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アイリス
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「調べてもらいたい人物がいる」
屋敷から誰にも気づかれないよう細心の注意をはらって情報屋の店にきた。
男に公爵家の娘だとバレないよう深くフードを深く被る。
ドレスも平民が着るものにした。
「お嬢ちゃん。ここは君のような……」
子が来るようなところじゃない、と続けようとしたが、それを言う前にマーガレットは大金を机の上に置く。
「カラントという男を見つけ調べて欲しい」
フェイスフルの名を言わなかったのは、マーガレットの記憶が正しければその名はカラントが騎士団長になってから与えられたもの。
その前の性は知らない。
だがら、名しか言わなかった。
もし情報屋がこれくらいの情報で見つけられないのなら、その程度のレベルでこれ以上頼むことはないと判断できる。
これからの復讐にカラントは必要だが、それと同時にこの情報屋が使えるかテストするとうい目的もあった。
「わかりました」
先程とは打って変わり礼儀正しくする。
男はマーガレットを客と認めたのだ。
「なるべく早くお願いするわ」
「はい、お任せください。ご連絡方法はどうされますか」
客によって連絡方法を指定される時があるので念のため確認した。
「この町には大きな鐘があるわ。それを七回鳴らしなさい。そしたらここに私が来るから」
鐘は町の中にいればどこからでも聞こえるほど大きく鳴る。
屋敷にいても確実にこの方法なら誰にも知られず、マーガレットだけがその意味を知ることができる。
「わかりました」
「じゃあ頼んだわよ」
そう言うとマーガレットは男の返事も聞かずに店から出て行く。
「久しぶりの上客だな」
舌舐めずりをしてマーガレットの後ろ姿を見つめる。
態度は上からでむかつきはするが、金払いは今までの客の中で断トツだった。
長い付き合いにするためにも、この仕事を完璧にこなさなければならない。
「ジーク、ローガン、仕事だ。それも、とびっきりの上客だ。早くこい」
「何だよ、兄貴。もう少し寝かせてくれよ」
二階から細身の男が欠伸をしながら降りてくる。
「ジーク。ローガンはどうした」
呼んだのにローガンだけ降りてこない。
どこかに出かけているのか。
「まだ寝てるよ」
「起こしてこい」
「えー、やだよ。めんどく……今すぐ起こしてきます」
男の圧が半端なく急いでローガンを起こしに行く。
「あの客とこの人物は一体どういう関係なんだろな」
長年情報屋として働いている男はこの二人の関係があまり良いものではないと直感で気づいていた。
受けた以上は完璧にこなすが、果たして本当にこの二人を引き合わせていいのだろうかと心配になる。
「吉とでるか、凶とでるか」
「そろそろ戻らないと気づかれるわね」
マーガレットは店を出ると急いで屋敷まで戻る。
「マーガレット。こんなところにいたのかい」
サルビアが声をかける。
「お父様。どうかされましたか?」
「いや、少しマーガレットの姿が見えなくて町にでも行ったのかと心配しただけだ」
「町に出かけるときは声をかけてから行くと約束したではありませんか。今日は天気が良くて気持ちがよかったので散歩をしたり、日にあたったりしていたのです。心配をかけてしまい、ごめんなさい」
眉を下げしゅんと悲しそうな顔をする。
マーガレットは今まで誰にも嘘をついたことがなく上手くできるか心配だったが、驚くほど上手くつけたことに内心驚いていた。
それと同時に悲しくなった。
'復讐のためなら私も大切な人を騙せるのね'と。
「気にしなくていい。私の方こそせっかくのいい気分を台無しにしてしまって悪かった。お詫びと言ったらなんだが、美味しいスイーツを買ったんだ。一緒に食べないか」
サルビアは大のスイーツ好き。
屋敷からでるとほぼ毎回スイーツを買って帰ってくる。
もちろんこの屋敷で働いている料理人達も毎日スイーツは作る。
「はい。食べたいです」
スイーツを食べ終わりサルビアが仕事に戻る。
カトレアはマーガレットと二人でお茶を飲んでいるとふと思い出したかのように話し出す。
「マーガレット、先程アイリスからの手紙が届いてね、明後日こちらに来られるそうよ。どんなドレスになるか今から楽しみね」
「本当ですか。こんなに早くきてくださるとは思っていませんでした」
本当にそう思っていた。
早くても一週間はかかると。
「私もここにくるのはもう少し先かと思ってたのだけど、昨日使いのものを出したらすぐにここに来ようとしてたらしいけど、明日大事な用があるからと皆から止められて明後日になったらしいわ」
「もしかして、無理な頼みを私はしてしまったのでしょうか」
カトレアはマーガレットの頭を優しく撫でる。
「マーガレットの為に無理をしようとしているのは確かね。だから、それを受け入れてくれたアイリスに感謝しないとね」
「はい」
ああ、本当にその通りだ。
アイリスには感謝してもしきれない。
この借りはきっちり返さないといけない。
