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人間の子供に変身

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「それで、姿を変えるとはどうすればよろしいのでしょうか?あのお二方みたいになればいいでしょうか?」

冬の王は契約に書かれてあるように敬語を使う。

「いや、シオンには人間の子供ような姿になってもらうわ」

それを聞いたシオンはホッとした。

正直言って妖精王の姿は低級妖精の姿でそこまで問題はないが、悪魔の王のルネの方は悪魔の威厳も感じられないほど酷いものだったのであんな姿には死んでもなりたくなかった。

人間の子供の姿というのは気に食わないが、ルネに比べればマシだ。

もし仮に文句を言ってアレになれと言われたら困る。

ここは素直に聞いた方がいいと思い「わかりました」と言ったが、ルネの声によってかき消され、誰にもシオンの言葉は聞こえなかった。

「は!?ふざけんな!ちょっと待て!何であいつは俺よりマシな姿になるんだ!あいつも俺のようにするか!俺も人型の姿にさせろ!」

ルネはシオンも自分と同じ姿にさせられると思っていた。

それなのに、シオンは人間の子供。

ふざけんな。

何で俺だけこんな辱めを受けないといけない。

そう思いルネは怒りをぶつけるが、すぐに言ったこと後悔する羽目になった。

「おい!今私に向かってクソと言ったか!このヤロー!」

'言ってない'

アスターは私の言葉を聞くなり心の中で否定する。

アスターとルネも「そんなこと一言も言ってない」と否定するも、ローズの顔が怖すぎて何も言えなくなる。

魔力も武術も自分達より遥かに劣るのに、どうしてかこの表情をしたローズを見ると誰も何も言えなくなる。

「確かに言いました。私には聞こえました。顔がそう言ってました。ご主人様に向かってこの無礼者め!助けられた恩を忘れるとはこの恥知らずめ!」

アイリーンはローズの言うことが全て正しいと思っているので、全肯定する。

それにルネのことが嫌いなので、この機会にその腐った根性を叩き直してやろうと文句を言う。

「アイリーンも聞こえたのね。私のために怒ってくれてありがとう。あなた以上に私を思ってくれる者はいないわ」

「当然です。ご主人様を傷つける者を怒るのは私の役目です。この愚か者の罰は私にお任せください。きっちり叩き込みますので」

アイリーンの顔は誰も優しく慈愛に溢れた妖精王という顔より、悪党顔に近かった。

それを見たアスターはとうとう主人に顔つきが似てきたなと心を無にして三人のやり取りを眺めていた。

そんなアスターの隣にいたシオンは'……この人たち怖すぎる'と、アイリーンの言葉を聞くなり体が震える。

一体何をするのかと。

シオンは本当にこの者達についていって大丈夫なのかとわからなくなり、今すぐ石を頭にぶつけて気絶したくなる。

「そう?じゃあ、アイリーンに任せるわ。その間に私はシオンの姿を変えるから。頼んだわね」

「はい。お任せください」

アイリーンはさっきの顔から一変して満面の笑みを浮かべる。

「ルネ。わかってると思うけどアイリーンに楯突いたらどうなるかわかるよね?」

私はアイリーンには見えないよう意地の悪い笑みを浮かべながら言う。

'このクソ女!'

ルネはローズをぶん殴りたいほど怒っていたが、契約したためそんなことできるはずもなく、素直に従うしかなかった。

「もちろんです。大人しく反省します」

血管が浮かび上がるほど嫌でしたくなかったが、無理矢理笑顔を作る。

「そう。ならいいわ」

私は勝ち誇った笑みを浮かべ、ルネを馬鹿にし終えるとシオンの方へと近寄る。

後ろでアイリーンがルネにもの凄い罵倒を言っていたが、聞こえないふりをする。

「それじゃあ、シオン。さっさと人間の子供の姿になりましょうか」

「……はい」

目の前の人間の顔が悪魔以上の悪魔の顔つきをしていて、シオンは今この瞬間、自身の中で一番怖い存在が閻魔大王より人間の女になった。

シオンはこの先何があろうとも、絶対にこの人間にだけは逆らわないと決める。

「……うん。これなら人間の子供に見えるわね」

「ありがとうございます」

シオンは本来の姿からは想像もできないほどか弱くて愛らしい姿になった。

190センチあった身長は5歳児に見えるくらいの身長になった。

髪は腰まであった美しい白髪の髪から銀の短髪へと変わる。

瞳の色も透き通るほど美しい水色から金色へと変わる。

誰が見ても冬の王とは気づかない。

「シオン。今日から貴方は雪男の子供って設定よ。バレたら許さないからね」

「ヒェッ……はい」

あまりの怖さに情けない声が出る。

私はそんなシオンを無視して「じゃあ、全員帰るわよ」と山を降りようとするが、アスターに「お嬢様。約束のものは」と言われ足を止める。

「アスター。あのね、ここで食べるの?」

私はアスターの言う約束がすぐに氷の料理だと気づく。

アスターは私の言葉を聞いて周囲を見渡し、確かにここで氷の食べ物を食べるのは自殺行為だとわかり「降りるまで待ちます」とこの世の終わりみたいな顔をする。

'そんなに食べたかったのか?'

食い意地がはってるわー、と呆れながら今度こそ山を降りていく。


山を降り町にくると、アスターはもう一度言おうとしたが、私を見るなりそんなことを言えば殺されると思い開きかけた口を閉じる。

'寒い、寒い、寒すぎる!風呂に入りたい!ルネの能力のお陰で耐えられたが、今は氷の料理など絶対食べたくない!温かい料理が食べたい!'

そう思い、料理の準備をしようとしたそのとき町の人達の会話が聞こえてきた。


「おい。聞いたか?」

「何がだ?」

「隣町の山奥でエルフとダークエルフが争っているらしい」

「それは本当か!?」

「ああ。それを見た奴がいるらしいぞ」

「最悪だな。よりにもよって隣で争うなんて。あの種族達が争ったら毎回山は大変なことになる。隣町の奴らが俺達の山の方に来るかも知れないな。今のうちに対策をたてないとな」

「だな」


私は料理しようとしていた手を止め男達の会話を聞いて予定を変更することにした。

'怖っ!何この顔!え!?なに?こいつらの反応!?これが普通なのか!?'

シオンはローズの顔を見て後ずさる。

「みんな。今すぐ隣町に行くわよ」

私の言葉に全員違う反応をする。

「はい。お嬢様」

アスターはまたかと言う顔をする。

「はい。ご主人様」

アイリーンはどこまでもついていくと嬉しそうな顔を。

「はい。主人」

今度は何をさせられるんだとうんざり顔を。

「……はい」

シオンはわけもわからずとりあえず返事する。

「急ぐわよ。アイリーン。頼むわ」

「お任せください」

私達は山の中に入り、誰もいないのを感じると水の狼に乗って移動した。

山の中を駆け回ること20分。

ようやくエルフとダークエルフが争っている山にきた……が、スピードが早すぎて死にそうになる。

何度振り落とされそうになったことか。

アスターは大丈夫なのかと心配で見たら、さすが主人公。

余裕な顔をしていた。

顔色一つ変えず、イケメン度が上がるのにはムカついた。

私は顔が不細工になるほど大変な思いをしたのに……!
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