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66.朝の風景
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「ようチョビ、おはよう。元気そうだな」
瀬名恭吾の一日は小さな植物への挨拶から始まる。
「ローズもおはよう。今日も美人だ」
「…………」
俺の一日は年上の恋人の奇行を見守ることから始まる。
瀬名さんの仕事机の上でチョビに仲間が加わって一週間。小さな鉢植えのお隣さんになった小さな瓶詰めの赤いバラは、変色することもなく綺麗なままだ。
瀬名さんはこいつにも名前を付けた。ローズと。めちゃくちゃそのままだ。チョビに声をかける時にはローズにも忘れずに声をかけている。
「……人間に対しても草花に対してもあなたはいつもマメですね」
「植物に声をかけると良く育つって言うだろ」
「成長するタイプの植物はでしょ。こいつらはいくら手をかけたところで育ちようがありません」
「それでいいんだよ。気分だ」
「……そうすか」
本人が楽しいなら止めはしないけど。
お互い各々出掛ける準備をして俺は合間に弁当を用意し、瀬名さんの分と自分の分とをそれぞれ多めの保冷剤とともにランチバッグの中に詰め込む。前は学食を使っていたけれど今は俺も弁当派になった。
先月くらいに瀬名さんが俺用に買ってきた新しいランチバッグセットは、バッグにも弁当箱にもスプーンにもフォークにもどこかしらに一ヵ所ポコっとアヒルのワンポイントが付いている。ちっちゃいアヒルのつぶらな瞳がこっちをじっと見ているせいで同期の奴らにはちょいちょい笑われるのだが、ここで何よりも悔しい事は、アニメっぽ過ぎずリアルっぽ過ぎず絶妙に可愛いアヒルと目が合うこのランチセットが悪くないこと。悪くないどころかもはやお気に入りだ。
準備したランチバッグ二つをダイニングテーブルの上に並べた。寝室では瀬名さんがお着替え中。クローゼットの前にいたこの人の隣に立って、襟元に引っ掛けただけの状態のネクタイに手を伸ばす。
濃紺のストライプのあれ。無難なのだかチャレンジャーなのだかよく分からない贈り物。自分で贈って自分で結んで、恋人の首元をきゅっと締め上げた。
「テカテカしたダッサイ感じのサーモンピンクにすればよかった」
「なぜ」
「嫌がらせに」
「お前の嫌がらせなら受けて立つ」
「カッコつけるとこ間違ってますよ」
どんなにダサいネクタイだとしてもこの人がつければキまるのだろう。
タイからするりと俺が手を離すと瀬名さんはバサリとジャケットを羽織った。ついでにチュッとキスされた。
「…………」
「お礼」
「いらないんですけど」
「ありがたく受け取っとけよ」
朝っぱらから恥ずかしい人だ。目を逸らしたらこの人は笑った。
「なあ。少し急なんだが土曜に、」
「無理です」
「最愛の恋人に対してそんな拒否の強さがあるか」
そう言われても。
「バイトか?」
「いえ、先約が」
「俺よりも大事な?」
「うーん……うん」
「そこは否定しろ」
そう言われても。
「マコトくんがデートなんですよ」
「デ……は? 何考えてんだお前教え子相手に」
「バカなんですか。そうじゃなくてですね。マコトくんが同じクラスの女の子と日曜に初デートなんです」
俺がマコトくんとデートなんかしても仕方がないだろ。休みの日にはダチとチャリンコ漕いで遠出をする田舎の中学生とは違って都会の中学二年生は進んでいるよなという話だ。
喋りながらダイニングに戻るとスーツをビシッと決めた瀬名さんも後ろからついてくる。
「中学入ってからずっと気になってた子がいたらしくて、その子をとうとう映画に誘ったらオッケーもらえたそうです」
「やるじゃねえか。もう告ったのか?」
「いえ、それはまだみたいでして」
「一番ラブコメ度高い時期だな」
