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友達

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「新入生代表挨拶、ギルバート・ディモルフォセカ」

「はい」

名前を呼ばれた男子生徒が壇上へと上がる。

'へぇ、一位は魔法学科の人なんだ'

マリアはギルバートの外見を見ていいところの貴族の坊ちゃんみたいだと思う。

背は高く、顔は整っているが、貴族特有の品の良さを感じさせるオーラを纏っていて自分とは真反対の人間だなと、ぼんやりと眺めかた。

長い挨拶を聞くのも面倒で早く終わらないかな、と思っていると一番後ろにいたからか先輩たちの声が聞こえてきた。


「ねぇ、あの子かっこよくない?」

「わかる。仲良くなりたいね」

「新入生代表ってことはあいつが今年の総合1位か。筆記も実技も1位なのか?」

「毎年、順位は校長先生以外知らないからテストがあるまで自分の順位しれないんだよな」

「まぁ、でも暫くはあいつを中心に1年は回るだろうな」

「なぁ、ディモルフォセカって侯爵家の次男じゃないか?長男は確か、王宮魔法騎士団団長だろ?」

「すごい奴が入ってきたな」


マリアは先輩たちの声を聞いてこう思った。

彼の魔法はどんななのだろう。

王宮魔法騎士団団長の弟ともなればきっと強い。

'同世代の魔法使いより強いとよくじいちゃんは言っていたが、実際に見ないことにはわかんないんだよな。でも、魔力量なら私が圧倒的に勝ったな'

全校生徒の魔力量を足してもマリア、一人に勝てない。

魔法学科なら関わる可能性もあったかもしれないが、残念ながら入学したのは戦士学科。

関わることはないとわかるとどうでもよくなり、途中から同じ学科の女子とどうやって仲良くなるか考える。




「続いて校長先生のお話し。全員起立」

マリアは意識を飛ばしていたが司会の声で我に返り慌てて立ち上がる。

「礼。着席」

'ふぅ。危なかった。入学早々目をつけられるとこだった'

着席するなり周囲に気づかれないよう息を吐く。

「初めまして。私がこの学校の校長、ミハエル・ブローディアです」

口調や声は優しいが威厳を感じさせる。

雰囲気も他の先生たちとは違い威圧感はないが圧倒される。

隙があるようで全くない。

一目で他とは格が違うとわかる。

これが大陸魔法協会がつけた番付3位。

マリアは目を輝かせてミハエルを見る。


※※※


「新入生はこれより各自で教室にむかえ。各教室の扉に紙が張り出されてある。そこに名前があったら好きな席に座れ。いいな」

メガネをかけた男が新入生の前に立ち聞こえるように言う。

少し前に入学式は終わり退場した。

まだ、体育館には先輩や先生たちが残っている。

「それじゃあ、解散」

男がそう言うと各自移動していく。

マリアもその流れにそって移動するが、なぜか周囲から注目されていた。

マリアは自分がなぜ注目されているのか理由がわからず変なのと思いながら上へと上がっていく。

1年の教室は5階にある。

学年が上がるたびに教室の階が1個下になる。

「えっと、戦士学科は9~12組だったよな」

学科ごとの定員は100名。

1学年の人数は500人。

クラスは全部で20組で1クラスの人数は25人。

人が多すぎて慣れてないマリアは気持ち悪くて吐きそうにならながら、なんとか自分のクラスを見つける。

「10組か。好きな席なら一番窓際の後ろをとろう」

席は早い者勝ちと先生が言っていた。

マリアは教室に入り、まだ誰もいないとわかると急いで窓際の一番後ろの席を確保する。

「やったね」

最高の席を取られ、先行きいいなと喜ぶ。

椅子に座り、足をぶらぶら揺らしながら早く誰でもいいから来ないかなとクラスメイトをまつ。

少しするとチラホラと数人入ってくるが、誰もマリアの近くに座ろうとしない。

'女子こないな。早くこないかな'

入ってきたのは全員男子で女子がまだこないことにガッカリする。

「おい。隣いいか?」

今のは私に言ったのか、と思いながら顔を上げると赤髪赤目の男がいた。

わざわざ聞かなくても勝手に座ればいいのにと思いながらも聞かれたので「どうぞ」とちゃんと返事をする。

「そうか」

男は許可を得るとドカッと椅子に座る。

「お前、名前は?」

「人に名前を聞くならあんたから名乗りなよ」

上からの物言いや顔は整っているが目つきが悪いからかあまり印象は良くないが、嫌な奴ではないんだろうなと雰囲気から感じる。

「確かにそうだな。悪い」

男は素直に謝る。

「俺はアシル・グロリオサだ。お前は」

名乗ったから今度は答えてくれるよな、とアシルは目で訴える。

「私はマリア」

「マリアか。これからよろしくな」

アシルは手を出し握手を求める。

「こちらこそよろしく」

初めて同世代の子と友達になれ嬉しくてマリアはアシルの手を握る。

自己紹介している間に全員席に座っていた。

マリアはこの子達がこれから4年間一緒のクラスメイトか、と顔を確認しているとあることに気づいた。

「あれ?女子が誰もいない」

この教室には自分以外の女子が誰もいなくて不思議でたまらない。

どうなってるんだと思っているとアシルが何言ってんだみたいな顔をしながらこう言った。

「当然だろ。戦士学科の女子はお前だけなんだから」

「……?」

アシルの言っていることが理解できず、マリアは首を傾げる。

「お前、まさか知らなかったのか?」

マリアの表情から察して同情する。

「まぁ、その、なんだ、気にするな。女子はいなくても俺がいるし……」

何言ってんだ俺!、と言い終わってから失言したことに気づく。

慰めようとしたが、人を慰めるなどしたことがなく焦って変なことを言ってしまう。

このままでは変人認定されると焦り、軽く咳払いしてから言い直す。

「まぁ、あれだよ、あれ。ここには夢を叶えにきたんだろ。女子がいなくても関係ねぇよ。俺たちは俺たちの夢のために頑張るんだから……だから、そう、がんばろうぜ」

「うん。そうだね。ありがとう。お陰でここにきた理由を思い出したよ」

そう、ここには遊びにきたのではない。

最強の魔法使いになるためにきた。

だから女子がいなくても問題はない。

そう言い聞かせるが、どうしても夢にまで見た楽しい学校生活の終了の音が頭に鳴り響き気を失いそうになる。

「ハハッ。私の夢の学校生活が……」

泣きいのを必死に我慢して担任の話しを聞く。

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