上 下
68 / 81

決闘

しおりを挟む

決闘当日。

「ブローディア公爵家の皆様がお見えになりました」

数十人の騎士を引き連れ登場する。

全員が本格的に潰す気でいることを察する。

だが、一番驚いたのは当主のサルビアまでも本来の格好ではなく戦闘用の服を着ていて皆目を見張る。

サルビアが戦うわけではないのにあんな格好をするとは、それほどシルバーライス家に怒りを覚えているのだろうと貴族達はそう勘違いした。

それでも、先に来ていたシルバーライス家だけはブローディア家の雰囲気に呑まれることなく堂々としていた。

自分達の態度に貴族達は不審を持ち始め、勝つ気でいるのかと哀れみの目をおくる。


ブローディア家が登場する少し前。

「シルバーライス家の皆様がお見えになりました」

従者の一人がそう叫ぶと貴族達はシルバーライス家の方に目を向ける。

その瞳の奥にはシルバーライス家を嘲笑っていた。

登場したのは三人で騎士が見つからなかったのだと瞬時に理解する。

そうなると戦うのはデルフィニウム。

あんな女が母親何て可哀想にという目でデルフィニウムをみる。

もし、母親がシレネでなければ上にいけただろうにと。

今日来た貴族達はこれまでジギタリスの寵愛を受けやりたい放題やっていたシレネの落ちていく姿を見るためだった。

だが、貴族達は困惑した。

きっとブローディア家との決闘に怯えていると思っていたのに、いつも以上に着飾り堂々と余裕の笑みを浮かべていた。

あのブローディア家との決闘でここまで余裕の態度を取れるのは勝つ算段があるのではないかと。

ある者は身の程知らずと馬鹿にし、ある者はどんな作戦か興味を持ち、ある者はブローディア家が負けるのかもしれないと笑い話にしていた。

だが、貴族達は全員シルバーライスが勝つことはないと心の底ではわかっていた。

そうして、暫く笑いの種にされているとブローディア家が登場した。



「国王陛下、王妃陛下、王太子殿下がお見えになりました」

貴族達は全員席から立ち三人に頭を下げる。

国王は近くにいた臣下に指示を出し決闘を始めるよう指示を出す。

「では、これより決闘を始める。両家の代表者は前に」

臣下がそう叫ぶとデルフィニウムが剣を手に持ち前に出る。

すぐにデルフィニウムの手の剣がデザストルであるとサルビアは気づいた。

その少し後に一人の貴族が「あの剣はデザストルじゃないか」と呟くとその呟きを耳にした貴族達が騒ぎ始めた。

「デザストルとは何だ」

王妃陛下が近くの臣下に尋ねる。

「呪われた剣のことでございます。デザストルの前ではどんな強者も相手にならないと死ぬと言われています」

臣下の言葉に国王は顔が険しくなり、ロベリアは喜びそうになるのを何とか必死に耐える。

ゴンフレナはマーガレットを心配そうな顔で見つめる。

全員がブローディア家が負けるかもしれないと本気で思い、その瞬間に立ち会えることを喜んでしまう。

殆どの者がブローディア家が負けることを望み始めた。

だがそんな中ブローディア家は誰一人慌てることなく堂々とシルバーライス家を見つめていた。

マンクスフドとデルフィニウムの戦いが早く見たいと皆が思っているなか、剣を腰にさし前に出たサルビアを見て全員が目をこれでもかと開き息をするのを忘れた。

国一、大陸一、二の強さを誇るサルビアが出るとは夢にも思っていなかった。

これにはアネモネも驚き勝てるかどうか不安になる。

一番最初に我に返った臣下が「それでは両者剣を抜いてください」と。

二人は臣下の言葉で剣を抜き構える。

「この決闘は相手が降参するか死ぬまで終わりません。それでは、始め」

ドンッと大きな音が鳴り決闘開始の合図がなる。

貴族達はサルビアとデザストルどっちが勝つか賭けをし始めた。

「ブローディア公爵。私は貴方を殺したくありません。どうか、降参してくださりませんか」

デルフィニウムが舐めた口調で上からものをいう。

「おい、クソ餓鬼。そう言うことは自分の力で上に立ってから言うものだ。そんな剣に頼らなければ何もできない餓鬼が調子に乗るなよ」

ジギタリスとシレネに腹を立てていたが、代理人には関係ないと殺すのだけは辞めておこう思ったが、今の一言で殺すことに決めた。

デルフィニウムはその言葉にむかついたが、どうせ勝つのは自分だからと余裕こいていたが、パキンッと何が折れる音がしたと思ったらお腹に痛みが走り直ぐに背中にも痛みが走った。

