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ヘリオトロープ・クラーク
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「お食事の準備ができていますが、どうされますか」
お風呂を終え着替え終えると一人の使用人が声をかける。
「頂くわ」
昨日の朝から何も食べてないことを思い出すと無性にお腹が空いてくる。
「お部屋でお食べになりますか」
「そうね、そうするわ。悪いけど部屋まで運んでくれる?」
「はい。かしこまりました」
使用人達は部屋を出ていき料理をとりに行く。
トントントン。
使用人達がでて直ぐに扉が叩かれる。
「お嬢様。入ってもよろしいですか」
「ええ、大丈夫よ」
「お嬢様。先程神官様が到着しました。代わりにお出迎えし、昨日のことを話し出迎えられない状態であることを伝えておきました。神官様から言伝があります。こちらのことは心配せず、しっかりお休みになってください、と」
「そう。マクス、本当にありがとう。貴方がいてくれて本当によかった」
ずっと貼り付けた笑みをしていたマーガレットの久しぶりの素の笑みをみて「ああ、漸く本来のお嬢様に戻った」と嬉しくなる。
'ああ、空腹のときにご飯を食べると物凄く美味しく感じるのね'
感動のあまり泣きそうになる。
どんどん口に料理を運んでいく。
'おかわりしていいかな'
お腹好きすぎていつもの量では足りない。
「お嬢様。昨日の分もしっかり食べて下さいね」
マンクスフドが料理をテーブルの上にどんどん置いていく。
使用人達は流石に多すぎではないかと心配するが、マーガレットは心の中で「マクス、ありがとう」と感謝する。
「お嬢様。これからどうされますか」
食事を終えると予定を聞かれる。
「神官様に会いにいくわ。お礼を直接言わないといけないし。ついてきてくれる」
「はい。もちろんお供させていただきます」
「ありがとう。で、神官様は今どこにいらっしゃるの?」
「さぁ?」
いい笑顔で首を傾げる。
「えっ?知らないの?」
「はい。挨拶した後は部下に任せてずっとお嬢様の傍にいたのでわかりません。まぁ、でも多分今は町を浄化しているはずですから町の中心にいるんじゃあないですか?」
さっきとは逆の方に首をこてんと傾ける。
周りにいた使用人達はマンクスフドの顔の良さに目を奪われる。
もしここにマンクスフドの友人達がいたら「なにいい歳した大人がかわいこぶってるんだ」とドン引きしていただろう。
まぁいつものことだからマーガレットは何とも思わないが、周りの反応をみてモテるんだろうなと三度目の人生でようやく気づく。
「じゃあ、とりあえず町の中心に行ってみましょうか」
「はい、お嬢様」
町の中心に近づいていくたび、空気がどんどん清らかになっていく。
ーーこれが浄化、神官の力なのか。
初めて生で感じる神官の力に体が震える。
神官でこれほどの力を持つのなら聖女はどれほどすごい力になるのか。
聖女を味方につければ復讐を有利に運べるが、聖女の魂を持った人が生まれてきているのかわからない。
せめて代理人だけでも早く見つかったら接触して上手く味方につける方法も考えられるのに……
とりあえず今は神官にいい印象を与えてもしものとき味方になってくれるよう仲良くなるしかない。
マーガレットは頭の中で仲良くなる算段を立てていく。
「あの人が歴代最高と呼ばれる神聖力を宿した神官、ヘリオトロープ」
一人道の真ん中に立つ男をみてそう呟く。
確かに神官の中でも別格の力を持っている。
昔、一度だけ神殿に訪れたことがあるので何人もの神官に会ったことがあるからわかる。
神聖力が神官一人分の力を遥かに超えている。
神聖力がヘリオトロープの体を纏うように美しく輝き周りの空気を浄化していく。
泥のような腐った匂いから澄んだ空気に変わり、胸いっぱいに空気を吸い込む。
町を覆うようにかけられた呪術が少しずつ剥がれていくのを感じる。
後もう少しで解けるというのが感覚でわかる。
空を見上げると、何かが崩れていくのが見えた。
ーーあれは、一体なに?