「奥様。お嬢様。この度ドレスのご依頼を我が社にしてくださり誠に感謝いたします」
アイリスは二人に美しい礼をする。
「こちらこそありがとう。娘の復帰パーティーだからぜひ貴方にお願いしたかったの。無理を言って悪かったわ」
「奥様、気にしないでください。今の私があるのは全て旦那様と奥様のお陰です。奥様のご依頼とあるなら例え王宮からのご依頼を断ってでもこちらを優先させます」
カトレアには感謝してもしきれない。返しきれない程の恩がある。
「ありがとう。さっそく娘のドレスをお願いしてもいいかしら」
「畏まりました。では、お嬢様まず初めにサイズを測らせていたます。どうぞ、こちらに」
マーガレットは返事をしアイリスの前に立つとお礼を言う。
「アイリスさん。今回は無理なお願いを聞いていただき本当にありがとうございます。今日はよろしくお願いします」
美しい笑みを浮かべるマーガレットに一瞬で虜にされた。
自分が作った最高のドレスを着て欲しい、とそう思った。
「はい。お任せください。最高のドレスをお嬢様にお贈りします」
「はい。楽しみにしてますね」
「では、手を横に上げてください」
アイリスの指示に従いサイズを測っていく。
「ありがとうございます。もう、おろしてもらった大丈夫です。では、次にどんなドレスがいいか決めましょう。一応何着か持ってきたのですが、こういう感じがいいとかありますか」
使用人達がマーガレットがサイズを測っている時に部屋に運んでいた。
「あまり胸元が開いてないのがいいです」
今の自分ならあまり気にしないが、昔の自分はそういったドレスを好まなかった。
一気に変わり過ぎると怪しまれるので気を付けないといけない。
使用人達が運んできたドレスはどれも胸元が開いているので着るわけにはいかない。
「わかりました。では、こういう感じはどうでしょうか」
アイリスがドレスではなく一枚の絵を見せる。
まだその絵は未完成だが、まだ誰も着たことない新しいデザイン。
近い将来社交界で流行するデザインのドレスが描かれていた。
「実は、奥様からご依頼を受けてお嬢様を思い浮かべて書いたものなんです」
「いいわ。すごくいい。きっとマーガレットによく似合うわ。マーガレットもそう思うでしょう」
「はい。とても気に入りました。これがいいです」
「わかりました。では、パーティーに間に合うよう今から作り始めます。本日はお招きいただきありがとうございました」
二人に褒められたアイリスは幸せな顔をしてお礼を言い、慌ただしく帰っていく。
「気に入ったドレスが見つかってよかったわね」
「はい。お母様、本当にありがとうございます」
「気にしなくていいのよ。貴方の幸せが私の幸せなのだから」
屋敷から誰にも気づかれないよう細心の注意をはらって情報屋の店にきた。
男に公爵家の娘だとバレないよう深くフードを深く被る。
ドレスも平民が着るものにした。
「お嬢ちゃん。ここは君のような……」
子が来るようなところじゃない、と続けようとしたが、それを言う前にマーガレットは大金を机の上に置く。
「カラントという男を見つけ調べて欲しい」
フェイスフルの名を言わなかったのは、マーガレットの記憶が正しければその名はカラントが騎士団長になってから与えられたもの。
その前の性は知らない。
だがら、名しか言わなかった。
もし情報屋がこれくらいの情報で見つけられないのなら、その程度のレベルでこれ以上頼むことはないと判断できる。
これからの復讐にカラントは必要だが、それと同時にこの情報屋が使えるかテストするとうい目的もあった。
「わかりました」
先程とは打って変わり礼儀正しくする。
男はマーガレットを客と認めたのだ。
「なるべく早くお願いするわ」
「はい、お任せください。ご連絡方法はどうされますか」
客によって連絡方法を指定される時があるので念のため確認した。
「この町には大きな鐘があるわ。それを七回鳴らしなさい。そしたらここに私が来るから」
鐘は町の中にいればどこからでも聞こえるほど大きく鳴る。
屋敷にいても確実にこの方法なら誰にも知られず、マーガレットだけがその意味を知ることができる。
「わかりました」
「じゃあ頼んだわよ」
そう言うとマーガレットは男の返事も聞かずに店から出て行く。
「久しぶりの上客だな」
舌舐めずりをしてマーガレットの後ろ姿を見つめる。
態度は上からでむかつきはするが、金払いは今までの客の中で断トツだった。
長い付き合いにするためにも、この仕事を完璧にこなさなければならない。
「ジーク、ローガン、仕事だ。それも、とびっきりの上客だ。早くこい」
「何だよ、兄貴。もう少し寝かせてくれよ」
二階から細身の男が欠伸をしながら降りてくる。
「ジーク。ローガンはどうした」
呼んだのにローガンだけ降りてこない。
どこかに出かけているのか。
「まだ寝てるよ」
「起こしてこい」
「えー、やだよ。めんどく……今すぐ起こしてきます」
男の圧が半端なく急いでローガンを起こしに行く。
「あの客とこの人物は一体どういう関係なんだろな」
長年情報屋として働いている男はこの二人の関係があまり良いものではないと直感で気づいていた。
受けた以上は完璧にこなすが、果たして本当にこの二人を引き合わせていいのだろうかと心配になる。