何が起きたのだと理解しようとしたが、痛みでそれどころではなかった。

「……おい、いま何が起きたんだ」

一人の貴族がそう言うが誰も何が起きたか理解できていなかった。

二人が何か話していると思ったら、急にサルビアの姿が見えなくなった。

どこにいったと探していたらパキンッと音がしたと思ったらデルフィニウムが壁に叩きつけられていた。

その光景だけで何が起きたかは明白だったが、あまりにも信じられない光景に誰一人信じたくなかった。

呪われた剣として有名な剣がたった一瞬で折られたのだから。

サルビアの強さが自分達の想像を遥かに超えるほど強いということを。

ブローディア家が負けると思った自分達の浅はかさに、どれだけ能天気な頭だったのかを思い知らされた。

「さて、死ぬ覚悟はできているな。最後に言いたいことはあるか」

サルビアはデルフィニウムの喉元に剣を向ける。

デルフィニウムは自分が負けたことが受け入れられず放心して何も言えない。

「……わかった。なら死ね」

降参する最後のチャンスを与えたがデルフィニウムは何も言わなかった。

なら、文句はないだろうと剣を上に上げふり下ろそうとすると「……負けを認めます」と小さな声で言いサルビアは剣を止める。

デルフィニウムの声が聞こえた臣下は「そこまで。勝負あり。勝者、ブローディア家」と高らかに宣言する。

貴族達始まる前はサルビアが負けるかもしれないと期待していたが、いざ始まるとたった数秒で決着がついた。

それも圧倒的な力の差をみせつけて。

貴族は何故サルビアが出てきたかわからなかったが、今ならわかる。

警告しているのだ。

私の大切な人達を傷つけるなら次にこうなるのはお前達だと。

貴族達はこれまでブローディア家に何をしても多少は大丈夫だろうと舐めてかかっていたが、これからはそんな態度をするのは絶対にやめようと誓う。

今までの非礼を詫びた方がいいのかとも考え始める。

「デルフィニウム!」

勝者が決まりサルビアがマーガレット達の元に帰ると急いで息子の傍に駆け寄るシレネ。

「血が出てるわ。急いで手当てしないと。そこの者手を貸しなさい」

シレネは近くにいた王宮に仕える騎士達に声をかけるが、騎士達はその声を無視する。

騎士達が仕えているのは国王陛下であってシレネではない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。

▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ...... どうしようΣ( ̄□ ̄;) とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!! R指定は念のためです。 マイペースに更新していきます。

私を虐げてきた妹が聖女に選ばれたので・・・冒険者になって叩きのめそうと思います!

れもん・檸檬・レモン?
ファンタジー
私には双子の妹がいる この世界はいつの頃からか妹を中心に回るようになってきた・・・私を踏み台にして・・・ 妹が聖女に選ばれたその日、私は両親に公爵家の慰み者として売られかけた そんな私を助けてくれたのは、両親でも妹でもなく・・・妹の『婚約者』だった 婚約者に守られ、冒険者組合に身を寄せる日々・・・ 強くならなくちゃ!誰かに怯える日々はもう終わりにする 私を守ってくれた人を、今度は私が守れるように!

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

三十路の魔法使い

高柳神羅
ファンタジー
 ずっと想いを寄せていた会社の上司に思い切って告白した六道春。しかし想い人から返ってきたのは、八年もの間付き合っている恋人がいるという告白だった。  失恋した春は自棄酒を呷りながら自宅への道を歩く。その途中で不自然に凍っている水溜まりを見つけ、腹いせにその氷を踏み砕く。すると急に意識が混濁して、次に覚醒した時には彼は見知らぬ場所に立っていた。  春を出迎えたのはアルカディアと名乗る酒飲みの女神。彼はアルカディアに魔法の力を授けられ、追い出されるように異世界ツウェンドゥスへと降り立った。魔法が当たり前のように存在するツウェンドゥスでは、魔法を使えることなど自慢でも何でもない──はずなのだが、春が授かった魔法の力は、他の魔法使いの力を遥かに凌駕するとんでもないものだった。  これは、女神に最強の魔法の力を授けられたおっさんが異世界生活を満喫しながら時々世界の危機を救ったりする、日常と冒険の物語である。

わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました

ぺきぺき
ファンタジー
ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。 大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。 ー--- 全5章、最終話まで執筆済み。 第1章 6歳の聖女 第2章 8歳の大聖女 第3章 12歳の公爵令嬢 第4章 15歳の辺境聖女 第5章 17歳の愛し子 権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。 おまけの後日談投稿します(6/26)。 番外編投稿します(12/30-1/1)。 作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。

追放された聖女の悠々自適な側室ライフ

白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」 平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。 そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。 そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。 「王太子殿下の仰せに従います」 (やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや) 表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。 今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。 マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃 聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。

処理中です...