首を傾げそれを眺めていると「お嬢様。どうかされましたか」と声をかけられる。
「あれは一体何かしら」
崩れていく何かを指差す。
「あれですか?……すみません。どれですか?」
マンクスフドはマーガレットが何のことを言っているのかわからず首を傾げる。
'え?もしかしてマクスには見えてないの?'
マーガレットの目にはあれがはっきり見えている。
この町と空の間に結界みたいなのが張り巡らされ、それが大きな穴を開けて消えていくのが。
こんなはっきりマーガレットの目には見えているのに、どうして他の人には見えないのか。
どうして自分だけに見えるのか。
わからないことが怖かった。
「いや、気のせいだったわ。何でもないから気にしないで」
「わかりました」
マーガレットが気にしなくていいというので、わかったと頷くが何かあったのではともう一度空を見上げるも、何も見えずやっぱり気のせいだったのか、と無理矢理納得する。
'今までは見えなかったのに、急に見えるようになったのは……'
ヘリオトロープを見る。
考えられる理由としては神官の力、神聖力が最も可能性が高いが、自分だけに見えているため違う可能性もある。
今は考えても仕方ない。
この件は後回しにしよう。
町の浄化が完全に終わり、呪術で覆われていた町はヘリオトロープのお陰で清められた。
結界も浄化が終わると同時に跡形もなく消えた。
ヘリオトロープの体を纏っていた美しい光がどんどん消えていく。
体の力を抜き一息つくとヘリオトロープの部下達が「お疲れ様です」と近づきタオルや水を渡す。
余程喉が乾いていたのか一気に飲み干して礼を言う。
バチッ。
ヘリオトロープが顔を上げた瞬間目が合うと、花のような愛らしい笑みを浮かべ微笑まれた。
ヘリオトロープは部下達から離れマーガレットの前まで来ると美しい礼をして名を名乗る。
「初めまして。私はヘリオトロープ・クラークと申します」
お風呂を終え着替え終えると一人の使用人が声をかける。
「頂くわ」
昨日の朝から何も食べてないことを思い出すと無性にお腹が空いてくる。
「お部屋でお食べになりますか」
「そうね、そうするわ。悪いけど部屋まで運んでくれる?」
「はい。かしこまりました」
使用人達は部屋を出ていき料理をとりに行く。
トントントン。
使用人達がでて直ぐに扉が叩かれる。
「お嬢様。入ってもよろしいですか」
「ええ、大丈夫よ」
「お嬢様。先程神官様が到着しました。代わりにお出迎えし、昨日のことを話し出迎えられない状態であることを伝えておきました。神官様から言伝があります。こちらのことは心配せず、しっかりお休みになってください、と」
「そう。マクス、本当にありがとう。貴方がいてくれて本当によかった」
ずっと貼り付けた笑みをしていたマーガレットの久しぶりの素の笑みをみて「ああ、漸く本来のお嬢様に戻った」と嬉しくなる。
'ああ、空腹のときにご飯を食べると物凄く美味しく感じるのね'
感動のあまり泣きそうになる。
どんどん口に料理を運んでいく。
'おかわりしていいかな'
お腹好きすぎていつもの量では足りない。
「お嬢様。昨日の分もしっかり食べて下さいね」
マンクスフドが料理をテーブルの上にどんどん置いていく。
使用人達は流石に多すぎではないかと心配するが、マーガレットは心の中で「マクス、ありがとう」と感謝する。
「お嬢様。これからどうされますか」
食事を終えると予定を聞かれる。
「神官様に会いにいくわ。お礼を直接言わないといけないし。ついてきてくれる」
「はい。もちろんお供させていただきます」
「ありがとう。で、神官様は今どこにいらっしゃるの?」
「さぁ?」
いい笑顔で首を傾げる。
「えっ?知らないの?」
「はい。挨拶した後は部下に任せてずっとお嬢様の傍にいたのでわかりません。まぁ、でも多分今は町を浄化しているはずですから町の中心にいるんじゃあないですか?」