「できればデート中に告りたいって言ってました。そのせいかめちゃめちゃ力入れてデートプラン練り込んでましたよ」
何時何分に何駅の何口で待ち合わせするといったところからメモしてあるのを見せてくれた。その後のスケジュールも分刻み。細部にわたって指定済みだった。
それが失敗しがちなデートの典型例の一つであるのはさすがの俺も直感で分かった。似たような事をして翌日泣いていたダチを慰めた経験も二回ほどある。高二の時と高三の時、一人はガチで泣きじゃくり、一人は瀕死レベルの放心状態。いくらなんでも哀れだった。
もうちょっと肩の力抜いて気軽に行ってきてもいいと思うよ。マコトくんにはあの二人のようになってほしくないからそれだけ言っておいた。無事に告白できることを願うばかりだ。
「……それで?」
「はい?」
「マコトくんが日曜にデートすることとお前が土曜に俺と遊ばないことになんの関係があるってんだ」
「言い方がねちっこい」
マコトくんとの約束の方が早かったのだから仕方ない。どちらも断る理由がないなら先に約束した方を俺は取る。
「一緒に下見する約束なんです」
「下見?」
「マコトくんがその子と行く予定のカフェ。一回も入った事がないらしくて、メニューとか注文とか色々不安だから店の下見に付いてきてほしいって前回の家庭教師の時に頼まれたんですよ」
「そいのは学校のダチに頼め」
「からかわれるの恥ずかしいって」
「……マコトくん一人っ子か」
「一人っ子です」
なので気持ちはちょっと分かる。
兄弟と言う遠慮ゼロの関係性を持たない一人っ子の場合、攻撃力百パーセントのからかいや侮辱や罵倒行為をそこまで経験せずに育つ。男子中学生にとって学校とは試練の場所だ。免疫の低い状態で受ける同級生からの揶揄嘲笑その他諸々の冷酷でしかない精神攻撃は男の兄弟がいる子に比べてダメージとなる度合いも深刻。ボコボコだ。
デートが不安だから下見手伝って。同級生にそんな事は死んでも頼みたくないだろう。
「中学生の頃ってびっくりする程デリケートだったりするじゃないですか」
「気持ちは分からなくもねえが……家庭教師と教え子の距離感にしてはちょっと近すぎねえか?」
「んー……俺もそれは迷ったんですよね」
こういう線引きは難しい。家庭教師をやるからには雑談力くらいは必要になるけど、親しさの程度にはどれくらいの強弱をつけるべきなのか。
大学の同期で家庭教師バイトをしている知り合いは一人だけ。そいつに相談してみたところ、派遣元である企業の規則や方針に従っていると。そこの家庭教師派遣会社では、一緒に出掛けたり学校の行事に招待されて参加したりする程度であれば特に問題ないらしい。
俺の家庭教師バイトは生協からの紹介だったため契約は個人でしている。派遣のように禁止事項やら何やらの規定がある訳じゃない。決めるのは俺だ。結果、付き合うことにした。
「教えてる子が女の子ならきっと断ったでしょうけど……男だしまあ、カフェ行くくらいはいいかなって」
頼られて悪い気がしなかったというのもある。俺も一人っ子でチビッ子時代には兄弟への憧れもあったから、頑張り屋な弟が突然できたような気分も少々。好きな子に関する相談事なんてしてもらえるとは思っていなかった。
「悩みすぎて集中できなくなるのも困るし、勉強に身が入る状況を整えるのもたぶん俺の役目かと」
「お前は俺じゃねえ相手にはまあまあそこそこ優しいよな」
「あなたにだって十分優しいじゃないですか」
「打ちのめされた記憶しかねえよ」
ウソつけよ被害者ぶりやがって。毎日顔を合わせているのがこんな大人だとマコトくんの素直な性格が天使のように見えてくる。
「とにかくそういう訳なので土曜は無理です」
「日曜は」
「昼過ぎまで花屋。夜はマコトくんの家庭教師」
「ほら見ろそうやって打ちのめす」
「真面目にバイトやってるだけで打ちのめすとかいちいち言われてちゃこっちだって堪ったもんじゃねえですよ」