「吉とでるか、凶とでるか」
「そろそろ戻らないと気づかれるわね」
マーガレットは店を出ると急いで屋敷まで戻る。
「マーガレット。こんなところにいたのかい」
サルビアが声をかける。
「お父様。どうかされましたか?」
「いや、少しマーガレットの姿が見えなくて町にでも行ったのかと心配しただけだ」
「町に出かけるときは声をかけてから行くと約束したではありませんか。今日は天気が良くて気持ちがよかったので散歩をしたり、日にあたったりしていたのです。心配をかけてしまい、ごめんなさい」
眉を下げしゅんと悲しそうな顔をする。
マーガレットは今まで誰にも嘘をついたことがなく上手くできるか心配だったが、驚くほど上手くつけたことに内心驚いていた。
それと同時に悲しくなった。
'復讐のためなら私も大切な人を騙せるのね'と。
「気にしなくていい。私の方こそせっかくのいい気分を台無しにしてしまって悪かった。お詫びと言ったらなんだが、美味しいスイーツを買ったんだ。一緒に食べないか」
サルビアは大のスイーツ好き。
屋敷からでるとほぼ毎回スイーツを買って帰ってくる。
もちろんこの屋敷で働いている料理人達も毎日スイーツは作る。
「はい。食べたいです」
スイーツを食べ終わりサルビアが仕事に戻る。
カトレアはマーガレットと二人でお茶を飲んでいるとふと思い出したかのように話し出す。
「マーガレット、先程アイリスからの手紙が届いてね、明後日こちらに来られるそうよ。どんなドレスになるか今から楽しみね」
「本当ですか。こんなに早くきてくださるとは思っていませんでした」
本当にそう思っていた。
早くても一週間はかかると。
「私もここにくるのはもう少し先かと思ってたのだけど、昨日使いのものを出したらすぐにここに来ようとしてたらしいけど、明日大事な用があるからと皆から止められて明後日になったらしいわ」
「もしかして、無理な頼みを私はしてしまったのでしょうか」
カトレアはマーガレットの頭を優しく撫でる。
「マーガレットの為に無理をしようとしているのは確かね。だから、それを受け入れてくれたアイリスに感謝しないとね」
「はい」
ああ、本当にその通りだ。
アイリスには感謝してもしきれない。
この借りはきっちり返さないといけない。
「奥様。お嬢様。この度ドレスのご依頼を我が社にしてくださり誠に感謝いたします」
アイリスは二人に美しい礼をする。
「こちらこそありがとう。娘の復帰パーティーだからぜひ貴方にお願いしたかったの。無理を言って悪かったわ」
「奥様、気にしないでください。今の私があるのは全て旦那様と奥様のお陰です。奥様のご依頼とあるなら例え王宮からのご依頼を断ってでもこちらを優先させます」
カトレアには感謝してもしきれない。返しきれない程の恩がある。
「ありがとう。さっそく娘のドレスをお願いしてもいいかしら」
「畏まりました。では、お嬢様まず初めにサイズを測らせていたます。どうぞ、こちらに」
マーガレットは返事をしアイリスの前に立つとお礼を言う。
「アイリスさん。今回は無理なお願いを聞いていただき本当にありがとうございます。今日はよろしくお願いします」
美しい笑みを浮かべるマーガレットに一瞬で虜にされた。
自分が作った最高のドレスを着て欲しい、とそう思った。
「はい。お任せください。最高のドレスをお嬢様にお贈りします」
「はい。楽しみにしてますね」
「では、手を横に上げてください」
アイリスの指示に従いサイズを測っていく。
「ありがとうございます。もう、おろしてもらった大丈夫です。では、次にどんなドレスがいいか決めましょう。一応何着か持ってきたのですが、こういう感じがいいとかありますか」
使用人達がマーガレットがサイズを測っている時に部屋に運んでいた。
「あまり胸元が開いてないのがいいです」
今の自分ならあまり気にしないが、昔の自分はそういったドレスを好まなかった。
一気に変わり過ぎると怪しまれるので気を付けないといけない。
使用人達が運んできたドレスはどれも胸元が開いているので着るわけにはいかない。
「わかりました。では、こういう感じはどうでしょうか」
アイリスがドレスではなく一枚の絵を見せる。
まだその絵は未完成だが、まだ誰も着たことない新しいデザイン。
近い将来社交界で流行するデザインのドレスが描かれていた。
「実は、奥様からご依頼を受けてお嬢様を思い浮かべて書いたものなんです」
「いいわ。すごくいい。きっとマーガレットによく似合うわ。マーガレットもそう思うでしょう」
「はい。とても気に入りました。これがいいです」
「わかりました。では、パーティーに間に合うよう今から作り始めます。本日はお招きいただきありがとうございました」
二人に褒められたアイリスは幸せな顔をしてお礼を言い、慌ただしく帰っていく。
「気に入ったドレスが見つかってよかったわね」
「はい。お母様、本当にありがとうございます」
「気にしなくていいのよ。貴方の幸せが私の幸せなのだから」
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