に映る虚ろな自分の顔を見つめていた。

わたしはまだ雅和への思いを引きずっている? だからあんなことを口にした 男女の感情など封じ込め消し去ったはずなのにまだ愛してるアイシテルあいしてる・・なぜ忘れられないの

佐知は消し去ったはずの愛の灯がいまも燻ぶり続け必死に火種を保っているような気がしてならなかった。



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