平日の朝から面倒な男にぐいっとランチバッグを突きつけた。真新しかった猫のワンポイントもなかなかに馴染んできている。
「……ところで土曜にどこ行くつもりだったんですか?」
「動物園。スナネコ見たいって昨日言ってたろ」
「えっ」
それはちょっと行きたかった。ネットニュースで話題になっていた。先月に生まれたばかりの希少なニャンコが公開されたと。
「来週行こう。ちゃんと予定空けとけよ」
「ええはい、もちろん。空いてなくてもこじ開けます」
「スナネコって言った途端それかよ」
瀬名さんはそんなに可愛くないけど砂漠の天使はとても可愛い。
***
「今日はありがとうございました」
「いやいや、俺ついてきただけだし。雰囲気いい店で良かったね」
「はいっ」
「明日もいっぱい楽しんできな」
「は、はいッ」
少々声が上ずった。大丈夫かマコトくん、こんな調子で。
朝から夕方までデートして十七時からは家庭教師の予約が入っているから明日のマコトくんはややハードスケジュールだ。明日の夕方は物凄く浮かれている見慣れないマコトくんか、物凄くどんより落ち込んでいるマコトくんのどちらかと会うことになりそう。頼むからどうか落ち込んで待っているのだけはやめてくれ。浮かれモードのマコトくんの方がいい。
家の近くまで送り届けるとマコトくんは深々と頭を下げてきた。ヒラヒラ手を振ってそこで別れ、他に寄り道することもなく自宅の最寄り駅に戻った。
瀬名さんはどうせ今ごろ部屋で仕事でもしているに違いない。人相を悪くさせながらパソコンを睨みつけているだろう。
疲れ目必至の社畜系リーマンにはブルーベリーでも買っていってやろうか。ちょっと前に作った甘さ控えめの冷たいブルーベリーシェイクは思ったよりもウケがよかった。
美味しい果物が安く手に入るスーパーに寄っていこう。駅を出て真っ直ぐ足を向けたのは目当てのバス停。目指すはブルーベリー。
「……遥希?」
ところが数歩進んだところで右方向から声をかけられた。
反射で振り向く。そこで見た顔。お互いに動作も止めていた。
「…………ショウくん?」
懐かしい人に会った。
瀬名恭吾の一日は小さな植物への挨拶から始まる。
「ローズもおはよう。今日も美人だ」
「…………」
俺の一日は年上の恋人の奇行を見守ることから始まる。
瀬名さんの仕事机の上でチョビに仲間が加わって一週間。小さな鉢植えのお隣さんになった小さな瓶詰めの赤いバラは、変色することもなく綺麗なままだ。
瀬名さんはこいつにも名前を付けた。ローズと。めちゃくちゃそのままだ。チョビに声をかける時にはローズにも忘れずに声をかけている。
「……人間に対しても草花に対してもあなたはいつもマメですね」
「植物に声をかけると良く育つって言うだろ」
「成長するタイプの植物はでしょ。こいつらはいくら手をかけたところで育ちようがありません」
「それでいいんだよ。気分だ」
「……そうすか」
本人が楽しいなら止めはしないけど。
お互い各々出掛ける準備をして俺は合間に弁当を用意し、瀬名さんの分と自分の分とをそれぞれ多めの保冷剤とともにランチバッグの中に詰め込む。前は学食を使っていたけれど今は俺も弁当派になった。
先月くらいに瀬名さんが俺用に買ってきた新しいランチバッグセットは、バッグにも弁当箱にもスプーンにもフォークにもどこかしらに一ヵ所ポコっとアヒルのワンポイントが付いている。ちっちゃいアヒルのつぶらな瞳がこっちをじっと見ているせいで同期の奴らにはちょいちょい笑われるのだが、ここで何よりも悔しい事は、アニメっぽ過ぎずリアルっぽ過ぎず絶妙に可愛いアヒルと目が合うこのランチセットが悪くないこと。悪くないどころかもはやお気に入りだ。
準備したランチバッグ二つをダイニングテーブルの上に並べた。寝室では瀬名さんがお着替え中。クローゼットの前にいたこの人の隣に立って、襟元に引っ掛けただけの状態のネクタイに手を伸ばす。