さっきとは逆の方に首をこてんと傾ける。
周りにいた使用人達はマンクスフドの顔の良さに目を奪われる。
もしここにマンクスフドの友人達がいたら「なにいい歳した大人がかわいこぶってるんだ」とドン引きしていただろう。
まぁいつものことだからマーガレットは何とも思わないが、周りの反応をみてモテるんだろうなと三度目の人生でようやく気づく。
「じゃあ、とりあえず町の中心に行ってみましょうか」
「はい、お嬢様」
町の中心に近づいていくたび、空気がどんどん清らかになっていく。
ーーこれが浄化、神官の力なのか。
初めて生で感じる神官の力に体が震える。
神官でこれほどの力を持つのなら聖女はどれほどすごい力になるのか。
聖女を味方につければ復讐を有利に運べるが、聖女の魂を持った人が生まれてきているのかわからない。
せめて代理人だけでも早く見つかったら接触して上手く味方につける方法も考えられるのに……
とりあえず今は神官にいい印象を与えてもしものとき味方になってくれるよう仲良くなるしかない。
マーガレットは頭の中で仲良くなる算段を立てていく。
「あの人が歴代最高と呼ばれる神聖力を宿した神官、ヘリオトロープ」
一人道の真ん中に立つ男をみてそう呟く。
確かに神官の中でも別格の力を持っている。
昔、一度だけ神殿に訪れたことがあるので何人もの神官に会ったことがあるからわかる。
神聖力が神官一人分の力を遥かに超えている。
神聖力がヘリオトロープの体を纏うように美しく輝き周りの空気を浄化していく。
泥のような腐った匂いから澄んだ空気に変わり、胸いっぱいに空気を吸い込む。
町を覆うようにかけられた呪術が少しずつ剥がれていくのを感じる。
後もう少しで解けるというのが感覚でわかる。
空を見上げると、何かが崩れていくのが見えた。
ーーあれは、一体なに?
首を傾げそれを眺めていると「お嬢様。どうかされましたか」と声をかけられる。
「あれは一体何かしら」
崩れていく何かを指差す。
「あれですか?……すみません。どれですか?」
マンクスフドはマーガレットが何のことを言っているのかわからず首を傾げる。
'え?もしかしてマクスには見えてないの?'
マーガレットの目にはあれがはっきり見えている。
この町と空の間に結界みたいなのが張り巡らされ、それが大きな穴を開けて消えていくのが。
こんなはっきりマーガレットの目には見えているのに、どうして他の人には見えないのか。
どうして自分だけに見えるのか。
わからないことが怖かった。
「いや、気のせいだったわ。何でもないから気にしないで」
「わかりました」
マーガレットが気にしなくていいというので、わかったと頷くが何かあったのではともう一度空を見上げるも、何も見えずやっぱり気のせいだったのか、と無理矢理納得する。
'今までは見えなかったのに、急に見えるようになったのは……'
ヘリオトロープを見る。
考えられる理由としては神官の力、神聖力が最も可能性が高いが、自分だけに見えているため違う可能性もある。
今は考えても仕方ない。
この件は後回しにしよう。
町の浄化が完全に終わり、呪術で覆われていた町はヘリオトロープのお陰で清められた。
結界も浄化が終わると同時に跡形もなく消えた。
ヘリオトロープの体を纏っていた美しい光がどんどん消えていく。
体の力を抜き一息つくとヘリオトロープの部下達が「お疲れ様です」と近づきタオルや水を渡す。
余程喉が乾いていたのか一気に飲み干して礼を言う。
バチッ。
ヘリオトロープが顔を上げた瞬間目が合うと、花のような愛らしい笑みを浮かべ微笑まれた。
ヘリオトロープは部下達から離れマーガレットの前まで来ると美しい礼をして名を名乗る。
「初めまして。私はヘリオトロープ・クラークと申します」
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