濃紺のストライプのあれ。無難なのだかチャレンジャーなのだかよく分からない贈り物。自分で贈って自分で結んで、恋人の首元をきゅっと締め上げた。
「テカテカしたダッサイ感じのサーモンピンクにすればよかった」
「なぜ」
「嫌がらせに」
「お前の嫌がらせなら受けて立つ」
「カッコつけるとこ間違ってますよ」
どんなにダサいネクタイだとしてもこの人がつければキまるのだろう。
タイからするりと俺が手を離すと瀬名さんはバサリとジャケットを羽織った。ついでにチュッとキスされた。
「…………」
「お礼」
「いらないんですけど」
「ありがたく受け取っとけよ」
朝っぱらから恥ずかしい人だ。目を逸らしたらこの人は笑った。
「なあ。少し急なんだが土曜に、」
「無理です」
「最愛の恋人に対してそんな拒否の強さがあるか」
そう言われても。
「バイトか?」
「いえ、先約が」
「俺よりも大事な?」
「うーん……うん」
「そこは否定しろ」
そう言われても。
「マコトくんがデートなんですよ」
「デ……は? 何考えてんだお前教え子相手に」
「バカなんですか。そうじゃなくてですね。マコトくんが同じクラスの女の子と日曜に初デートなんです」
俺がマコトくんとデートなんかしても仕方がないだろ。休みの日にはダチとチャリンコ漕いで遠出をする田舎の中学生とは違って都会の中学二年生は進んでいるよなという話だ。
喋りながらダイニングに戻るとスーツをビシッと決めた瀬名さんも後ろからついてくる。
「中学入ってからずっと気になってた子がいたらしくて、その子をとうとう映画に誘ったらオッケーもらえたそうです」
「やるじゃねえか。もう告ったのか?」
「いえ、それはまだみたいでして」
「一番ラブコメ度高い時期だな」
「できればデート中に告りたいって言ってました。そのせいかめちゃめちゃ力入れてデートプラン練り込んでましたよ」
何時何分に何駅の何口で待ち合わせするといったところからメモしてあるのを見せてくれた。その後のスケジュールも分刻み。細部にわたって指定済みだった。
それが失敗しがちなデートの典型例の一つであるのはさすがの俺も直感で分かった。似たような事をして翌日泣いていたダチを慰めた経験も二回ほどある。高二の時と高三の時、一人はガチで泣きじゃくり、一人は瀕死レベルの放心状態。いくらなんでも哀れだった。
もうちょっと肩の力抜いて気軽に行ってきてもいいと思うよ。マコトくんにはあの二人のようになってほしくないからそれだけ言っておいた。無事に告白できることを願うばかりだ。
「……それで?」
「はい?」
「マコトくんが日曜にデートすることとお前が土曜に俺と遊ばないことになんの関係があるってんだ」
「言い方がねちっこい」
マコトくんとの約束の方が早かったのだから仕方ない。どちらも断る理由がないなら先に約束した方を俺は取る。
「一緒に下見する約束なんです」
「下見?」
「マコトくんがその子と行く予定のカフェ。一回も入った事がないらしくて、メニューとか注文とか色々不安だから店の下見に付いてきてほしいって前回の家庭教師の時に頼まれたんですよ」
「そいのは学校のダチに頼め」
「からかわれるの恥ずかしいって」
「……マコトくん一人っ子か」
「一人っ子です」
なので気持ちはちょっと分かる。
兄弟と言う遠慮ゼロの関係性を持たない一人っ子の場合、攻撃力百パーセントのからかいや侮辱や罵倒行為をそこまで経験せずに育つ。男子中学生にとって学校とは試練の場所だ。免疫の低い状態で受ける同級生からの揶揄嘲笑その他諸々の冷酷でしかない精神攻撃は男の兄弟がいる子に比べてダメージとなる度合いも深刻。ボコボコだ。
デートが不安だから下見手伝って。同級生にそんな事は死んでも頼みたくないだろう。
「中学生の頃ってびっくりする程デリケートだったりするじゃないですか」
「気持ちは分からなくもねえが……家庭教師と教え子の距離感にしてはちょっと近すぎねえか?」
「んー……俺もそれは迷ったんですよね」
こういう線引きは難しい。家庭教師をやるからには雑談力くらいは必要になるけど、親しさの程度にはどれくらいの強弱をつけるべきなのか。
大学の同期で家庭教師バイトをしている知り合いは一人だけ。そいつに相談してみたところ、派遣元である企業の規則や方針に従っていると。そこの家庭教師派遣会社では、一緒に出掛けたり学校の行事に招待されて参加したりする程度であれば特に問題ないらしい。
俺の家庭教師バイトは生協からの紹介だったため契約は個人でしている。派遣のように禁止事項やら何やらの規定がある訳じゃない。決めるのは俺だ。結果、付き合うことにした。
「教えてる子が女の子ならきっと断ったでしょうけど……男だしまあ、カフェ行くくらいはいいかなって」
頼られて悪い気がしなかったというのもある。俺も一人っ子でチビッ子時代には兄弟への憧れもあったから、頑張り屋な弟が突然できたような気分も少々。好きな子に関する相談事なんてしてもらえるとは思っていなかった。
「悩みすぎて集中できなくなるのも困るし、勉強に身が入る状況を整えるのもたぶん俺の役目かと」
「お前は俺じゃねえ相手にはまあまあそこそこ優しいよな」
「あなたにだって十分優しいじゃないですか」
「打ちのめされた記憶しかねえよ」
ウソつけよ被害者ぶりやがって。毎日顔を合わせているのがこんな大人だとマコトくんの素直な性格が天使のように見えてくる。
「とにかくそういう訳なので土曜は無理です」
「日曜は」
「昼過ぎまで花屋。夜はマコトくんの家庭教師」
「ほら見ろそうやって打ちのめす」
「真面目にバイトやってるだけで打ちのめすとかいちいち言われてちゃこっちだって堪ったもんじゃねえですよ」
平日の朝から面倒な男にぐいっとランチバッグを突きつけた。真新しかった猫のワンポイントもなかなかに馴染んできている。
「……ところで土曜にどこ行くつもりだったんですか?」
「動物園。スナネコ見たいって昨日言ってたろ」
「えっ」
それはちょっと行きたかった。ネットニュースで話題になっていた。先月に生まれたばかりの希少なニャンコが公開されたと。
「来週行こう。ちゃんと予定空けとけよ」
「ええはい、もちろん。空いてなくてもこじ開けます」
「スナネコって言った途端それかよ」
瀬名さんはそんなに可愛くないけど砂漠の天使はとても可愛い。
***
「今日はありがとうございました」
「いやいや、俺ついてきただけだし。雰囲気いい店で良かったね」
「はいっ」
「明日もいっぱい楽しんできな」
「は、はいッ」
少々声が上ずった。大丈夫かマコトくん、こんな調子で。
朝から夕方までデートして十七時からは家庭教師の予約が入っているから明日のマコトくんはややハードスケジュールだ。明日の夕方は物凄く浮かれている見慣れないマコトくんか、物凄くどんより落ち込んでいるマコトくんのどちらかと会うことになりそう。頼むからどうか落ち込んで待っているのだけはやめてくれ。浮かれモードのマコトくんの方がいい。
家の近くまで送り届けるとマコトくんは深々と頭を下げてきた。ヒラヒラ手を振ってそこで別れ、他に寄り道することもなく自宅の最寄り駅に戻った。
瀬名さんはどうせ今ごろ部屋で仕事でもしているに違いない。人相を悪くさせながらパソコンを睨みつけているだろう。
疲れ目必至の社畜系リーマンにはブルーベリーでも買っていってやろうか。ちょっと前に作った甘さ控えめの冷たいブルーベリーシェイクは思ったよりもウケがよかった。
美味しい果物が安く手に入るスーパーに寄っていこう。駅を出て真っ直ぐ足を向けたのは目当てのバス停。目指すはブルーベリー。
「……遥希?」
ところが数歩進んだところで右方向から声をかけられた。
反射で振り向く。そこで見た顔。お互いに動作も止めていた。
「…………ショウくん?」
懐かしい人に会った。
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